最初に出会ったスター団のしたっぱがネモによく効く向上心の塊でものすごいアホだった   作:うみじゃけ

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前回の終わりに引き続いてネモとのバトルからです。


7.カチコめチーム・シェダル!お前の頭が真っ赤に燃える!

 

 

 

—ボウルタウン 東ポケモンセンター前—

 

 

 

「決めるぜ《テラスタル》! ここで勝てば俺らの栄光は確実でスター!!」

 

 ネモとイレギアのバトルは佳境を迎えている。しかしイレギアはラスト1匹であるタツベイに対してネモは2匹目のナミイルカを繰り出していた。

 

 それでもイレギアは諦めることなく《テラスタルオーブ》をタツベイへと放り投げる! テラスタルエネルギーを受けて、タツベイのテラスタイプが覚醒する——!

 

「タッベ————————イッッッ!」

 

 竜の頭を模した冠——タツベイはドラゴンタイプに《テラスタル》

 

「イルル……」

 

「焦らないでっ、『みずのはどう』!」

 

「ぶっかませ! 『りゅうのいぶき』ッ!」

 

 2匹のポケモンの口にみず、ドラゴンタイプエネルギーが収束していき……!

 

「ルッカァァァ————————ッ!!」

 

「ベェェェェ————————イッッッ!」

 

 一斉に放たれた波動と息吹がぶつかって砂煙を発生させる! フィールドに一時的に煙が立ち込める。

 

「まずっ……うわっ!」

 

 押し寄せる風と煙の波はトレーナーたちの視界も封じてしまうほどだったが……

 

「ナミイルカっ! そのまま正面に向かって『アクアジェット』!」

 

「イルッ!」

 

 ネモは決して動じずにポケモンに指示を飛ばすと、煙の向こうからナミイルカの了承が返ってくる。

 

タツベイ! 『ずつき』で迎え撃て!」

 

「ベイッ……!?」

 

 しかしイレギアは動揺を隠しきれぬまま指示を出すも、煙の向こうのタツベイは首を回してただ慌てるのみだった。

 

 その隙を突いたナミイルカが激流を纏いながら砂煙を切り裂いて接近——勢いそのままタツベイの急所を強襲する

 

「あっ、タツベイっ!」

 

 タツベイはフィールドから飛び出る場所にまで吹っ飛ばされてしまう——輝いていたその身体と冠が消えていった……。

 

 

ポケモントレーナーの ネモに 敗北した……

 

 

「タツベイっ、大丈夫か!?」

 

「べ……ベイ……ッ!」

 

 イレギアが駆け寄ってきたのを見たタツベイは、しかしまるでなんともないように立ち上がってその小さな胸を張った。

 

「……イベッ」

 

 だが1秒と持たずに倒れてしまう。

 

「へっ……いじっぱりなヤツ。しっかり休んどけ」

 

 ボールに吸い込まれるタツベイが曖昧な視界に移していたのは、太陽が雲に隠れた青空と喜んで空を泳ぐナミイルカの姿だった。

 

「ちっくしょーっ! 次こそ勝ってやるからな~……覚えてろ!」

 

「もっちろん、覚えてるからね~!」

 

 イレギアがポケモンセンターに駆け寄りながらいつもの捨て台詞を吐くが、ネモは変わらず笑顔で手を振って返事をする。一瞬だけイレギアが振り返って彼も手を振り返した。

 

「……わたしも、もっと強くならないとね」

 

 きずぐすりなどのアイテムをあげたい気持ちもあるが……それは全力で戦ってくれているイレギアには不要だとバックの奥に押し込んだ。

 

「イルル?」

 

 イレギアを見送っていたナミイルカが頭を上げながらネモを見つめる……頬を紅潮させて、笑みをこらえきれていない様子だった。

 

「ルカ……——!」

 

 ネモから感じる想いに——ナミイルカの身体が光り始める!

