最初に出会ったスター団のしたっぱがネモによく効く向上心の塊でものすごいアホだった   作:うみじゃけ

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5.作品初勝利!?重ねた自分と大空のヌシ!

 

 

 

—セルクルタウン 西ポケモンセンター前—

 

 

 

 あの後、ネモとイレギアはポケモン勝負をする予定だったのだが、ヤングースが眠ってしまったことを思い出したためその日はそのまま解散することになった。

 

 そうして次の日、朝っぱらから集まったから集まった2人はジムに向けて特訓を重ね……そうして昼まで時間が過ぎていった。

 

「よおし……昼飯補充完了! ありがとなネモ、朝から付き合ってもらってよ!」

 

「ううん全然っ……えと、うんっ、そのままジム戦も頑張ってね……!」

 

「……? どーしたよ。なんかこう……なんか」

 

 イレギアが訝しむネモの表情はどこか照れているように赤く、しかし彼女は踏み込んでくる彼を拒むように両手を振る。

 

「いや~……ちょっと疲れただけだよっ! わたしってこう見えて体力は無い方でさ~」

 

「へーそうだったんだなっ、ともかく助かったぜ! これなら次のジムも……いやいやいやいや! 最後のジムまで突っ走れるぜ!」

 

「良かった~。それじゃ、先に行ってるから!」

 

「へっへっへっ……見てろ、すぐに追いついてやるからなっ!」

 

 

 

—セルクルタウン バトルコート—

 

 

 

「あらあら~、一日ぶりですね~」

 

「おっ、俺のこと覚えてる! これはパルデア制覇の第一歩だな!」

 

 数時間後、イレギアは前回の成果もあってジムテストを免除してもらった上でジムリーダーのカエデに挑んでいた。

 

「そりゃあスタートの位置でゴールする人がいたら誰だって覚えますよ」

 

 後から合流したアヤセが観客席で肩を竦める。

 

「そんで残念ながら一日前の俺とは全く違うぜ! 舐めてかからず痛い目見せてやりまスター!」

 

 気合を入れるため、イレギアは迫真のスター団ポーズを披露する!

 

「では、羽化したあなたを見せてくださ~い!」

 

 

 

 

ジムリーダーの カエデに 勝負をしかけた!

 

 

—BGM 戦闘!ジムリーダー—

 

 

カエデ●●●○○○VSイレギア●●●○○○

 

 

 

 

「まずはこの子ですよ。出てきてマメちゃん!」

 

「リベンジだぜ、出てこいイキリンコ!」

 

「それでは、勝負……開始!」

 

 審判の宣言に開幕速攻を仕掛けたのはカエデだった。

 

「対策できているか見てみましょう。マメちゃん、『いやなおと』!」

 

「さっそくあの技だぜ、『ものまね』!」

 

「もっ……『ものまね』!?」

 

 攻めて攻めて攻めまくるイレギアの戦闘スタイルしか見ていなかったため、唐突に飛び出た変化技にアヤセは驚きを隠せなかった。

 

「メメメメ……!」

 

「キァーッ!!」

 

 『ものまね』は相手が最後に使った技を少しの間だけ使えるようになる技——それによってイキリンコは一時的に『いやなおと』をコピー! 2匹のポケモンによる大合唱が響き渡った!

 

「うるさっ……!」

 

「なるほど~」

 

「へっへっへっ……どーっすか!」

 

 アヤセを含めて観客の中にはその騒音に耐えきれず耳を塞ぐ者も多かったが、バトル中の2人は平然としていた。カエデに至っては不敵な笑みを浮かべるイレギアを関心している。

 

「マメちゃんの『いやなおと』を『いやなおと』でかき消す……なかなか面白い作戦ですね~」

 

(かき消してない! ぜんぜんうるさいんだけど!?)

 

「メッ……メメメッ!」

 

「キァーッ……キァーッ!」

 

 加えてイキリンコはじりじりとマメバッタに近づいていた……!

