最初に出会ったスター団のしたっぱがネモによく効く向上心の塊でものすごいアホだった   作:うみじゃけ

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25.ゼイユ曰く『恰好とかいろいろ変だしやかましい奴』

 

 

 

—ブルーベリー学園—

 

 

 

「林間学校……いいわねライモンシティとか。あたしにピッタリじゃない」

 

「ね、ねーちゃん、キタカミが……」

 

「キタカミがどう……はぁ!?」

 

 それを見た時は本当に驚いた。

 

 自分たちの故郷が林間学校に選ばれていたのだ。

 

 その事実に嬉しい——なんて気持ちはさらさらなく、ただひたすらに自分たちの故郷がよそ者に汚されるかもしれないという忌避感と嫌悪しかなかった。

 

 だからキタカミに行こうなんて言ってる連中に片っ端から牽制して、あたしたち以外誰も来ないようにしていた。

 

 おかげであたしとスグ以外は誰も選ばず、枠を3つも余らして当日が訪れる……はずだった。

 

 3人目がいたのだ。

 

「ちょっとあんた! これ、どういうつもりよっ!」

 

「どうって……キタカミの里に興味がありましてね。ボクも行きたいんです」

 

 ブルベリーグ四天王の1人、キンシバイ……こいつはカキツバタとはまた違った意味でいけ好かない、つかみどころのない……男か女かわかんないところもムカつく奴だった。

 

「ねーちゃん……そんなに怒んなくても……」

 

「黙りなさいスグ、これはねーちゃんが片を付けるから」

 

「キミの問題じゃないでしょう? そもそも自分の勝手で他の生徒に票を入れさせないようにするなんて……そっちの方がダメだとは思うけどね」

 

「はん! そんな程度でやめる奴らにも問題があるのよ! ……ま、あんたは引かなかったんだけど」

 

「ならそういうことですよ。ボクは引かない。そもそも今回はアップルアカデミーの方からも林間学校で人が来るらしいじゃないですか。ここで数人減ったところで……いや、これ以上は止めておきましょうか」

 

「……で、聞いときたいんだけど」

 

「何か……?」

 

「あんたがキタカミに来たい理由よ。それなりに納得のできる理由なんでしょうね?」

 

「ああ、それは――」

 

 あいつはいつものような仕草で口元に人差し指を持っていき――

 

 

 

—スイリョクタウン 公民館前—

 

 

 

「なあにが『秘密主義なので』よっ! まったくこれから来るアカデミーの奴らに対しても腹が立っているってのに、なんで同じ学園の奴にもムカつかなきゃいけないのよ!」

 

「うぅぅ……あんま怒んないでほしいべ……」

 

 ゼイユが怒りを露わにしてアップルアカデミーから来るという生徒たちを待っていると、バス停のある方角から誰かが駆け足でこちらへと向かってきた。

 

「あっ! ねーちゃん、あれっ!」

 

「やっと来たわね。あたしを待たせ――ん?」

 

 そこに現れたのは……ライドポケモンに乗っているわけでもないのにヘルメットを被り、そしてパーティサングラスとしても趣味が変な星型のゴーグルをした青年だった。

 

 ゼイユとスグリは思った。

 

 

 

 

 

変な奴が来たな――と

 

 

 

 

 

—ゼイユとスグリの家—

 

 

 

 ゼイユとスグリがイレギアと別れて、家で夕飯を終えたところだった。

 

「アオイって人のバトル……わやカッコよかったべ……」

 

「スグってばそればっかり」

 

「だ、だってホントにすごかったんだもん……」

 

 ゼイユはイレギアに遅れて現れたあの少女のことについて思い出す……スグリほどの身体の小さな少女ながら、その目から溢れる闘志というかパワーというか、とにかくそういうエネルギーにスグリが惹かれるのも分かる存在だった。

 

 さらにゼイユとのバトルにも勝利しており、その腕前はかなりのものだと窺える。

 

 もしやブルベリーグ四天王に並ぶ、もしくはそれ以上の……なんて考えていると、スグリが別の人物を話題に出す。

 

「そういや結局あの、すたーって人はなんだったんかな?」

 

「……さあ?」

 

 思い返してみても意味が分からなかった。

 

 突然現れてバトルを挑んでみれば喜んで受けて……と思ったら横を素通りしていき、かと思いきや後々突然現れてバトルを挑んできたり……

 

