最初に出会ったスター団のしたっぱがネモによく効く向上心の塊でものすごいアホだった   作:うみじゃけ

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2.それなら俺も《テラスタル》!?旅立ちのマルチバトル!!

 

 

 

—アップルアカデミー 食堂—

 

 

 

「うげえ…………」

 

「いつまでイジけてるんですか先輩」

 

 昼間の食堂にて2人のスター団したっぱが並んで席についていた。

 

 しかし着崩した制服、ヘルメットに星型のゴーグルというあからさまなスター団の衣装なため周りの席には誰もいない。

 

「ほら、ピクルスサンドちょっと分けますから元気出してください」

 

 机に突っ伏したイレギアに彼女が自身のサンドイッチを千切ろうとしたところ、彼から待ったとばかりに手を向けられる。

 

 ちなみに彼女の方はヘルメットもゴーグルもしていない。室内だし。

 

「それは要らねえぜアヤセ。後輩に奢られるほど俺は落ちぶれてないし、与えられた量がビョードーじゃないのはしっくりこない」

 

「はあ……ホント、変なトコでしっかりしてるんですから」

 

「それとピクルスサンドってあんま好きじゃないし」

 

「絶対それが理由じゃん。ていうか昼からピーナッツバターサンドって……」

 

「あー! お前それは食差別だぜーっ!? スター団の掟を破ってるとして何処ぞのボスに言いつけて——」

 

「『デンコウセッカ』ダ!」

 

「ほげえぇぇぇ~~~~っ!!」

 

 イレギアの懐から飛び出たイキリンコが彼の額に『でんこうせっか』を放つ!

 

 後ろの壁にぶち当たったイレギアが額を押さえて蹲った。他の生徒らがちらりと伺うも、大して気にせずそれぞれの会話に戻っていった。

 

「——ったぁぁぁ…………っ!」

 

「どっから出てきたイキリンコ……てかあたしも、出てきてシルシュルー」

 

「シュルシュルー」

 

 こういう時のためかイレギアはヘルメットを被っているのでアヤセもそれほど心配せずに手持ちのポケモンを繰り出す。

 

「ちぇっ……出てこいヤングース」

 

「グー!」

 

 イレギアがイキリンコに軽く舌打ちし、もう1匹の仲間であるヤングースをボールから呼び出し……

 

「指を噛むな!」

 

 出てきて早々に指を噛みつかれる。このヤングースの癖のようなものである。

 

 個性豊かな仲間に翻弄されながらも、イレギアは再び席について両手を合わせた。

 

「「いただきます!」」

 

「イタダキマス!」

 

「グーグー!」

 

「シュルルー」

 

 そうして2人と3匹は各々のサンドイッチにガブリつき、舌鼓を打っては顔を綻ばせた。

 

「それにしても……だ。あのアオイとかいうヤツ」

 

「そういえばさっき食堂の入り口で校長と話してましたね。校長とコネまであるなんて何者……」

 

「それもそうだが——《テラスタル》だ」

 

「《テラスタル》……かあ」

 

 《テラスタル》とは、ポケモンに眠る『テラスタイプ』という固有のタイプを呼び起こす……パルデア固有の現象である。

 

「ネモにせよあのアオイとやらにせよ、《テラスタル》がなけりゃあいつらには勝てねえ……つまりだ! あれがあれば勝てるってことだ!!」

 

「いやいやそれは飛躍しすぎでしょ……」

 

「へっへっへっ……流石に俺もそこまでバカじゃあねえ。策はあるぜ」

 

「……くだらなかったら即イヤホンしますからね」

 

「そんなこたあさせねえぜ。そもそも《テラスタル》の使用には特別授業と、その後の試験に合格する必要がある。まずはそれを宝探しが始まるまでの数日で終わらせる!」

 

「……その方法は?」

 

「死ぬ気で!」

 

「…………アホらし」

 

「おいおいおいおい! イヤホン取れって! ぜってーアヤセって『ザ・ドガース』聞くから周りの音シャットアウトだろ」

 