 

 マメバッタの『とびつく』は助走が必要な技なためあまり近づかれてしまうと確かな威力が出せず、相手から手痛い反撃を受けてしまう。

 

 しかし間合いを広げようとしてもジリ貧になるだけ……故に、2匹の距離が一畳分にまで狭まったその瞬間——

 

「『ダメおし』!」

 

「『つばめがえし』!」

 

 号令が同時に叫ばれる! 双方、『いやなおと』の中から指示を受け取り、ほぼ同じタイミングで音を止めて攻撃を仕掛ける!

 

 イキリンコへと襲い掛かるマメバッタ! 対するイキリンコがひこうエネルギーを纏った翼を振り上げる!

 

 ——しかし一瞬早く放たれたその翼撃はマメバッタに掠ることなく、あくエネルギーの頭突きを受けることを待つのみに……

 

「『ツバメガエシ』!」

 

「メバッ!?」

 

 しかしその翼が瞬時に翻され、返しの攻撃が見事マメバッタに命中! これこそが『つばめがえし』!

 

 マメバッタの防御を捨てた肉体に弱点タイプの張り切った攻撃が襲い、たまらずバトルコートの端まで吹っ飛ばされてそのままダウン!

 

「マメちゃんっ……ゆっくり休んでくださいね」

 

「どうだ! まず1体!」

 

「ド……ドーダ」

 

「イキリンコも休憩だ、助かったぜ。今は休んでろ」

 

 イレギアが労いの言葉とともにイキリンコをボールに戻した。

 

「なかなか強くなってるようですね~。次はこの子ですよ、頑張ってタマちゃん!」

 

「タマンチュラか。次も油断ならねえ……出番だぜコイキングゥ!」

 

「コイキングを!?」

 

 『油断ならない』との前置きから出てきたのはまさかのコイキング。まさかの選出にアヤセは声を上げて驚く。

 

「コゴゴ……!」

 

 コイキングも気合が入っているのか、コートを跳ねる姿にはいつも以上に活気があった。

 

「違いがわからん」

 

「今度はどんな対策を見せてくれるんですか~? タマちゃん、『いとをはく』!」

 

「もちろん攻略法は出来てる……コイキング! 『はねる』!」

 

「『はねる』って……なん——」

 

 疑問を口にするより先に、アヤセはその攻略法を目撃することになった。

 

 タマンチュラから放たれる網のような蜘蛛の糸……それをコイキングは一段と強くコートを全身で押し返し、前進しながらそれを避ける!

 

「ただ跳ねるだけ……それだけで十分! こいつの『はねる』は崖すらも超える、なら攻撃を避けるくらい余裕なんだぜ!!」

 

「そんな無茶な……」

 

 しかしその無茶を目の前で見てしまったため言い返すことはできない。

 

 これもネモとの訓練による成果だった。

 

 『いとをはく』に対しては避けるのが正解……それは2人の共通認識だった。素早い動きで翻弄して隙を突いて攻撃する、とても単純なことである。

 

 本来はイキリンコが『でんこうせっか』で避けながら攻撃するのが最適解なのだが、先の戦闘で疲弊した状態で行なうには難しいだろうと判断した。

 

 ——そこで白羽の矢が立ったのがこのコイキングである。

 

 少々メタ的な話になるが、コイキングのすばやさ種族値は驚くべきことになんと80——実はあのカイリューと同速である。ものすごくつよそう。——ブーピッグとも同速である。なんともいえない。

 

 イキリンコの方が速い(92)のだが、それでもコイキングのスピードがあれば放たれた糸を避けることなど造作もない。イレギアが向きを指定するだけで見てから回避が可能である。

 

「もう目の前だぜ! コイキング、『たいあたり』だ!」

 

「コゴゴ……ッ!」

 

 どことなく勇ましい顔立ちのコイキングから繰り出される渾身の体当たり! 防御に優れ、緩衝材にもなるタマンチュラの糸玉にも響く攻撃であった。

 

