最初に出会ったスター団のしたっぱがネモによく効く向上心の塊でものすごいアホだった   作:うみじゃけ

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12.シビシラスの奇策!喜怒驚楽……マスターイレギアヘ!

 

 

 

—ピケタウン バトルコート—

 

 

 

「バトルの観戦しようと見てみたら……」

 

 バトルコートで戦っていた2人を見て、アオイは肩を竦めた。その顔にはコライドンと同じく笑みが溢れている。

 

「ちっくしょーっ! まーた負けちまったぜ〜!!」

 

「あははっ! 楽しかった〜! ……あっ、アオイー!」

 

 悔しがるイレギア――思えば髪型が元のオールバックに戻っている――の対面にいるネモがキラキラした満面の笑みでこちらに手を振ってくる……少し前までどこか暗い表情をしていたけど、どうやら『なやみのタネ』はなくなったようだ。

 

「なにっ!? おおっ、こんなところで会うなんて偶然だな! ネモの次はお前と勝負だぜ!!」

 

「相変わらずバトルジャンキーだね2人とも。仲も良さそうだし」

 

「アギャッ?」

 

「……うん。時間もあるしちょっと戦おうかな」

 

「よっしゃあ!! へっへっへっ……! なんせアオイには1回勝ってるからなっ! このまま戦績を伸ばしてやりまスター!! それと出てこいモトトカゲー!」

 

「アギャ!」

 

「なんか顔にペイントされてる……(ウロコの色は違うけど半分くらいコライドンになってる?)」

 

「向こうでコライドンと遊んでていいぞ〜!」

 

「アギャギャ!」

 

 こちらに近づいてくるモトトカゲにコライドンは笑みを浮かべてうずうずしながらアオイに振り返る。

 

「アギャ?」

 

「うん。遊んでていいよ」

 

 コライドンから降りたアオイは彼の背中を撫でて後押しするのだった。

 

「アギャッギャーッ!」

 

「ギャーッ! ギャーッ!」

 

「そういえば……イレギアさんリーゼント、止めたんですか?」

 

「ん? おう。なかなか手入れが難しいしセットに時間かかりまくるからな……アレを維持できるってのは相当なヤベーぜ。ネルケにゃ尊敬もんだな」

 

(…………あれ、カツラだと思うけど)

 

「ともかくッ……ネモと戦って鍛えた俺の成果、ぶつけてやりまスター!!」

 

 イレギアはいつもと変わらない迫真のスター団ポーズを披露する!

 

 

 

 

ポケモントレーナーの アオイに 勝負をしかけた!

 

 

—BGM 戦闘!スター団—

 

 

アオイ●●●●●◯VSイレギア●●●●●◯

 

 

 

 

「先発はお前だぜ! 任せたぞシビシラス!!」

 

「おっ、新しいポケモン……ならこっちもっ、出番だよグレンアルマ!」

 

「グレンアルマか……ってことはオレの渡した落とし物が役に立ったってことだなっ! 後輩のためになる先輩……やっぱ俺ってば人気者に相応しいぜっ!!」

 

「(元々持ってたとは言えない)……やっちゃってっ、『サイコショック』!」

 

「ボウ——……!」

 

 アオイに応えるように、グレンアルマはエスパーエネルギーを礫として物質化させて自身の周りに出現させていく……!

 

「そんならこっちも迎え撃てシビシラスっ! 『チャージビーム』!!」

 

「ビビビッ……!」

 

 イレギアの指示通り、シビシラスはでんきエネルギーを体内に溜め始めた!

 

「そうだぜ! 狙いを定めて溜めまくれ!」

 

「ビビビビッ……!!」

 

 シビシラスの口元が鮮烈な火花を散らしていく……!

 

「よっし! そろそろドカンだ『サイコショック』を掻き消して……」

 

「ビビビビビビ…………ッ!!!」

 

 それでもシビシラスは溜め続け——!!

