最初に出会ったスター団のしたっぱがネモによく効く向上心の塊でものすごいアホだった 作:うみじゃけ
「行きなさいモルペコ!」
「行ってこいモトトカゲ!」
ゼイユは黄色と黒のツートンカラーが特徴的なねずみポケモンを、イレギアはいつもライドポケモンに使っているモトトカゲを繰り出した。
「お前のバトル初陣だ! エンジン爆上げで行きまスター!」
「アギャギャスギャー!」
実はこのモトトカゲ、『宝探し』の終わりと同時にポケモンリーグに返すことになっていたのだが……モトトカゲが盛大に泣き喚いて抗議。1時間の死闘の末にイレギアの正式な手持ちとして加わったのだ。
「バトル初心者ですって!? そんなやつに挑まれるなんて……絶対吠え面かかせてやるんだから!」
「な、なんかねーちゃん勘違いしてる……ええと、けっぱれー!」
スグリはゼイユの後ろからひょっこり顔を出して応援するのだった。
「やっちゃえモルペコ、『オーラぐるま』!」
モルペコの頬袋から電撃が迸り、走ると同時にモルペコごと車輪となってモトトカゲへと襲い掛かる!
「『ドラゴンクロー』で迎え撃てっ!」
モトトカゲはそれに対してドラゴンエネルギーを両手に滾らせて電撃に真っ向から迎え撃って相殺するのだった。
「へぇ、中々やるじゃない……」
「へっへっへっ……まさかこんな程度じゃねえよなあ?」
フィールドに黒煙が占める中、2人のトレーナーは互いに向き合っていた。
「はっ! 泣いて謝ったって許さないんだから! モルペコ、『オーラぐるま』っ!」
イレギアの挑発にみごとに引っ掛かったゼイユは鬼の形相で再び指示を飛ばす――モルペコの身体が黒く変色し、今度はあくエネルギーを迸らせてモトトカゲへと襲い掛かる!
「(姿が変わった……わざもちょっと違うように見える!)今度も『ドラゴンクロー』で……」
イレギアも同様に指示を飛ばし、モトトカゲもそれに呼応して再び迎え撃とうとするも……モルペコのスピードは先ほどよりも加速していた!
「アギャ!?」
『ドラゴンクロー』の反撃が間に合わず真正面から突撃を受けてしまいのけぞるモトトカゲ。その姿にゼイユはしてやったりと笑顔を浮かべる。
「ふふん♪ モルペコの『オーラぐるま』は使うたびに素早さが上がっていくの。そしてこれを言ったのはあんたにもっと苦しんでもらうため!」
「なるほど! スゲェわざだな! (となると長期戦は避けるべき……いや、一旦立て直すのが先だな!)」
「うげ……ねーちゃん、性格わる……」
「スグ……!」
スグリがボソッと呟いた言葉にゼイユが眼光を飛ばす。スグリがそれに怯んでいる間にモトトカゲは立ち直り、イレギアもまた分析を終えていた。
「まだまだ行くわよっ、『オーラぐるま』!」
再び黄色に変色したモルペコが電気を纏ってモトトカゲに突っ込む。
「今度も『ドラゴンクロー』だぜ!」
「何度やっても同じ……いいえ、もっと悪くなるわよ?」
「ただし——プラスで『こうそくスピン』でスター!」
「なっ……!」
「アギャス!」
モトトカゲはドラゴンエネルギーを両手に滾らせるのは同じだが、今度はその状態で全身を回転して見せた!
縦回転の『オーラぐるま』と横回転の『こうそくスピン』――数秒、火花を散らして鍔迫り合いになると両者ともに弾け飛ぶ!
「ルペ!?」
「わざとわざを組み合わせる……!? なんなのよその発想!」
「……すごい」
しかも体重の差でモルペコはまだ宙を舞っているのに対してモトトカゲは既に次の動作に入っていた。
「今の隙に整えるぜ、『ギアチェンジ』!」
モトトカゲは地面に右手を付けて全身にギアを入れる……まるで蒸気機関車の如く身体からパワーがあふれ出てきていた……!
