最初に出会ったスター団のしたっぱがネモによく効く向上心の塊でものすごいアホだった   作:うみじゃけ

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11.イン・ザ・シー!曇天の空——の上に太陽

 

 

 

—チーム・シー アジト前—

 

 

 

 アオイはしるしの木立ちの真ん中に建設されたスター団のアジトにカチコもうとしたところ、なにやらボスの同胞を名乗る少年とひと悶着あった後——

 

〈ロトロトロトロト……〉

 

 アオイのスマホロトムに着信があり、ポケットからそれが飛び出してきた。

 

〈見張りに対処できたか〉

 

「はい。えっと……滞り、なく?」

 

 カシオペアからの言葉に対してそれっぽい言い回しになっているか若干不安になってしまう。

 

〈そのアジトに集まっているのはスター団どく組……チーム・シー。ボスのシュウメイは手先が器用な服飾担当で、ちょっと……一風変わった男だ。彼の行動は予測不能……シュウメイが現れるまで可能な限り団のポケモンを減らすんだ〉

 

「やるべきことは変わらないんですね。分かりました」

 

〈感謝する。では準備ができたら——〉

 

「あのー……」

 

 アオイとカシオペアの通話中、アジトの門を開いて口を挟んだのは……アオイの見知った人物だった。

 

「あれ、アヤセさん?」

 

〈…………知り合いか?〉

 

「知り合いと言えば……そうですかね?」

 

「はいー……チーム・シー時間稼ぎ担当のアヤセでーす……」

 

「……どういうこと?」

 

「それが…………スターモービルっていう、まあもうアオイには分かってるだろうけど。それの調子が悪くて……復旧するまで時間稼いでこいって」

 

〈なるほどな……何が原因か分かっているのか?〉

 

「スゥ————…………朝まで続いたゲーム大会でモニター映すのに電気使ったのが原因らしいです」

 

シュウメイ……

 

「ああ……ボイスチェンジャーの人も怒ってらっしゃる……」

 

「それで……どうしますか?」

 

〈そう、だな……真正面から打ち破らなければ団の解散にはならない。それが団の掟だ〉

 

「それなら、それに則らないとですね」

 

「ホントごめんなさい……お礼にポケモンの体力回復させるんで。あとなんだろ。あげられるもの……わざマシンとか、はあたし持ってないしなあ……スター団風の制服の着崩し方でも聞いときます?」

 

「……そうします」

 

〈——では、後は頼んだぞ〉

 

 そうしてアオイはヘルメットとゴーグルに加え、スター団の衣装を完全に得ることができた!

 

 

自由に着せ替えしよう!(大嘘)

 

 

「さてさて…………あのっ! まだですか!?」

 

 アヤセが扉をガンガン叩いて催促する。

 

「ごめーん! まーだかかりそーうっ!!」

 

 らしかった。

 

「…………世間話しません?」

 

「そう、ですね……」

 

「…………」

 

「「……………………」」

 

 

 

 

 この2人————————話したこと無し!

 

 

 

 

「……天気、いいですね」

 

 アヤセがなんとはなしに問いかける。

 

「……………………曇天です」

 

 パルデアは今日は曇天。今にも雨が降ってしまいそうだった。

 

「アッス…………」

 

 ふと空を仰いで、肌寒さを感じた。

 

「…………好きな天気、とか……ありますか?」

 

「好きな天気……っ? …………晴れ、ですかね……?」

 

「……っすよねやっぱり、ねえっ? あははっ……」

 

「ははは……」

 

 

 

「「…………」」

 

 

 

「「……………………」」

 

 

 

 

 

まだですかねえ!?

 

 その後、20分経過した。

 

 

 

 

 

 

—マリナードタウン ビーチ—

 

 

 

「イレギア……? どうしてここに……?」

 

ヘルメットと星型ゴーグルをつけていないがびしょ濡れの制服のイレギアが急に目の前に現れたため、ネモはビーチチェアに座ったまま茫然としていた。

 

 一方の波打ち際では、イレギア?のものと思われるギャラドスがイキリンコを頭に乗せたまま海面から飛び出す。イルカマンが一瞬だけ臨戦態勢になるも、ギャラドスの額に留まったイキリンコに気づいてそれを解いた。

 

「ようネモ! こんなところで会うとは奇遇だな……実はコイツを探しててな——出てこいっ!」

 

 イレギア?が叫んで振りかぶり、放り投げたモンスターボールから解き放たれたのは……

 

「シビビ……」

 

