オブスキュリアル。
社会、環境などから抑圧され、自分の力を抑え込もうとする幼い魔法使い達の体内で生み出される闇の力。
その力をオブスキュラスと言う。
オブスキュリアルは、それを内包する者の名称だった。
オブスキュラスはエネルギーを秘め、その力は暴走しやすく他者に危害を及ぼす事が多い。
しかし、そもそもオブスキュリアルは、他者から相当な危害を受けた者であるのだ。
ハーマイオニーが指し示したこの「ソニック・ヤード」という少年も例外なく、悲惨な過去を背負っていた。
彼の事が詳しく書かれた別の紙をハーマイオニーは取り出した。
魔法省で管理されていた資料だったようで、その紙には「魔法省管理」「持ち出し厳禁」のスタンプがでかでかと押されていた。
その資料によると、「ソニック・ヤード」という少年は凄まじい虐待・いじめを受け、最終的には彼自身がおかしい人だと言うかのように精神病院に入れられた。
ハリーは、その資料を見て絶句した。
ソニック・ヤードが受けてきた所業を考えると、比べるべきではないかもはないがダードリー一家やダーズリー一味のしてきた事が可愛いいたずらに思えてしまう程だった。
ネビル至っては吐き気がすると、ロンに何かいらない袋はないか聞いていた。
ロンも思わず「マグルのやる事って……」と言葉を詰まらせていた。
ハリーは、自分の本当の子供にこんな惨い事をする親がいる事が信じられなかった。
親というのは、無償の愛で子供を愛してくれる存在だ。
家族というのは愛し守りたいと思いあえる存在だ。
ハリーの父が2人を逃がそうと命を懸けてくれたように、母がハリーだけはと自分を犠牲にしてくれたように。
――そうでなくちゃいけないんだ。そうであるべきなんだ。
ハリーは、ふと、とある家族を思い出した。
その子供は、このソニック・ヤードのように親に愛されたとは到底言えない人生を送った。
トム・リドル。
――僕と似ている境遇に見えて、全然違った。僕は愛されてて愛を知っていて、あいつは……。
同情する気も哀れむ気も無かった。彼のやってきた事を考えれば当然だ。
それにトム・リドルという孤独な少年は、ヴォルデモートという最大の悪によってとっくの昔に死んだ。
けれど、彼と同じ境儡の、それ以上かもしれない境遇の少年が今、生きているのだ。
愛を知らない孤独な少年は、過去の過ぎ去った思い出ではなく現在の人間なのだ。
もし彼が狙われた子供では無かったとしても。
ハリーは、ソニック・ヤードに何かしてやりたいという気持ちがどうしようもなく募った。
死者を哀れむのではない。生きている者を哀れむのだ。
見るべきは生者で、死者ではない。
「ネビルは彼に近付く人物がいるかどうか見張っててほしいの。どんな子でもだけれど、特にこんな子が利用されるなんて嫌ですもの」
ネビルは分かったと頷く。
「やらなくちゃいけない事は、まだあるわ。もっと確実な情報を集めて欲しいの。私が言っている事は全て憶測でしかないから」
ハーマイオニーは、そう言うと自信満々に3人の顔を見渡した。
彼女には何か名案があるらしい。