「そりゃーもちろんですとも! ああホミカ様……その御姿を肉眼に収めてあたしはそのまま安楽死ぬんだ……」

 

「……アヤセにはどく組がお似合いだよ。それよかだ……死ぬ気でやれば人間なんとでもなるんだよ。親父だってそうだった」

 

「親父って……確か先輩のお父さんってタクシードライバーですよね? まあ空飛んでたら命の危険は毎回でしょーけど」

 

「ちがうちがう。そんな程度じゃ済まないことを乗り越えたんだ親父は!」

 

 サンドイッチを腹に収めたイレギアは父親の武勇伝を朗々と語り出した。

 

 

 

 

 

 時は——とにかく過去に遡る……

 

 

 

 

 

「だいぶ曖昧ですね」

 

「うるせっ」

 

 パルデアの大穴の内部にて一人の子どもから連絡を受けたタクシー会社。

 

 泣きじゃくるその子どもを助けたいのはやまやまだが、大人ですら近づくことが困難なパルデアの大穴。とても立ち入れる場所ではない。

 

 

 

「素行が悪かろうが何でもいい! とにかく運転の上手いやつを呼べ!」

 

 

 

「それよか腕っぷしのある奴だ! どうしたって強いポケモンとの遭遇は避けられない!」

 

 

 

「そもそもエリアゼロだろ? 上司が許可出すのか……?」

 

 

 

「それに大穴付近はガブリアスやジバコイルの縄張りだ……万が一そこを抜けたとして今度はエリアゼロ、何が起こるか分かったもんじゃない……!」

 

 

 

 悲痛に叫ぶ彼を助ける気持ちは誰もが持っている。しかしそこへ辿り着くためのあと一歩が出せないでいた。

 

 

 

「——俺が行きます」

 

 

 

 そんな時、一人の男が手を挙げた。

 

 それこそがイレギアの父親であった。

 

「それじゃあ、頑張ってくれよ……!」

 

「はい……! ——やってやるぞ……!!」

 

 命に関わる書類を書きに書き、偉い人との固い握手を交わした彼は肩を震わせて大穴へと向かう。

 

 危険な仕事をこなす理由はただ一つ——『バカなことをしでかしたその子どもに説教をしてやる』ためだ。

 

「俺たちを舐めるなよ大自然!! イキリンコども気合入れろ——【いかく】で弱っちい奴らには近づかせるな! 【はりきり】すぎるくらい張り切りやがれ! 【ちからずく】でこんな奴ら潜り抜けろ! 【こんじょう】で突っ走れええええええええええ!!!」

 

 たかがそれだけのために彼は大穴付近を飛び回るガブリアスから避け、監視するように浮遊するジバコイルから逃げまくった。

 

 大穴の中での出来事を彼は語らないが、イキリンコたちの協力もあって助けを求めた子どもを、深く傷ついた彼のポケモンを救い出したのである。

 

「そのまま近場のポケモンセンターへと再び飛び立った——それを聞いて俺は心の底から理解したよ……人間、ココで決めたことをやり切るためなら、それこそ死ぬ気になれるってな!」

 

 彼は胸を叩いては感極まって泣いてすらいた。

 

 イキリンコはうんうんと頷き、ヤングースは理解しているのか目を輝かせている。

 

 しかし一方のアヤセはどうにも苦い顔をしており……

 

「…………ものすごーくいい話なんですがね?」

 

「なんだよアヤセーっ。親父にまで文句言うもんなら残ってるサンドイッチ食っちまうぞ」

 

「いえいえ……いや、お父さんはそれはもう勇敢で、まさに英雄? ……って方ですけど…………先輩ってむしろその泣きじゃくってる子ども側では?」

 

「なんだとこの野郎!」

 

 イレギアが拳を振りかぶってアヤセに詰め寄り、イキリンコが『でんこうせっか』の準備を、ヤングースが隣のシルシュルーのサンドイッチに手を出し始めていた……その時だ。

 

