最初に出会ったスター団のしたっぱがネモによく効く向上心の塊でものすごいアホだった   作:うみじゃけ

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今更ながらどのメインキャラともポケモンが被らない選出にすると——
・デカグース
・イキリンコ
・ボーマンダ
・サーフゴー
(ここまで確定してる)
・キマワリ⇄ギャラドス(進化前が弱い枠)
・マルマイン⇄シビルドン(でんきタイプ枠だけど、マルマインは再戦ナンジャモが使ってくるから『道を照らす』意味でデンリュウかウルガモスが良いかもしれん)
……わりと良さそう。


14.ナッペ山から大空へ!チーム・ルクバーに捧げるGet Wild

 

 

 

—ベイクタウン バトルコート—

 

 

 

「ぶちかませデカグースゥ……『かみくだく』!!」

 

「グゥゥゥゥ————————ッッ!!」

 

 あくタイプに《テラスタル》したデカグースの黒い牙がフラージェスを噛み砕く——! エスパータイプになったフラージェスにはこうかはばつぐんだ!

 

「フラー……」

 

「お疲れフラージェスちゃん」

 

 フラージェスは《テラスタル》の光を散らしながらリップに回収される。

 

 

ジムリーダーの リップに 勝利した!

 

 

「よくやったぜデカグース! 今日はお前がMVPだぜえ!!」

 

「グーグー!」

 

 イレギアがデカグースに抱き着いていると、リップが身体に刻みついたモデルウォークで歩いてくる。

 

「あくタイプに《テラスタル》するのは前回も知ってたけど……今回はみんな動きにキレがあったわ」

 

「あざます! おかげで迷いが晴れました!」

 

「そう……かしら」

 

 リップが訝し気な視線を飛ばすイレギアはいそいそとバッグからサイン色紙を取り出していた。

 

 

 

—ベイクタウン ポケモンセンター前—

 

 

 

「お疲れ、イレギアっ」

 

「あれ、ネモじゃねえか」

 

「ナンデ?」

 

「グルル……♪」

 

 イレギアとイキリンコがやんややんやしていて、その横でデカグースがサンドイッチを食べ歩く姿を見たネモがうっすらと笑みを浮かべる。

 

「クレー?」

 

 親し気なイレギアの声に反応して、肩から下げた麻袋の中からコレクレーが顔を出した。

 

「おう紹介するぜコレクレー、こいつがネモ! 俺の……ダチだな!」

 

「コレクレーもゲットしたんだっ、よろしくね~」

 

「ゲットじゃなくてまあかくかくしかじか——それでなんでここに?」

 

「アオイとナッペ山ジムで出会ったときにもしかしてって思ってきたらイレギアに会えてさ。ここに来るだろうから待ってたの」

 

 『わたしに内緒でポケモン勝負してたのはむむーっってしたけど……』と付け加えているうちにイレギアが彼女の言葉に食って掛かる。

 

「なに!? アオイのやつもうジムリーダー制覇したのかよ~……こうなったら俺も早速ナッペ山に直行だぜ!」

 

 イキリンコやデカグースをモンスターボールに戻してポケモンセンターに預け、その間に空飛ぶタクシーを呼ぶことにした。

 

「それと……見てたよジム戦。すっごいバトルだった!」

 

「だったろ~? 今日も戦いてえところだったが、アオイにも負けてらんねえ! それにどうせここまで来たんだ……戦うならチャンピオン同士で戦いたい!」

 

「チャンピオン同士……そうなったらわたしたち、本当にライバルになっちゃうねっ」

 

「ライバル……か」

 

 照れくさそうにヘルメットを摩るイレギアだったが、タクシーが空から現れたことで会話を中断する。

 

「それじゃなネモ! 次戦うときはチャンピオンになってからでスター!!」

 

 イレギアが別れ際にスター団ポーズを披露し、手を振るネモから遠ざかっていく。

 

「…………イレギアとなら、もう友達だけでも十分嬉しいのにな」

 

 彼に届かないようにひっそりと告げた。

 

 

 

—ナッペ山 ナッペの手—

 

 

 

