シャドウズルーラー~蘇りの石~   作:聖せろり

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これで一旦、ハリー編は終了です。次回から久々の主人公。


29 嘘か真か

シルフィ―ヌが告げた名前は見知ったものばかりで、ハリーはショックを受けた。

全員自分のせいで大切な人の命を奪われた者達だと、ハリーはいつもの眠れない夜の時以上に自分を責めた。

「貴様を庇うつもりは全く無いが、この小娘は他人の気に障る所をつくのが好きなようだ。それにこの教団はしつこい勧誘で有名だ。先程も長時間くだらない勧誘に拘束されたせいで貴様達に付き合わされる羽目になったしな。ろくでもない奴らのろくでもない話など聞くに堪えない」

シルフィーヌは、その言葉に全く動ずる事も無いどころか余裕そうに不敵な笑みを浮かべた。

「もしかして『死の教徒』への勧誘がお気に障りましたか? てっきりあの噂は本当かと思いまして。息子さんが実は亡くなられているっていうあの噂」

エイブリー氏は表情一つ変える様子は無かったが、一瞬目に動揺が現れたのをハリーは見逃さなかった。

「話を聞いている限り、どうやらその噂は嘘偽りのようですね。だとすればもう一つの噂の方が真……」

「さっさと消え失せろ! 私がまだ杖を構えていない内にな!」

シルフィーヌはやれやれと言った具合に肩をすくめると、ハリー達に一礼をし9と4分の3番線を離れた。

怒りが抑えられずどこかにぶつけたかったのかエイブリー氏は壁を一発殴り、その行動に皆が呆気に取られている間にスタスタとその場を去っていった。

ハリーはハッと我に返ると、事件の容疑者であるエイブリー氏を追いかけようとしたが、オズマルゴ局長は制止しながら首を横に振った。

「彼は犯人ではないだろう。何せ、あの怖そうな見た目とは裏腹に嘘をつくのがとても下手そうだからね。彼は少し不器用なのかもしれない」

局長はエイブリー氏を完全無罪だと思っている様子だったが、ハリーは未だ疑念を抱いていた。

ハリーに向けられたあの異常なほど憎しみに満ちた瞳は、明らかに何かを隠しているような気がしてならなかった。

「ところでミス・モントと言ったかな。彼女ももしや、ミス・ブレンダ、君がミスター・エイブリー共にこの場に残らせたのかね」

モント、その名を聞くだけでハリーは胃がキリキリした。

シルフィーヌ・デ・モントが口にした「死の秘宝」の信者達の名前が、頭の中でこだまのように何度も何度も繰り返し響き渡った。

「えぇ、そうですわ。あの死喰い人と話をしているようでしたので、残るように言いましたの。……あら? そう言えば、彼らと共にもう一人長身の変わった目の男がいたのですけれど、本当とても変わっていましたわ! 彼は帰ってしまったのかしら?」

ブレンダ夫人の言葉に、ハリーとオズマルゴ局長は顔を見合わせた。

どうやら局長も同じ事を考えているようだ。

「ミス・ブレンダ、そのもう一人の彼も死喰い人だったかね? それとも……」

「いいえ、オズマルゴ局長。彼女が言ってましたわ。えぇ、彼女とは『死の教徒』のあの女の事ですけれど。あの教団、随分前でしたけれど、わたくしの所にもしつこく勧誘に来ましたわ。家でも外出先でもお構いなく……こればかりはあの死喰い人に同情しますわ」

ブレンダ夫人は少し話を脱線しながらも続けた。

「ええっと何の話でしたっけ? あぁ、そう! それでね、あの女が言っていましたの。『彼無くしては今の教団は成り立たない特別な存在』だ、って。何だか信者というより教祖みたいだと思いましたわ。でもそれにしては若そうでしたし、若いと言ってもハリー貴方と同じぐらいかと。だってほら、『死の教徒』と言えば、ヴォルデモート全盛期からひっそりとあったでしょう? それがホグワーツの戦いの後に徐々に勢力を拡大して今では図々しくなって……」

相変わらずブレンダ夫人はお喋りで、聞きたい話が終わった後もまだベラベラと一人話続けている。

9と4分の3番線の行き先がホグワーツへと何者かに変更された件、死喰い人のエイブリー氏がその場に居合わせた件、「死の教徒」のシルフィーヌともう一人の男の件、シルフィーヌの死の秘宝に関する話の件……確証は無いがそれら全てが点と点で結びついた気がした。

だとすれば、局長の言う通りエイブリー氏は本当に無実で真実を隠す為に死喰い人という事実を利用されただけかもしれない。

「局長、事件の犯人が行き先をホグワーツの真ん前にしたのって、目的の場所は指定出来なかったからですよね。ホグワーツの中へは、姿現しも姿くらましも出来ませんから」

オズマルゴ局長は、ハリーの話に静かに頷いた。

「それってつまり、あの本はでたらめですけど……禁じられた森へ蘇りの石を探しに行こうとしていたって事ですよね。彼ら二人が」

「そうだ。彼女一人ならば上書きが出来るか分からなかったが、二人でもう一人はかなり尊敬されている人物らしいからね。単純に凄腕の魔法使いと見てもいいだろう。しかし、ハリー。その推理では彼らの思惑にまんまとハマってしまっている」

えっ、とハリーは思わず声を漏らした。

「それならばわざわざこんな大層な事をしなくても他の方法があっただろう?」

確かに、とハリーは思ったがオズマルゴ局長が言わんとしている事はいまいちピンとこなかった。

「わざわざこんなマグルの行き交う場所で、魔法省に見つかって計画が失敗するかもしれないリスクを冒してまで、この場所に固執する理由があるとは思わないかね?」

ハリーは、まさかと思いゾッとした。

「今日、偶然か必然か、この場所、この時間帯に、ホグワーツの中に入る資格を持ち、且つ嘘か真か森のどこかにある石を見つけ出せる者がここに必ず来るからではないかね?」




 
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