「なあその話、本当のことか?」

 

 対面の席から一人の青年が話しかけてきた。

 

 立ったままのその青年は彼の上半身ほどの大きなリュックを背負っており、ブロンドの長髪で右目が隠れている。

 

「ん? どーしたよペパー……ああ食堂で騒ぎすぎちまったな、悪い悪い」

 

「先輩、知り合いですか?」

 

「知り合いってか同級生。最近はあんまし学校で見なかったけど……そういや久しぶりだな! 今までどこ行ってたんだよ〜」

 

 イレギアが気さくに声をかけるも、対するペパーの眼光は鋭いままだった。

 

「質問に答えろ。その……タクシードライバーの話、本当か?」

 

「おいおいおいおい……まさかこういう感動話って全部嘘だと思う派か? ファミリー映画見ても泣かないタイプだろー?」

 

「…………質問に答えろ」

 

 ペパーは眉を一層ひそめ、声を一段低くしてイレギアに詰め寄る。

 

「わかったわかったって……茶化して悪かった! 本当だぜ大マジ! 今から親父に電話したっていい! そんくらいマジの武勇伝だっ!!」

 

「……そうか。分かった。ありがとう」

 

 それだけ言い残して、ペパーはその場を後にする。

 

「なんですかあの人。感じわる~……」

 

「まああいつはああいうヤツなんだよ。しかもあいつの——……あっ!!」

 

「うわっ! なんなの次から次に……ちょっと先輩、急にどこ行くんですかー!?」

 

 冷や汗を浮かべるイレギアはペパーの後を追い、食堂の前にて彼を捕まえる。

 

「……なんだよ。話はもうないはずだ」

 

「そっちにとっちゃあな……——すまんかった!」

 

 冷たく突き放すペパーの前で、イレギアは両手を合わせて大きく頭を下げる。

 

「は?」

 

「そっちの家庭環境がちょ~……っとヤバめなのにあのネタは流石にダメだわ……! このとおりっ……!!」

 

「…………ぷっ」

 

 大袈裟に謝るイレギアに、ペパーは思わず吹き出してしまう。

 

「なんだそんなことかよ。別に何も思ってねえから、安心しろ」

 

「そうか? なら良かったぜ! そんじゃ、そっちはそっちでがんばれよ!」

 

「それはそれとして実は——いねえ! せっかくスパイスのこと教えてやろうとしたってのに……まっ、いいか」

 

 見切り発車のイレギアが「悪い悪い」とヘラヘラ笑いながら席に戻る。

 

「急に飛び出して、どうしたんですか一体」

 

「別になんでもねえよ。これはそう……男の会話ってヤツだ」

 

「そんな古風な……」

 

「よっし! 善は急げだぜ! いくぞイキリンコ、ヤングース。早速《テラスタル》ゲットだぜー!」

 

「ゲットダゼー!」

 

「ググー!」

 

「ちょっと先輩! いくよシルシュルー——なんか悲しそうだけど……え? あたしの残ったやつ食べたいの? いいけど」

 

 アヤセも残ったピクルスサンドをシルシュルーに渡した後にボールに戻して、走るイレギアの後を追いかけた。

 

 ……廊下は走るな? ごもっとも。しかし彼らはスター団、不良生徒である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イレギアが《テラスタル》入手のために奮闘して何日かが経ち……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……冒険の始まる日がやってきた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—アップルアカデミー グラウンド—

 

 

 

「それでは、宝探し開始! ……いってらっしゃい!」

 

 クラベル校長が『宝探し』の開始を宣言すると、生徒たちが各々の仲間たちと集まって解散していった。

 

「よーし頑張っちゃうぞー! アオイの成長も楽しみだし、どこまで実るんだろ……!」

 

(実る……?)

