最初に出会ったスター団のしたっぱがネモによく効く向上心の塊でものすごいアホだった   作:うみじゃけ

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9.駆け抜けろチャンピオンロード!自覚する想いとその明暗

 

 

 

—アップルアカデミー 廊下—

 

 

 

「おっ……早朝そうそう見つけたぜ! おーいネモーっ」

 

 イレギアは寮とアカデミーを繋ぐ廊下にてネモを見つけて、声をかけながら駆け寄った。

 

「あっ……イレギア……!」

 

「……? なんか元気ねえな。こんな時はポケモン勝負でスカッとしまスター!」

 

 イレギアがモンスターボールを構えるが……ネモの表情は変わらず暗いままだった。

 

「えっとそのっ……あっ! そう! わたし、生徒会の仕事があるんだった! だからすぐに行かないとっ……!」

 

「え? おーい……まぁ、なら仕方ねえか」

 

 イレギアはこの日、ネモとバトルしなかった。

 

 初めて出会った日から初めてのことである。

 

 

 

—カラフシティ ハイダイ倶楽部—

 

 

 

 そうして時刻は昼を指した頃、イレギアはジムテストを受けていたが……

 

「ふむ……むむむむ……!」

 

 目隠ししたイレギアが腕を組んでうんうん唸る。彼の席の前にはまったく同じように見える酢豚が2皿置かれており、それぞれの料理の前には『A』、『B』と描かれた札が用意されていた。

 

「これは……『B』だなっ!」

 

「……本当にそれで良ぇんだい?」

 

「もちろんだぜ。こっちがウン万の肉だっ!」

 

「…………正解だいっ!」

 

「ぃよっしゃあ、3問連続正解だぜえ!!」

 

 難しいとされるカラフジムのテストを、なんとイレギアは初見で一発合格!

 

「ガッハッハ!! あんちゃんの審美眼、なんて素晴らしいんだい! こいつぁオイラも驚かされちまった!」

 

「へっへっへっ……そんじゃまっ、さっそくバトル——の前に、残った料理食ってもいいですか?」

 

「残った料理? それならあんちゃんのポケモンが平らげとるが……」

 

「……え?」

 

 目隠しを取って見ると、いつの間にやら外に出ていたデカグースが酢豚をむしゃむしゃ貪りつくしていた。

 

(ガツガツムシャムシャ! ガツガツムシャムシャ!)

 

「バカ野郎ォォォ~~~~ッ! お前それいくらすると思ってんだよォォ————————ッッッ!!」

 

「ググググッ……!!」

 

「いっちょ前に威嚇なんてしやがって……しながら食うなバカっ!」

 

「それでも『B』の料理を手に取ってるところを見るに……あんちゃんのデカグースは匂いで正解を選んでるみてぇだ! こりゃあかなりの食い意地だい!!」

 

うわあああああああああああああああああああああ!!! 全部食いやがったああああああああああああああああ!!!

 

 

 

—ロースト砂漠—

 

 

 

「ハイダイさんのまかない飯、信じられないくらい旨かったなあ~っ! ——よっしモトトカゲ、この辺で止まれ」

 

「アギャッ!」

 

 顔や身体にインディアン風のペイントを施されたモトトカゲがロースト砂漠の中央にてイレギアに止められた。

 

「昼を過ぎてちょうどいいと思ったけど、めちゃくちゃあっついな…………けど、逆に特訓には好都合だぜ! 出てこいおま——っとと?」

 

 両手に抱えたモンスターボールを放り投げようとしたところで……地面が揺れ始める。

 

「なんだこれ……いや、たしかこの辺には土震のヌシがいるって話だったな。そんなら逆にラッキーだぜっ! とっ捕まえてっ……!? 予想以上の地震だなこれ……!?」

 

 踏ん張っていなければ立ってすらいられない地震——それが、近づいてくる……?