 

「ナミイルカ? えっ……まさかこれって進化——……っ!?」

 

 

 

—ボウルタウン 東ポケモンセンター—

 

 

 

「惜しかったな……でもお前らっ、頑張ってくれてありがとう!」

 

「ツギコソハー!」「ググ!」「ゴゴゴ!」「ベイ……!」

 

 イレギアがボールから手持ちのポケモンを全員繰り出し、労いの言葉をかけていく。

 

「しかーしっ! このままじゃいつまで経っても追いつかねえ……今から特訓だ!」

 

「トックンダー!」「グーグー!」「コゴッ……!」「タッベイ!」

 

 イレギアが天高く右手を掲げると、士気が高まったポケモンたちの雄叫びが辺りに響く——……

 

 

 

—チーム・シェダル アジト前—

 

 

 

(…………なんだろこれ)

 

 スター団のアジトが見えてきた頃、アオイが目にしたのは地面に直に置かれたヘルメットだった。

 

 太陽を眩しく反射するヘルメットには、スター団のマークが描かれている。

 

(誰かの落とし物かな……)

 

 本来は触れるべきではないそれを、アオイは魔が差したのか手に取ろうとして——

 

 

 

 

 

「出やがったなカチコミ野郎ッ!」

 

 

 

 

 

「うわっ——!」

 

 横の草むらから聞いたことのある声が叫ばれる!

 

 アオイはその方向へ驚きながら振り向いてみると……

 

「……あれ? なんだアオイじゃねえか。何してんだこんなところで」

 

 イレギアが草むらから飛び出していた。彼はアオイをその目に収めると不思議そうに彼女を眺めている。

 

「び、びっくりしたあ〜っ! イレギア先輩こそ隠れてなにやってたの……もしかしてこのヘルメットって先輩の落とし物……じゃ、なさそう?」

 

「俺のは見ての通り被ってまスター! それはダチからもらったものでよ~。どうやらスター団に勧誘したヤツのために用意してたんだが、宝探しの方に行っちゃったんで余っちまったんだと」

 

「……なんでまたそれを道端に?」

 

「それがよお~聞いてくれよ。チーム・セギン所属のダチがカチコまれた挙句、ボスが負けて解散したんだと! こりゃあスター団の一員として見過ごせねえ……そのカチコミ野郎を俺がいち早くぶっ倒しまスター! そうすりゃ俺がその功績を讃えられて生徒会長に——じゃなくなったんだアイツはもう」

 

(あいつ? ……ピーニャさんのことかな。確か元生徒会長とかなんとか)

 

「とにかくっ! 俺が代わりに新たなボスに成り上がれる! ゆくゆくは他のボスを倒してマジボスにまで突き抜ける! どーよ完璧な作戦でスター?」

 

「それだと先輩もカチコミ野郎じゃない?」

 

「たっ、確かにっ……! ——だがしかしっ! スター団の危機を救いたい気持ちはトーゼンありまくる! アオイも気を付けろよ。無関係なヤツがアジトの近くにいたらカチコミ野郎って勘違いされるからな」

 

ワタシがカチコミ野郎

 

「出やがったなカチコミ野郎っ! 俺がスター団を代表して蹴散らしてやりまスター!!」

 

「切り替えはやぁ……」

 

 アオイが面食らいながらもイレギアはスター団ポーズを披露する!

 

 

 

 

ポケモントレーナーの アオイに 勝負を しかけた!

 

 

—BGM 戦闘!スター団—

 

 

アオイ●●●●○○VSイレギア●●●●○○

 

 

 

 

「(たぶん最初はヤングース……)出てきてヨーギラス!」

 

「迎え撃てヤングース……いや、デカグース!!」

 

 イレギアが繰り出したのはヤングースよりも一回り大きくずっしりしたポケモン——デカグースだった。

 

「グゥー……ッ!」

 

「進化してる……!?」

 

「どーよ俺のデカグースはっ! 進化した衝動で暴れちまってコルサさんにこっぴどくやられちまったぜ!」

 

(なんかまたやらかしてる……)

 

「だが進化したことで噛み癖もなくなった! 岩も砕くその顎に牙ッ……『かみつく』で存分に味わえ————!」

 

 

 

 

 

 数分後——

 

「くっ、戻れイキリンコ……」

 

「モドレ……」

 

 《テラスタル》の冠が砕け散り、イキリンコがモンスターボールに戻されてしまう……

 

 

ポケモントレーナーの アオイに 敗北した……

 

 

「なんで俺が次に出すポケモンが分かんだよーっ!」

 

(今度は2体倒された……だんだん強くなってきてる)

 

「どうやら旅を得て強くなっているようだな。先輩として誇りに思いまスターっ! それを祝ってこのヘルメットはプレゼントしてやる……割と高いんだぜ?」

 

「はあ……あれ、なんか大量に入ってる……」

 

 イレギアから差し出されたヘルメットが器代わりに金貨が大量に入っている——アオイはコレクレーのコインを100枚手に入れた!

 

「旅してるうちに変なポケモン見つけてよ。近づいたら落とすもんだから拾いまくったらこんなんになっちまったぜ! 俺は要らねえからくれてやる……ありがたく思えよ?」

 

「要らないからって……そんな押し付けるみたいに」

 

「まぁまぁまぁまぁ……っつってもこんなの集めて何になるんだかな。100枚集めてもなんにもならないし、持てるだけ持てば何かに使えたり……まぁいいか。有効活用してくれよ! そんじゃあお疲れ様でスター!!」

 

 再びのスター団ポーズを披露した後、モンスターボールからモトトカゲを出してそれに跨った。

 

「改めて、覚えてろよ~っ!!」

 

「モトトカゲがだんだんコライドンに近づいて行ってる……」

 

 イレギアのモトトカゲのインディアン化は手足や腰にまで及んでいた。

 

 

 

 

 

「アオイのヤツも順当に強くなってやがる……へっへっへっ、それでこそ人気者のなりがいってのがあるってもんだぜ! お前も見てってくれよモトトカゲ! この俺の偉大な軌跡をなっ!」

 

「アギャス!」

 

 敗走するイレギアだったがその顔には一切の翳りはない。常に上昇志向でめげずへこたれず、それこそが物事を楽しむ秘訣だと母親から教わってことである。

 

「もう少しでおやつの時間だな。ポケセンの近くで腹ごしらえでもするか!」

 

「アッギャギャ~!」

 

「おっととっ……急加速すんなって。気に入ってもらってよかったぜ俺のサンドイッチ。そういやアイツのサンドイッチもいつかみんなに食わせてやりてえなあ……あのサンドイッチ食ってからなあ~んかどのサンドイッチも味気なく感じちまう」

 

 虚空に目にやるイレギア……しかし、炎のような意匠の旗の下に思いがけない人物を見つける。とはいえ小指の爪ほどの大きさだったが、イレギアにはそれが誰かか明白に理解できた。

 

「ボスのメロコをアジト内に発見した。依頼などの類も受けていないようだし、仕掛けるなら今だろうな」

 

 イカしたリーゼントのメガネガイ——ネルケである。

 

〈ありがとう。アオイにも伝えよう〉

 

「頼むぜ」

 

 どうやら誰かと通話しているようだが、拳大の今でもその内容は分からない。

 

〈当初は君を疑ってしまったが、手を貸してくれて助かるよ。君にも報酬を与えよう〉

 

「いいや要らねえぜカシオペアさん。何処にいるかも分からない人間に金を貰うのは好まない」

 

〈ほう……なに、無理は言わないとも。それでは、引き続き頼んだぞ〉

 

「了解、切るぜ。……——ふう。同年代の方がいたとしても、生徒に紛れるというのは中々に難しいものですね」

 

「おーいネルケーっ」

 

「っ……その声は」

 

 ネルケはモトトカゲの足音と彼の声を耳にする……少し遠くからイレギアが駆け寄ってきた。

 

「これはこれは、確かアンタはイレギアだったか」

 

「止まってくれモトトカゲ。そうそうありがとう……おうっ、また会ったな!」

 

「すまんが今度も邪魔はさせないぜ? それとも単純にバトルしたいのか?」

 

 ネルケが自身のリーゼントを掻き上げながら鋭い視線を飛ばす。

 

「いやいやいやいや、ちょっと知り合いを見かけたんで話しかけただけだ。カチコミ相手なら、さっきアオイってヤツにコテンパンにやられたから邪魔できねえでスター!」

 

アオイ……既に仕掛けていたのか

 

「まさかアイツがスター団相手にカチコミを……へっへっへっ、ダークホースをぶっ倒せばそれこそ俺の評判はシビルドン登り! まっ、今回はほのお組のヤツらに花を持たせてやるとするかぁ!」

 

「……イレギア。ひとつ聞くが、アンタはスター団が解散することに……その、寂しさとか悲しさとか……そういうのは無いのか?」

 

 これは校長として、本当にスター団が悪評通りの存在なのかを探るものであったが……

 

「無いぜ?」

 

 とてつもなく素早い解答に面食らってしまう。

 

「そっ、そうなのか……?」

 

「そりゃスター団じゃなくなってもダチはダチだし、無くなってもそもそも学校通ってんだからそこで会えるだろうし。てかアイツら単位とか大丈夫なのか? そっちの方が心配だな」

 

「なるほど……」

 

「まぁ……俺がこういう考えなだけで、中にはスター団しか居場所がないヤツもいるんだろうな。1年前の傷も治ってないヤツとか」

 

「1年前……いったい何が……?」

 

「おおっと! そこまで話す義理はないぜ? さっきのはお前のイカしたリーゼントに免じて答えてやったんだ! ありがたく思うんでスター!」

 

「ああ……貴重な情報感謝する。助かったぜ」

 

「おいおいおいおい。そんな褒めたらもう1個ぐらい答えても良くなったぜ? 何があったか教えてやろうか?」

 

「いや……このことはオレたちで調査する。それより、アンタにしか聞けないことを聞きたい」

 

「なんだよそんな改まって」

 

「大事なことだ。ちゃんと答えてくれ」

 

「……言っとくが、スター団についてはほとんど知らねえからな?」

 

「スター団についてじゃない……——ネモについて、どう思っている?」

 

「ネモ?」

 

「ああ」

 

 イレギアが訝し気な視線を送るも、ネルケの瞳はイレギアを掴んで離さなかった。

 

「なに、生徒会長である彼女はスター団に嫌われているかもしれないからな。単なる興味で——」

 

「普通に目指すべき対象ってか、アイツとバトルすんの楽しいし?」

 

 ネルケが説明を付け加える手前でイレギアは淡々と意見を述べる。

 

「……それは、負けてもか?」

 

「そらそうよ。そもそも勝てたことないし。いつか絶対勝ちてぇって思うけどな!」

 

「……羨ましいくらいの向上心だな」

 

 フッと微笑みながら、クラベルは心のどこかで安心する。

 

(ネモさん、いい友人を手に入れましたね——)

 

「あとアイツの楽しそうな笑顔好きだし、一緒に居るともっと楽しいし……おっと話はここまでだぜ! そろそろポケモンたちを回復させたいからな。そんじゃっ、お疲れ様でスター!!」

 

「ああ、また会おうぜ」

 

 

 

—東1番エリア ポケモンセンター前 —

 

 

 

「はい、東1番エリアです。よろしくお願いします」

 

「かしこまりました。そのまま少々お待ちください」

 

 ポケモンたちを回復したイレギアは、アップルアカデミーに向かうためにタクシーを呼んでいた。

 

「さてさてさてさて……学校に着いたらまずおやつだな。ジム攻略でちょっと疲れたし」

 

「オヤツ! オヤツ!」

 

「イキリンコも楽しみか! んにしても進化したんならメシはやっぱり多くした方がいいよな……うっし買い出しも必要だな!」

 

「……ッ! キィー!」

 

「おっともう来たか……いやいくらなんでも速くねえか?」

 

 やいのやいの言っていると、空からタクシーが下りてくる……しかし、そこには誰か乗っているようで?

