教師同士、生徒同士なら簡単に森への誘いに乗せるのは難しい。
そんなのよっぽど信頼関係が構築されているか、巧みな話術を使う相手か、騙される者がどうしようもない馬鹿かだ。
それに昨日に実行しなくてはいけない理由が見当たらない。
なんならその方が怪しまれるし、学校が始まってから気軽に誘う方がまだましに決まっている。
それなら、生徒が教師を森に誘うパターンはどうだろう。
言うまでもなく、現実的ではない。
生徒の突拍子もない誘いに何の疑いもなく乗る教師がどこにいるのだろうか?
あのモントがそんな方法を了承する箸がない。
だからこそ、教師が生徒を森に誘う以外の方法は考えつかないのだとハーマイオニーもハリーも言う。
生徒という子供なら、教師という大人の言う事を簡単に信じ込み言う通りに動いてくれる。
しかも、それらしい理由をつけて話せば疑われる事もない。
「学校が始まってからはダメなの?」というネビルの質問にもこれで説明がつく。
教師という立場の人間が生徒を私的な理由で森へ連れ出すなどあってはならない。
何故ならそんな事をすれば、他の教師に自分が疑われてしまうからだ。
疑われれば、計画は破綻。
他の教師の目が無く、その子が必ず訪れる日。
それが学校の始まる前日、即ち、昨日だったのだ。
「なら、ハグリッドだけは絶対違うな。そもそも、モントがバグリッドにそんな計画頼んでたら、頼む相手間違えてるぜって伝えてやらないとな」
このロンの発言に、ハグリッドに悪いと思いつつもハリーは納得してしまった。
ハグリッドは秘密の頼み事をする相手に向いていない。
嘘をついたり隠し事をしたりするのが、かなり下手なタイプだ。
ハリー達が1年生の時、その事を身を持って実感した。
それに、ハグリッドは動物とあればどんな恐しいものであれど、愛し世話を焼く。
そんな人が、私的な理由で動物達が多く住まう森を利用するとは考えられない。
ハグリッドなら生徒を森へ連れて行っても疑われない唯一の人間だが、そんな理由で彼だけは絶対にあり得ないのだ。
ハグリッドの動物好きには迷惑をかけられた事もあったが、ハリーは彼が動物好きでいてくれて良かった、隠し事が苦手なタイプで良かったと心から思った。
マクゴナガル先生も違うなと皆、意見が一致した。
校長という云わば、学校のトップの座に就いている人間がこんなまどろっこしい事をしなくても生徒に一言「森へ行きなさい」と他の目も気にせず言えば良いだけなのだから。
ハリーは、2人だけでなく自分が知っている先生は全員白であって欲しいと願った。
先生ではないが、あの意地悪フィルチでさえこの計画に関わっていなければ良いのにとさえ思った。
これ以上、知り合いが死の教徒に関わっていたら……ハリーにはそんなの耐えられなかった。
「モントはこの計画を隠す為にハリーに蘇りの石の話をしたわけではないと思うわ。計画が失敗したからと言って話をしたところで、ハリーが石を取って来てくれるとは限らないもの。そう、あの時既に計画は失敗に終わっていた」
「なら、どうしてなんだい?」
「試したのよ」
ハーマイオニーはチラッとハリーを見る。
「あなたがこの罠に気付く程の人物か。自分達や森への警戒が強まったとしても。試したかったのよ。まんまと罠にハマるか、それとも聡明で自分と対等な位置に立てる程の人物か」
「うん、ハマったね君がいなければ」
ハーマイオニーは、ハリーの何気ない褒め言葉に嬉しくなり微笑んだ。
「ハーマイオニーがいなくちゃ、僕達当の昔に首が吹っ飛んでたぜ。な、ハーマイオニー様様!」
ハーマイオニーはポッと顔が赤くなり、ロンにもうそれ以上言わなくていいからと言うかのように彼の腕を軽く小突いた。
「恐ろしい女ねモントは。これはハリー、あなたへの宣戦布告よ」
ハリーはハーマイオニーの話を聞いている間に、薄々その事に気付き始めていた。
「もっと恐ろしい事は、モントが第3の計画を実行している最中という事だ。僕達は、ホグワーツにいる犯人も利用されかけている生徒が誰かも突き止めていない。まだその犯人も生徒もホグワーツにいるのなら……」
続く言葉にその場にいた誰もが言葉を失った。
「石を見つけ出せるチャンスを、奴らは今でも伺っているという事だ」