「チュラ……!」

 

「これまたすごいですね~。それではタマちゃん、『むしくい』で攻めちゃって!」

 

「怯むなコイキング! 『はねる』で引きはがして『たいあたり』!」

 

 

 

 

 

 そうして攻撃しては反撃を受け、それに反撃しては離れてを繰り返していき……——

 

 

 

 

 

「コゴッ……!」

 

 コイキングが倒れた。

 

「ええっ、結局……?」

 

「頑張ったなコイキング!! 後は任せたぜイキリンコ!」

 

 その後、イキリンコが『つばめがえし』1発でタマンチュラを突破する。

 

「最後の1匹になってしまいましたが、この子の対策は出来てますか~? 出番ですよ~ヒメちゃん!」

 

 最後に繰り出されるのはむしタイプに《テラスタル》するヒメグマ。イレギアは返事をする前に不敵な笑みを浮かべていた。

 

「対策? へっへっへっ……そんなのあるか! 《テラスタル》でブチ抜くしかねえぜ!!」

 

「それではクマちゃんも……羽化した姿を見せちゃって~!」

 

 2人同時に《テラスタル》! イキリンコはひこうタイプに、ヒメグマはむしタイプにそれぞれ《テラスタル》した!

 

「全力でぶち込めイキリンコ! 倒れても後ろに仲間がいるからよ……ぶっかませ『つばめがえし』ッ!」

 

「『ツバメガエシ』!」

 

「わたしたちも行きますよ~! クマちゃんっ、『れんぞくぎり』!」

 

「ヒメ————っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——最後の砦に立ち向かって数分後……

 

「ヤングース! トドメの『しっぺがえし』だあ!!」

 

「グゥゥゥ————ッ!!」

 

 奮い立ったヤングースの一撃がヒメグマに襲い掛かった!

 

「ヒ……メぇ~……」

 

「やっ……た……?」

 

 倒れたヒメグマをイレギアは固唾を飲んで見守っている……。

 

「ヒメグマ、戦闘不能! よって勝者、チャレンジャー・イレギア!」

 

 

ジムリーダーの カエデに 勝利した!

 

 

「よっしゃあああああああああああああああああ!!!」

 

 イレギアの魂からの勝利の雄叫びが周囲に響き渡る!

 

 『いやなおと』とは違って耳を塞ぐ者はおらず、観客もカエデも彼に万来の拍手を送っていた。

 

「グッググー!!」

 

「いっでえっ!! でも今回は許してやるぜえ!! ありがとうなみんなあーっ!!」

 

 ヤングースが喜びにイレギアを物理的に噛み締め、そんな彼らにアヤセも観客席から現れる。

 

「おめでとうございま……いや先輩っ!? 血っ、肩から血が出てますよっ!?」

 

「やられてしまいましたね~。それではっ、あなたの健闘を讃えて——バッジと、お菓子のプレゼントで~す!」

 

「ググー!?」

 

 お菓子という言葉にヤングースは目を輝かせるのだった。

 

 

 

—西1番エリア—

 

 

 

「よおし! だいたいこの辺だな〜?」

 

「この辺って……ただの急斜面しか見えないじゃないですか」

 

 ご褒美のカップケーキを食い終えたイレギアたちは、『行きたい場所がある』という彼のもとモトトカゲを走らせる。

 

 そしてそこは——

 

「実はこの辺には大空のヌシってやつがいるみたいなんだよ」

 

「ああ確かそんな噂ありましたね。なんでも空から岩を落としてくるって……」

 

 

 

ゴトゴトゴトゴト…………

 

 

 

「…………いやな予感が」

 

 

 

ゴトゴトゴトゴト……!

 

 

 

「おでましだぜ……!」

 

 

 

ゴドゴドゴドゴドッ……!!

 

 

 

 坂の上から巨石がいくつも転がってきた!!

