最初に出会ったスター団のしたっぱがネモによく効く向上心の塊でものすごいアホだった   作:うみじゃけ

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26.マッハパンチで終わらすぜ!ドキドキオリエンテーリング!

 

 

 

—キタカミセンター—

 

 

 

「ほえー……4つのお面の力で内なる力が引き出される……いや、それともお面にある力か……?」

 

「なにいっちょまえに歴史考察してんのよ。ほら、とっとと次の看板に行くわよ」

 

 イレギアはゼイユとペアになり、順調にオリエンテーリングをこなしていた。

 

「ちょっと待てって。とりあえず考えをノートにメモっとくから……」

 

「あんた……見た目の奇抜さのくせに意外と真面目なのね」

 

「せっかくの林間学校だからな。こういうのはしっかり学んでおきたいんだ」

 

 イレギアは勉学においては非常に真面目であった。そのため、キタカミの歴史が記されている看板の内容をノートに書き写してからその文章をひとつひとつ考察していくなどさながら学者のごとくのめり込んでいた。

 

 ゼイユはしゃがんだまま不安定な腕の上で綺麗な字を走らせるイレギアをどこかつまんなそうに後ろから眺めては、そのうち飽きてポケモンを出してたわむれることにしていた。

 

 それをボールの中から見ていたイレギアの手持ちからルカリオが飛び出してくる。

 

「クヌヌワン!」

 

「ロコ……?」

 

 ゼイユのロコンが不思議そうにルカリオを見つめていたが、ルカリオが好奇心いっぱいにむじゃきな様子で話しかけてくるので、ロコンも嬉しくなって2匹してたわむれることになった。

 

「あら? あんたはあんときあたしたちを追ってたルカリオ……ふぅん、こいつがルカリオなんてポケモン持ってるなんて変だなって思ってたけど、この性格だったらなんか納得だわ」

 

「……よし。後は部屋に戻ってからだな。待たせたなゼイユ!」

 

「ホントにそうよ。さっきもだったけど」

 

 もちろん1つ前の看板もイレギアはこの調子だった。

 

「おおっ! ルカリオはもう仲良くなったのか! ナイスガールだぜー!」

 

「クヌワ!」

 

 ゼイユがロコンを戻すのと同じタイミングで、イレギアはルカリオの頭を撫でると手持ちに戻した。

 

「……さてま。待たせた分、速攻で最後の看板に行きまスター!」

 

「ボォォォ~ッ!!」

 

 キタカミセンターの入り口にまで移動したイレギアだったが、そんな彼に呼応するように空飛ぶタクシーの傍らで休んでいたボーマンダが元気に鳴いてくれた。

 

「ん。とっとと行きましょ」

 

「よっしゃー!」

 

 ……時は少し遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—スイリョクタウン—

 

 

 

 オリエンテーリングが始まり、それぞれペアが決まったところだった。

 

「ボクたちも行きましょうか。プペーさん」

 

「うん! まずどこから行こうか?」

 

 アオイとスグリが先陣切って看板に向かった頃、キンシバイはプペーと、ナモはポダンと、そしてイレギアはゼイユと組むことになった。

 

「うっひょー! ワクワクすんなあゼイユ! まだ見ぬ仲間も見つけたいところだぜー!」

 

「あたしももっと手持ち増やそうかしら……それはともかく、あんたあの……モトトカゲってやつ、あの子ライドポケモンなんでしょ? あたしライドポケモン持ってないから一緒に乗りましょ」

 

 『その方が早く終わるもの』とゼイユの言葉にしかし、イレギアは不敵な笑みを浮かべていた。

 

「へっへっへっ……」

 

「何よ急に笑い出して気持ち悪いわね」

 

「こういう時はもっと速い奴がいるぜ! 出てこいボーマンダ!」

 

 イレギアはそんな号令とともにボーマンダを繰り出した。

 

「ボォォォ————————ッ!!」

 

 ボーマンダの鳴き声によってゼイユの長い髪が揺れ、キンシバイはその恐ろしい外見に少しだけ目を見開いて驚きを露わにする……プペーたちはボーマンダに慣れ親しんでいるようにはしゃいでいた。

 

「ボーマンダ……へえ、イレギアさんは中々強いポケモンを持っていますね」

 

「カッケェだろ俺のボーマンダ! ……あれ、ゼイユ?」

 

「……べっ! 別にビビってないわよ! あんたがこんな強そうなポケモン持ってるのに驚いたりなんてもしてないから!」

 

「そうか! 分かったぜ! それはそれとして、ゼイユは看板のあるとこ行ったことあるだろ? こいつの『そらをとぶ』でそこまでひとっ飛びでスター!」

 

 ゼイユの虚勢を素直に受け取ったイレギアが説明をすると、ゼイユが何か言いたげに肩を竦める。

 

「看板の場所はスマホに登録されてるけど……まさか、そいつの背中に乗ろうってわけ? あたしそんな不安定で危険そうなものに乗りたくないんだけど」

 

「その辺は無問題! 実は昨日のうちに空飛ぶタクシーの人からタクシー借りてきてな。それに繋いで乗せてやりまスター」

 