 

「見つけた……待ちなーっ! ネモさんよーっ!!」

 

 ネモとアオイが出て行こうとしたグラウンドに駆け込んできたのは2人の生徒……着崩した制服と側面に星の描かれたヘルメット、星型のゴーグルをしている——スター団のしたっぱだった。

 

「なんでっ、あたしも……走ったんだか……っ!」

 

「スター、団……?」

 

「どうせサボりの奴らが今更なんだ? 生徒会長を呼び出したってことは……何か事件か?」

 

「この声どこかで……」

 

「イレギア!」

 

 アオイも含めた生徒がざわつく中、ネモはただ一人声色明るく彼の名前を呼んだ。

 

「こんな時間にどうしたの? ……というか、朝礼に参加しないなんてダメでしょ! あとその顔どうしたの!?」

 

「へっへっへっ……宝探しが楽しみすぎて寝過ごしちまったぜ!」

 

 見ればイレギアの顔はパンパンに膨れ上がっており、彼のヘルメットに留まっているイキリンコが何故かすごく堂々としていた。

 

「『つつく』か、『でんこうせっか』か……」

 

「『デンコウセッカ』ダ!」

 

 アオイのひとりごとにイキリンコはとても誇らしげに翼を広げた。

 

「賢いなあ」

 

「楽しみなのはとってもわかる! けど気を付けるんだよ?」

 

「了解でスター!」

 

 イレギアが服の裾で顔を拭うとすぐさま擦り傷にまで回復。彼が持っていた絆創膏を適当に貼り付けて事なきを得る。

 

「後輩も俺を待ってくれたんだ。こんなに嬉しいことはねえぜ!」

 

(言えない……めちゃくちゃサボる気だったけど、先輩に偶然会ったから思わず追ってきちゃったなんて言えない……!)

 

(……なんか違う理由っぽい)

 

 アヤセが冷や汗を滲ませて目を反らしている姿にアオイはなんとなく事情を察するのだった。

 

「それはともかくよ~……ジャンじゃじゃーん!!」

 

 イレギアが高らかに声を上げながら懐から黒いモンスターボールのような装置を取り出す。

 

「それって……《テラスタルオーブ》!?」

 

「ワタシのものと同じ……本物だ」

 

「宝探しのためにようやくゲットしてやったんだぜ! まずは手始めに! ネモ、お前を蹴散らしてやりまスター! そんでその後はアオイだ!!」

 

 イレギアが2人に指を差して挑戦状をたたきつける。ネモはそれに顔を上気させて期待していたが、アオイの反応はあまり芳しくないようだった。

 

「え~っ、早く冒険に出たいのに~……」

 

「あっ! それならマルチバトルはどう?」

 

 ネモの提案にアオイは小首を傾げ、イレギアは不敵な笑みを浮かべて腕を組む。

 

「マルチバトル?」

 

「へえ……面白いとこ突いてくるじゃねえか」

 

(うわっ、なんか嫌な予感……)

 

 一方のアヤセはこれから巻き込まれることにひとり逃げ出したい気持ちに駆られていた、

 

「うん! 4人のトレーナーが2人組になって戦う形式のバトルだよ! せっかくここには4人いるし……」

 

「…………やっぱりあたしも戦わないとダメですか?」

 

「当然だろ? 俺らのコンビネーション見せてやろうぜ!」

 

「まだ数日の仲なんですけど……」

 

 アヤセの返答を良しと受け取ったか、ネモは嬉しそうに右手を掲げた。

 

「それじゃあ早速始めよっか! 審判は……」

 

「それなら、私がやりましょう」

 

 朝礼台から降りていたクラベル校長が、4人に話しかける。

 

 見ればバトルコートから人々は掃けており、グラウンドの周りに立見席を作り出していた。生徒のみならず、先生も数人見られる。

 

「ハニャ~」

 

 そしてニャオハがクラベルの代わりに台の上でのほほんとしていた。日光浴でもしているのだろう、その光景にアヤセは安らいでいた。

 

(かわよ)

 

「……クラベル校長、あのニャオハは?」

 

 アオイの質問にクラベルは思い切り振り返り、ニャオハの姿を確認すると安心したように溜め息を吐く。

 