 

「アギャ……ギャ! ギャギャス!!」

 

「なんだなんだモトトカゲ。おっ、あれがヌシかっ! ……ポケモンなのか、あれ?」

 

 モトトカゲに身体を預けながら遠くに見つけたその姿は、黒い帯のようなものがタイヤのように回転している異様なものだった。

 

「まあヌシってんならそんくらいはっ……あるかっ」

 

 イレギアは激しく揺れる地面に食らいつきながら、横を逃げていく群れのドンファンほどの大きさになったところでモンスターボールを構える。

 

「そろそろ近づいてくるぞ、まずはギャラドスで……いや、まだ遠いか……いや、いやいやいやいやっ! デカすぎないかっ!!?」

 

 

 

「ウィ・ルドン・ファァァァァ————————ッッ!!!」

 

 

 

 しかし、その大きさはトラックやダンプカーと言った自動車などとは比べ物にならないくらいに巨大であった!

 

「こいつはマズイぜっ……!? 逃げるぞモトトカゲ!!」

 

「アギャスっ……!!」

 

 脂汗が噴き出すほど命の危険を感じたイレギアは、モトトカゲを駆けさせる……しかし——!」

 

「おいおいおいおい……! 速すぎねえか!?」

 

 地響きで不安定な足場かつヌシの驚異的なスピードがイレギアを追い詰めていく! ヌシの冷酷で無慈悲な突進が加速していき……!

 

「ノノクラゲ! 『しびれごな』だっ!」

 

 しかしそのヌシの上空に黄色い粉塵が振りかけられた。

 

 

 

「ドファッ……!?」

 

 

 

「なんだぁ……!? あいつ急に動きが鈍くなったぞ?」

 

「なにしてやがる! さっさと逃げろ!」

 

「おう誰だか知ら……——ペパーっ!?」

 

 イレギアはモトトカゲの脚を止めながら、突然現れたペパーに身を引いて驚く。

 

「話してる場合かよっ! さっさと逃げろ!!」

 

「おっ、おうっ!! 恩に着るぜっ!!」

 

「ったく……これで貸しがゼロになったわけじゃねえよな」

 

 砂漠に残ったペパーは1人、デジタルな顔にノイズを走らせているヌシを見て固唾を呑み込んだ。

 

「オレもまだこいつには勝てなさそうだし……逃げるっきゃねえな」

 

 

 

—チャンプルタウン 宝食堂—

 

 

 

「ジムテストの秘密のメニューかぁ……でもその前にちょっと腹減ったな。ちょっと腹ごしらえするか」

 

「ツカレター!」

 

「だよな~っ、砂漠で危機一髪もあったし、走り回って特訓して夜になりゃあ腹は減る……ペパーに礼を言おうにも連絡交換してないし、明日学校で言うか!」

 

 砂漠から脱したイレギアだったが、その後のペパーを知らないでいた。彼もまたあの危機を脱することはできたのだろうか……信じるしかない。

 

「……まっ、この後のジム戦も考えて軽めになんか食うか」

 

「いらっしゃいませ! ——ジムテストのお客さんですね。宝食堂の秘密のメニュー、ヒントは集まりましたか?」

 

(っべ、間違えたら不合格じゃね? ……まあいいや、また明日受けよ)

 

「……それでは、注文をお願いします」

 

「(うわあすっげえ真面目な顔してる……後で謝ろ。軽食にしたいし……)焼きおにぎりで」

 

「…………ほう」

 

なんすかその思わせぶりな態度

 

「何人前ですか?」

 

「アサメシマエ!」

 

「あっと、さっきのタクシーのあんちゃんとこの覚えちゃったのか」

 

「2人前ですね」

 

なんでだよ

 

「火加減にご希望は?」

 

「……え、ああ……(よく焼きが好きなんだよなあ。だから……)強火:だいもんじで」

 

「フッ……なるほどな」

 

誰だよ

 

「つけ合わせに何かお持ちしましょうか?」

 

「そっすね……(とにかくっ、何も無いよりは何かあった方がいいし、最後はさっぱりすませるとして……)レモンで」

 

「わかりました——焼きおにぎり2人前、強火:だいもんじ、レモン添えー!」

 

「っ……! あいよー! 焼きおに2だいもんレモ添え~!」

 

「さてさて……」

 

「今回の子はどんな感じかね」

 

(なんだなんだ? 客の人がテーブルを片づけ始めて——)

 

 

 

ゴゴゴゴゴ……!!