「……免許持ってるワケ?」

 

「おう」

 

 イレギアは新品の免許証を取り出した。

 

「ホントに持ってる……え? 嘘でしょ? あんたそんな見た目でハイスペック?」

 

「照れるぜちくしょう! 褒めたいならもっと褒めていいんだぜ~?」

 

「首捻るわよ」

 

「タクシー借りてきまスター!」

 

 ゼイユの脅迫にイレギアはそそくさと逃げていった。

 

 

 

—アップルヒルズ—

 

 

 

 一方でアオイとスグリは1つ目の看板を目指して2人並んで歩いていた……手を繋いで。

 

「うぅぅ……やっぱしちょっと恥ずかしいべ……」

 

「だってこうやって歩く方が楽しいじゃん! スグリったら離れて歩くーなんて言っちゃってさ……あっ! カジッチュがリンゴの木に混じってる!」

 

 スグリが恥ずかしそうに俯いているところをアオイが引っ張っていくように歩いていたが、パルデアでは見られないカジッチュの珍しい姿を見て足を止めた。

 

「え、あ……キタカミでは結構こうやってんだ」

 

「へー! 写真撮っとこ~」

 

 アオイがカジッチュをスマホで取っていると、スグリは口をもにょもにょ動かして、やがて意を決したように喉を動かした。

 

「……えっ、と……実は、カジッチュって、キタカミでしか進化しない姿、が……ある」

 

「そうなの!? それも見てみたいな~!」

 

「っ……! なら、後で見せるべ……その、おれカジッチュは持ってるから……」

 

「うん! 約束だよ?」

 

「うん……約束……!」

 

 スグリは初めてアオイを真正面に見定めて笑顔で頷いて見せた。

 

 ……と、ここで2人の元に影が過ぎ去る。

 

「なんだ? 今の……」

 

「あー! 先輩ーっ!」

 

 アオイが空に指を差していたのでスグリがそれを追うと……そこにはボーマンダの空飛ぶタクシーが今まさにアオイたちを追い越して遥か空を飛び去ったところだった。

 

「わやじゃ。あの人タクシーにも乗れるんか……色々すごいんだべな」

 

「ズルいなー……でも、ワタシたちはゆっくりいろんな写真撮っていこうね」

 

「んだな」

 

 スグリは今度は自分から手を差し出して、手を繋ぎながら最初の看板までの道を歩くのだった。

 

 

 

—楽土の荒地—

 

 

 

「はいっ、ピッピ―ィ!」

 

「だからなんで毎回変なポーズすんのよ!」

 

 時は戻り現在、イレギアたちは日も落ちぬままに最後の看板の撮影を終えたところだった。

 

 しかもそれまでのイレギアは毎度ポーズを変え、今回は大きく股を開いて看板を超えるところまでジャンプするなどしていた。

 

「何気に身体能力高いし……あーもうなんか腹立つ!」

 

「ええと看板を……」

 

「無視してんじゃ——!」

 

 イレギアがさっさとノートを広げて看板に向き合ったのにさらに腹を立てたゼイユは怒りで髪を逆立てながらイレギアに襲い掛かり……

 

「ないわよおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 ……渾身のアーボックツイストをお見舞いする!

 

「ぐえーっ! ごめんごめん! ギブギブギブ————ゥ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ……はあ……ヒドイ目に遭った……」

 

 地面に転がるイレギアに対し、ゼイユは鼻息を立てて背を張った。

 

「ふん! これに懲りたら変なことしてあたしの神経を逆撫でしないことね」

 

「ぜ、善処しまスター」

 

「そんじゃ、とっとと歴史考察でもなんでもしちゃってなさい。あたしは適当に時間潰すから」

 

「……いや、やめとくぜ。思えばそうやってゼイユをおざなりにしてたから今回の怒りに繋がったわけだからな」

 

 イレギアが真面目な顔(星型ゴーグル着用)で頭を下げたので、ゼイユは思わず面食らってたじろいだ。

 

「悪かった。許してくれ」

 

「な、何よ急に改まって……! ま、まあ……そんなに言うなら許してあげてもいいわよ……」

 

「本当か!? ありがとな!」

 

(や、やりにくいわね……こいつ……)

 

 ゼイユは今まで会ったどの人間よりも違うタイプのイレギアにどこか心穏やかではいられなかった。

 

「とはいえ、時間余っちまったな。これからどうする? 自由時間の終わりまでまだあるぜ」

 

「そうね……オモテ祭りが始まるまでまだ時間あるし、どうしましょ」

 

「オモテ祭り! パンフレットで見たぜ! 甚平も持ってきたしよー!」

 

「あたしの甚平に見惚れてもいいわよ?」

 

「ああ! 楽しみだぜ!」

 

「…………そ、それはともかくとして、それまであんたの仲間探しでも手伝って……あ」

 

 ゼイユがそこまで言って何か浮かんだように手を打った。

 

「なんだ? なんか思いついたのか?」

 

「ふふん♪ ねえ、あんた——」

 

 ゼイユが妖しく微笑むと、疑問符を頭に浮かべているイレギアに一歩詰め寄った。

 

「——とこしえの森に、行ってみない?」

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