ジャギィがドスジャギィになる話 作:ドスジャギィ
(もう…盾が持たねぇ)
ゴルドにとって、状況は最悪といってよかった。
盾はピシピシと嫌な音を立て、彼の心から余裕を奪う。
盾を持つ右手は、疲労と痺れで感覚を失って久しい。
(早く…早く来てくれ。)
ゴルドにはもう、姿も見えぬ男の助けを祈るしか無かった。
どのくらい時間が経っただろうか。
一分にも…いや、もしかしたら数十秒に満たない時間かもしれない。
だが、ゴルドには何年にも感じられる時間、放電は続いた。
盾は只の板と化し、鎧には電流が迸る。
(あァ、やべぇな。肉が焦げてやがる。)
ゴルドが死を覚悟したその時、突然雷撃が止んだ。
ライゼクスは、ジンオウガ等と異なり、発電器官を持つ。
そのため、雷光虫などの様な他の生物に頼ることなく、常に発電することが可能だ。
が、しかし、当然限界はある。
生物である以上、無限の雷をため込むことなど不可能だ。
(雷が切れやがった!
ってことは…奴はしばらくは放電できねぇ筈だ)
男は、ぼろきれと化した鎧も、楯も捨てて駆け出した。
右手に持つガンランスは、ライゼクスに照準を合わせる。
だが、雷が切れてもその巨体は健在
その鋭利な尾を、男向かって突き出した。
が、男も腕の立つハンターだ。直線的な攻撃を避けることなど容易い。
ギリギリまでひきつけ、上体を捻って躱す。
勢いそのままに、ライゼクスの懐に潜り込んだ。
が、一息つく暇はない。頭上には、巨大な翼が迫っていた。
クルンと横に転がり、寸での所で叩きつけられた翼を避ける。
翼が地面にめり込む。
その威力は凄まじく、衝撃の余波だけで男が吹き飛びかねないほどだ。
(チッ...バケモンが。)
ぼやいてばかりもいられない。めり込んだ翼の上に飛び乗り、そのまま頭めがけて飛び上がる。
男の接近に気づいたライゼクスは、翼を振り回し男を振り落とさんとした。
その時、男が翼を踏みしめ飛び上がった。
鎧も、楯も捨てた男だからこそできる動きだ。
「うおおお゛お゛お゛お゛お゛ァァァ!!」
魂を込めた雄たけびと共に、男が落下する。
落下の勢いを穂先に乗せたガンランスは、堅い鱗を打ち砕き、ライゼクスの首元に深々と突き刺さった。
Gyishaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!
激痛に、ライゼクスが怒りを込めた咆哮を放つ。
相当な深手だ。
一見優位に見える男だが、その心中は穏やかではなかった。
(クソがッ!何故、なぜ起爆しねえ!)
そう、ガンランスの最たる特徴である、爆発が起きないのだ。
何度も、何度も起爆スイッチは押してある。
焼け爛れた指で、何度もだ。
だが、無理もない。長時間、雷と同等の電気を浴び続けたのだ。
ガンランスに組まれた機構の幾らかが故障したとて、全く不思議ではない。
(…だが、問題は無ぇ。このまま押し込んで、しまいだ。)
即座にプランを変更し、男は腕になけなしの力を込めた。
だが、悲しいかな。勝負の天秤は、いとも簡単に覆る。
ライゼクスの頭角が、淡い緑の光を放ちだす。
それは、酷く綺麗で、残酷だった。
緑の閃光が迸る。
それは、ガンランスが起爆するのとほぼ同時だった。
耳をつんざく爆発音とともに、あたり一面が眩い光に包まれた。
爆風が吹き荒れ、木々は軋む。小型の生物は皆吹き飛んだ。
ーーーーーーーーー
やがて、風がやみ、光が消える。
土煙は辺りを覆いつくし、激闘の跡を包み込んだ。
...虫の息だ。
彼は、木の傍に近寄る。
そこには、爆風に吹き飛ばされ、木に叩きつけられた男がいた。
もはや無事な箇所を探す方が難しく、体は血に濡れていた。
ヒュー、ヒューと浅い呼吸を繰り返し、ピクリとも動かないその姿は、男の命がもう長くはないことを悟らせる。
彼は体をひねり、勢いよく尾を振るった。
その一撃は強烈で、背後の木ごと男の頭を切り落とした。
彼が人間に見せた初めての情けだった。
Gyisshaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!!!!!
彼の背後で、何かが鳴いた。
土煙の中から、巨大な影が浮かび上がる。
右翼は半ばもげ、抉れた首もとにはガンランスが深々と突き刺さっている。
生きているのが不思議な状態だ。
しかし、その目だけは、煌煌と輝いていた。
やがて、二匹の竜の目が合う。
瞬間、弾かれる様に彼が飛び出した。
一直線に、ライゼクスに向かって走り出す。
ライゼクスが、迎え撃つように残った左翼を振り上げた。
電気の迸るそれに触れることは、彼の死を意味する。
しかし、彼も無策で飛び込んだ訳ではない。
つまり、
その時、彼はもう一段回スピードを上げた。
今までとは比にならない速さで、ライゼクスに接近する。
不意を突かれたライゼクスの翼は、彼には届かない。
慌てて振り下ろされた翼は、彼のすぐ後ろの地面を抉った。
好機だ。
今、翼を叩きつけた体勢ののまま、ライゼクスの頭は下がっている。
なら、頭に一撃入れられる。
首元に潜り込んだ彼は、ぐっと上体をかがめた。
足の筋肉が膨れ上がり、バネが最大限縮む。
瞬間、バネを解き放した。
高く、高く飛び上がる勢いを利用して、彼は空中で回転する。
お馴染み、サマーソルトキックだ。
遠心力で加速した強靭な尾が、ガンランスに叩きつけられた。
ガンランスは更に深々と突き刺さり、ライゼクスから血が噴水のように噴きだした。
巨体がフラつく。
血の流しすぎだ。
既に首の傷は致命傷であり、命はもう数刻も持たないだろう。
にもかかわらず、その目は剣呑な光を孕んでいた。
その目に、狂気を感じた。
執着にも似た、おぞましい狂気を。
思わず、彼が飛び退いた。
と同時に、ライゼクスの翼が地につき、首が持ち上がった。
禍々しい咆哮と、吹き出す血をまき散らしながら、竜は全方位に雷を放った。
不味い。
彼は、全力で距離を取ろうとした
その時だった。
風を切る音がした。
彼のすぐ傍に、刀が飛来した。
その刃は竜の血で濡れていて、
彼は、現実を呑み込めなかった。
目が離せないでいた。
地に落ちたライゼクスの頭部から。
「ガランさん、コルトさん。無事ですか?」
猛き炎が、彼に迫りくる。
ここをこうしてほしい。ここがよかったなどの感想がありましたら、是非気軽に教えてください!
また、よければ評価、お気に入り登録宜しくお願いします!!