 

 

 

バトルコートになっちまった————————ッッ!!!??

 

「おめでとうございます! ジムテストクリアです!」

 

「ええっ!? なんだかわかんねえけど……とにかくよっしゃあ!!」

 

(…………あの子、ヒント聞かないままクリアしましたけど……この場合、他の挑戦者のことを落とさないといけないんですよね。幸運とは、なんとも世知辛い)

 

 カウンター席のアオキはお冷を飲み干して溜め息を吐いた。

 

(それはそれとして、焼きおにぎり食いてえな)

 

 

 

—アップルアカデミー 家庭科室—

 

 

 

「その後によぉ、なんと焼きおにぎり食えなかったんだよ! ジム戦用のメニューで作ってないんだとっ! か~っ、マジでヤになるぜ……でも焼きおにぎりはうめえっ!!」

 

 愚痴を吐きながらもイレギアは両手の焼きおにぎりを食べ比べては舌鼓を打っていく。

 

「グーグーッ!!」

 

「ウマイ! ウマイ!」

 

「ゴゴゴ……!」

 

「コモ~!」

 

「アギャス!」

 

「うわっ、びっくりしたポケモンか……」

 

 彼のポケモンたちも同様に、様々な味の焼きおにぎりを腹に収めては雄叫びを上げる。何気にタツベイがコモルーに進化していた。

 

「……それで、そのためにオレに焼きおにぎりを作らせたと」

 

 ……それらに囲まれたペパーが苦々しく呟いた。フライパン両手におにぎりを焼いていく姿は洗練された腕前が表れていた。サワロ先生が味見したところ好評価だった。

 

「へっへっへっ……! ペパーが家庭科の授業は欠かさずに出てることは知ってたからな。案の定捕まってくれて嬉しかったぜ……こっちは具が入ってる!」

 

「まさか土下座してまでお願いするなんてな……どんだけ焼きおにぎり食いたかったんだよ。それなら自分で作れって」

 

「朝ごはんに作って食ったけど、なぁんか足りなかったからな。ボウジロウはもう学校に居ねえし、前に授業でペパーの料理をつまみ食いした時にすんげぇうんまかったんで作ってもらおうって考えたんだ!」

 

「なんでそんなドヤ顔ちゃんなんだよ……まあ、オレもオレで興が乗って色んな味作っちまってるけど。昼飯も決まってなかったのもちょうど良かったしな」

 

「昨日も昨日で助けてもらっちまったな。土震のヌシがあんなデカくってはちゃめちゃに速えとは思わなかったぜ……ありがとなっ!」

 

「オレが下見してて助かったな。オレもなんとか逃げられたが……アレは後回しした方がいいな。アオイにも伝えとこう」

 

「んっ……?」

 

 ペパーの呟きに、イレギアの隣で焼きおにぎりを貪りながらアオイが返事をする。

 

「アオイ!? なんでこんなところに……?」

 

「い、いやぁ……良い匂いしたからつられて……たくさんあるからちょっとくらいいいかな~って……」

 

「……アオイまでイレギアのバカが感染ったんじゃねえか?」

 

「いやいやそんな……」

 

「アギャギャ!」

 

「アンギャー!」

 

 2匹のライドポケモンが再び出会っては食べながらじゃれ合い始める。コライドンに至っては、モトトカゲがより自分に近い姿になっているのにも喜んでいるらしい。

 

「……どっちっていうとコライドンの方が?」

 

「見比べるとどんどんモトトカゲがコライドンに似てくるな……」

 

 ペパーのひとりごとの曖昧に頷いたアオイはふとコモルーの方に視線を向ける。

 

「そういえばイレギアのタツベイってもう進化したんだ」

 

「そりゃあな! 俺の進化のスピードは周りすらも加速させる……!」

 

「そうなの? ……そうかも」

 

「呑まれるなアオイもっ!」

 

「コモ〜ッ、コモ〜!」

 

「コゴゴ……!」

 

 焼きおにぎりを食べ終えたコモルーはギャラドスと話して何やら嬉しそうに飛び跳ねていた。

 

「……噂のコモルーだが、なんだかギャラドスに憧れちゃんじゃねえか?」

 

「まっ、空に憧れてるコモルーにとっちゃ、ギャラドスはいち早く空に飛び立った先輩だからなっ。コモルーのためにも、ネモに追いつくためにもっ、俺ももっと強くなってやる……!」

 

 イレギアはそう意気込んで、残っていた両手の焼きおにぎりを頬張った!