 

「溜めすぎだ〜〜〜〜!!」

 

 シビシラスは無惨にもエスパーエネルギーの礫に襲われてしまう!

 

「ビッ——!」

 

 しかしシビシラスの身体が眩く輝くと——溜められていたでんきエネルギーがシビシラスの全身から解き放たれられる!

 

「ボウッ!?」

 

「アババババババババ——ッ!!」

 

 アオイの盾になったグレンアルマと真後ろにいたイレギアに感電してしまうのだった。

 

「すごいっ! まるで『ほうでん』……!」

 

 観客に紛れて見ていたネモが思わず感嘆としてしまうほどの電力量だった……しかし実際、無秩序な電撃なためスゴクアブナイ!

 

バババ……——はっ!」

 

「黒焦げなのにピンピンしてる……」

 

「なるほど……なかなかのアイディアだぜシビシラスぅ! 覚えていないわざを使おうとするそのセンス……さすが俺のポケモンだぜ!」

 

「うわあポジティブ」

 

「…………ビビッ!」

 

「たぶんドヤ顔して……——ん?」

 

 

……おや!? シビシラスの様子が……!

 

 

「シビビッ……——ッ!」

 

 シビシラスの身体が電撃とはまた違う輝きぬ包まれていき……!

 

「まっ、まさか……!?」

 

「おおっ! こいつはすげえ、やっぱ俺ってば運がついてるぜえ!」

 

「シビビーッ!!」

 

 

おめでとう! シビシラスは シビビールに進化した!

 

 

「うそぉ……バトル中に進化しちゃった……!?」

 

「すごいすごいっ! やっぱりイレギアは見てて楽しいな〜!」

 

「よっしゃノッてきたなシビビールゥ~ッ!! そんならっ、今回は試したいこと全部試してやる! 俺たちに着いてこれるかアオイ〜ッ!?」

 

「……だってさ。負けてられないよねグレンアルマ!」

 

「ボウボウっ!!」

 

 

 

 

 

 ……イレギアの奇想天外なアイディアが炸裂しまくり、時に大失敗、時にいい感じの成果を上げていった。

 

 そして——

 

「うおおおおおおおおおおお!!!」

 

「キィ〜〜〜〜!」

 

 イレギアの抑えを務めたのはご存知イキリンコ……だったが、

 

「気をつけてねフワライド……何にって思うかもしれないけど」

 

 アオイ3匹目のフワライドすらその光景に驚き半分引いていた。

 

 なぜなら——

 

「『ブレイブバード! 【はりきり】! 《テラスタル》! これに加えて遠心力のパワーをチャージだぜえ!!」

 

 イレギアが イキリンコの脚を掴んで物凄い勢いで回転しているのだ。

 

「ダゼー!」

 

 イキリンコはノリ良く回されていた。

 

「あっははっ! あっはははははははははは〜〜〜〜っ!!」

 

 ネモはもうずっと前から大爆笑だ。涙を浮かべて腹を抱え、手すりを叩いてのドツボにハマったヤツである。

 

「なんかもう来そうだから攻撃! フワライド、『シャドーボール』!!」

 

「プワ〜……!」

 

「お言葉に甘えて来てやるぜッ!! ぶっかませイキリンコ……『ブレイブバード』だぁ〜〜〜〜!!」

 

「キィ————ッッッ!!」

 

 ジャイアントスイングの要領で放り投げられるイキリンコ

 

 彼自身もひこうエネルギーによる大きな翼をはためかせ、フワライドが『シャドーボール』を放つより先に大激突ッ!

 

 エネルギーの衝突によって爆発が起こり、辺りに砂煙が立ちこめる……!