「おっと私のです。どうやらいつの間にか出て行ってしまったようですが……あのままでも良さそうですね」

 

 クラベルが咳払いをして「それはともかく」と話を戻す。

 

「それならお言葉に甘えて……行くよアオイ!」

 

「なんだかいつの間にか選択肢がなくってるけど——」

 

「断れるムードじゃないわよねえ……」

 

「よっしゃあ! 2人まとめてぶちかましてやりまスター!!」

 

 戦闘開始に合わせてイレギアが見事なポーズを披露する! ……それを横目に見ながら少し遅れてアヤセが披露し終えた。

 

「みんな! 実りある勝負をしよう!!」

 

 

 

 

ポケモントレーナーの ネモと アオイに 勝負を しかけた!

 

 

—BGM 戦闘!スター団—

 

 

ネモ●●○○○○&アオイ●●○○○○

VSイレギア●●○○○○&アヤセ●●○○○○

 

 

 

 

「うんうん。やっぱこのBGM良いわ~」

 

「どこから流れてるんだろ」

 

「いけっ、ホゲータっ!」

 

「っとと、出番だよクワッス」

 

 元気よくネモがホゲータを、そして平静なアオイがクワッスを繰り出す。

 

「任せたぜヤングース!」

 

「お願い、ウパー!」

 

 続いてイレギアがヤングースを繰り出すが、アヤセの繰り出したウパーを訝し気に眺めていた。

 

「……ウパーだあ? いつの間にゲットしたんだよ!」

 

「そりゃあサボ……先輩が授業受けてる間、暇してたんですから仲間だって増えますよ」

 

「そっか! まあそういうこともあるわな!」

 

(こんなんで納得されんだ……)

 

「それでは勝負……始め!」

 

 クラベルがその手を下ろした瞬間、イレギアは白い歯を見せびらかせ、懐から《テラスタルオーブ》を取り出した。

 

「開幕速攻! 初の《テラスタル》はお前に決めたぜヤングース!!」

 

「おっ、さっそく来ちゃう!?」

 

 ネモが楽しそうに期待する中、イレギアはヘルメットに付けていた星型ゴーグルを装着し、嬉々として《テラスタルオーブ》のスイッチを起動した! 何が起こるかよく分かっていないが、アヤセも続いてゴーグルを装着する。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおお————っっ!!?」

 

 オーブから突風が吹き荒れ、さらに眩い光の奔流が収束していく。

 

 暗くなったグラウンドの中、イレギアは両手でしっかりとオーブを握りしめて離さまいと食らいついた!

 

「先輩っ!?」

 

「——だらっしゃああああああ! 受け取れヤングースゥ~~~~ッ!!」

 

 勢いよく投げられた《テラスタルオーブ》からエネルギーが解放され、受け取ったヤングースの中のテラスタイプが覚醒する!

 

「ググググー!!」

 

 大きなダイヤモンドのような冠——ヤングースはノーマルタイプに《テラスタル》

 

「うっひょーっ! 何度見ても眩しーぜ!! ぶっかましてやれヤングース! クワッスに『たいあたり』っ!!」

 

 イレギアの真っ直ぐな命令に従い、ヤングースは体内のノーマルエネルギーを更に活性化させてクワッスへと突っ込んでいく!

 

「いいねいいね! ホゲータ、『ひのこ』で妨害!」

 

「クワッス、向かい討って『みずでっぽう』!」

 

 相手の2匹は考え無しに突撃してくるヤングースに向けて総攻撃を仕掛ける——

 

「まったくもー……ウパー! 庇ってあげて!」

 

 ——しかし赤と青の射線に入りこんだのは泥色……アヤセのウパーが2つの攻撃を同時に受け止める!

 

 攻撃の衝撃で砂埃が発生。その煙の中、ただ一直線に突っ込んでいたヤングースがクワッスの眼前に迫っていた!

 

「グガー!!」

 

「クワワッ!!?」

 

 自分とほとんど同じ体重のヤングースの全力の『たいあたり』! クワッスはバトルコートの端にまでふっとばされてしまう!