 シビシラスが砂浜の上で【ふゆう】したまま漂っていた。

 

「どーよっ、このパルデア海を泳いで見つけたシビシラスだスター! なんとしても捕まえたかったからよ~……ギャラドスとイキリンコにも捜索を手伝ってもらったんでスター! ただまぁ、追いつけなかったところをヤケになって投げたモンスターボールがコイツにヒットしてな……やっぱし今の俺は最高潮についてるぜっ!!」

 

「へ、へえ……イレギアはいつでも元気だね……」

 

 イレギアの相変わらずの破天荒ぶりにネモは苦笑いを浮かべる……いつもだったら素直に笑えていたのに、なぜだか今はぎこちない笑顔しか作れない。

 

「へっへっへっ……それに残念ながら俺はイレギアじゃあねえ……!」

 

「え?」

 

 不敵な笑みのイレギアは崩れた髪をすっと整えてリーゼントを作り出す。

 

「今の俺はスーパーイレギアでスターっ!! 宝と定めていた『人気者になる』が見つかった俺が進化した姿だぜえ!!」

 

「————っ!」

 

 宝が見つかった——彼のその言葉に、ネモの心臓がひと際大きく高鳴った。

 

「こりゃあもう俺のスクールカーストがシビルドン登りすぎて《テラスタル》+《ダイマックス》って感じだ……新しい仲間もゲットして更なる有頂天に達したスーパースターな俺ならばッ! ネモを倒してパルデア最強にだってなれるッ——つーわけでポケモン勝負だスター!!」

 

「あ……え…………」

 

 

 

 瞳が乾き、脳が痛み——否が応でも自分の心にケリをつけることを強制されてしまう。

 

 

 

「……ん? どうしたよネモ」

 

 

 

 答えないと……せっかく会えたのにっ……!

 

 

 

「その、えっと……」

 

 

 

 だけどっ……もしも、もしもイレギアが——遠くに行ってしまったら……っ!

 

 

 

「…………」

 

「あっ! もしかして誰か待ってるとかか? だったら邪魔したな! またアカデミーとかで……」

 

「待ってっ————————!」

 

「ん? おう……どした?」

 

 わたしは、わたしは…………!

 

「…………ううん。戦ろっか」

 

 

 

 そうするべきかまだ分からない。それでもとにかく、彼と……離れたくない。

 

 

 

「ラァ……?」

 

「戻って、みんな」

 

 ラウドボーンたちは暗い顔の主人を憂うが、それでも受け入れてボールの中に吸い込まれた。

 

「とにかくよっしゃあ! サンキューだが……へっへっへっ、俺の進化についてこれまスター?」

 

 

 

—マリナードタウン バトルコート—

 

 

 

「なんだなんだ? 学生さんたちか?」

 

「なんでも嬢ちゃんはチャンピオンランクの保有者だとっ! 対するあんちゃんは海の中から現れたんだとさ」

 

「う、み……? まあ、面白いバトルになりそうだな!」

 

「へっへーん! 鍛え上げた俺らの絆で全力でぶっ倒してやりまスター!!」

 

「すぅ——はぁ……」

 

 スーパーイレギアが有頂天のテンションでスター団ポーズを披露する中で、ネモは目を閉じたまま大きく息を吸って、そのまま吐き出した。

 

「よおし、最初はコイツだ……ネモ?」

 

「————……たなくちゃ

 

 冷や汗の滲む右手にはモンスターボールが握られている。それをイレギアの方に向けて……左手で支える。いつもの構えだった。

 

(……勝たなくちゃ)

 

 

 

 ネモは初めて、『自分が勝とうとしていること』を意識した。

 

 

 

「(この数日でイレギアは強くなった。こんな数日で……アオイに迫るくらいにジムリーダーを攻略して、とっても、実ってきてて……それでっ……)すぅ————」

 

 再度大きく深呼吸をした。

 

「(ここでイレギアが勝ったら、イレギアはもっと遠くに行っちゃう……勝たなくちゃ)はぁ…………」

 

 

 

 ネモはイレギアに対する恋心を自覚していた。しかし、友人すらまともにできなかった箱入り娘だったネモにとっては未だ逡巡し決断しきれない問題であった。

 

 

 

「(わたしにはこれしかないっ……それにイレギアがわたしに追いついちゃったらっ……!)すう——————はあ…………!」

 

 いくら深呼吸をしても胸の高鳴りが収まらない。いつも変わらず鳴り響いているものなのに、今は嗚咽を促進させる邪魔でしかない不安と迷いの種だった。

 

(こんな感覚は初めてで……どうすればいいのか全然わかんないっ……だけどっ、たぶん……!)