 

「よっしゃクリティカルヒットォ!! 俺が狙う分、さらに当たるかもなぁ〜っ?」

 

「フワライド……!」

 

 アオイは心配の声をかけ、イレギアが自身の作戦にうんうん頷いて煙が晴れるまで待っていると……

 

「フワ…………」

 

 そこには気絶したフワライドがコートに倒れており——

 

「キィ〜…………」

 

 その上に居たイキリンコもまた、《テラスタル》の光を散らして横たわっていた。

 

「なにィィィ————ッ!!? 体力は満タンだったはずだぜぇ————ッ!?」

 

「さっきの爆発……単なるわざのぶつかり合いじゃなかったってことだね」

 

 さんざん笑い合えたネモが丁寧に分析していると、イレギアが『はっ!』と気づいてから悔しそうに唸る。

 

「くぅ〜……【ゆうばく】か!」

 

「そうだけど……でもまさか、ここまでの爆発になるとは……」

 

 それだけではない。

 

 『ブレイブバード』は与えたダメージの3分の1を自身にも受けてしまう反動わざであり、フワライドのバケモノHPを全部削り切ったのも相まって物凄い反動を受けてしまったのである。

 

 

ポケモントレーナーの アオイに 敗北した……

 

 

「ちっくしょ〜……! まさか負けちまうとは……さすがはダークホースと名高いアオイだぜ!」

 

「始めて知った」

 

「初めて言ったからなっ!」

 

「…………はぁ」

 

「うんうんっ! アオイもかなり実ってきてる……!」

 

「ここ数日はネモと特訓してたんだが、それでもアオイにも負けちまったかぁ……!」

 

「いやあ……あんなハジケた上に勝たれでもしたらワタシの方が立ち直れないよ……」

 

「へっへっへっ……! さっすが俺だな! そんじゃまっ、俺はこの辺でナッペ山の攻略に向かいまスター! 次に会う時はジムを2つ攻略した後だろうな……」

 

「だね。残り2つのジム……気合を引き締めていかないと」

 

「ほえ? あと2つ?」

 

「うん。だって先にベイクタウンの方に行ったし」

 

「…………あっ!!」

 

「どうしたのイレギア?」

 

「おもっきし忘れてた!! ナッペ山は最後に攻略してえから取っておきてぇ……そんならベイクタウンにさっそく行きまスター!! モトトカゲも来ーいっ!」

 

 手早くスター団ポーズを披露したイレギアはコライドンとじゃれていたモトトカゲに呼びかける。

 

「ギャギャ! アギャスギャーッス!」

 

「アギャスギャーッス!」

 

「あっ、ちょっとっ……! ……行っちゃった」

 

「あははっ、イレギアは目の前のことに全力! ……って感じがいつものでしょ?」

 

「それは確かにそう……だけど、ネモってイレギアとずっと一緒だったの?」

 

「うん。最近はアカデミーで勉強教わったりー、テーブルシティでお買い物したりとか! もちろんっ、ポケモン勝負は1日何回も!」

 

「…………お付き合いなされてる?」

 

 アオイの純粋な質問に、しかしネモは満更でもなさそうに手を縦に振った。

 

「そんなんじゃないよも~……イレギアとはただの友達! そんなこと言ったらアオイだってペパーだっけ? あの人とべったりじゃん!」

 

「いやっ、別にペパーとはそんなんじゃ……っ」

 

 アオイは視線を泳がせて前髪を弄り始める。

 

「ん~? それはともかくっ、アオイもちゃんとアカデミーに行ってる? ペパーの方も全然授業に出てないみたいだし」

 

「それは…………うん」

 

「ふふふっ、勉強ならわたしが教えてあげるよ!」

 

「うん……ありがとうネモ」

 

(そう……イレギアとは友達、同士なんだもん)

 

(そういえば進化のヒント聞けてない……もう無いのかな)

 

 

 

—空飛ぶタクシー内 西1番エリア近郊上空—

 

 

 

「——つーわけで、俺は相変わらず元気してるぜっ! 写真もちょくちょく撮って送ってるだろ〜?」

 