「ん? アオイじゃねえか。こんなところで何して……観光か?」

 

「クレー!」

 

 麻袋からコレクレーが顔を出す。袋は一回り大きく見えた。イキリンコは寒さからボールの中にいる。

 

「うん、そんな感じです」

 

 ナッペ山を散策していたアオイはナッペの手辺りでイレギアとばったり出くわしてしまう。

 

「へっへっへっ……ここで会ったがなんとやらだ! 挑ませてやりまスター!!」

 

「特に予定もないし……やりましょう!」

 

 コライドンから降りたアオイもまたモンスターボールを構える。

 

「アギャ!」

 

「ギャギャ!」

 

 ライドポケモンの2匹が交流している隣で、イレギアが迫真のスター団ポーズを披露する!

 

 

 

 

ポケモントレーナーの アオイに 勝負をしかけた!

 

 

—BGM 戦闘!スター団—

 

 

アオイ●●●●●○VSイレギア●●●●●○

 

 

 

 

「出てきてサナギラス!」

 

「まずはお前だコモルー!」

 

 2匹の蛹じみたポケモンが向かい合うことになった。

 

「ネモに聞いたぜ、もうバッジ全部集めたってな! ちゃんとその実力になってるか俺が確かめてやりまスター!」

 

「それならこっちも全力で——(もちものは変えてるだろうから前の戦術と同じじゃないはず……ならまずは様子見!)サナギラス、『てっぺき』!」

 

「ギラッ!」

 

 サナギラスが全身の殻を更に硬化させる……しかしイレギアは不敵な笑みを浮かべていた。

 

「へっへっへっ……残念ながら悪手だぜ! コモルーッ、『きあいだめ』だ!」

 

 

コモルーは はりきっている!

 

 

「コモモ……!」

 

「さらに優しい俺は自白しちまうがコモルーのもちものは『ピントレンズ』……このコモルーに能力変化は通用しねえぜ!!」

 

急所特化……!?」

 

「さあ! アオイをぶっ倒してマスターイレギアになってやるぜ————————ッ!!」

 

 

 

 

 

 その後——

 

「ががががが……戻れシビビール」

 

「ビビビッ……!」

 

 

ポケモントレーナーの アオイに 敗北した……

 

 

「ふぅ……なんとか勝てた」

 

「ミドォ……!」

 

「ドラミドロもありがと、お疲れ様」

 

 イレギアの戦法に翻弄されながらも、アオイは辛くも勝利を収める。

 

「ちっくしょ~っ! まぁ負けは認めてやる……それと今回はこのナッペの手について教えてやろう!」

 

「ナッペの手……看板で見かけたけど、どの辺が手なの?」

 

「ほれ、この二股に分かれた部分がポケモンの手に見えるだろ?」

 

「あー…………なんとなく?」

 

「ワハハハハハハハ! ハッサク先生もがっかりするかもって言ってたし……言ってなかったか?」

 

…………

 

「まさか……まだ授業受けてねえのか?」

 

「宝探しが終わったら受けようかな……って」

 

「……まっ、やりたいことを優先できるのは学生の特権でスター! でもハッサク先生の美術は受けるべきだぜ。俺ってば最初の授業で泣いたもん」

 

「そんな感銘を……?」

 

 ちなみにその時ハッサク先生も号泣したらしい。

 

「二年生になったあたりで人生に迷っててさ、新任でアカデミーに来たハッサク先生が色々と導いてくれたんだ。それで単位は取り切ってたけどあの先生の授業は受けてみたいって思ってな」

 

「ハッサク先生の授業……四天王としての姿しか知らなかった」

 

「それ宝探ししてる途中で知ったぜ! だがこの宝探しの成果をハッサク先生に返せるって考えたら、もう……な!」

 

 イレギアが腕を組んでうんうん頷く……言葉に出来ない感動を身体で表していた。

 

「あとは単純にバトル学あたりを改めて受けてるから、アオイが授業受ける時はもしかしたら会えるかもな! それじゃあオレはこの辺で……お疲れ様でスター!! いくぞモトトカゲ!」

 

「アギャス! アンギャギャーッス!」

 