 

 目を開いて、歪み切った視界に彼の姿を収める。

 

(わたしが勝てばっ、イレギアはポケモン勝負を続ける——わたしを目標にし続けるっ……! ——勝たなくちゃ……!!)

 

 

 

 そうすれば、彼は自分を追いかけてくれる。自分も彼を追いかけられる——対等な関係でいられる!

 

 

 

 迷走と躊躇いの霞に包まれた思考の中……ネモはそう結論づけた。

 

 

 

 

 

勝たなくちゃ……

 

 

 

 

 

『負けたって得られるものはある!』

 

 

 

 

 

勝たなくちゃ勝たなくちゃ勝たなくちゃ……!

 

 

 

 

 

『ポケモン勝負はみんなで楽しまないと!』

 

 

 

 

 

勝たなくちゃ勝たなくちゃ勝たなくちゃ勝たなくちゃ勝たなくちゃ勝たなくちゃ勝たなくちゃ勝たなくちゃ勝たなくちゃ勝たなくちゃ勝たなくちゃ勝たなくちゃ勝たなくちゃ勝たなくちゃ勝たなくちゃ勝たなくちゃ勝たなくちゃ勝たなくちゃ勝たなくちゃ勝たなくちゃ勝たなくちゃ……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いいよどうせ負けるからポケモン勝負は』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝たなくちゃ————————っっ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………そして

 

「ぐおおおおおおおっっ…………! 戻れコモルー……!!」

 

「コモォ……っ!」

 

 《テラスタル》の冠が消える中、コートに伏せたコモルーはしかし灰色の空を背後に上から見下ろすポケモンを睨みつける……

 

「サザン、ドラ……」

 

 三つ首の竜、きょうぼうポケモン——短く鳴いたサザンドラがそこで羽ばたいており、コモルーは呻くだけで何も言い返せずに気絶してしまった。

 

ポケモントレーナーの ネモに 敗北した……

 

「やった…………やったやった……!」

 

 自然とネモの口から笑みと歓喜がこぼれる……何よりも嬉しいと思える瞬間だった。

 

(これで……! これでまだイレギアはわたしに挑んでくれる……まだわたしとライバルでいてくれる……っ!)

 

 当初の目的を果たし、握った両手を振っては喜びを表していく……

 

 

 

「……マジかよ」

 

 

 

 ……ふと、観客から驚嘆の声がこぼれるのをネモは聞き取った。

 

 

 

「え……終わった……?」

 

「あんちゃんのポケモン……最後にいつ攻撃した? というか攻撃当たったのか……?」

 

「さあ……だってそもそも、嬢ちゃんのポケモンが交代されまくった辺りからおれもこんらんしちまって……」

 

「これがチャンピオンランクの実力ってことか……いや、やりすぎじゃねえのか?」

 

「…………あ」

 

 

 

 ネモの背筋が凍り付いた。喉が一瞬で乾ききったのを感じた。

 

 

 

「ああ……え、あ……っ」

 

 

 

 

 

「私だったらポケモン勝負辞めるな」

 

 

 

 

 

「ちがっ……わたしは……!」

 

「————」

 

「そんな、つもりじゃ……!!」

 

 俯きながら肩を震わせるイレギアを見て荒くなる呼吸、脳裏には走馬灯のように過去が通り過ぎていく——

 

 

 

 

 

「チャンピオンと戦うのはちょっと……」

 

 

 

 

 

「ネモさんは才能にも財力にも恵まれてて羨ましいなあ」

 

 

 

 

 

「生徒会長がいると友達とポケモン勝負楽しめないんだよ」

 

 

 

 

 

「こんなに努力しても、やっぱり天才には勝てないのか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だったらもう……いいや、ポケモン勝負は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちがう……ちが——っ!」

 

ちっくしょ~~~~っっっ!!」

 

「————っ!?」

 

 イレギアから放たれた絶叫に、ネモは思わずたじろいでしまう……

 

「これがネモの全力なのか……それとも俺が浮かれすぎた結果なのか……どうにしたってもやっぱつえーでスター!!」

 

「……え?」

 

 スーパーイレギアはコートの残ったままのサザンドラの横を走り過ぎてネモにまで近づいた……きょうぼうポケモンは静かに笑みを浮かべる。

 