 とにもかくにも破天荒な印象がゼイユの頭には残っていた。

 

「モペー……!」

 

「どうしたのモルペコ。そんな唸り声上げちゃって」

 

 ゼイユのモルペコはイレギアという存在を聞いて、きのみを食べるのもやめてあちこち駆け回っていく。やがていつもの回し車に辿り着いてはらぺこ模様になってもそのまま回りまくっていた。

 

「わやじゃ。相当怒ってるべ」

 

「ふぅん……もしかして、あいつに負ける寸前まで追い詰められたの堪えてるのかしら?」

 

 ゼイユが思い返してみれば、このモルペコは彼女の奥の手として常に勝利を収めてきた彼女が持つ最強のポケモンだ。それをバトル初心者のモトトカゲに倒されそうになったことに危機感を抱いたのかもしれない。

 

「うちのモルペコにそんな気にさせるなんて……あいつ、案外面白い奴かも……?」

 

 『名前忘れちゃったけどー』なんて冗談めかしく言いながら、ゼイユは夕飯の皿をスグリに任せて部屋に戻るのだった。

 

「……ちぇっ」

 

 スグリはモルペコも一緒に出て行ってしまい、カラカラと廻る回り車の音だけを聞きながら皿を片すのだった。

 

 

 

—スイリョクタウン 公民館前—

 

 

 

 そして翌日。ついに林間学校が本格的にスタートする。

 

「みんなおはよう! 昨日はよく眠れたかな?」

 

 アップルアカデミーの生徒とブルーベリー学園の生徒は向かい合っており、ブルーベリー側にいるブライア先生から始めの言葉を告げられた。

 

「はーい!」

 

「そういってもらえてあたしも嬉しいですねえ」

 

「本日から本格的にブルーベリー学園の生徒も一緒に行動させてもらうよ。そうだな……キンシバイくんも改めて、みんなに自己紹介をお願いできるかな?」

 

 ブライア先生の隣に居るキンシバイ、ゼイユ、スグリの順に自己紹介をすることになった。

 

「キンシバイです。アカデミーのみんなとは昨日からの仲だけど、引き続きよろしくおねがいしますね」

 

「うん! よろしくね!」

 

 プペーがキンシバイの事務的な挨拶に脇を空けたり閉じたりしながら笑顔で返事をする。

 

「始めまして、ゼイユです! よそも……アカデミーのみなさん、仲良くしてくださいね! うふふ!」

 

「よ、よろしく……」

 

 ナモはわざとらしい態度のゼイユに面食らって口の端を引くつかせていた。

 

「スグリ……です……」

 

「緊張してる? よろしくねー!」

 

 ポダンは俯きながらのスグリに明るく声をかけ、スグリは一瞬だけ向いて、アオイの方へと顔を反らしてしまう。

 

「な、なんか個性的なメンバーですね……」

 

 アオイが隣にいたイレギアに耳打ちをするも、当の彼は腕を組んでふんぞり返っていた。

 

「へっへっへっ、個性的ってことなら俺たちアカデミー組も負けてねえ……いっちょここらで勝負しまスター!」

 

(うーん。先輩の分でおつりがくるレベルの個性だなあ)

 

 アオイがそんなことを考えていながらも話は続いていく。

 

「ゼイユとスグリのふたりはこの村の出身なんで、何かあれば助けてもらってください……ちゃんと助けてあげなさいよ」

 

「はぁい」

 

「あ……え……」

 

「存分に助けてもらうからなあ! よろしくお願いしまスター!」

 

「「…………」」

 

「……全面的にあまえるみたいですね」

 

 イレギアの迫真のスター団ポーズにゼイユとスグリは呆れた様子を見せるも、キンシバイは微笑を崩さずにいた。

 

「わははっ、元気があってよろしい! えー、それでは林間学校の課題を説明しますね。課題の内容はオリエンテーリング! みなさんには二人一組になってキタカミの里に設置されている『3つの看板』を見つけてもらいます」

 

「看板かー。崖の中間とか見つけにくいとこにあんのかな」

 

「そんなわけないでしょ。てかそんなとこ誰も見ないでしょ」

 

 ゼイユが思わずツッコミを入れる。その様子にアオイとスグリは隠れて笑うのだった。

 