「アンギャギャーッス!」

 

 コライドンがいつものように走り去るモトトカゲに再会の誓いを叫んだ。

 

「…………寒くないのかな」

 

「おおっ、コイン見つけたかコレクレー!」

 

 ナッペ山には雪が降り始めていた。

 

 

 

—ナッペ山 ジム近く—

 

 

 

 ナッペ山ジムのジムテストは雪山滑りだが——

 

「イヤッッホォォォオオォオウ!」

 

 イレギアはスノーボードで挑んでいた。しかも物凄く上手かった。

 

「クレー!」

 

 コレクレーがイレギアの服の裾から顔を出して風を感じている。

 

「コレクレーも楽しいかっ! なら良かったぜ!」

 

 これまでの経緯としては——

 

 

 

 

 

「ナッペ山ジムのジムリーダーグルーシャはパルデアジムリーダーの中で最強だと……こりゃちょっと研究しねえとだな」

 

 ベイクタウンから空飛ぶタクシーで移動中、イレギアがスマホロトムでグルーシャのポケモンバトルを視聴していたのだが……

 

「うおすっげ! こんなパフォーマンスまで出来るのか!」

 

 いつの間にかスノーボーダー時代のグルーシャの世界大会の動画を見ていた。

 

「クレ、クレー!」

 

 それに食いついたのが、一回り大きくなった麻袋の中にいたコレクレーだった。

 

「なっ! スゲー人だったんだなグルーシャさん……いやっ、だったなんて言い方は良くねえっ! それにオレが挑むのはジムリーダーとしての——」

 

 イレギアがあれこれ言っている間もコレクレーはどこまでも楽しそうに雪の上を滑っていくグルーシャに心を奪われていた。

 

「ぼくに勝てるやつがいたら、いつでも挑戦受けてたつぜ!」

 

 その笑顔に、イレギアを重ねながら。

 

 

 

—ナッペ山 バトルコート—

 

 

 

「……もう一度聞くけど、その服でここまで登ったの?」

 

「はい!」

 

「腹が立つくらい良い返事……」

 

 薄着のまま準備体操を行うイレギアに対面したグルーシャは彼を睨みつけて溜め息を零す。

 

「ホエー?」

 

 そんな彼の姿をアルクジラは足元から見上げて首を捻る。

 

「なんでもないよ。でも……もしも事故に遭ったら、とか考えないのかい?」

 

「まあ考えはしますけど、万全の準備したってなるときはなるんですからどうしようもないかなって」

 

「そう…………あんたを見ていると、昔の自分を思い出す」

 

 グルーシャの視線がより冷たく鋭いものになる。

 

「昔の……自分?」

 

「自信過剰で、誰にも自分の歩みを止められないと確信していた……だけど、現実は一瞬でそれを雪崩みたいにかっさらっていく。跡形もなく、残るのは冷たくて真っ白な雪景色だけだった」

 

「……なるほど」

 

「あんたもぼくと同じような目に遭ったとして……そんときはどうすると思う?」

 

「俺は……俺は——!」

 

 先ほど彼の過去を知っただけに少しイレギアは逡巡するも……唐突にスター団ポーズを披露する!

 

「…………なに?」

 

「やっぱあんまネガティブなことを考えるのは性に合わない! いけるところまで行って、いけないで諦めるしかなくなったらそんとき別の道を考える! 今はとにかく目の前を見るっ! 改めてそう決めました!!」

 

 グルーシャは『そう……』と一言呟いて、モンスターボールを構える。

 

「……サムいけど、見習いたい部分ではあるかな」

 

「よっしゃ!! アオイ負けてさらに特訓したんだ……ぶっかましてやりまスター!!」

 

 

 

 

 

 そして——

 

「頑張ったねチルタリス……お疲れ」

 

「ぃよっしゃあああああああああああああ!!! ついにジム制覇だぜ!!」

 

 グルーシャがチルタリスを労う間、イレギアが心の底から喜びを体現していた。

 

「ぼくにも……あんな時期があったんだな」

 

 自分自身『サムい』と笑ってしまうが、その姿には懐かしいものを感じていた。

 

