最初に出会ったスター団のしたっぱがネモによく効く向上心の塊でものすごいアホだった 作:うみじゃけ
「よーし、一旦休憩だぜモトトカゲ。これから坂しかないからな、しっかり休んでおけ」
「アギャギャス!」
イレギアのモトトカゲはインディアン衣装が改造されてモコモコになっており防寒はしっかり整えられていた。
「おお? まーた発見だぜ謎コイン」
モトトカゲが昼寝する横で、イレギアがポケモンセンターのテーブルの下から金貨を見つける。
「なんでか知らねえけど集めたくなるんだよなあコレ。アオイに渡しちまったけどなんだかんだ500枚は集めちまったぜ」
「コイン! コイン!」
「ポケセンの上にもか! サンキューイキリンコ!」
ポケモンセンターの屋根からイキリンコが嘴に咥えた金貨をイレギアに渡し、再びいつものポジションであるヘルメットの上に留まった。
「なんならオレも集めるだけ集めてみるか……? それでもあんな小さいモンを見つけるにゃああの謎ポケモンが必要になるだろうし……ん?」
ふと置いておいたバッグを見てみると、手のひらサイズのポケモンが必死にジッパーを開いていた。
「キィー!」
「クレッ!?」
特性によるものではないにしても、イキリンコによる威嚇がそのポケモンへと浴びせられる。驚いたそのポケモンはその場に尻もちをついてしまった。
「確か……おう、コレクレーだったな!」
「クレ、コレー……」
【びびり】なコレクレーはイレギアに見つかった瞬間にそそくさと逃げていく——
「残念だが『とおせんぼう』だぜ!」
「クレ!?」
しかし大の字のイレギアに回り込まれてしまった! 臆病なコレクレーの逃げ足は並外れたものだったが、イレギアの方が明らかに素早い。
「そして『くろいまなざし』……!」
次はコレクレーにじめったい視線を浴びせる……コレクレーはそれに対して逃げずに震えていた。
「ワハハハハハハハッ!! 更に『すなじごく』!!」
その体勢のままイレギアがコレクレーを周りを回転! 決してコレクレーから目を離さないイレギアの靴の裏からは火花が舞っている。その姿は変態のそれに他ならない。
「これはもう『ほのおのうず』と言ってもいいかもしれねえ——そしてこれで終わりだ! 『まきつく』!!」
怯える様子のコレクレーの死角に回り込んだイレギアが襲い掛かる!
「クレッ! クレーッ!」
コレクレーは麻袋の中に捕まえられてしまう。彼はその状態のまま逃げるべくじたばた身体を動かしていた。
「へっへっへっ……! さぁて、こいつをどうしてやろう……!」
悪の組織のしたっぱめいた口調でイレギアがバッグの中をまさぐって別の麻袋を取り出す。袋の中には何かがぎっしり詰められていた。
「ほれ、コレクレーっつったらこのコインだろ?」
「コレー……?」
袋から出されたコレクレーが麻袋の口を開かれるのを見る……その中には輝かしい金貨がひしめき合っていた。
「はこは用意できないし他のコレクレーから奪うのはやぶさかだし、ここなら安全だろ? たっくさん集めたらどうなるか楽しそうだしなっ!」
「アンゼン! キィー!」
イキリンコもまた説得すると、コレクレーが少し逡巡してから——
「コレ、クレッ!」
コインが詰まった袋の中にコレクレーが飛び込んだ。苦しくないのかコインの中で泳いですらいた。
「そんならこの袋はバッグから出した方がいいな。イキリンコは話相手になってやれ、オレの武勇伝を語って俺の凄さを叩き込んでやるんだ……!」
「キィ」
納得したのか分からないがイキリンコが短く鳴いた。
「アギャッ!」
「起きたかモトトカゲ! そんじゃあ出発と行くが……ほれっ」
バッグとは別に肩から下げた麻袋を開いてコレクレーの顔を出させた。
「一時的に手を組んだコレクレーだ。仲良くやってくれ」
「クレ……?」
「……アギャス!」
「クレー……!」
元気よく挨拶したモトトカゲにびびってコレクレーがコインの奥に隠れてしまった。
