最初に出会ったスター団のしたっぱがネモによく効く向上心の塊でものすごいアホだった   作:うみじゃけ

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28.アカツキをバックにはいピッピ!ギラッギラでいきまスター!

 

 

 

—スイリョクタウン—

 

 

 

 公民館前にボーマンダの空飛ぶタクシーが着陸し、車内から出てきたゼイユが大きく伸びをする。

 

「もうすっかり夕暮れ……オモテ祭りももう始まってる頃ね」

 

「いやあ楽しみだぜお祭り!」

 

 その隣にイレギアがジャンプして着地し、ボーマンダを労ってボールに戻した。

 

「危ないじゃない! まったく……それはともかく、あのポケモン……ガチグマだったかしら?」

 

「おう、出てこい」

 

「バカバカバカ——!」

 

 ゼイユが止めるよりも先にイレギアはアカツキを呼び出してしまっていた。

 

「ワギアアアアアア!!」

 

 アカツキの咆哮が地を揺るがし、空を震わした。

 

「な、なんだべ!?」

 

「でっけえポケモンだなあ……」

 

「学生さんのポケモンでねえか、バトルでもすんかえ?」

 

 住民たちがそれに驚いて顔を見せていくも、アカツキをイレギアが撫でているところを見ると何事も無かったようにそれぞれの日常に戻っていった。

 

「……はあ、この村の人たち肝座りすぎでしょ」

 

「大丈夫だって! こいつ大人しかったろ?」

 

「そりゃあ……まあ、そうだったけど……」

 

 それはとこしえの森に居た頃に遡る——

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—とこしえの森—

 

 

 

 イレギアがあっさりとアカツキをゲットしてから数分が経過していたが、イレギアもゼイユもゲットの衝撃からその場を立ちすくんでしまっていた。

 

「ま、マジか……こんなあっさり捕まえられるとは自分でも思わなかったぜ……!」

 

「ちょっ、ちょちょ……! ど、どうすんのよそいつ……!」

 

「どうするもなにも……元々捕まえる予定ではあったんだ。だったらこのまま新しい仲間に加えるに決まってるだろ」

 

 バカ正直なイレギアにゼイユは頭を抱えてしまうも、木々の隙間から差し込む光が橙色に染まっていることから日が暮れ始めていることを悟った。

 

「ともかく帰るわよ。というかちょっと深いところにまで来すぎて帰り道がわかんないし、あんたのボーマンダ飛ばしてタクシー見つけてもらえば?」

 

「その辺は無問題! タクシーに発信機ついてるから一直線でスター!」

 

「設備しっかりしてるー」

 

「そんじゃま、モトトカゲに乗って……」

 

 イレギアがモトトカゲのモンスターボールをボックスから取り出そうとしたその時——アカツキが独りでにボールから飛び出した。

 

「わっ、どうしたんだよアカツキ……って呼んでいいのか? 呼ぶけど。巣に忘れモンでもあったのか?」

 

「ワギア……」

 

 イレギアの質問に答える代わりにアカツキは四つ足で屈み、彼に向けて顎をしゃくって見せた。

 

「……もしかして『乗れ』って言ってるのかしら?」

 

「そうかもな。そんなら目的地までよろしくお願いしまスター!」

 

 イレギアはアカツキに飛び乗り、ゼイユの手を引っ張ってその後ろに乗せると、ゆっくりと四つ足のまま立ち上がった。

 

「うおっと……こんなデカいポケモンに乗ったの初めてだ。でも、なんでだろ……こいつ、乗られ慣れてる……?」

 

 上に乗っているのに揺れが少ないことからイレギアはそんな疑問を口にした。

 

「長い間人里離れたところで過ごしてたって聞いたわよ? それなのに人に慣れてるって変じゃない?」

 

 イレギアとゼイユがアカツキの妙な部分にあれこれ言っていると、アカツキの鼻が何かを掴んだようにくんくんと地面を嗅ぎ始める。

 

「おっ、どうした。なんか見つけたか?」

 

「えー、急いでるんだけど……無視していかない?」

 

「面白そうだし行ってみようぜ。こっちの方か?」

 

 イレギアはアカツキの差し示す方に従っていくと、やがて木漏れ日の差し掛かる地面に向けてアカツキが鋭利で大きな爪を突き立てて掘り始めた。

 

「ワギィ!」

 

「おおっ、なんか見つけたのか!? ……これは?」

 

 イレギアは地面から掘り出されたそれをつかみ取って木漏れ日に通して見せる……ブロック状の泥炭のようだった。

 

「なにそれ。ガラクタ?」

 

「なんかわかんねえけど……たぶんすごいモノだぜ! ありがとなあアカツキィ!」

 

「ワギア!」

 

 イレギアがアカツキを労って泥で固まった顎を撫でると、アカツキは嬉しそうに目を細めて短く鳴いた。

 

「よおしこの調子で珍しいモン全部探してやりまスター!」

 

「はいはい。アカツキ、とっとと帰る道に進んで」

 

「ワギ」

 

「ちょっゼイユ! アカツキも!? そりゃねえだろ――!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—スイリョクタウン—

 

 

 ——そんなことがあって現在に至るが……

 