 

「うわああああああああああ!!!」

 

「ぶっ飛ばせモトトカゲ!!」

 

 アヤセの絶叫もなんのその、イレギアは意気揚々と目の前の巨石に向けて指を差していた。

 

「いやいやなんでですか!!?」

 

「アギャー……?」

 

 モトトカゲは背中に乗っている2人の意見の違いに進むべきか逃げるべきか戸惑ってしまっていた。

 

「決まってんだろ!? ヌシなんて珍しいポケモンを捕まえたら人気者になれるかもだ——ほげぇっ!!」

 

「ナイスイキリンコ!! モトトカゲ! 逃げて! はやくっ! はやくはやくっ!!」

 

「アッギャ!」

 

 イキリンコの『でんこうせっか』を顔面に食らったイレギアの代わりにアヤセがハンドルを握ってモトトカゲに指示を飛ばす——巨石はもうすぐそこまで迫ってきていた!!

 

「うわあああああああああああああ!!」

 

 

 

 

 

「はぁ…………はぁ…………し、死ぬかと思った……」

 

「なんでだよ〜。いい作戦だったろ?」

 

「巻き込むな! もうっ、行くなら先輩1人で行ってくださいよ……!」

 

「う〜む……それもそうだな!」

 

「えっ」

 

「そんじゃあなアヤセ! ゲットできたら連絡してするわ〜!」

 

 そう言ってイレギアはアヤセをおいて、1人モトトカゲを走らせるのだった…………

 

「えっ、ええっ…………」

 

 アヤセは小さくなっていく2つの姿をただただ見送る……イキリンコも止めるつもりはないようだ。

 

「どうしよ……なにしよ……」

 

 午後の予定がすべて無くなってしまった。

 

 明日の予定も無ければ、今すぐ遊べるような友達などそもそもいないアヤセに急激な虚無感が押し寄せる。

 

 少しの間その場で突っ立っていると……ふと、イレギアの言葉を思い出す。

 

「…………学校、行こうかな」

 

 

 

—アップルアカデミー 1ーD—

 

 

 

「はい、それでは今回の数学の授業を終わりにします。復習も予習も、キッチリやってくださいね」

 

(おっ、終わったあ……)

 

 彼女にとって、実に久しぶりの授業だった。

 

(先輩にバカにされないように真面目に授業は受けてみたけど……あれっ、こんなにあたしって勉強できなかったっけ……? そもそも先生の名前も分かんないし……)

 

 イレギアに誘われてスター団になって以降、勉強なぞ手つかずだったためにここまで苦しむことになってしまった。

 

(めんどくさいけど、しっかり勉強もしないとかなあ……親のため、なんて……今まで考えたこともなかったけど、まあ……ちょっとは頑張って見ようかな)

 

 次の授業の教室まで足を運んでいると……周囲から囁くような声が聞こえてくる。

 

「スター団だ……」

 

「なんで不良生徒がここに?」

 

「さあ……わかんねえけど、授業受けてたぜ……?」

 

「授業受けるスター団って……なんか僕、心当たりある」

 

「私も……あの変人さんの知り合いとか?」

 

(うわあ……先輩ってこんなに有名人だったんだ。悪い意味で)

 

 ただしイレギアとは違って、アヤセはちゃんとヘルメットとゴーグルは外して受けていた。2つとも持ってはいるが。

 

(なんで先輩はつけっぱなしで受けてるのさ……)

 

 ごもっともな意見を頭に浮かべながら、生物室へと廊下の角を曲がって……

 

「あっ、アヤセちゃん。こんにちは!」

 

「あっ、ああ、えと……こ、こんちわ……」

 

 そこでネモがとても元気な表情で挨拶してきたため、アヤセは少々面食らってしまう。そしてアカデミーに来て初めての発声であった。

 

(同年代だけど、やっぱりネモさんって変に緊張しちゃうなあ……まあ人と話すときってだいたい緊張するけど、ネモさんはなんか、特別に……)

 

「……? あれ、イレギアは一緒じゃないの?」

 

「あー……先輩はその、バカやってて、今は学校には……——ん?」

 