「アギャ~……」
「ワハハハハハハハ! これから仲良くしてな!」
イレギアが2匹を笑い飛ばして、モトトカゲに乗り込んだ。
「モトトカゲは焦らず安全第一、コレクレーはコインを見つけたら呼んでくれ」
「アギャギャス!」
「クレーッ!」
「キィー!」
「イキリンコもっ、もしもの時は任せたぜ! ——そんじゃまっ、ひとまず行き先はフリッジタウン! 行きまスター!!」
新たな仲間を引き連れて、イレギアたちは駆けていく。
「んん~っ! 初めてナマでライブ見たけどっ、ホントに心が震わされたっていうか……!」
ジム戦を終えたアオイが自動ドアから身体を伸ばしながら現れる。その顔は実に喜びに満ち溢れていた。
「だろ? さすがはゴーストタイプのジムリーダーだよな!」
「だねっ…………——誰だお前は!」
「アカデミーの人気者——ワナイダーマッ!」
「——じゃなくて俺でスター!」
「それは見てわかるけど……あの、寒くないの?」
アオイは雪山に登るのもあってか制服を冬服に変えているが、イレギアは変わらずスター団の衣装のまま……つまり半袖のままであった。
「いや全然? むしろ涼しいって感じでスター」
「な、なるほど……あれ、その袋は……?」
イレギアの服装をジロジロ見ていると、見かけない袋をバッグとは逆の肩にかけられている。その麻袋は時々もぞもぞうごめいていた。
「ああこれか? ……ほれ」
イレギアが差し出した袋の口を開くと、たくさんの金貨とその中から鈍い銀色の小さなポケモンが姿を表す。
「コレクレーだ。でもはこじゃない……」
「人呼んでとほフォルムだな! コインを集めようと思い至った時に見つけて縁があったからこうして仲間になったってワケだ。どうせなんのためのコインか知らねえから、コレクレーが満足するまでは一緒に行動してんのさ!」
「へえー……」
ワンチャンまたコイン欲しかったなとアオイは思った。
「ここに来るまで何十枚も見つけたぜ。途中で道を間違えたりしたが……魂に響くビートに導かれてここにまで来れまスター! ……あっ、ジム戦終わりに写真撮ったろ? 見せてみ」
「え? えーっと……」
アオイが先ほどスマホロトムで撮った写真を映す……ライムの特別ライブの光景を切り取ったものだった。
「ほら、ここ。俺がいる」
「…………あ」
アオイが絶句してイレギアが指差す方を丸まった瞳で見てみると……ヘルメットにスター団マークが刻まれた青年が観客に混じって盛り上がっていた。
「うわあホントだ……」
「アオイが戦っている辺りで到着してよ。見つけて話しかけようかと思ったら音楽にノッちまって! どうやら俺の声援も届いてたようで嬉しいでスター……!」
「…………」
アオイはポケモンのステータス上昇にイレギアが関わっていたことに複雑な思いになった。
「そういえば、ベイクジムをもう攻略し——……あらら」
話題を逸らしてアオイが問いかける最中、イレギアは見るからにうなだれていく。
「それが物凄い強さでよ~……調べてみたらライムさんよりも強いんだと! とんだ勘違いだスター!」
「ありゃりゃ……無駄足だったってこと?」
「いんや? むしろ俺にとってはコレクレーに出会えたし有益と言える……そういうわけで俺とバトルだスター!!」
「疲れたからやです」
「残念だったな——人気者からは逃げられない! 『とうせんぼう』に加えて『くろいまなざし』!」
イレギアがアオイの前に大の字になってじめったい視線を浴びせる……!
「うわっ、なんか逃げる気なくなる……」
「そして『すなじごく』! 『ほのおのうず』!」
その状態のまま目を離さず、どうやってかアオイの周囲を回転する! なお『すなじごく』として立ち込めるのは砂ではなく雪なのだが、『ほのおのうず』としてまたまた火花が舞っている。
「え、どういう原理!?」
その光景にアオイはひたすらに引いていく。周りの人々はなんだなんだと面白がっていたが、イレギアが突如として飛び跳ねる!
