40 責める英雄
とあるちっぽけな薄汚れたバブの扉がギィと音を立てて開く。
夕方でも、割とガヤガヤ賑わうこの「漏れ鍋」に足を踏み入れた、ロン・ウィーズリーとネビル・ロングボトムは気が進まなそうにカウンター席へと重い足どりで向かった。
そこには、棚のグラスを取ろうとしている金髪のポニーテールの女性の後ろ姿があった。
ロンがわざとらしく、ううんと呟払いをすると、その女性は2人の方をサッと振り返った。
「ロン、ネビル! 久しぶりね!」
明るく優し気な声色のその女性は、かってホグワーツで同級生だったハンナ・アボットだった。
2人が何故ハンナに会いに来たのかと言うと、事の本端は数時間前に遡る。
「あの女、本当余計な事をしてくれたわね。今までで一番最悪よ! 死喰い人並みにタチが悪いわ」
腕を組みながらカンカンに怒るハーマイオニー・グレンジャーを、ハリー、ロン、ネビルの3人はその怒りが自分達に飛び火しないよう彼女が元の冷静さを取り戻すまで相槌を打つだけに留めた。
ロンが小声で「ひぇーおっかないや」と隣にいた2人に言った時、なんて言ったのかちゃんと聞こえたのか聞こえていないのかはっきりとは分からないがハーマイオニーがキッと鋭い目で3人を睨みつけた。
ハリーは、ドラゴンが急に目の前に姿現しをしてきたかのように肝が冷えた。
10分ぐらい経つと除々に落ち着き始め、更に10分経つとすっかり元のハーマイオニーに戻っていた。
3人はホッと一息ついたが、ハリーはハーマイオニーがあんなに激怒するのも無理は無い話だと思った。
ハリーも内心怒り狂いそうだった。
あの女、リータースキーターの著書「ハリーは英雄か、憎むべきか」によって死の秘宝の存在が 魔法界全体に知れ渡ってしまった。
ニワトコの杖は、ダンブルドアが安らかに眠る墓に元通りなおした。
そして、透明マントはハリーが所持している。
場所は知れ渡ってしまったが、ニワトコの杖の所有権はハリーにある事をまだ知られていないし、まさかハリー・ポッターから透明マントを盗もうとする輩はいないだろう。
となると、ハリーもハーマイオニーも気掛かりなのは「蘇りの石」だ。
「シルフィーヌ・デ・モントは、蘇りの石を求めていた。彼女だけじゃない。『死の教徒』の信者は、あの石を求めている。だって僕のせいで……」
僕のせいで皆大切な人を失ったから。
ハリーは、その続きの言葉が言えずキュっと口を結んだ。
ハーマイオニーは、ハリーが何を言おうとしたか察した。
「あなたのせいじゃないことは、ここにいる誰もが知っているわ」
ロンもネビルも頷く。
ハリーの苦悩を知っている仲間達は皆全て、ハリーの味方だった。
ハリーはそれだけで少しだが、気が軽くなった気がした。