「説教じみたことを言った手前、負けたくはなかったけど……うん。あんたなら冷たい現実も乗り切れると思うよ。戦ってみて、少しそう思った」

 

「あざます! 褒めてもらったぜなあコモルー!」

 

「コモッ……コモゥゥゥ……!!」

 

 最後の切り札であったコモルーに話しかけるも、当の彼はなんだか悶え苦しんでいるようだった。

 

「どうしたんだコモルー……! どっか具合でも悪いのか……!?」

 

「いや……たぶん進化じゃないかな」

 

「進化!?」

 

「コモルーみたいな大器晩成のポケモンは進化すると強大な力を手にするから、進化する前はこうやって苦しむみたい」

 

「そうなんスか!? 頑張れコモルー! もうすぐだ耐え抜けッ……大空に飛び立つんだろ!!?」

 

「——モッ!」

 

 

 

 その言葉にコモルーはハッと気づく。

 

 

 

 長年の夢だった……イレギアの手持ちにいたイキリンコにまず憧れ、『すぐに飛べるようになるさ』と言われていたら、先にコイキングだったアイツがギャラドスになって空に飛び出した。

 

 

 

 尊敬する反面、羨ましかった。自分も早く飛びたかったのだ。

 

 

 

 空を飛んで……まずは、そうだ——彼を自分の背に乗せて……どこまでも飛んでいきたい!!

 

 

 

「コ……モル————————ッ!!!」

 

 

……おや!? コモルーの様子が……!

 

 

 雄叫びとともにコモルーの全身が光り出す……! かろうじて見てたシルエットには、丸々としたコモルーのボディから蛹から羽化する蝶のように羽が一対現れたのだ!

 

「いっけえコモルー! ——いいや! ボーマンダ!!」

 

 眩い光をイレギアはゴーグルもせず見つめ続け、彼の言葉に呼応するように『それ』は目醒める!

 

 

 

「ボォォォォォ————————ッッッ!!!!」

 

 

 

 赤い羽根を羽ばたかせ、雄大な四足で地に足をつけてナッペ山全土に届くような雄叫びが轟いた!!

 

 

おめでとう! コモルーは ボーマンダに進化した!

 

 

「かっけええええええええええええええええええええ!!!」

 

「うるさいな……」

 

 最高潮の喜びはイレギアのみならず、ボーマンダは進化したその喜びを表すようにその翼を動かして『そらをとぶ』——バトルコートに突風が吹き荒れる!

 

「ボォ!? ボォォォォ~~~~ッッ!!!」

 

 ——ここでボーマンダの図鑑を抜粋するが……進化して翼を得た喜びから大空を駆け廻っては地上を焼き払うのだとか。

 

「ボォォォ————————!!」

 

「おおっ! イキリンコ顔負けのスピードじゃねえか! ヤッベェぜボーマンダァ!!」

 

「……ごめん、撃ち落すね。アルクジラ、『こおりのつぶて』」

 

「ホエ~!」

 

 グルーシャの傍に居たアルクジラが冷静な彼の指示を受けてこおりエネルギーの結晶をいくつも素早く作り出し……すぐさま喜びで暴れているボーマンダに撃ち出す!

 

「ボォ!??」

 

 見事命中! 4倍弱点を突かれたボーマンダはあえなく撃ち落されてしまった……!

 

「うおっと!? 戻れボーマンダ!」

 

 バトルコートに落とされるより早くイレギアがモンスターボールに回収した。

 

「ふぃ~……! いや~、すんませんっ! 俺もはしゃいじゃって……!」

 

「気持ちは分かるけど……雪山で暴れられたら何が起こるか分からないからね。そういうのが収まったら——また来てもいいよ」

 

「はい! またいつか!」

 

「腹立つくらい良い返事……」

 

 マフラーの中で淡く笑みを浮かべるグルーシャだった……が、ふと足元を何かに触れられる。

 

「ん? ……コレクレー?」

 

「コ……! コ、ココッ…………クレー!!」

 

 コレクレーが両手を広げて何かをアピールするも、グルーシャは小首を傾げるばかりだった。

 

「えっと……あんたのポケモン?」

 