 

「やるねえ……ふふふっ」

 

「助かったぜアヤセ! 流石スター団の絆っ!」

 

 ネモは初めてのマルチバトルに心を躍らせ、イレギアは確かに感じる友情に胸を高鳴らせていた。

 

「まさかこんな戦い方が……でもウパーの方は——」

 

 アオイがふと視線を向けた場所の砂埃が晴れ、その中心地に居るウパーが姿を表すが……

 

「そうでも、なかったり~?」

 

「ウパー!」

 

「ちょっとしか効いてない? そっか、特性が……!」

 

 アオイの指摘に『来た!』と言わんばかりにアヤセがゴーグルを外しながら堂々と口を開く。

 

「そーよ! あたしのウパーは【ちょすい】……あんたの攻撃の分、みずタイプの技で回復してやったんだから!」

 

 ヤングースがウパーの傍にまで戻って再び体勢を整える。

 

「どうやら一筋縄じゃ行かないみたいだね……」

 

「だね! ……でもっ、わたしたちも負けてられないよ!」

 

「もちろん!」

 

 ネモがアオイを鼓舞すると、当たり前だとばかりに彼女は頷いて見せた。

 

(それに……)

 

 そんな中、ネモはふと周囲に目を配っていく。

 

「やれやれー! スター団たちー!」

 

「これってもしかして……もしかするんじゃない!?」

 

(わたしのポケモン勝負で歓声が上がってる! 懐かしい感覚っ……全力で戦いたい!)

 

 ネモの口元が自然と緩み、笑顔を形作っていた。

 

 こんな勝負が、もっとたくさん出来るようにと祈って——

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——そして……

 

「ぐおー…………戻れ、イキリンコ」

 

「モドレ、イキリンコ……」

 

「そこまで! 勝者、ネモさんアオイさんチーム!」

 

 

ポケモントレーナーの ネモと アオイに敗北した……

 

 

「あたしも《テラスタル》すれば……?」

 

「ちっくしょーっ! あともうちょいだったのによーっ!!」

 

 結果はネモとアオイの大勝利。アオイに至っては1匹もポケモンを倒されずに勝ち星を上げた。

 

「ま、結局こうなるよな」

 

「行こ、宝探しに出遅れちゃったし……」

 

 実にあっけない最後だったらしく、観客の生徒たちはため息まじりにグラウンドから出ていく。

 

 それでも少なからず賞賛の声はあり、拍手もまばらながら響いている。

 

「いい勝負だったね!」

 

 うっすら汗を浮かべたネモがイレギアにまで足早に近づき、彼へと握手を試みる。

 

「ああ! だがっ、次は俺が勝ってやるからな! そんなわけでお疲れ様でスター!!」

 

 彼は手早く握手を交わすと、捨て台詞を吐いてグラウンドから飛び出していった。

 

「ちょっ、ちょっと置いてかないでくださいよ先輩ー!」

 

「またっ! 勝負しよーねー!!」

 

「おーう!」

 

 ネモの両手を大きく振った大声に応えるようにイレギアは一瞬だけ振り返って叫びながら姿を消してしまっていた。

 

「うん……! それじゃっ、わたしたちも行こっか宝探し!」

 

「うん!」

 

「2人とも、お気をつけて」

 

「「はーい!」」

 

 クラベルの言葉にネモもアオイも笑顔で返事をするのだった。

 

 

 

—アップルアカデミー 校門前—

 

 

 

「よーし! まずはジム攻略! ここから一番近いセルクルタウンまで頼むぞモトトカゲ!!」

 

「アギァァ!」

 

 イレギアから放たれたモンスターボールよりモトトカゲが現れる。

 

 首元にハンドルだけが取り付けられていたが、おそらくこの宝探しでバチバチに改造されるのだろう。

 

「…………」

 

 しかしアヤセはモトトカゲを繰り出さなかった。

 

「……どーしたよアヤセ。見送りならサンキューな!」

 