 イレギアは空飛ぶタクシーに乗りながらアヤセと通話を繋げていた。

 

〈さっきも送られてきましたよ。シビビールの進化とか、デカグースが『こわいかお』しながら『かみくだく』したり、ギャラドスが『はねる』と『りゅうのまい』で暴れまくったり、コモルーが『まもる』で攻撃したり……イキリンコに至っては自爆特効って、相変わらずの先輩って感じでしたね〉

 

「だろだろだろだろ〜? お前も元気そうで何よりだぜ!」

 

〈まあそれなりに……誰かさんがカチコんでくれたおかげで、コーセーしてアカデミーで勉強してますよ。今度また勉強教えてくださいね。特に数学〉

 

「もちろんだぜ! 1年の内に3年の範囲を終わらせた俺の数学パワーは伊達じゃねえってな!」

 

「お客さんっ、もうすぐ着きますぜ!」

 

「分かりましたー! そんじゃあ切るぜ。バンドの方も頑張れよっ!」

 

〈知ってたんですか!? ……はい。それじゃ〉

 

「おーう!」

 

〈ああそれとっ! ネモさんと、仲良くしてくださいね~〉

 

「言われなくてもな、んじゃっ! お疲れ様でスター!」

 

〈電話越しでも……はい、お疲れ様でスター!〉

 

 

 

—アップルアカデミー 空き教室—

 

 

 

「先輩はやっぱり元気そうだ」

 

 スマホの電源を切って、アヤセはほっと一息撫でおろす。

 

 あれから何日か経って……ネモとイレギアの様子はかなり良好と言えた。それこそアカデミー内外では常に一緒にいて、アヤセ自身もネモの恋が成就したと思った……だが——

 

「ううん。イレギアとは友達同士だよ」

 

 彼女のその一言にアヤセは少し彼女を励ましたり慰めてあげたいとも考えたが、それはネモにとってなによりも嫌なことだろうと考えて胸の奥に留めることにしたのだった。

 

「おっ、なんだアヤセちゃーん。先に来てたんだ」

 

「まっじめ~……もしかしてサボり?」

 

「いやいやっ、ただチューニングしてただけですよっ!」

 

 イレギアは相変わらず忙しそうにしている。それも楽しんでるようだけど、あたしもこのままじゃいられない……なにかこう——学生っぽいことをしたいと思っていたときだった。

 

 

 

 

 

「——バンド、とか……やりませんか?」

 

 

 

 

 

「せっかくバンドのファン同士で集まったんですし……『ザ・ドガース』のコピーバンド! とかっ! 名前は後々決めるとして……とにかくなんかやってみませんか!?」

 

 

 

 

 

 あたしの一言で始まってしまったバンド活動。言った後にめちゃくちゃ恥ずかしくなったし、全員もう初心者中の初心者で人前なんてもってのほかだし、きっと大人になったら黒歴史になるかもだけど……それでも、

 

(人と何かやるって——先輩と出会わなかったら『楽しそうだな』で終わってたけど、やっぱりなんか——『楽しい』なっ!)

 

 スター団に勧誘してきた時にイレギアの言った『キラッキラな青春』とは少し違うかもしれないが、それでもアヤセの学校生活は『楽しい』が満ちていくことになるだろう。

 

(……ありがとうございます、先輩)

 

 直接言うと調子に乗りそうなので、心の中で感謝を告げた。

 

 

 

—ベイク空洞—

 

 

 

「——っしょっとお!! ……ふう、結構上がったな!」

 

 イレギアは絶賛、ベイク空洞の急斜面を身一つでよじ登っていた。

 

「『歩いてはいけません』って看板に言われたから走ればいいかと思ったけどこういうことだとはな……まっ、なんにせよ俺は止められないってこった!」

 

「コッター!」

 

 同調するイキリンコは手頃な岩に降り立った。さすがに崖登りをしている人間の頭に留まる気は無いようだ。イレギアなら普通に登りそうなものだが。

 

「そうともイキリンコ! ……いっそのことイキリンコに運んでもらえれば良かったんじゃね?」

 

「キィー?」

 

「…………試しに、運べるか?」

 

「ハコベル!」

 

 イキリンコが胸を張って鳴くや否や、イレギアの後ろから首筋を両足でしっかりと掴み……その小さな羽で大きく羽ばたいた——!