 どう伝えたもんかと悩みながら掻い摘んで説明していると、だんだんとネモの顔がなんとなく暗くなっていく。

 

「ど、どうしましたか……?」

 

「う、ううんっ。なんでもないよ! イレギアによろしくね……!」

 

 少し悲し気にネモは別れを告げる……同時にその顔は、寂し気でもあった。

 

(…………)

 

 その表情をアヤセは見覚えなどなかったが、それでも気がかりだった。

 

「あっ、あの……!」

 

 ——きっとあたしは先輩と出会う前、そんな表情だったんだと思うから。

 

「ん……何かわたしに用があったり?」

 

 ——ほっといたら、先輩に怒られる……と、思う。

 

「あ、いや、用っていうか……その…………あたし、この後も授業あって、それで今日はそれまでなんですけど……えと……」

 

 アヤセは自分の意見を口下手に言葉として紡いでいく。

 

「その後でよろしければ……ポケモン勝負、一緒にどうですか?」

 

 たどたどしく告げられたその言葉にネモの顔がぱあっと明るく染まった。

 

「えっ、いいの! うんわかった! 全然待つよっ、わたしもまだ授業あるからさっ! それが終わったら連絡して……ってそうだ、連絡先交換しようよ!」

 

「え、あっ、はい……」

 

 アヤセはスマホロトムを操作して……スカスカの連絡先を横目に、ネモと連絡先を交換するのだった。

 

「それじゃ! またね〜!」

 

「はっ、は〜い…………」

 

 ネモは再び弾けるような笑顔になったままアヤセにもう一度別れを告げる。それにアヤセはまた面食らってしまった。

 

(つい言っちゃった。でも…………先輩ぶりだな、この学校で誰かの連絡先入れたの)

 

 彼女の心にも、何か——足りなかったものが埋まる、そんなあたたかい何かが生まれたような気がした。

 

 

 

—西1番エリア—

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! まだまだあ! いけるいけるゥ!!」

 

「ギャッギャー!」

 

 一方、こちらドアホ。

 

 アヤセと別れたイレギアはより一層バカになり、巨石の転がる坂をモトトカゲで駆け上がっていた。

 

 1人と1匹の傷だらけになっている姿から、何度もアタックしては吹っ飛ばされているらしい。なぜ生きている。

 

「ぐわあああああああああああああああ!!!」

 

「アギャーッ!!」

 

 そうしてまたもや吹っ飛ばされて坂の底に突き飛ばされてしまうのだった。

 

「ちっくしょ~……!! おっしも一度やってやるぜ!!」

 

「アンギャス!」

 

 坂の上から嘲笑が聞こえてきそうなほど突撃しては吹っ飛ばされてを繰り返すも、1人と1匹の目からは闘志が消えていなかった。

 

「キィーッ!」

 

「おうイキリンコ! どこいってたのか知らねえけど戻ってきたのか! ……んん?」

 

 どこからか現れてイレギアの頭に留まったイキリンコ……そして、それを追いかけてきたのは——

 

「お前は……確か、イレギアだったか? なんだってこんなところに?」

 

 おそらくイキリンコが連れてきたであろうペパーがとても訝しげな視線でイレギアを突き刺した。

 

「ペパー? お前こそなんでここに……——まさかっ、お前もヌシをゲットしようってのか!? へっへーん! そんなら譲れねえな! ヌシを賭けて俺と勝負だスター!」

 

「ポケモン勝負はしねえ。ポケモンをむやみやたらに戦わせたくないからな」

 

「そっか。ならどうやって決める? 腕相撲とかか?」

 

「いや……そもそもそんな傷だらけちゃんのヤツと勝負も何もないだろ。オボンのみでも食うか? モトトカゲの分もあるが……」

 

「おっ! そんならありがたくいただきまスター!」

 

「アギャッギャー!」

 

 イレギアとモトトカゲがペパーからオボンのみを受け取るや否や一気にかぶりつく。ペパーは食欲旺盛なその姿にどこか微笑ましく見ていた。

 