「看板にはキタカミの昔ばなしが書いてありますので、読んで歴史を知ってもらい……看板と一緒にふたりのツーショット写真をスマホやカメラで撮影していってください。3つの看板でツーショット写真を撮れたらミッションクリアです!」

 

「写真……!」

 

「へへっ、アオイの得意分野だな。俺も負けねえくらいスゲェ写真撮ってやるぜ!」

 

「負けませんよ~」

 

 アオイとイレギアがそれぞれの顔を見合わせていると——『カシャ』。カメラで撮影する音が聞こえてくる。

 

「この音は……あっ」

 

 アオイたちが音につられて見てみると、そこにはカメラを構えた薄着の女性が立っていたのだった。

 

「うんうん。ふたりともいい顔してたよー」

 

 にこやかに微笑んだ女性は彼らの元に近づいて撮った写真を見せてくれるのだが、アオイたちは写真よりも彼女のことに注目していた。

 

「ああ。いなくなっていたから紹介し損ねていたね。彼女はこの林間学校でカメラマンを務めることになったサザレくんだ」

 

「ご紹介に預かったね。ワタシはサザレ。林間学校の間、ちょこちょこみんなの元に現れるかもだから、その時は目線ちょうだいねー……はい、ピッピ!」

 

 試しにとばかりにシャッターを切るサザレ。生徒たちも慌てたりノリが良かったりでそれぞれポーズを披露する。

 

「今までどこへ……?」

 

「いやあ、とってもキュートなポケモンを見つけたもんで写真に熱中しちゃって……今思い出すだけでも涎が……」

 

「……ちゃんとしてください。子どもの前なんですから」

 

「写真と言えばそうだ。みなさんに贈り物があるんでした」

 

 そう前置きを入れた管理人は、生徒たちにロトりぼう——つまりは自撮り棒を配っていった。

 

「ロトりぼう……欲しかったやつだ!」

 

「都会で流行っていると聞いたので! 撮影の時にぜひ使ってみてください!」

 

「こういうの使ったことないんだよなー」

 

「使い方教えてあげるよ! 貸して貸して!」

 

「あっ、写真撮る? アタシも入れて入れて~」

 

 プペー、ナモ、ポダンが先んじて使っている裏で、アオイはスグリに声をかける。

 

「ねねっ、ワタシたちも撮ろっ!」

 

「え、あ……おれは別に……」

 

「へーいいじゃない。それにあんた昨日ずっとアオイのこと話してたんだから、そのまま一緒にペア組んじゃえば?」

 

「ええっ!? ねーちゃんバカ! 何で言うの!」

 

「誰がバカだ! 手ぇ出るよ!」

 

「うぅぅ……」

 

 スグリがしどろもどろにたじろいでいると、ブライア先生が手を合わせて微笑を浮かべる。

 

「いい考えだね。そもそも林間学校は学校間の交流も目的のひとつです。キタカミに詳しい人がいた方が有利になる課題でもあるので、できるだけ他の学校の生徒とペアを組んで交流するようにね」

 

「ほら、ちょうどいいじゃん。良かったねスグ」

 

「う、うん……」

 

「それじゃっ、挨拶も兼ねて……ピッピー!」

 

「ぴ、ぴっぴー……」

 

 アオイが早速ロトりぼうを駆使してスグリと自撮りを撮影する。

 

「せっかくならバトルでもして交流深めたら? みんな! 場所空けてあげてー!」

 

 ゼイユはそれをどこか微笑ましく見ていたが……ふと気になって横を振り向いてみると、そこにはイレギアが興味津々でゼイユを眺めていた。

 

「よう! ゼイユだったよな! バトルなら俺らも昨日の続きしようぜ!」

 

「あんたは…………たしか……」

 

「イレギアでスター!」

 

「ああそう、ホントに忘れてたわいれぎあですたー……で、あんたはへぇ? あたしと組みたいってわけ?」

 

「ああ!」

 

 ゼイユがいたずらっぽく尋ねるも、イレギアは真っ直ぐに答えてみせた。

 

「そ、そんな素直に言ってくんじゃないわよ! ぶっ飛ばすわよ!」

 

「えぇ……理不尽でスター……」

 

「おーいふたりとも! そろそろバトルが始まるよー!」

 

 ブライアがふたりに声をかけ、サザレが撮影する傍ら、アオイとスグリのバトルが始まろうとしていた。




サザレさんの設定をちょっと変えました
この方が物語に絡めやすそうだなあと思ったので
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