「まあそういうことになるんですかね……ともかくそいつ、グルーシャさんのファンなのかもしれねえんで良かったら握手してあげてください!」

 

「握手…………これでいい?」

 

 グルーシャはしゃがんでコレクレーに向き合い、震える彼の両手を手袋越しに握ってあげた。

 

「クレー! クレ~ッ!」

 

「喜んでる……のかな」

 

 バトルコートを跳ねまわるコレクレーにそう結論づけた。

 

「すんません俺もサインお願いしていいッスかね……?」

 

「…………あんたもファンだったの?」

 

「そうだったりもしますけど……ジムリーダーのサインがこれで全部揃うのでめちゃくちゃほしいなって」

 

「そう。分かった、書くよ。ここでぼくが断ったらサムいだろうし……」

 

 そうしてグルーシャは、スノーボーダーとしてではなく——ジムリーダーとして色紙にサインを書いた。少しこそばゆい気分になった。

 

 

 

—北3番エリア チーム・ルクバーアジト—

 

 

 

 スター団のフェアリー組が根城にしていたお花畑だったが、今——カチコミによって解散することになってしまった。

 

 そのカチコミ野郎であるアオイは今、補給班であるボタンがコライドンに舐めまわされているのを眺めていた。

 

「いや助けて!?」

 

「なんかもういつもの光景だからいいかなって」

 

「アギャス……!」

 

「だから舐めんなって……!」

 

 

 

 

——ズドンッ!!!

 

 

 

 

 

「アギャッ!?」

 

「今度はなんなん!?」

 

「アジトの方に何かが落ちたような……」

 

 

 

「——よっしゃあ!! 無事不時着完了だぜ!!」

 

 

 

「…………大丈夫そう」

 

「いや何処が? なんも見えとらんけど……」

 

「いやホント、大丈夫」

 

「…………アオイがそこまでいうならそれでいいや」

 

「そういえばワタシも初めて知ったんだけど——」

 

 アオイはスター団誕生の経緯と彼らの現状についてボタンに教えた。話を聞いていくうちにボタンの顔は曇っていき、自嘲じみた笑みすら顔に貼り付けていた。

 

「……へー。スター団、そんなことがあったん。いじめをなくしたかったのに、今では自分たちが恐怖の対象……マジウケる。先生も生徒もバカばっか」

 

「ボタン……」

 

「みんながいじめられたとき、ほかの誰かがひとりでも気づいていたら——スター団は悪者じゃないよってすぐにわかったはずなのに……」

 

「…………」

 

 影の差したボタンの表情をアオイはじっと見つめていた。

 

「そんなバカばっかな学校で戦ったってみんな、バカを見るだけなのに……スター団なんか作っちゃったマジボスってのもきっとどうしようもないアホだよ」

 

「……そうかな?」

 

「…………そうだよ。ん、今回の報酬——次が最後のボス……アオイ、頼んだ」

 

 アオイの言葉を遮るように、ボタンはそう言って切り上げてどこかに去っていく……

 

「…………本当にそうかなーっ?」

 

「……え?」

 

 アオイが声を張り上げ、ボタンの脚を止める。振り向いた彼女の顔は少し驚いていて……

 

「ワタシの……ワタシの知り合いに、スター団のしたっぱの人がいて……その人もいじめが原因で入ったのかは分かんないけど、その人を見てると……スター団が出来たおかげで救われたって人が大勢いると思うんです」

 

「そう…………」

 

 ボタンは再び踵は返す。

 

「絶対にそう……今まで出会ってきたスター団の(ペーペー)ボスたちだってそうだった(ポーペッペーぺぺー)みんな、スター団のことを(ペーぺぺーペペペペ)『自分の居場所』だって思っていた」(ペペペペペペぺぺーぺーぺぺ)

 

え、なにこの音楽。(ペーペーポーペッ)鍵盤ハーモニ(ペーぺぺー)カ?」

 

 ボタンはもう一度アオイに振り返る。

 

「だからワタシが……マジボスに(ペーぺぺーペペペペ)それを思い出させてあげるから——!」(ペペペペペペぺぺーぺーぺぺ)