 

「よっしゃお前ら! たらふく食ったらアオイと再戦だぜ! 次のヌシは俺たちが頂くからな!」

 

(((オオーッ!)))

 

「ゔゔんっ……」

 

 盛り上げムードの彼らにサワロ先生の咳払いで一喝される。

 

「あまり騒がないように、と忠告したはずだが?」

 

「……すいません」

 

「よろしい」

 

「……というか第一、ヌシを捕まえようとはしてねえんだがな」

 

「味噌味もおいしいな」

 

 

 

—アップルアカデミー グラウンド—

 

 

 

 昼食から少しして、アカデミーのグラウンドにてアオイとイレギアがコートを挟んで向き合っていた。ペパーは他の生徒らと観戦している。

 

「へっへっへっ……! 研究ッ、特訓ッ、実践ッ——今までの俺のバトルは全部記録してあるからな! それから反省点を改善していったんだ……シェダルで戦った頃の俺より何倍も強くなってるんだぜ! チャンプルジムは負けたけどなっ!!」

 

「その前振りから負けてたんだ……ええと、これでワタシが負けたら……結局どうなるんだっけ?」

 

「どうもならねえってさ。さっきようやく誤解が解けた。しかも次のスパイス採取に協力する……だよな?」

 

「おうとも! 倒したヌシはそのまま俺が頂くって寸法よ!」

 

「いいの? ペパーはそれで」

 

「ヌシについてはどうだっていいからな。アイツもスパイスには興味なさそうだし」

 

「そっちがマジで譲れないらしいものを奪うのは俺だって嫌だからな」

 

(わりとちゃんとしてる……)

 

「さてっ! 前置きはこの辺だぜアオイ……俺の成果を見せてやりまスター!!」

 

 気合十分のイレギアはスター団ポーズを披露する!

 

 

 

 

ポケモントレーナーの アオイに 勝負をしかけた!

 

 

—BGM 戦闘!スター団—

 

 

アオイ●●●●○○VSイレギア●●●●○○

 

 

 

 

 

「出てきてっ、クズモー!」

 

「こっちはコイツだぜ、デカグース!」

 

(相性はそこそこだけど、チャンプルジムを突破してるワタシの方が分があるかも……?)

 

「おいおいおいおい……まさか俺を見くびってんじゃねえか? 俺のデカグースはレベルじゃない強さを持ってんだぜ!?」

 

「レベルじゃない強さ……!?」

 

 アオイが顔をこわばらせていたその時、イレギアが懐から何かを……袋に包まれたお菓子を取り出した

 

「デカグース! バトルの後に新しいポテトチップスをくれてやるぜ!!」

 

「ググっ!? グゥゥゥゥゥッス!!」

 

 

デカグースは 張り切っている!

 

 

「なんか張り切り出した!?」

 

「食い意地の張りまくったコイツは飯のことになるとより一層強くなるんだぜ!!」

 

「そんな無茶な……」

 

 

 

 少し時間経過……

 

 

 

「サナギラス! 『ストーンエッジ』!」

 

 アオイのサナギラスが地面に強く身体をぶつけてコート中からいわエネルギーの結晶を突き出させるが……!

 

「ギャラドス! 『たきのぼり』だ!」

 

 イレギアのギャラドスはそれらを全て避けて、みずエネルギーを纏ってサナギラスに激突する!