 

「あれは……えっ? アヤセ!?」

 

「あれ……先輩!?」

 

 再び思いがけない人物との邂逅であった。

 

 空飛ぶタクシーが下りて自動ドアを開けた瞬間、アヤセが飛び出してくる。タクシーは飛び立たずそのまま待機していることから、イレギア待ちであろう。

 

「なんでえお前、そんなに俺と冒険したかったのかあ~っ? だったら言えって——」

 

「いえそれは全然まったくもう今日は嫌です許してください」

 

「そんな真っ向から否定しなくてもいいじゃねえかよ。ならこの辺に用があるのか?」

 

「ええまあ……実はあの子が……」

 

「あの子?」

 

 アヤセがタクシーへと振り返ったので、イレギアもつられてそちらを向くと……

 

「ボウ! ボウ!」

 

 膝下ほどの体躯から伸びる短い手足を懸命に振って、頭に灯った炎を揺らめかせる——カルボウだった。

 

「実はその……」

 

ボウジロウ!? どこ行ってたんだよお前!」

 

 アヤセがそのカルボウについて語ろうとしたところで、イレギアが足元に到着した彼の名を的確に呼んだ。

 

「ええっ!? 知り合いですか!?」

 

「知り合いってか……知り合いの知り合い? そんでボウジロウとなにがあったんだよ。てかどこで見つけたんだよー」

 

「ええとそれで、実は——」

 

 彼女自身、まだ整理できていないのかたどたどしくも言葉を紡いでいった。

 

 時間はイレギアのボウルジム戦にまで遡る——

 

 

 

 

 

 学校に帰ったアヤセは、自室にて思い切りベッドにうつ伏せになっていた。

 

「ぐおおおおおおお……!」

 

 『ザ・ドガース』のボーカルのホミカのポスターがそこら中に貼られており、その他にも関連グッズが部屋の至るところに設置されていた。置く位置にもこだわりがあるようだった。

 

(もうヤダ。もう今日は何もしない。ホミカさんのライブも見れないくらい疲れてる。夜の生配信くらいしか見たくない……それと主題歌やってるアニメも最近ハマってるからそれだけしか見たくない……あと——)

 

 それなりに出来そうなことがあった。

 

「……アイス食べたい」

 

 いくつか脳内でやれることを上げていった結果、脳が疲れたのか糖分を欲しがったらしい。

 

「あれぇ……アイスないじゃん……」

 

 しかし冷凍庫の中にはその類のものはない。あるのは入学時に親から送られてきた肉や魚……いつまでもつんだろ。ぜんぜん料理しないし……そのうちやってみよう。

 

 腐らせるのは別の話。

 

「うわぁあとグミしかない……」

 

 どうしてもアイスが食べたかった彼女は、面倒だと溜め息で愚痴って購買まで買いに行くことにしたのだった。

 

(あ……やば。ヘルメット持ってきちゃった)

 

 寮から校舎までの道中で、財布と共にスター団マークの描かれたヘルメットを持ってきていたことに気づく。ついでに星型ゴーグルも括り付けられているため、誤魔化すことはできないだろう。

 

(最近は出かける時にいつもこれだったしなあ……まだ数日しか被ってないのに、なんだか慣れちゃったな)

 

 戻しに行くのも面倒なので、もういっそのこと被ってしまえと思い至る。

 

「…………いやいや」

 

 バカが感染った。さっきまでの自分が恥ずかしくなってヘルメットを脱ごうとしたその時——

 

「ボウ! ボウ!」

 

「あれはカルボウだっけ……なんかこっちに来てる?」

 

 1匹のカルボウがアヤセの元まで駆け寄ってきたのだ。

 

「ボウ!! ボウー!!」

 