「スーパーな俺になっても追いつけねえ……さっすがだなネモはっ!」

 

「え……ええ???」

 

 予想外のイレギアの反応に、ネモの頭は疑問符で満たされていく。

 

「あ、れ……あれ、わたし……本気でやったのに……?」

 

「ん? そりゃバトルなんだから本気になって当たり前だろ? なんか今日のネモ、言っちゃ悪いが変でスター? バトル始める時も『実りある勝負を』……って言ってなかったし」

 

「あ……」

 

 自分でも気づいていなかったことに、ネモは思わず声がこぼれてしまう。そしてこぼれてものが更に感情に押し流され、溜まっていた疑問符と共に言葉となって紡がれる。

 

「その……イレギアは、さ」

 

「ん?」

 

「……悔しくは、ないの?」

 

 自分でもどうして、何のために聞いたのは分からない質問。後悔が言った後に込み上げてくるも……

 

「そら悔しいさ。勝つ気でやってるんだから」

 

 ——しかし彼は何も思わず淡々と答えた。その答えに、ネモはまた疑問符を募らせる。

 

「こんな……一方的な戦いだったとしても?」

 

「それはネモが強かっただけだろ? ……そんなことよりも、だっ!」

 

 ネモの疑問を押しのけて、イレギアは再びリーゼントを掻き上げて人差し指を彼女に突きつける。

 

「そんなこと、って……」

 

「ああそんなことだぜ! 何よりお前が変だと思うのは——ネモが全然楽しそうじゃなかったことだッ!

 

 イレギアが告げたのは、今のネモにとって何一つ考えていなかったこと。

 

「楽し……そう?」

 

 しかしそれは、ネモがポケモン勝負において何よりも大事だと考えていたこと。

 

「そうでスター! 最初から最後までなぁんか抱え込んでる感じで、まったくもって楽しめてなかった感じだったぞ? そんなの全然ネモらしくねえ!! 何よりポケモン勝負を楽しんでるのがネモ……だろ?」

 

 不敵な笑みで説く彼に、ネモの心臓の高鳴りは収まっていく……

 

「……そっか。そう……だったね……!」

 

「もうめちゃくちゃ心配だから聞いてやる! どうしたんだ何かあったのか? 生徒会長の仕事もあるだろうしチャンピオンランクだから挑戦者もわんさかで大変なのは分かる——でもっ! そんな暗い顔のネモは俺が嫌でスター! ネモにはいつでも笑顔でいてほしい! 俺はいつでも楽しそうなネモが好きだ!! だからネモがなんか嫌なことがあったら俺が聞いてやる! 戦りたくなったらいつだって応えてポケモン勝負してやる!! なんたって俺はッ、泣く子も笑うスター団でスター!!」

 

 イレギアは再度、迫真のスター団ポーズを披露する!

 

「ふふふっ…………アハハハハハハハっ!! ハハハハハハハハハっ!!」

 

 励まし続けるイレギアに、ネモは思わず腹から声を出して笑ってしまう。周りの声なんて……もう聞こえない。

 

 

 

 ——そうだ。

 

 ——イレギアにとってわたしは最初から、『超えるべき目標』じゃなくて『ポケモン勝負の強い友達』だったんだ……!

 

 

 

「おっ! なんだかわかんねえけどっ、その顔はなんか解決したみたいだな! さすが俺ってば人気者だスター!!」

 

「アハハっ! うんうんっ、イレギアらしい……!」

 

「へっへっへっ……! そう言ってもらえて嬉しいぜ! 何よりもネモに言われてなっ! だから……もう一回バトルしようぜ!! 今度は楽しくな!!」

 

「うん……うんっ!」

 

 すっと息を吸って、空を仰ぐ——嬉しいけれど、少し切ない。しかし胸の中は霞が残っていながらも光が差し込んでいた。

 

(友達……か)

 

 市場の天井はすりガラスが覆っているが、それでも——雲間に見えた太陽は、すりガラス越しに輝いて見えた。

 

(今度、勉強でも教えてもらおうかな)

 

 より輝いて見えるのは、視界が潤んでいるためだろうか。




そんなわけで5匹目はシビシラスとなりました。『鰻登り』だし彼いつもシビルドン登りっつってたんで採用となります。なるたけ既存のキャラが使ってるポケモンは使いたくなかったんですけど、ギャラドスの時点でクラベル校長が使ってるんですよねえ。

……ってか今までの手持ち見返したら全員物理寄りじゃねえか! キョジオーンで詰むやつやん!
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