 

「いやだからなにこのアングル!?(ドュゥゥゥゥゥゥ) 止めて、(…………ン————————)引かれてアスファルトタイヤに優しくないこの音楽……!!」(ペレレペレレレ…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「——なんでオレがこんなの弾いてんだよっ!!」

 

 オルティガが鍵盤ハーモニカをあらぬ方向へと投げ飛ばす——

 

「っとキャッチだぜ!!」

 

 しかし即行で下に回り込んだイレギアによって見事回収される。

 

「「「おお~……!」」」

 

「そんでなんだよこの拍手は……!」

 

 アオイとのバトルでも見せたプッツンが再発しそうになる。

 

「オルティガさんの演奏初めて聞いたけど……めっちゃよくなかったっ?」

 

「うん凄かった! ピアノまで出来るなんて尊敬~!」

 

「…………そういうことならまあいいか」

 

 オルティガが一人で納得したところでイレギアが舞い戻ってくる。

 

「いやあ無理行って悪かった! 久しぶりにアンタのピアノが聞きたくてなー」

 

「ピアノなんてアカデミーで……入学したあたりはしてたかな——っていうかなんで鍵盤ハーモニカ持ってんだよ! しかもちゃんと手入れされてるやつをっ!」

 

「まあまあオルティガ坊ちゃま。それより……本当にお怪我は無いのですか?」

 

「ええもちろんですよ元校長先生! 名前なんでしたっけ?」

 

「イヌガヤです。しかし……まさか空から落ちてくるとは思いもしませんでしたよ」

 

「ボーマンダが俺を乗せたいっつーのでとりあえずこの辺で降りようとしたんスけど……どうにも降り方を知らなかったみたいでして。次からはそれも特訓だな……頑張ろうぜボーマンダ!!」

 

「ボ、ボォォォ……」

 

 弱々しく鳴いて返事をするボーマンダ……フェアリー組の妖気を浴びて弱っているのだろうか。

 

「ともかくありがとな! そんなら俺はこの辺で……お疲れ様でスター!!」

 

 元気よくスター団ポーズを披露したイレギアは改めてボーマンダに乗り込んで空へと飛び立っていく……

 

「…………スター団にも、あんなバカいたんだな」

 

 『スター大作戦』のことについて詳しくない生徒が適当に掟を解釈してアカデミー内外で迷惑をかけている……という噂を聞いたことがあったが、おそらくはああいう輩がいるから言われるようになったのだろう。

 

「ともかく坊ちゃま、迎えが来ておりますので」

 

「分かってるよ爺や、今行く——……ってアイツ鍵盤ハーモニカ置いていきやがった! 持ってけよオーイ!!」

 

 イレギアの姿は既に遥か遠くだった。

 

「それはアカデミーで出会ったときに渡してはいかがでしょう?」

 

「なんでオレが……まあ、アジトに置いていくわけにはいかないしな」

 

 

 

 

 

 空飛ぶ自家用車の中で、オルティガは独り溜め息を零した。

 

(ピアノを弾いてくれ……か)

 

 急に空から現れて、オルティガの姿を見つけるや否やそんなお願いをしたので断る余裕もなく従ってしまったが……今考えてもむしゃくしゃする! ——けれど……

 

(他の生徒の前で弾いたの、いつぶりだろ…………)

 

 思い出せはしないけれど——無理に思い出そうとしたら嫌な思い出が溢れてしまう——確かあんなバカがいたような気がしてきた。

 

「…………」

 

 長手袋を取って、キレイな爪を鍵盤に這わせる。歌口を咥え、鍵盤に繋がっているチューブをちょうどいい位置に調整する。

 

(今度、ボスのみんなに聞かせてあげようかな……もちろん、マジボスにも)

 

 何度か音を確認して——奏でる。

 

「おや……」

 

 実に心に染みる旋律だったという。




それではお聞きください、オルティガで『タイプ:ワイルド』。

何気に初めてこの作品で登場したスター団のボスだったりする(セギンでは門前でネルケに倒され、シェダルではアオイにコテンパンにされ……シーに至ってはそもそもおらんし)。
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