 

「おおっ!? 飛んでるぜイキリンコ!!」

 

「ヨユー! ヨユー!」

 

「おうおうおうおう! さっすがパルデアの空の王者だぜえっ!! そんじゃまっ、このままあのかがり火のところまで『そらをとぶ』!」

 

「『ソラヲトブ』!」

 

 その体躯からは考えられないほどの力強い翼で洞窟内を飛んでいく!

 

 それほどスピードは速くないものの、むしろ他に飛んでいるポケモンがおらず安全運転を優先しているため都合が良かった。

 

「うひゃ~っ、もう崖一個登っちまったぜ!! しかもこの辺ならポケモンたちが良く見える……最後の俺のポケモンに相応しいポケモンはいるかな~?」

 

 視力がファイアロー並みに良いイレギアが洞窟内のポケモンを俯瞰していく。

 

 チャーレムやアサナンが瞑想していたり、ハリテヤマやマクノシタが走り込みをしたり、ヨーギラスが岩や土を食べ進め、それをモノズが横から噛みついたり、ダグトリオがヤトウモリの群れから逃げたり……様々な自然模様が見られた。

 

「あのストリンダーたちジャムセッションしてる~! 記念に撮っとこ~」

 

 野生のポケモンが織りなす風景を写真に収めていると、頭上のイキリンコが声を荒げて騒ぎ出す。

 

「モースグ! モースグ!」

 

「あいよー! …………っとと、とうちゃーくっ! 助かったぜイキリンコ!!」

 

「キィー!」

 

 イキリンコはイレギアの頭に留まって元気に鳴き声を上げる。その声からもそれほど疲れていないようだった。

 

「う~んっ! 太陽の光が眩しい! さてまっ、ジム攻略と行きますかあ~っ!」

 

 

 

—ベイクタウン まいど・さんど—
 

 

 

 

「ぐおおおおおおおおおおおおおお…………っ!」

 

 テーブルに突っ伏したイレギアが苦しそうに悶えていた。やけ食いしたのかデカグースの分なのか、サンドイッチが何皿も食べ尽くされていた。

 

「キィー……」

 

「ちっくしょ~……めちゃくちゃ強えじゃねえかココのジムリーダー」

 

 ベイクタウンのジムリーダーリップは屈指の強さを誇っている。

 

「あれ……ウェーニバル?」

 

「……んぇ?」

 

「おっ! やっぱりウェーニバルじゃーん、おひさーっ」

 

 顔を上げたイレギアが目にしたのは2人組の学友であった。2人ともトレイに思い思いのサンドイッチを載せている。そして『ウェーニバル』とはイレギアのあだ名である。

 

「オヒサー!」

 

「マジじゃん。こんなとこでなにしてんだよ」

 

 隣の席に陣取った2人が含み笑いにイレギアに問いかける。

 

「ジム戦に完敗したとこ……お前らも?」

 

「いやいや、リップさんと戦えるほど強くないって。普通にココ住み」

 

「ほえー。そうだったんだ」

 

「そっちは最近、生徒会長と仲良いみたいじゃん。いいよなあ、ポケモン勝負いろいろ教えてもらってんだろ?」

 

「いや? むしろ俺が勉強とか教えてるぜ。なんせ俺は頼りがいのある先輩だからな!」

 

「そんならさ、また教えてくんない? スター団も解散してやることないから勉強してんだけど1年の時にやったこと全然できんくなって焦ってんだわ」

 

