懐かしや~たまに遊んでるけど、懐かしや……。
現在6月24日18時、父が帰宅して家族で夕食をとるまで残り時間約1時間。
18時半前には母が、夕食の準備に取り掛かる。そしたら、さくらもお手伝いに向かう。
夕食時には、学校の勉強の話とか、最近好きな漫画の話とか、明日の誕生日楽しみだな~とか、ネガティブではないあらゆるジャンルの話題を振ろうと、昨日の夜ベッドに寝転がりながら考えた。
メインの話題だけでも37個用意してある。それと予備の話題を2個、念のため捻りだしておいた。
これで夕食時の準備はほぼ完璧だ。後、やらなくちゃいけないのは1つだけ。
さくらは自分の部屋の隣にある茶色のドアをコンコンっとノックした。
「んー」という声が部屋の中からかえってくる。多分、入っても大丈夫なのだろう。
さくらは、ソッとドアを開け部屋に入ると、きちんとドアを閉めた。
部屋では、総が勉強机で宿題を……しているように見えたが、実際は携帯型ゲーム機のボタンを連打しまくっていただけだった。
ゲームに集中しているせいか、さくらが入ってきた事も気付いていない。
先程の返事もおそらく適当なのだろう。
もし入ってきたのがお母さんだったらゲーム機取り上げられてたよ……とさくらは思った。
真剣にゲームをしているようなので声をかけるのを躊躇ったが、残り時間はそうは長くない。
また無視をされるかもしれないという不安のせいで手は少し震えていたが、震える手をぎゅっと握りしめ意を決して、さくらは久しぶりに入る弟の部屋で彼に声をかけた。
「あ、あのね、総」
その声に驚いたのか、総は反射的にさくらの方を振り返り、さくらを視界に入れるや否や持っていたゲーム機を床に落とし、慌てて拾おうとして勉強机の角で頭を打った。
さくらは、痛そうに頭をさする総を心配して駆け寄ろうとしたが、すぐに総は「来るな」とさくらを制した。
珍しく目に見えてしゅんとしているさくらを見て言い過ぎたと思ったのか、何ともないから来なくて大丈夫と心配させないように付け加えた。
そう言うと、さくらは徐々にいつもの笑顔に戻り、総もまたいつも通りさくらから目線を逸らした。
そんな総を見て、また落ち込みそうになったが、さくらは自分を心の中で励ました。
「あのね、明日、私の誕生日なの」
総は振り返りも返事もせず、まだゲームをしている。
「だ、だからね……」
総は何も言わない。
さくらは、一度ふーと大きく息を吐いて心を落ち着けた。
「私、総とこのままおしゃべりしないままは嫌なの!」
総はピタッとゲームをする手を止めた。
話題は幾らでも自分で作れる、話しかける事だって出来る、けれど話題があったって話しかける勇気があったって、相手がちゃんと返してくれなければ会話は成立しない。
ここ1、2年、さくらと総はそんな感じだった。
年に一度の最高のお祝いの日、さくらが誕生日に願ったのは物でもお金でもなく、昔みたいに両親や総と一緒に笑いあったり話したりする関係に戻ることだった。
さくらの誕生日の願いは叶う?
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叶った
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少し叶った
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叶わなかった
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そんな場合じゃない