男の子がふぁーと大きなあくびを一つしていると、汽車はゆっくりと発進し始めた。
「寝ているフリ?」
「んーまさか。あんだけ喋ってたら誰だって起きるって」
男の子は余程満足に睡眠をとれたのか気持ちよさそうに大きく伸びをした。
「ここいいなぁ、こんなに良く眠れたの何年ぶりだろう……あ、俺ソニック、ソニック・ヤード。君たち、ミンティアとサクラ? だっけ。1年生? だったらよろしく! 違ってもよろしくな」
明るく陽気な印象のソニックは、どことなくまだ仲が良かった頃の総を思い出させた。
きっとソニックも人気者になるタイプに違いない。
ミンティアも得意のお喋りで皆を楽しませるムードメイカーになるだろう。
そう考えると、さくらは何だか自分がここにいるのは場違いな気がした。
自分とは真反対の2人を見るのが気まずくなり、さくらは窓の方を見た。
飛ぶように過ぎていく家々をしばらく眺めていると、少し心が落ち着いた。
いつから自分はこんなに臆病になってしまったのだろうと、さくらは情けなくなった。
「俺もサクラに賛成。親でその子の性格、決めつけたら可哀想じゃん。噂でろくなもん聞いたことねーし。それよりさ、皆で仲良くした方がいいじゃん! な?」
ソニックはそう言いながら、お前もそう思うだろうと言わんばかりにさくらの膝の上に乗っているスノウを撫でた。
スノウは急に撫でられたものだから、驚いて羽をバサバサと振り回した。
ミンティアは不満げな様子で腕を組んだ。
「あなたもマグルね。何があったかよく知らないからそう言えるんだわ! それにおあいにく様、『皆で』は絶対ムリな話ね。スリザリン生がいる限り、ホグワーツでは絶対にね」
「スリザリンも死喰い人みたいな人のこと?」
ミンティアは目を丸くしてさくらの顔を見た。
ソニックもさくら同様、スリザリンが何かを知らない様子なのでさくらはホッとした。
「サクラ、あなたさすがに何も知らなすぎじゃない? マグルの子は、入学前にホグワーツから誰かが来て説明を受ける筈だけれど。寮の話、されなかったの?」
これには逆にさくらが驚き、2人の顔を交互に見た。
ソニックは動じていなかったので、彼のもとには来たようだ。
ただ彼の顔が何故か一瞬曇った気がする。
日本は遠いから誰も来られなかったのかも、とさくらは思うことにした。
ミンティアは寮のことを何一つ知らない2人に丁寧に教えてくれた。
ホグワーツには4つの寮があってそれぞれ、グリフィンドール、スリザリン、レイブンクロー、ハッフルパフという名前の事、手紙やトランクに描かれた動物たちはそれぞれの寮を現わしている事、カラスやフェレットだと思っていた動物は鷲と穴熊だという事……(それを聞いてさくらは赤面した)、そしてヴォルデモートや死喰い人の多くはスリザリン出身だという事。
「だから私はスリザリンだけは絶対嫌よ。そこの生徒達も大嫌い。私、グリフィンドールに入るの! ハリー達と同じ寮よ! 英雄は皆そこよ。ねぇ、知ってる? 薬草学の先生は、あのネビル・ロングボトムよ! ほら、ハリーに次ぐ英雄の……あぁ、
そうだったこれも知らないわね、ごめんなさい。彼もそこ出身よ。だからねサクラ、あなたもグリフィンドールに入るべきだわ!」
「君の話じゃあ、寮は自分たちで選べないんだろ?」
ミンティアは余計な事を言ったソニックを睨みつけた。
なんだかんだ息の合いそうな2人のやりとりにさくらはクスっと笑った。
どこの寮が良いとか悪いとかまだ分からないが、2人と同じ寮だと楽しいだろうなとさくらは思った。