「そしてこのまま『まきつく』で終わらせてや——」
「『デンコウセッカ』ダ!」
「ほげぇぇぇぇぇぇ~~~~っ!!!」
しかしそこをモンスターボールから飛び出したイキリンコの『でんこうせっか』によって吹っ飛ばされ、幹の太い木に激突する!
「たたたたたたたたっ!!」
その後、木の上に降り積もった雪がイレギアの元に降り注ぎ——見事なまでのユキカブリ型の雪だるまが完成する。拍手が生まれた。
「ウソぉ……」
「これも俺の為せるわざでスター! それにさっき有益になったって言ったろ? 思い出したんだよ……」
「何を……ですか?」
「俺は天才だってなッ!!」
「…………はあ」
イレギアに振り回されるのはもう慣れかけていたが、それでもアオイは溜め息を零してしまう。
「さって、ここまで来て受けねえなんて言わねえよなあ~っ? 登山で鍛えた俺のポケモンを見せてやりまスター!!」
『ドーン』と雪だるまを内側から破壊してイレギアが飛び出し、迫真のスター団ポーズを披露する!
「…………はい」
断られる雰囲気ではなかった。
バトルコートはフリッジタウンのものを借りて、2人はコートの両端に立って向き合う。
「そこで見てなコレクレー! 俺の雄姿をしっかりと目に抑えるんだなっ!」
「クレ~ッ!」
コレクレーは袋の中に入ったまま音響機器の上に置かれていて、しかしイレギアを精いっぱい応援している。
「ナッペ山の登山で鍛えた俺のポケモンたちを見せてやりまスター!!」
気合いっぱい、イレギアは迫真のスター団ポーズを披露する。
「出てきてケンタロス!」
「今回はお前からだぜギャラドス!」
「う……ギャラドスから……」
「へっへっへっ……! 俺は最初に繰り出すポケモンを変えてるからなっ!
ギャラドスがケンタロスを【いかく】する——ケンタロスの攻撃が下がってしまった!。加えてアオイのケンタロスはほのおタイプなためギャラドスには相性が悪かった。
「さーてどう攻めるアオイ……!」
「……ふふっ、残念だけどこのまま攻める! ——ケンタロス、『ワイルドボルト』!」
「なにっ!?」
アオイが不敵な笑みとともに予想外のわざの名を叫んだことに余裕ぶっていたイレギアがたじろぐ。
「タロォォォ……!」
「ゴゴッ…………」
迸る雷気に恐れるギャラドスに対し、好戦的なケンタロスの全身がでんきエネルギーを纏っていく……そしてその巨体をギャラドスへと突っ込ませる!!
「——なんてな! ピンチはチャンスだぜギャラドス……《テラスタル》だスター!!」
「しょっぱなから《テラスタル》!?」
「俺は天才だからな! 最後の切り札じゃなくっ、相手が最も驚くタイミングで使ってやるぜえ!!」
ケンタロスの電撃突撃を星型ゴーグルの上から見ながらもイレギアは《テラスタルオーブ》に光を吸収させ……溜まったエネルギーをギャラドスに向けて解放する!
(みずタイプになってダメージを軽減……【いかく】で弱まった攻撃力を耐える気かな?)
果たしてギャラドスの頭部に《テラスタル》の冠が飾られる……アオイが予想した通りの青い噴水型——
——ではなかった!
「驚いたかッ!! 色とりどりな花の冠——くさタイプに《テラスタル》だぜ!!」
「ええっ!?」
「弱点のでんきタイプといわタイプへの対抗策だスター! 授業で習わなかったかあ~っ!? そのまま受け止めろギャラドス!」
「ゴゴォォォッ!!」
ケンタロスの『ワイルドボルト』がギャラドスに命中する! ……しかしくさタイプとなったギャラドスにとってはあまり効いていないようだった。
「くう……でもくさタイプなら『レイジングブル』で——!」
「これで終わりだと思ったか?」
「…………え?」
ケンタロスが反動を受けている間、ギャラドスに浴びせたでんきエネルギーがその巨体に吸収されていき……!