「そんなら大歓迎……と言いたいところだが、何よりまず俺はチャンピオンになりてえんだ。諸々はその後な。でもまさかここで負けちまうとはなあ……」

 

「あれ……意外。片手間にお悩み解決しちゃうウェーニバルがそんなに熱中するって……鬼畜ゲーに鼻血出してたとき以来じゃない?」

 

「…………まあまあ。途中でジム戦諦めた友達も居たけど、こいつは最後までやりたがるからね。それでも陰ながら応援してるよ私たちは」

 

「おうありがとな……イキリンコ! 最後に回したいけど、ナッペ山に特訓しに行くぞ!」

 

「イクゾー!」

 

 イレギアが出口まで駆けていくのに、イキリンコが後を追っていく。

 

「……それにしても、アイツってあんなに必死そうな顔するんだな」

 

「ウェーニバルなりに悩みでもあるんだろうけど……あいつってばすぐ自己解決しちゃうからな~」

 

 時刻は数分ほど遡る——

 

 

 

 

 

 

—ベイクタウン バトルコート—

 

 

 

「戻れっ、ギャラドス……!」

 

「ゴォォォ…………!」

 

 《テラスタル》の光を散らしながら、ギャラドスがイレギアの手持ちに戻されていく。

 

 

ジムリーダーの リップに 敗北した……

 

 

「ちっくしょーっ! まさか負けちまうとは……」

 

「でもイレギアちゃん、中々に筋がゴイスーだったわ」

 

 リップのフラージェスもまた《テラスタル》の冠を散らしながら、彼女について行ってイレギアの前にまで浮遊する。

 

「ホントですか!? 嬉しいっス……サイン貰ってもいいですか?」

 

「イレギアちゃんが勝ったらわざマシンと一緒にプレゼントしちゃう。だから頑張ってリップに勝つことね」

 

「マジっすか!? うおおおおおおおおおお————ぜってえ勝ってやりますからね!」

 

「ふふっ。マブいわね……でも——」

 

 言いながら、リップはイレギアの隣を通り過ぎる……瞬間、イレギアの鼻腔にはエスパータイプ特有の妖しげな香りが触れる。

 

「メイクアップアーティストのリップから見て、なんだかイレギアちゃんの顔はぎこちない。ジムテストの『喜怒驚楽エクササイズ』でも思ったけど——本調子じゃないんじゃない?」

 

「な……なにをいきなり~っ。俺はっ、いつだってマジでスター!」

 

「スター?」

 

 イレギアが面食らいながらも不安を振り払うようなスター団ポーズを披露する……それにリップはうっすらと微笑んだ。

 

「とにかくそれが解決することを祈ってるわ……それじゃ、お疲れ様でーす」

 

「…………」

 

 イレギアはポーズを決めたまま、綺麗な足取りでバトルコートを去るリップを見送っていく。

 

 

 

—ナッペ山 プルピケ山道—

 

 

 

「『この先 ナッペ山 登山道』——よし。こっからだな! 頼むぜモトトカゲ!」

 

「アギャギャス!」

 

「ヘルメットよし! ゴーグルよ——痛ってえ! イキリンコも良いか?」

 

「キィー!」

 

「そんなら出発でスター!」

 

 モトトカゲが斜面を進む中、イレギアは少し……考えていた。

 

(本調子じゃない……か。さすがジムリーダー、相手のこともしっかり見てやがるぜ。相棒のイキリンコにすら悟らせなかったってのに)

 

 イレギアはマリナードタウンでのネモとの戦いから考えていたことである。

 

(あの時のネモの苦しそうな顔……精一杯励ましてやって晴れたように見えたがまだ全然ダメだ。もっと……何か、ネモが心の底から『楽しい』って思えるような自分になるんだ。それこそスーパーな程度じゃ収まらない——ハイパー、いいや! マスターイレギアになってやるんだ————ッ!)

 

 ……彼の宝探しはまだ、終わらない。

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