そんなこんながあって、ネビルとロンは今「漏れ鍋」のカウンターに腰をかけているのだ。
ハンナが「何か飲む?」と声をかけてくれたので、ロンはとりあえずファイア・ウィスキーを頼んだ。
対してネビルはお酒ではなく、水を頼んだ。
この店に来て水だけを頼む客など子供の魔法使いではない限りまぁ珍しいので、ハンナはどうしてこの店に来たのだろうと不思議そうな顔でネビルを見た。
ロンが何してんだよと言うかのように肘でネビルを小突くので、ネビルは
「もうすぐ1年生の歓迎会があるから……僕、先生だし……ね。初日から酔っているのは色々と……ね」と察してくれと言わんばかりにハンナに見えないようにロンを小突き返した。
「あぁ、うん。僕が、ネビルを……おい、痛いだろ、何でもないよハンナ、無理にこいつを……誘ったのは僕なんだ」
テーブルの下での子供っぽい攻防には一切気付かず、そうなのねと返しながらハンナはグラスを取り出しコポコポと音を立てながらファイア・ウィスキーを並々注いだ。
2人はその様子に何がとは明確に言えなかったが、何か違和感を感じた。
ロンにファイア・ウィスキーのグラスを出すと、次にネビルが頼んだ水をコップに注ぎ始めた。
そこでネビルは、はっと気が付いた。
「ハンナ、魔法を使って入れないの?」
ハンナはネビルのその言葉を聞いた瞬間、ピタッと石にされたかのように固まってしまった。
注いでいる水がコップの上限を越え溢れ出してもハンナはしばらくの間、そのまま何もせず固まったままだった。
何も言わず、黙々と雑巾で水浸しの床を魔法を使わず自力で拭くハンナを見て、ネビルはまずい事を言ったかなとオロオロした。
違和感の正体はそれか、と納得するかのようにロンはポンッと挙で手の平を叩いた。
ハンナは動揺ぎみに「ええ、そうなの。この方が性に合ってて」と話した。
さすがに怪し過ぎて彼女が何かを隠しているなど、どんな鈍い人間でも分かるだろう。
ロンとネビルは互いに顔を見合わせ、これは何かあるなと目で会話した。
ハーマイオニーが考えた名案。
それは「いっその事その宣戦布告に乗っかってやろうじゃないの」という果たして名案と言って良いものか分からない大胆な作戦だった。
ロンが何か言おうとしたが、ハーマイオニーはすかさず「これはチェスのようなものよロン」と言って黙らせた。
お互いの作戦を潰し合い、相手の駒を奪い合う。
どちらが先に行く手も打つ駒も封じられ、相手にチェックメイトと高らかに告げられるのか。
モントは、ハリー達に自分のステージまで上がってこいと誘っているのだ。
どう考えても、モントはこれをゲーム感覚で楽しんでいるようにしか見えない、とハリーは思った。
「裏をかこうとするだけ無駄よ。たとえ相手がこちらの作戦内容がどんなものか予測していなかったとしても、モントが予測している通りの動きを見せないと、怪しまれて結局こちらの作戦がどんなものか探りを入れてくるわ」
「だからモントを出し抜く為には、まず相手が予測している通りの動きをしなくちゃいけない。こちらの本当の作戦を隠す為に。そして、裏をかけるチャンスをこちらも伺う。そういう事だね、ハーマイオニー」
ハーマイオニーは頷く。
「それでも探りは入れてくるでしょうね。けれど有効なのはこれぐらいしか思いつかないわ」
「相手に乗るって言っても、具体的に何をすればいいんだい? まさか正面から決闘するとかじゃないよな?」
「向こうは既に最初の駒を提示してくれているじゃない? それも私達と同じ人数分ね。……今、気付いたけれど私達がこれを実行する人数もモントはよんでいたのね」
ハリーはその駒が誰なのかに気付いた。
「ハリーは、トンクス夫人をお願い。あなたが彼女に最も近いんですもの。私はディゴリー夫妻を。丁度彼らが魔法省に来ていたのを最近見かけたの。私一人になってしまうけれど、彼らに怪しまれないようにする為には私が一番的確な人材でしょ? ロンとネビルは……そうね、ハンナをお願い。ハンナは確か漏れ鍋で亭主をしていた筈。それとなく客として訪れるの」
ロンとネビルはまだピンときていなかった。
そんな二人にハーマイオニーは更に説明をする。
「いい? モントは信者の名前をわざわざハリーに教えたの。これは、モントの誘導。モントはただ単に教えたわけじゃないわ。必ずこの4人の中にモントに協力をしている人物がいる。モントは私達がその人物を探し情報を引き出すことを望んでいる」