「うっひょー! ぶっ飛ばしていこうぜ、『とんぼがえり』!」
「まずいっ……『うっぷんばらし』!」
モルペコが吹き飛ばされたストレスを糧にしてあくエネルギーをモトトカゲへと飛ばす……しかし、『とんぼがえり』を使ったモトトカゲは一瞬のうちに元居た場所を離れてモルペコの目の前に躍り出て、むしエネルギーを纏った蹴りをお見舞いする!
「どーよ! どうやら吠え面をかくのはそっちのようだな!」
モトトカゲは再び元居た位置に戻り、イレギアはゼイユに見せつけるようにスター団ポーズを披露する……ゼイユの握りしめた両手が震えだす。
「あわわ……」
「……いいわ。ちょっと遊ぶつもりだったけど。あたしに本気を出させたことを後悔させてあげる——ッ!!」
「そうこなくっちゃな! 俺も全力全開で行きまスター!」
そうして2人のバトルは熱を帯びていき、次第にその苛烈さにスグリは胸の高鳴りを感じていくのだった。
「わやじゃ……すっげえ……! いつか……おれも……!」
——もともと日が傾いていたこともあって、既に空は夕焼けが彩られていた。
そうしてその頃には2人のバトルの決着もついていた。
「ちっくしょー! 負けまスター!?」
「ねーちゃん勝った! おれも嬉しい……!」
「ふ、ふんっ……あたしにかかればこんなもんよ!(あ、危なかったわ……もう少しで弟の前で恥かくとこだったわ……)」
イレギアが盛大に悔しがる前でゼイユはスグリに喜ばれながら何でもないように腕を組んでいたが、その顔の裏では落ち着きようもない思いを抱えていたのだった。
「アギャギャギャ……」
未だに『でんじは』で痺れているモトトカゲにイレギアが顎を撫でながら労う。ゼイユはすっかり疲弊して腹をすかせたモルペコにきのみをあげながら背中を撫でるのだった。
「ナイスファイトだったぜモトトカゲ! 次は勝てまスター!」
「お疲れモルペコ。流石あたしのポケモンね!」
互いにポケモンをボールに戻した後、2人が向かい合ったところでイレギアは右手を差し出した。
「楽しいバトルだった! 今度は負けねえかんな!」
「……あんた生意気。でもいいわ。あたしの舎弟として仲良くさせてあげる!」
イレギアとゼイユの熱い握手を交わすその横で、スグリが彼女の服の裾を引くのだった。
「ねーちゃん。そろそろ夕飯の時間」
「あらそう? ……ホントね。それじゃあ、イレギアって言ったかしら? また明日会いましょうね」
「俺も行かねえとだ! そんならお疲れ様でスター!」
イレギアが迫真のスター団ポーズを披露すると、ゼイユもスグリもなんとも言えなさそうな瞳でイレギアを眺める。
「……気になってはいたけど、あんたのそれ何?」
「スター団の厳粛なる挨拶でスター。お前らもやるか?」
「やるわけないじゃないそんなダサいやつ」
「おれもちょっと……」
「ダサいとはなんだよーっ、カッケェだろーっ!?」
ちなみにマジボスお墨付きのダサさである。
イレギアとゼイユのバトルが始まる少し前のこと。
「アカデミーの皆さんが来たみたいですね」
アオイたちが公民館が辿り着き、諸々の説明を受けたところで部屋の奥から極彩色の短髪をした中性的なブルーベリー学園の生徒が現れる。
「ああキンシバイくん。待たせてすまないね」
「キンシバイ?」
「彼がともに公民館で過ごすブルーベリー学園の生徒だよ。自己紹介を」
「はい。——キンシバイです。ブルーベリー学園から来た生徒は後2人いますが……2人は実家で寝泊まりするらしいのでボクだけですね。これからよろしくお願いします、みなさん」
「よろしくね!」
「カッコイイ人……」
「立ち振る舞い方がもう違うや」
「ねーねー。キンシバイくん? それともちゃん?」
ポダンの質問にキンシバイは「しぃー」と人差し指を立てて口を噤ませる。
「ボクは秘密主義でして、あまりそういったことに答えるつもりはありませんよ」
その妖しい仕草にプペーが息を呑んでしまうほどに彼に魅了されてしまっている。
(リップさんみたいな人だなあ……エスパー使いかな?)