「いいねいいねえ! ナイスだよアカツキぃ!」

 

 現在、件のアカツキはサザレの撮影に駆り出されていた。

 

「……なんだってこんなことになってるんだっけ?」

 

 それをゼイユとイレギアが近くで突っ立って眺めている状況だ。

 

「サザレさんがアカツキを見てすっ飛んできて、写真撮らせてって……」

 

「それはそうだけど……なんかサザレさんのテンションおかしくない?」

 

 ゼイユが指摘した通り、サザレはアカツキを360°様々な角度から撮影しており、アカツキを閉口させるほどにその顔は興奮していた。とても子どもに見せていい表情とは言えなかった。

 

「かーっ! たまんねえなコレ! 毛の艶! 目の鋭さ! 世界が君に惚れんじゃねえか!?」

 

「ほら」

 

「まあ……車乗るとテンション上がる人もいるんだし、そういうもんだろ……」

 

 さしものイレギアもドン引いており、アカツキに同情していたが……彼の表情を見てなにやら気づく。

 

「なんか……アカツキのやつ、嬉しそうじゃね?」

 

「そう? ……あ、確かに笑ってる……?」

 

 

 

 ——アカツキは今、郷愁を抱いていた。

 

 

 

「……ワギア」

 

 

 

 ——目の前にいるこの女性にかつて青年から見知った彼の姿を重ねる。

 

 

 

「ア————————ッ↑↑↑ 最っ高その表情! このままモデル目指す!? むしろその方がいいってえ!」

 

 

 

 ——……色々と性格は変わっているが、それでも——今、生きている喜びを感じていた。

 

 

 

「はあ、はあ、はあ……うーん、いい写真が撮れた! ありがとねイレギアクン! おかげでスランプから抜け出せた気分だよ!」

 

「そっすかあ! 喜んでもらえたなら何より……っていうかスランプだったんですか?」

 

「恥ずかしい話だけどね……なんだかここ数年、あんまり自分の撮る写真に自信が持てなくて……でも、アオイくんにいい写真だって言われて、こうやって目標のアカツキを撮影できて……写真を撮る喜びをまた感じることができたよ!」

 

「へっへっへっ……流石は俺のライバル! メンタルケアも超一流でスター!」

 

「なんであんたが誇らしげなのよ」

 

「……あ、キミの弟クンにも励まされたよ。『けっぱってください』ってさ」

 

「スグが? ……へぇ、あいつも結構やんじゃん」

 

「2人とオリエンテーリング中にちょっと話してね。どっちも聞き上手な子で、色々助けになっちゃったよ」

 

「スグリともいつか戦ってみてえなあ。ゼイユに似て強そうだし!」

 

「まあね! スグはあたしの次に強いんだから!」

 

「そうだ。そういえばキミたちの写真は今日取ってなかったね。せっかくだしアカツキをバックに撮ってみさせてよ!」

 

「マジっすか!? うっひょー! 俺アカツキの背中に乗るー!」

 

「子どもじゃないんだからそんなはしゃがないの。あたしはどんな角度でもイイ女だし、適当でいいわ」

 

「準備はいいかい? それじゃあ——はい、ピッピ!」

 

 撮影を終え、アカツキの健闘を讃えたイレギアは労ってボールに戻すのだった。

 

「そういえばサザレさん。ちょっと聞きたいんですけど……コレ、何か知ってますか?」

 

 イレギアはそう前置きを置くと、先ほどアカツキが見つけた泥炭を取り出した。

 

「あ、それさっきのガラクタ」

 

「これは……ピートブロック?」

 

 サザレには心得があるようで、泥炭の名称をぴたりと言い当てた。

 

「ワタシの故郷であるシンオウ地方がヒスイ地方って呼ばれてた時に取れたものでね。これを満月の日にリングマに使うとガチグマに進化するんだ」

 

「ガチグマに!? そっか、アカツキにもダチができるんだな! うっひょー! そんならリングマを育て……まてよ? アオイかネモなら持ってるかもな! ちょっと聞いてみまスター!」

 

「諸々は後にしなさい。もう日が暮れる……あたしちょっと甚平に着替えてくるわ」

 

「確かお祭りがあるんだっけ。カメラマンの本領発揮、先に行ってるね!」

 

「俺も着替えてこないとな……そんじゃ、一旦お疲れ様でスター!」

 

 イレギアが迫真のスター団ポーズを披露すると、突風のように公民館へと駆けて行った。

 

「相変わらずダッサイポーズ。そもそもスターってなんなのよ!」

 

「はははっ、面白いねイレギアクンは」

 

 ゼイユが両手を震わして怒りを露わにしているのに対してサザレは快活に笑うのだった。

 

 

 

—スイリョクタウン 公民館—

 

 

 

「オモテ祭り?!」

 

「楽しそう!」

 

「ボクも行きたーい!」

 

 公民館に戻ったイレギアは既に戻っていたアカデミーの3人にオモテ祭りのことを話していた。

 

「パンフレットに書いてありましたけど、面白そうだしボクも行ってみようかな」

 

 もちろん、そこにはキンシバイも居た。

 

「だろ!? だろ!? みんなで行こうