普段ネットで遊んでいる人とオフ会をしてみたらドチャクソ美人が来た件 作:マルシエン
どうもみなさんこんにちは。東北三姉妹の末っ子、東北きりたんです。
私は今オフ会の待ち合わせ場所である駅のホームにいます。
ねえさまたちには「友達と遊びに行ってくる」と言って出てきました。
……一応ネット上の友達と遊ぶ予定なので嘘は言ってません。
さて、今日会う予定の『yukarin』さんってリアルではどんな人なんでしょうか。通話越しの印象だと頼れるけど少し残念なお姉さんというイメージがありますけど、ネットとリアルじゃ全然違うとも言いますからね。
それにしても早く来過ぎてしまいましたね……待ち合わせ時間は11時30分ですが今の時間は念のため数本ほど早い電車で着いたので11時。時間を潰そうにも待ち合わせ場所の駅から出る訳にもいきません。
「あの、『kiritanpo』さんであってますか?」
どう時間を潰そうかと顎に手を当てて悩んでいると私のハンドルネームを呼ぶ声が聞こえてきました。
返事をしようと顔を上げるとそこには黒いパーカーに身を包んだめちゃくちゃ顔のいい女性がいました。透き通った紫髪とアメジストを彷彿とさせる瞳、そして陶器を思わせるような白い肌に私の視線は釘付けになっていました。
「えーっと、もしかして人違いでしたか?」
「あ、いえ、そうです、『kiritanpo』です」
おっと、見惚れていて反応するのを忘れていました。それにしてもマジで美人ですね。顔立ちが整っているというか顔のパーツのバランスが神がかっているというか。私の人生で会った人の中でも三本の指に入るレベルの美人さんだと思います。
「よかったぁ〜。あ、どうも『yukarin』です、ゆかりと呼んでください」
「わかりましたゆかりさん、私もきりたんで大丈夫です」
「それじゃあきりたん、いきましょうか」
そう言うとゆかりさんは私の手を取って歩き出しました。ゑ?
いやまあ異性ならともかく同性ならなんの問題もないんでしょうけど、それでも初対面の人の手をいきなり繋ぐなんて美少女しか許されない行為ですよ?美少女だったわ。ていうか手めっちゃすべすべじゃないですか?
『yukarin』さん改めゆかりさんと無事合流できたので今はお昼ご飯を食べられるところを探しています。手は繋いだままです。私を殺す気か?
ちなみにオフ会にありがちな話が弾まず気まずい雰囲気になるということはなく、ネット上で毎日のように通話していたこともあり打ち解けるのにそう時間はかかりませんでした。
「それにしてもきりたんが小学生だったとは驚きました」
「何歳くらいだと思ってたんですか?」
「えーっと、そうですねぇ……声的に若いほうだとは思ってたんですけど知識量的に少なくとも中学生以上だと思ってました」
……確かに小学校に入るか入らないかの頃からネットに触れていたのでゆかりさんがそう思うのも無理はありません。
「だから声をかける時すごく緊張したんですよ? もし間違ってたらどうしようって」
「まあもし違ってたら完全に不審者さんですからね」
「いやいや、私女の子ですから多分セーフですよ」
「それを加味してもだいぶギリギリだと思いますけど」
というかゆかりさん成人してるのに女の子っていうのはかなり無理があるのではと言いかけてしまいましたが、きりたんは気遣いができる優しい人なのでジト目で抗議の視線を送るだけにしておきます。
そしてしばらく雑談しながら歩いていると不意にゆかりさんが止まりました。どうしたのかと視線を向けるといつの間にかファミレスが目の前にありました。ゆかりさんの手の感触に気を取られていて全然気づきませんでした。
「きりたん、この店にしますか?」
「そうですねゆかりさん、ここにしましょう」
まあ変にお洒落な店に入って味ガチャを引くよりこういったチェーン店の方が味が保証されてますからね。
そうして店に入り店員さんに注文をする時に私はお子様ランチを頼んだのですが、ゆかりさんはサイドメニューのポテトだけを頼んでいました。
「ゆかりさん、ポテトだけしか頼んでないですけど大丈夫ですか?」
「ええ、私は少食なので」
そう言われて改めてゆかりさんを観察してみると、パーカーでハッキリとした体のラインはわからないものの確かに細いように見えます。というか、パーカー越しでも細いって分かるってことは相当華奢なんじゃないでしょうか。
美貌も相まってガラス細工のような儚さが滲み出ています。
「きりたん、どうかしましたか?」
ゆかりさんを見ながらそう考えていると見ていたことに気づかれてしまいました。正直に「ゆかりさんを見てました」と言うのは少し気恥ずかしいのですけどどうしましょうか……。
「い、いえなんでもないです。それよりゆかりさん、メニューが来たので冷めないうちに食べちゃいましょう」
「あ、そうですね、いただきます」
どう誤魔化したものかと考えていると頼んでいたメニューがちょうど来たので少し強引でしたがそちらに話題を持っていきました。
ちなみにお子様ランチはおいしかったです、まる。
ファミレスでお昼ご飯を食べた後私たちはカラオケへ行きました。ちなみに受付でゆかりさんがテンパったりしましたがなんとか入室することができました。
「ふふふ、ついにゆかりさんの歌声を披露する時が来ましたね」
マイクを持ったゆかりさんはそう自信ありげに言いました。そういえば数日前にオフ会で何をするか決める時も候補としてカラオケを猛プッシュしていた記憶があるのでよほど自信があるのでしょう。
「下手だったら演奏中止ボタン押しますからね」
「ひどくないですか?」
まあ何気にゆかりさんが歌うのを聞くのはこれが初めてなのでどのくらい上手いのかは純粋に気になりますね。
タンバリンを持ちながら待機していると曲が流れ始めました。
ってこれ国民的有名な猫型ロボットの曲じゃないですか、これ選ぶ人初めて見ました。
少しして前奏が終わるとともにゆかりさんは歌い始めました。
えっうま……私の友達に現役でアイドルやってる子がいますけどその子と比べても見劣りしないくらい上手いです。
というか顔もいいのにその上歌まで上手いって反則だと思いますよ。
「どうでしたかきりたん、私の歌声は」
歌い終わった後ゆかりさんはそう聞いてきました。うん、めちゃくちゃ上手かったですよ、上手かったですけど。
「いや、上手かったですけど、なんでその曲なんですか?」
「いや、流行りの曲全然知らないので」
「……」
いや、流行り云々の問題ではないと思いますけど……ゆかりさんは中々独特なセンスをしてるみたいですね。
「そ、それより、ほらきりたんも歌いましょう?」
私の視線に気づいたのかゆかりさんが私も歌うように促してきました。
ゆかりさんからマイクを受け取り、あらかじめ選んでおいた曲が流れ始めるのを待ちます。選んだ曲は某エヴァンゲリオンのオープニング曲です。まあ、定番の曲というやつですね。
「上手い……だと?」
歌い終わった後ゆかりさんに目を向けると何故かうなだれていました。
「え、なんでゆかりさんそんな落ち込んでるんですか」
「きりたんに歌が上手いところを見せつけて『すごーい!!』って見直してもらう計画が……」
それは果たして計画と言えるんでしょうか。そしてそれを本人に対して言うのはどうなんでしょうか。
「いやでもゆかりさんの歌もとても上手だと思いますよ」
「ほんとですか!?ありがとうございますきりたん!!」
そう言ってゆかりさんは私に抱きついてきました。えっいや近いですってただでさえ顔がいいんだからそんなの至近距離で見たらやばいですってうわまつ毛長い美人さんだ。てかやっぱりゆかりさん布越しでもわかるくらい細いですねちょっと力入れただけでポキリといってしまいそうで心配ですってかめちゃくちゃ良い匂いする。
「ゆっゆかりさん!?」
「あ、すみません!つい……」
「いや別に怒ってはないですけど……」
すぐゆかりさんが離れてくれたので致命傷で済みましたが……ゆかりさん相当な人たらしなんじゃないでしょうか、それも無自覚の。その顔の良さでスキンシップ多めとか絶対勘違いする人出てくると思いますよ。
「それよりはい、次ゆかりさんの番ですよ」
「え、ええ、そうですね」
少し微妙な空気になってしまったのでマイクを渡してお茶を濁すことにしました。
その後も数時間に渡って代わりばんこに歌ったりデュエットしたりし、店から出るときにはすっかり陽も傾いていました。
他愛のない会話を交わしつつ歩いていると駅に着きました。ゆかりさんとは違う方向の電車に乗るのでここでお別れです。
「きりたん、今日は楽しかったです。ありがとうございます」
「こちらこそ楽しかったですゆかりさん」
最初こそどんな人が来るのかわからなかったので不安でしたが蓋を開けてみれば杞憂で終わりました。ゆかりさんは通話で話して感じた印象とほとんど変わらない人でしたし。ちょっとスキンシップが多くて心臓に大変よろしくないですけど。
「それじゃあきりたん、また遊びましょうね」
「はいゆかりさん、それではまた」
続きません