 

「『いわなだれ』だったら当たったかもなあ~? これがなみのりハイドロ問題……俺は安定性重視で『アクアテール』より『たきのぼり』を選んだぜ!」

 

「なみ、ハイ……なんだって?」

 

「おいおいおいおい。ペパー、ちゃんと授業出とけよっ! なぁアオイ?」

 

「うっ……ソーダネー……たしかそれは、そうっ! たくさんのポケモンに攻撃できるかどうかって問題っ!」

 

「お前もかよ……」

 

「さっ、サナギラスっ! 『しっぺがえし』!」

 

 うろたえながらもアオイは指示を出し、サナギラスは怯まずにあくエネルギーでぶつかり返した!

 

「ギャラドス、『はねる』!」

 

「『はねる』だあ!? ポケモンバトルそんなしないオレだってそんなわざがなんなのか知ってるぜ……?」

 

「ゴゴゴッ……!」

 

 しかしペパーの指摘とは裏腹に、ギャラドスの『はねる』は見事『しっぺがえし』を避けてしまった

 

「どーよどーよ! これが俺のギャラドスの『はねる』だぜ!!」

 

「……これ、『みきり』じゃない……?」

 

 

 

 そうして再び時間経過……

 

 

 

「コモルー、『ドラゴンクロー』!」

 

 イレギアのコモルーの前足にドラゴンエネルギーが集中していく……!

 

「ケンタロス、『しねんのずつき』!」

 

 しかしコモルーが近づくよりも速くアオイのケンタロスが突進する——しかし、コモルーはケンタロスの頭突きを受け止めた! そして返しの『ドラゴンクロー』が襲い掛かる!

 

「さすがの【いしあたま】だぜ!」

 

「そんなまさか……いや、なんかもうありそう」

 

「アオイがバカに飲まれかけてるッ……! 負けるなアオイー! 戻ってこーい!」

 

 

 

 やがてバトルは最終局面に……!

 

 

 

ウェーニバル! 『アクアステップ』っ!!」

 

「ウェニバッ!!」

 

「決めろイキリンコッ! 『つばめがえし』だァッ!!」

 

「キィィィ————————ッ!!」

 

 テラスタルによってより煌めく群青青白の交差——!

 

 

 

 

 

 果たして、勝者は…………————

 

 

 

 

 

「キッ……!」

 

 

 

 

 

 イキリンコが地面に撃ち落される……

 

 

 

 

 

 しかしその身を伏せることなく、コートに留まった!

 

 

 

 

 

「…………ウッ」

 

 

 

 

 

 反対にウェーニバルが倒れてしまう……!

 

 

 

 

 

 つまりっ! 勝者は————!!

 

「ぃよっしゃああああああああああああああああ!!! オレたちの勝利だぜえ!!」

 

 

ポケモントレーナーの アオイに 勝利した!

 

 

「ヨッシャー! ……キィ」

 

 アオイ側のコートでイキリンコがテラスタルエネルギーを散らしながら倒れかかるも、イレギアがすぐに駆け寄って抱きかかえた。

 

「よく頑張ったぜイキリンコ……ゆっくり休んでってくれ」

 

「ありがとウェーニバル。ナイスファイト」

 

「ウェー……」

 

 ウェーニバルはいつもの明るさが失われて涙すら浮かべていたもののアオイは彼に優しく笑みを浮かべる。

 

「マジかよ……アオイに勝っちまうとはな……!」

 

 ペパー自身も驚きながら、観客に混じって拍手していた。

 

「あのまま負けるなんて……応援してくれたペパーに申し訳ないな」

 

「ワハハハハハハ!! ダークホースであるお前に勝ったんだ! 俺の人気はシビルドン登りだスター!!」

 

「アイツ、スター団なのにすげえっ……!」

 

「もしかして、生徒会長にも勝っちゃうんじゃない!?」

 

「……ていうか、あのスター団……やっぱりどっかで見たような……?」

 

「もしかしてコイツか? ナンジャモの配信の——」

 

「うわっ……! マジでそっくりじゃね!?」

 

 

 

 

 

 それを、少し離れたところで見ていた者がいた。

 

「…………すごい」

 

 ネモである。

 

(すごいよイレギア……! こんなに強くなってるなんてっ……!)