「なっ、なに……? なんか飛び跳ねてて……【いかく】?」

 

 ボウジロウは頭の炎を激しく揺らめかせてアヤセを指差して跳ねている。その真意に分からずアヤセは戸惑ってしまう……が、ひと呼吸おいてしゃがみこんだ。

 

「ええと……あたしたち知り合いだっけ?」

 

「ボ——ボウ!」

 

 アヤセの問いかけにボウジロウは頭を横に振りながら炎を縦に振った。

 

「どっちだ……?」

 

「ボウボウ!」

 

「ん? あたしの頭……ヘルメット?」

 

 ボウジロウに指摘されたヘルメットを脱いで差し出すと、彼はスター団マークを勢い激しく指差した。

 

「もしかしてスター団の誰かの手持ちなのかな。今日はなんでか置いてかれちゃった……とか?」

 

「ボウ! ボウっ!」

 

「分からん……とにかく、スター団関連で頼りたいときはええと……なんでも屋のメロコに頼れだっけ?」

 

「ッ……! ボウボウーッ!」

 

「うわっと……もしかしてメロコさんに用なの? ……どうしよ、ウワサに聞いたけど怖そうなんだよねあの人……」

 

「ボ~ウ~!!」

 

 渋るアヤセに対してボウジロウが彼女の腕にしがみついてねだるので、相手の執念にアヤセも根負けして天を仰ぐ。

 

「あーあー分かったって! 行くってばっ! アイスはあとっ、とにかくほのお組のアジトに行ってからっ……そのあとは……そんとき考える!」

 

 行き当たりばったりにアヤセはタクシー会社に電話した。

 

 

 

 

 

「——まあそういうわけで、あんまりあたしもよくわかってないっていうか……」

 

「はふはふ……へー——ふぉーふぁんふぁ」

 

「ハフハフ……」

 

「……人が話をしてる時に先輩もイキリンコもなに食ってんですか?」

 

「焼きバナナ」

 

「食ってるもんについて聞いてるんじゃないんですよ! ちゃんと話聞いてますかってことですよ!」

 

「ふぉんなの……んぐっ——もちろん全部理解したぜ? あのボウジロウってのは元々メロコのポケモンでよ。1年前に逃がされちまって、そのちょっとあとは学校で面倒見てもらってたんだが……う~ん! やっぱりボウジロウの火で焼くと段違いにウマいぜ!!」

 

「ボスのポケモンに何を……ってあれぇ!? そのボウジロウはどこに!?」

 

「アジトに走っていったぜ?」

 

「ちょっ……なんで見送ったんですか! 野生のポケモンに襲われでもしたら……」

 

「いや? どうやらネルケと合流したみたいだぜ? んでそのままアジトに……よし! これでアヤセの目標は達成ってこった!」

 

「ええっ……? なんか釈然としないっ……しかも見えてるんですかこの距離を…………」

 

「おうよ! オレの視力はファイアロー並みだぜ! 知り合いならある程度離れてても識別でき——……ややっ!? あれはネモ! へっへっへっ……コイツは棚からふしぎなアメ! 進化した俺の強さを見せてやるぜ——出てこいモトトカゲ!」

 

「いや、あの……」

 

「タクシーはお前に譲ってやるぜーっ!!」

 

「あっ、はい…………ええっ?」

 

 アヤセはいつの間にか手足にまで衣装が施されいてたモトトカゲに乗って駆けていくイレギアを困惑しながら見送った。

 

「…………カラオケいこ」

 

 やりたいことが決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——なお、バトルの結果は散々だった。

 

「ぐおぉぉぉ…………まさかの一体で全滅させられるとは…………っ」

 

「すっごい! 初めて見たポケモンだけどこんなに強いなんて……っ!」

 

「アイルッ、カマーン!!」

 

 直立したイルカのようなポケモンが倒されたイレギアの横で拳を天高く掲げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方のアオイとネルケ。

 

「なんかボウジロウ、甘い匂いしてませんでした?」

 

「…………だな」

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