アオイはのほほんとそういったことを考えていた。
「今日は長距離の移動で疲れたでしょう。アカデミーの生徒が1人足りませんが……イレギアくんならすぐに戻ってくるでしょう。少し早いけどディナーにしましょうか!」
「いっぱい用意してるので遠慮せずおかわりしてくださいね」
「「「はーい!」」」
「楽しみだね、キンシバイ!」
「……ええ、その通りです」
アオイの距離感の近い言葉にキンシバイが面食らいながらも微笑みを取り繕って返事をするのだった。
「へー。じゃあブルーベリー学園はくじ引きで決めたんじゃないの?」
夕餉の時間はイレギアを抜きにして過ぎていく。そんな中、アオイがゼイユたちのことを考えながらキンシバイに気になっていたことを聞いていたのだった。
「学園では行きたい人だけで行くことになっていまして。それがちょうど3人だったためにボクらがこうして選ばれたんです」
「人気……無かったのかな……」
「さてね。ブルーベリー学園では他にも行ける場所があったからそっちに行ったんでしょう……それにしても、田舎は人気が無かったけどね」
「それならどうしてキンシバイはキタカミの里に来たの?」
「しぃー……」
「あっ、そうだった」
アオイがはたとして口を抑えると、キンシバイは表情を歪めずに、しかしバツが悪そうに視線を逸らすと持ってきていたバッグの中から何か箱を取り出した。
「質問に答える代わりにボクから君たちにプレゼントをしましょう。ナモさん、プペーさん、ポダンさん、ブライアさんも」
キンシバイが注目を集め、アオイたちの前でその箱を開く——。
「間に合いまスター!」
「あわっ……!?」
ちょうどその時にイレギアが食堂の扉を勢いよく開いた。
「先輩、今までどこに行ってたんですか?」
「いやー、実はゼイユってヤツとバトルしててよーっ」
「ゼイユならワタシもバトルしましたよ。強かったなー」
「そうそうっ、強えヤツだったなー……で、バトルしてたら遅くなっちまった。良い匂いがしたんでつられてみればもう夕飯の時間かよーっ」
「おっ、ようやく来たみたいだね」
ブライア先生がイレギアを見つけると、キンシバイの持ってきたモノを咀嚼し飲み込んで、茶を啜って流してから彼の元に歩いていく。
「あんまり遅いので心配したよ」
「いやーすんません。ついついバトルが楽しくって……ってかアレ? ゼイユとスグリもここにはいないんですか?」
「ああ。実は2人はここが故郷でね。実家で過ごすらしいよ」
「えーっ。そりゃなんかなー……後で会いにいかねえ?」
「楽しそうですけど……まあ、また今度に」
イレギアが腕を組んで不貞腐れていたところでアオイが肩を竦んで首を横に振る。
「ふぅ、ごちそうさまキンシバイさん」
「おっと、みんなでもう全部食べてしまったのですか? アオイさんやイレギアさんの分も残しておきたかったのですが……」
「ご、ごめんなさい……」
「美味しくってついー……」
「何食べてたの?」
「なんだよー。俺らにも食わせろよー」
「キンシバイくん特製のモチだったよ。桃の風味がしていて実に美味だった!」
「先生も食べたんですか!? くっそー。おーいキンシバイ、俺らの分も作ってくれよー?」
「ええ、またいつか」
「よっしゃ! それはそれとして俺も飯食うぜー!」
「イレギア先輩、このお浸しとか美味しいですよ」
「うおーマジかー!」
イレギアが次々と楽しそうに料理を口に運んでいくのをキンシバイは顎に手をやって眺めていた。
「……あの。イレギアさんのあの格好は一体……?」
「初見だとビックリするよね。あれはスター団って言って、アカデミーでいつの間にかできてたグループの格好だよ」
「スター団? ……聞いたこと無いな」
「アタシたちも細かいことは知らないけど、イレギア先輩曰く『人気者になるための第一歩!』らしいわよ」
「1年前からあるらしいけど、ぼくたち今年入学したからあんまり知らないんだよねー」
「1年前…………まあ今はいいでしょう。でも君たちで知れる範囲で探ってほしいです」
キンシバイはそう告げると、口元に人差し指を持って行く。
「真意は悟らせずに——頼みましたよ」
「「「……はい」」」
3人は人形のように首を縦に振った。
突然ですがみなさんはイレギアについてどんな印象や性格を抱いてますか? 今後の彼を表現するのに参考にしたいのです。