 

 ネモの顔はとても幸福に満ち溢れていた。ライバルがもう1人増えてることに対して驚きと興奮が顔に出てしまうどころか身体にも表れ、思わず身震いしてしまうほどだ。

 

(わたしもポケモン勝負したいけど……昨日のことがあって、ちょっと話しかけづらいな)

 

 昨日、ネモはバトルから逃げた。イレギアに非は全くない……自分の心の問題だった。

 

(どうしよう……このまま会わないなんて、なんて……こんなに、なんで嫌なんだろう……強くなってるのが楽しみなはずなのに、アオイにはこんなこと考えないのに……)

 

「なにしてるんですか道端で」

 

「わわっ!?」

 

 そしていつの間にか隣に居たアヤセにそれ以上の驚きと興奮で飛び上がってしまった。

 

「……なにもそこまで驚かなくても」

 

 困り顔のアヤセは制服は着崩さず、ヘルメットやらも装着していない。学校に居て、授業を受けるのだからそれらしい服装がいいと当たり前のことにようやく気付けたらしい。

 

 もっとも、イレギアが居たせいで気が付かなかったのだが。

 

「えっ、あっ、いやっ……アヤセちゃんはどうしてここに? てっきりイレギアと一緒にいるかと……」

 

「あー……普通に授業でした。スター団の人達に『スター団なのに授業受けてる……!?』なんて驚かれちゃいましたよ」

 

「あははっ、イレギアの後輩って感じ!」

 

「なんか絶妙に悪口みたい……でも、先輩のおかげで授業にも出るようになりましたし、趣味の合う同士って人とも知り合えましたし。先輩がいなかったら今頃、保健室でサボり散らかしてたかな……先輩が居たから、こうしてネモさんと友達にもなれましたし」

 

「アヤセちゃん……」

 

「あーえっと……友達ってかなり馴れ馴れしいですかね」

 

「ううんっ! わたしも実は友達がいなくて……嬉しい」

 

「あたしも……嬉しいです」

 

(…………今なら、聞けるかな)

 

 イレギアがドオーを繰り出していた姿を見たあの時から、気になってはいたが話せなかったこと……この空気なら、なんでも話せてしまいそうだ。

 

「……ねえ、アヤセちゃん」

 

「なんですか?」

 

「アヤセちゃんは……イレギアのこと、どう思ってるの?」

 

「どうって……まあ、頼りになる先輩ですよ。ものすごいバカですけど、それはそれで前向きになるっていうか……」

 

「先輩とかじゃなくてっ! その……あの…………男性として、どう?」

 

 その言葉が飛び出た瞬間、アヤセは盛大に噴き出した。

 

「いやいやいやいや!! アレをですか!? アレですよ!!? あんなバカをそんな目で見るなんて気でも狂わなきゃ無理ですよ! ねえっ!!」

 

「そ、そうだよねっ……あはは……!」

 

「そうですよそう! …………え?」

 

 ネモの上気する頬の熱に感づいてアヤセは、すっと顔の熱が引いていくのを感じた。

 

「え……あっ、いや、いやいや……いやいやいやいや! いやいやいやいやっ!! えっ!? いやっ、うそぉ…………」

 

 ドン引きながらも、ネモの淡い恋心を察してしまうのだった。

 

「あっ、ええっ……えっと、ファイト……?」

 

「…………うん」

 

 お互い、それしか言えなかった。

 

 

 

 

 

 一方でイレギアと言えば——

 

「よう! なぁに見てんだお前ら」

 

 観戦していた友達を見つけたために話しかけていた。

 

「ああウェーニバル、お前……バズってるぜ?」

 

 このウェーニバルはイレギアのあだ名である。

 

「はぁ? いつだよ……」

 

「ハッコウシティでジムやってたとこから、ほら——」

 

「うわっ……! いいねの数ヤバッ……!!」

 

「よかったな、人気者だなこれで」

 

「人気者……人気者かぁ……!」

 

 そうしてイレギアは、調子に乗り始めるのだった——……




ハイダイさんのジムテストは自作です。
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