「ゴゴゴォォォォォ————————ッ!!!」
「え、ええ……!?」
「『じゅうでんち』——どーよ! 俺は天才だからポケモンにもちものを持たせてるんでスターッ!! そのまま『りゅうのまい』で更に高めろ!!」
「ゴ、ゴ、ゴゴゴ……ッ!!」
「きのみとかはピケタウンでも持たせてたけど、まさか『じゅうでんち』って……! 急に……戦法が、ガチすぎる…………ッ!!」
アオイの額に玉のような汗がにじみ出る。雪山の中だというのに身体が熱くてたまらない!
「へっへっへっ……言ったろ? 俺は天才だってなッ!!」
アオイは初めてイレギアの不敵な笑みが恐ろしく感じた。
——そして時は流れ……
「うっ……戻ってメラルバ……!」
「メッバ……!」
アオイのメラルバが《テラスタル》の冠を散らしながらコートに倒れ伏す……
「ワハハハハハハハッ!! 今の俺はハイパーイレギアだスターっ!!」
「スターッ!!」
「クレッ、クレーッ!」
子どもじみた動きで喜びまわるイレギア。頭上にはイキリンコが輪をかけて飛び回っておりわ足元には麻袋を引きずってコレクレーも集まっていた。
「「「オオ————————ッッッ!!」」」
バトルを観ていた人たちも2人に歓声を上げて拍手で讃えていた。
「ありがとう! どうもありがとう! ラップは出来ねえけどどうもありがとうー!!」
気分を良くしたイレギアがステージを歩き回ってファンサービスしていく。迫真のスター団ポーズも受け入れられていた。
「お疲れ、メラルバ」
「……メララ」
「メラー!」
アオイに抱きしめられたメラルバは、イキリンコを睨みつけて恨みがましく睨んだ。それに対してイキリンコはヘルメットの上に留まって誇らしげに胸を張っており、メラルバの声真似までして煽っている。
メラルバにとっては【はりきり】イキリンコの『ブレイブバード』を避けたと思いきや、彼のもちものが『からぶりほけん』であったため、それを目で追うこともできずに倒されたので相当堪えたようだ。
「メラ! メメラ!」
「ふふっ、ゆっくり休んでね」
アオイは今にもイキリンコに飛び掛かりそうなメラルバに優しく微笑みかけて彼をモンスターボールの中に戻す。
「へっへっへっ……! このバトルで使った戦法は、ネモとあれこれ話しているうちに編み出した秘策の1つだぜ! ピケタウンでは相手のさらなる意表を突くための戦法を磨いたんだスター!」
「……初めて先輩を尊敬したかも」
「いつもしてろっ! ……だがもちものってのはポケモンにとってものすごーく重要なアイテムだ。もちものを持たせないと進化しないポケモンだっているからな……先輩からのアドバイスでスター!」
「それは、素直にありがとうございます」
「へっへっへっ……また後輩に優しくしちまったぜ。人気者は忙しいなあ~っ? そんじゃまお疲れ様でスター!!」
帰り際にもう一度スター団ポーズを披露して、イレギアは繰り出したモトトカゲに乗って去っていった。
「元気だな~いつもあの人は」
嘆息まじりに尊敬にも似た感想を呟いた。
「ええっ!? マジですか!?」
「はいっ。ジムリーダーライムから、観客を大いに盛り上げたとしてジムテストクリアとのことです!」
「おっしゃあ!! さすがすぎるぜ俺ぇ……!!」
調子に乗りまくっていたスーパーイレギア同様、不敵な笑みで自画自賛を重ねていく……なぜかリーゼントを撫でる動作をしていた。
(……でも、さっきの戦法はあんまし安定しないだろう。アオイの顔を見て何かしらの対抗策があると察して、かつでんきタイプだったからこそハマったもの……それじゃネモには通用しない)
しかし真面目な顔で先ほどのバトルを省みて……イレギアが両頬を叩いて気合を入れ直す!
(意表をついて驚かせてワンチャンの勝ちを掴むんじゃないッ……もっと絶対的に勝たなくちゃネモを本当に満足なんてさせられない。マスターイレギアにはなれない!)
彼の心に勝利への渇望や楽しむといった感情とは違った——何か、霞がかった思いがあったのだった。
《テラスタイプ》を変えることに関しては元スレでも言われてたのでこの辺で使ってみましたが、じゅうでんちギャラドスについては動画で見たのが面白かったので採用しました。でんきタイプがランクマで流行ったら実用的になるかも。