ホグワーツに入学して数日経つと、段々とリンダ・アーウェリンという人間の情報があれやこれやと耳に入ってきた。
入ってきたのは少なくとも、さくらがリンダ自身の事を知りたいと思ったからであろう。
父親の姓はアーウェリン、母親はあの死喰い人など闇の魔法使いを多数輩出した由緒正しき魔法使いの一族、ロジエール。
エイブリー家と似たような肩書きだとさくらは思った。
父親はホグワーツの戦いで不死鳥の騎士団という団体のようなものに所属していた者の一人に殺され、母親は今アズカバンという監獄に収監されているらしい。
その為、彼女はヴォルデモートが関わった戦いなどで家族を失った孤児達のために建てられた孤児院で育ったらしい……。
両親が最悪な殺人鬼であれど、実の両親を知らずに生きてきたさくらはリンダを可哀想に思った。
と同時に、血が全く繋がっていない赤の他人をこれまで愛し育ててくれた自分の両親に感謝した。
――お母さん、今どうしてるかな。泣いたりしていないかな。昔みたいに泣いてそれから……。
さくらは嫌な記憶を思い出しかけて、それを振り払うかのように首をブルブルっと横に振った。
嫌な事を考えている場合では無い。まだ次の授業である「変身術」の教室を見つけられていないのだ。
変身術の教室は1階でもないのに日あたりが悪く、かといってジメッとしているわけでもない風通しの良い場所に位置していた。
さくらが教室に着き、一番前の真ん中のリンダの隣の席に着席する頃には授業を教える教師は既に教壇に立っていた。
変身術の教師は、歓迎会の時のあの猫のような変わった瞳の男性だった。
スリザリン生達は皆、うんざりとした呻きをあげながらノートにそれを書き写していく。
だが、数人手を動かさずお喋りを続けアハハと意地悪そうな笑い声をあげる生徒達がいた。
サンジェリカ・ジルマンとその取り巻き達だ。
彼女、彼ら達はいつも不真面目な態度で授業を受けているが、今日はそのいつも以上に授業を妨害してきた。
サンジェリカ・ジルマンはスッと手を上げ「リ先生ー!」と呼ぶと、リ先生は書くのを止め生徒の方を振り向いた。
「どうして、そんな目をしているんですかぁー?」
サンジェリカの質問に取り巻き達は、笑いを必死に堪えた。
彼らの反応から察するに、聞かなくてもその答えを知っているのだろう。
それなのにわざと質問をする所がとても意地悪だと、さくらは怪訝そうな顔で彼らを見た。
リ先生はというと、一切動じず簡潔にその質問に答えた。
「生まれつきだ。私の一族は皆、この目を引き継いでいる」
坦々と表情を変えずに話す様子はまるで、いつも同じ質問をされて同じ答えを返しているような機械的な印象を与えた。
三ジェリカ達はその答えを聞くと「それだけが真実じゃないでしょ」と言わんばかりにニンマリと笑みを浮かべながら、仲間の顔を見た。
サンジェリカ続けて手を挙げる。
「そういえばー、先生の同級生のあの人って今どうしているんでしたっけー?」
またくだらない質問かと、リ先生は小さく溜息をついた。
「誰の事を言っているのか分からない」
「あの人ってあの人ですよー」
サンジェリカは、間をとってからその名を口にした。
「セドリック・ディゴリー」