ジャギィがドスジャギィになる話 作:ドスジャギィ
「ブオオオオォォォオ゛ッ!」
咆哮を上げながら、一匹のアプトノスが森を駆けていた。
両脇には、二頭のジャギイがぴったりとつけており、ギャアギャアと獲物を囃し立てる。
たまらず、アプトノスは速度を上げた。圧倒的な体格差で、あっけなくジャギイどもを置き去りにする。
どのくらいの間駆けただろうか。
もう、ジャギイの姿は見えない。
アプトノスは、ほっと安堵し、警戒を緩めた。
瞬間、横から大木のような尾が、顔面に叩きつけられた。
その一撃は強力で、一撃で首の骨を打ち砕き、致命傷を与えた。
茂みより現れたのは、ジャギイに似た、巨大な竜。
その首元に広がる大きな襟巻は、今宵の勝者が誰であるかを、雄弁に語っていた。
これは、少し先のお話。
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ここはどこだろうか。闇に塗り潰された視界の中で、彼はそう思った。
随分と狭い所に居るようで、体を動かし辛い。だが、焦りは無かった。本能で、ここが安心できるホームであること、そしてここから出る方法を理解していた。彼は安心感に身を任せ、意識を手放した。
何日か経ち、彼は外に出ることにした。幸い、彼の体はこの数日で成長し、彼を覆うナニカを破壊するのは容易かった。
ピキッ、という音と同時に、外の光が差し込む。
彼はうねるように体を動かし、ナニカの中から這い出た。
外界の眩しさに若干怯みつつ、うっすら目を開けた。
「アッアッオーン!」「アッアッオーン!」
特徴的な鳴き声が耳に入る。あたりを見回してみると、彼の他にも多くの卵、小さな子竜、そして成体の竜…ジャギィ、ジャギィノス達が微睡んでいるのが分かった。
「グアッグアッ!」
彼は鳴き声をあげて、親を探した。すると、一匹のジャギィノスが鳴き声を返した。
すぐに親だと分かった。一目散に駆け寄り、甘えるように顔を擦り付けた。
しばらく母に甘えていると、ふと、全身の筋肉が硬直する感覚を覚えた。何かが近づいてくる、そう確信した彼は母の後ろに隠れた。
ズシン、ズシン
地面の揺れが激しくなるとともに、巨大な姿が浮かび上がった。
真っ赤に肥大化したエリマキ、棘の発達した尾、そして明らかに周りより一回り巨大な体躯。…ドスジャギィだ。
奴がボスであり、父だ。彼はそう確信した。父が彼に鼻を近づけ、匂いを嗅ぐ。彼は生きた心地がしなかったが、努めて堂々と振る舞った。
やがて、父は興味を失ったかのようにその巨軀を翻し、群れの奥へと消えていった。
彼は、群れの一員として認められたと分かったと同時に、自分の目指す姿を理解した。
少し時は進み、夏が近づき、緑が地を満たす。
母たちが自分に肉を分け与えてくれるのにも関わらず、彼は狩りに精を出した。まぁ、狩りといっても、そう大したものでは無く、クンチュウ等を捕食する程度だ。
だが、その積み重ねが、彼の体を同期達よりも大きく、強靭にした。
やがて、母が餌をくれなくなった。今まで通りじゃれついても、まるで居ないかの様に振る舞われた。
巣離れの時期だ。
ジャギィ達は雌のジャギィノスと異なり、ある程度大きくなったら巣離れをし、一人で大人になる。そうして生き残った雄同士が、ドスジャギィの座を争うことができるのだ。
彼はその事を理解し、餞別の鳴き声をあげて森へと入っていった。
初めて聞く、親の別れを惜しむような声を背に浴び、自分は確かに母から愛されていたのだと感じた。
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