「あっ、見つけた! おーいペパー……と、うわあ。モトトカゲの方もなんか被ってるし……若干コライドンっぽいやつだし……」

 

 そこへ近づいてきたのは全速力で駆けるコライドンと、それに乗ったアオイだった。

 

「んが? っほほお! あほいはへひはほは!」

 

「口にもの入れたまま喋んな。ちゃんと呑み込んでからにしろ」

 

「——っぐっと! すまねえペパー。で……またも会ったなアオイー! そんでコライドン!!」

 

「アギャス!」

 

「アギャアギャ!」

 

「アギャー!」

 

「なんか共鳴してる……」

 

 アオイが下りたのを確認したコライドンはオボンのみを食べ終えたモトトカゲとじゃれ合い始めた。コライドン自身、モトトカゲが被っているウォーボンネットに興味深々の様子だった。

 

「あっと……この会話を引き剥がすのはちょっと可哀そうだなぁ」

 

「へっへっへっ……それなら俺と勝負してもらおうか!」

 

「ショーブ! ショーブ!」

 

「いや、なんでだよ」

 

 イキリンコも意欲的に挑んでくる光景にペパーは思わず肩を竦めてしまう。

 

「アオイがペパーに用があるってことは、アオイもヌシをかっさらいに来たんだろ? そんなら同じくヌシを狙う俺と戦わなけりゃ、この先には進めねえからなあ~!」

 

「…………どういうこと?」

 

 アオイがペパーに耳打ちしてひっそりと2人で会話を始める。

 

「なんつーか知らねえけど、ヌシをゲットするんだとよ」

 

「……なるほど。ワタシたちの用とはちょっと違うけど、ひとまずバトルかな」

 

「すんのか? 正直、ほっといてもいいと思うぜ?」

 

「それはそうなんだけど……なんかヒントもらえそうだし」

 

「ヒント? ……まあいいか。お前がやりてえってんならちゃっちゃと済ませてくれ」

 

「ありがとっ」

 

 諸々の会話を終えたアオイがモンスターボールを構える。

 

「おいおいおいおい……この俺に勝てる気でいるなあ~? 俺を舐めてると痛い目見ちゃうぜ~!」

 

「ミチャウゼー!」

 

「どこかで聞いたようなセリフ……?」

 

 終始押されっぱなしのアオイと肩を竦めるペパーに向けてスター団ポーズを披露する!

 

 

 

 

 

敗北! 全カット!

 

 

 

 

 

「ちっくしょー!! また負けたぜー!!」

 

 最後のポケモンをボールに戻したイレギアが地面に寝っ転がって大いに悔しがっている。

 

「アオイにとっては楽勝ちゃんだったんじゃねえか?」

 

「そうも言えない強さかも……また1体倒されたし」

 

「——だがっ!」

 

 アオイがイレギアの戦力分析をしている傍ら、イレギアが気分を切り替えて飛び跳ね起きる。

 

「これはアオイに負けたんじゃねえ……ペパーとアオイの2人の熱意に負けたんだ! 仲間と集まることで真価を発揮するポケモンも居るみたいだからなっ! へっへっへっ……今日のところはそれに免じて負けておいてやる!」

 

「なんだそりゃ?」

 

「仲間と集まって……ヒントになりそう」

 

「そんならお疲れ様でスター! ——覚えてろ~!!」

 

 ペパーがまたも困惑しているうちに、イレギアがお別れのスター団ポーズを決めてモトトカゲに乗り込んだ。

 

「オボエテロー!」

 

「アンギャギャース!」

 

「おいちょっと話をっ……! ……行っちまったぜ。なんならスパイス集めも手伝ってもらいたかったんだかな」

 

「まあ、ああいう人だし……2人でがんばろっか」

 

「……そうだな」

 

「アンギャギャース!」

 

 コライドンはモトトカゲに再会の約束を叫んだ。

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