「いやあ、その……」

 

「もしかして一緒に来てくれるのか!? そりゃあ心強いぜ!」

 

 イレギアの真っ直ぐな視線を向けられてアヤセは俯きながらあれこれ目を泳がせる。

 

「ま、まあそういうことになりますね……正直、先輩にはスター団に入れてくださった恩が……いや恩って言えるだけのことはしてもらってませんけど、ひとりぼっちの学校生活のあたしを気にかけてくれてることは嬉しいですけど……その…………」

 

「なんだようじうじうじうじ……アヤセらしくねえ。それに助けたのはスター団としてトーゼンなことだぜ? まあその本分を知らねえヤツは結構いるみたいだがな!」

 

「ははぁ……そんな先輩に、えと、さらに迷惑かけるかもですけど…………——モトトカゲってリーグに申請して借りるんですね」

 

「そりゃあな。元々持ってるヤツ以外は…………なるほど」

 

「あはは……それで…………あの……」

 

 アヤセのひきつった笑みを受けるも、しかしイレギアはサムズアップを彼女に見せつける。

 

「もちろん! 困ってる後輩の頼みは答えまスター!!」

 

「マスター!!」

 

 アヤセの煮え切らない態度にイレギアは迫真のスター団ポーズで返事をする。イキリンコもいつの間にか彼の頭に留まって真似ていた。

 

「面白そうだぜ二ケツでパルデア制覇! それに考えてみたら、ポケモンだけに俺の輝かしい軌跡を見せるのは偲びねえ……もっとちゃんとした観客が必要だ!! なんせ、俺の宝は『人気者になること』だからな!!」

 

「先輩…………こういう時は、やっぱり先輩みたいのが居てくれて良かったって思いますよ。こういう時だけは」

 

「しょっちゅう思ってろ! まあいいや……よっしゃモトトカゲ! 2人分頑張れよーっ!!」

 

「アギャギャ!!」

 

 四足歩行になったモトトカゲにまずはイレギアがどかっと座ってハンドルまでの距離を調整する。その数秒後にはアヤセへと手を差し伸べる。

 

「見せてやるぜ! キラッキラな青春ってのをよっ!!」

 

「……それ、あたしを勧誘した時にも言いましたよね? ——うわっ」

 

 アヤセは苦笑まじりに彼の手を取り、思いっきり引かれたのに少し驚きながらも彼の後ろに陣取った。イキリンコはイレギアの頭に留まっている。

 

「名言は使ってこそだぜ。そんじゃゴーグル装着! ——痛ってえ!」

 

「そんな引っ張るからですよ。……装着!」

 

「ソウチャク」

 

 してはいないが、イキリンコは敬礼のポーズを取る。

 

「見てろよネモにアオイ、そしてその他のヤベーヤツら!! 俺様が通るぜえぇぇぇぇぇぇ————!!」

 

「アギャ〜〜〜〜っ!!」

 

 号令に従ってモトトカゲが駆け出す!

 

 アヤセが振り返ると、そこにはアップルアカデミーの校章が……緑色を基調としたリンゴが門に飾られていた。

 

(特に思い残すこともないけど、とりあえず……いってきます)

 

 

 

 

 

 ——かくしてそれぞれの冒険が始まった。

 

 

 

 

 

 それぞれの想いを胸に、それぞれの宝を探しに、広大なパルデア地方での物語が幕を開ける!

 

 

 

 

 

「階段はポケモンから降りてくださ〜い」

 

「…………ウッス。——ほげぇっ!!」

 

「ああ……(ついていく人、間違えたかなあ)ナイスイキリンコ」

 

 大体はこんな調子である。




イレギアの父親の元ネタ https://youtu.be/Mil51afXSVY

アヤセちゃん要るのかって? ……一人旅ってなんか寂しいじゃん。それとナレーションでイレギア君のバカさ加減にツッコミいれるのもいいけど、やっぱりその場にいる人が対応してほしい感がある。この2人でのカップリングは成り立たせない(迫真)
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