最初に出会ったスター団のしたっぱがネモによく効く向上心の塊でものすごいアホだった 作:うみじゃけ
22.いざキタカミ!まだ見ぬ友を求めて!
「らんららんららんら〜♪」
「ランラランラー♪」
しかしイレギアは廊下をスキップしながら歩き、たまにドレディアのように舞い踊ったかと思えばオドリドリのように跳ね回るなど上機嫌な姿を見せていた。それを真似るように相棒の緑フェザーのイキリンコもまた彼の周りを飛び回っている。
「……何してんすか先輩」
ドン引きする周囲の奇異の視線から一歩前に出たアヤセがいつも以上にアホなイレギアのノリにようやく突っ込んだ。
「おうアヤセ♪ おはようございまスターっ!」
「ああ、ポーズはするんですね。じゃああたしもおはようございまスター……なんて、ヘルメットつけてないですけど」
アヤセは制服の着崩し方はスター団のままだが、ヘルメットとゴーグルをつけておらず、愛用のギターケースを背負ったイケイケな格好だった。そもそも室内だってのにヘルメットとゴーグルをバチバチにキメているイレギアが変なのである。
「で、なんか良いことあったんですか? やっとネモさんに勝ったとか?」
「残念ながらそれはまだだぜ。だが引き分けに持ち込んだことはあったぜ!」
(逆にすごいな……)
「な・ん・と……林間学校のメンバーに選ばれたんだぜーっ!」
「キィーッ!」
イキリンコを頭の上に乗せたイレギアのその宣言にアヤセは『おおーっ』と間延びした拍手をする。
「確かくじ引きで決まるんですよね。すっごいどんな確率ですか」
「ええと5÷(全校生徒)だから……」
「いや答えなくていい答えなくていい」
「それは置いといて……だ。楽しみだぜ。キタカミの里っていうかなり遠い場所らしくってな。しかも一年前は色々ごたついてたから林間学校もままならなかったからな」
「一年前って……結局何があったか話してもらってませんでしたね。なんかあったんですか?」
アヤセは軽い調子で尋ねるも、対するイレギアは一転して暗い雰囲気を纏いだした。
「え、あ……なんか聞いちゃいけないことです……?」
「いや違う。そうだな……スター団に所属するお前にはちゃんと話しておかなければならないことだ」
「ごくり……」
「実は——」
イレギアが語り始めたその時、イレギアの視線がアヤセからその奥へと向けられる——彼のファイアロー並みの視力が視界に映したのは……こちらに歩いてくるネモだった。
「ネモだ! しかも今目が合ったぜ! おおーいネモ―!」
「ええっ、ちょっ、先輩!?」
アヤセの言葉にも振り返らず、イレギアはアヤセの目には見えないネモへと走って行ってしまう……飛び立ったイキリンコがアヤセに申し訳なさそうに肩を竦んでから主人の後を追いかけていくのだった。
「目と目が合ったらバトルって……野蛮すぎでしょ……」
「ぐおーっ! また負けちまったぜー!?」
「クヌヌワ……ッ!」
今日もいつものようにイレギアの悔しがる声がグラウンドに響く。最近は毎日のようにアカデミーで見かけるのでどこか名物のようになっており、2人のバトルの見学をしているポケモンや人々が日を追うごとに多くなっていっていた。
「お疲れイレギア! 今回も楽しかった!」
イレギアが屈んでルカリオを抱き起こしたところにネモが膝を折って彼の前に笑顔で現れる。
「俺もだぜ! でも悔しい! 新しい仲間を見せびらかしてびっくりさせたかったのになーっ」
「びっくりしたよーっ、ルカリオなんていつ捕まえたの?」
ネモがイレギアの新たな仲間であるルカリオを……きぜつから立ち直ってイレギアに労いのなでなでを嬉しそうに受けているそのポケモンに目を丸くさせていた。
「俺もネモみたいに6匹以上育ててみたくってな、リオルを捕まえてみたんだが……なんとびっくり、すぐにルカリオに進化したんだ! これも俺のあふれ出るカリスマ性のおかげだろうぜ!」
「クヌヌワン!」
「ふふっ、すっごい懐いてるねーっ」
イレギアがルカリオに『ゆっくり休めよー』とボールに戻したところでネモが『そうだ!』と手を打って嬉しそうに話を始める。
「実はねっ、アオイが林間学校のメンバーに選ばれたみたいなんだよ!」
「なにっ?! アオイもかっ! うっひょー! こりゃあ林間学校が今から楽しみでスター!」
イレギアは心の底から喜んでいたのだが……しかしネモは絶句して動きを硬直させていた。
「え……アオイも、って……まさか、イレギアも……?」
「おう。まさかまさか選ばれるなんてな! これも人気者の宿命ってことだぜー!」
「そう、なんだ…………」
ネモがしゅんと悲しそうに目を伏せてから目を逸らすように立ち上がったのをイレギアが不思議そうに眺めながら彼女の前に躍り出た。
「なんだよーっ、その様子だとネモは選ばれなかったみたいだけど露骨に寂しがられると流石の俺も困るぜー?」
「……そうだよね。うん、ようやくできたライバルが2人もいなくなっちゃうって思ったらなんだか悲しくなっちゃって……ごめん、あっちでも頑張ってきてね!」
「もちろんだぜ! 林間学校先でもスター団の凄さを広めてやりまスター!」
「それは……ボタンが困っちゃいそうだなぁ」
その後、イレギアが林間学校に必要なものをネモと買い物する姿が目撃されたが、それに対してアヤセは『ようやく付き合ったのか』と言いたげだったものの、冷やかしになるので黙っておくのだった。
そして数日後……ようやくその日が訪れた!
「ええと報告はエントランスの、あれは……イレギア先輩?」
イレギアと同じくキタカミの里に行くことになったアオイは、共同で林間学校に向かうことになったブルーベリー学園から訪れたブライア先生に声をかけようとしたのだが、そこにいた彼女はイレギアと何やら話をしているところだった。
「ほえーっ、これがグリーンブックの原本!」
ブライア先生の手持ちにあるのは……グリーンブックだった。
「ああそうとも! ……おや、アオイくん。キタカミの里へ旅立つ準備はできたかな?」
「はい! それで……イレギア先輩と何を話してたんですか?」
「おや、メンバーはくじ引きで決めて皆初対面との情報だったが……イレギアくんは顔が広いみたいだね」
「そりゃあ俺がこのアカデミーの人気者ですからね、有名人の特権でスター!」
イレギアが迫真のスター団ポーズを披露すると、ブライア先生はグリーンブックを持ったまま愉快そうに笑った。
「ジニアくんの言っていた通り、愉快な優等生くんだ。それでアオイくん、グリーンブックについては知っているかい?」
「はい。学校にあったのを読んだことありますね。もしかしてそれは……?」
「実はこれはグリーンブックのオリジナル本なんだ。その本の著者であるヘザーは私の先祖にあたる人物でね……見たまえ、出版された本では塗りつぶされて読めないページさ」
アオイが『どれどれ』とブライア先生に見せられたページをまじまじと見つめる……そこには『円盤のポケモン?』と題された以前見たことがある写真と、以前は見ることが難しかった文章が見ることができた。
「『この生物を仮にテラパゴスと呼称——』」
「すげえだろっ、ロマン感じるよなこの話っ!」
イレギアがアオイの隣に移動して本を読みながら鼻息荒く彼女に説いていた。
「ホントにこんなポケモンがいるんですね……」
「描かれているポケモンの名はテラパゴス。ヘザーがエリアゼロのさらに奥で出会ったという謎のポケモンだ……世間には信じられていないがね」
「俺は信じますよ! そんなのがいるなんてワクワクするじゃないですか!」
(イレギア先輩は誰に対しても先輩だなあ)
アオイが変わらないイレギアの反応にふふっと微笑むと、ブライア先生もアオイと違う意味を滲ませて微笑んでから眼差しの強い瞳で真剣に2人を射抜いた。
「そう言ってもらえると嬉しいよ。私の夢はテラパゴスを見つけ、ヘザーの正しさを証明すること」
「「————」」
その眼力の強さはイレギアでさえ押し黙るほどの圧力を秘めていた。
「……とはいえ、エリアゼロに入る許可はいまだ得られていないがね」
「きっともらえますよ!」
「そうですよ! ……そういや俺、無断で入ってね?」
「それは……確かに……」
「うわ、それまずくねえ?」
イレギアとアオイが急にひそひそ話を始めたことにブライア先生が小首を傾げるも、咳払いを一つして話を元に戻した。
「いやなに、今できることをするつもりだよ」
「ブライア先生! 用意できました!」
そこでブライアへと声をかけた者を含めて3人の生徒が現れる。
(わ、本当に知らない人たちだ……)
ちびっこ女子、カーリー女子、メガネ男子——アオイにとっては初対面の3人だったが……
「おうポダン、モトトカゲの改造で世話になったな!」
「先輩っ、いつでも頼って下さいね!」
「そんでナモはもう数学は大丈夫かあ~?」
「もちろん! 先輩が教えてくれたおかげです!」
「そうだプペー、その後どうなったんだよ~」
「それは……えへへ……」
……イレギアはその誰もとも知り合いのようだった。
「どうやらイレギアくんは予想以上に顔が広いらしい……引率という立場だが、時々頼らせてもらおうかな」
(もしかして先輩って自称じゃなくてホントに人気者なんじゃ?)
「さて、全員そろったことだ。それでは皆! キタカミの里へ出発だ!」
「うっひょー! これから楽しみでスター!」
イレギアが再び迫真のスター団ポーズを披露するのと同じように4人もまた各々の喜びを表現するのだった。
——ブルーベリー学園からも生徒たちがキタカミに向かおうとしていた。
新しくルカリオが加わりました
若干アホっぽいですけどまあアホのポケモンなので
しかもかくとうタイプなのでキタカミで捕まえるべき5匹のうちの1匹を達成してるんですよねえ
残りは何になるかお楽しみに!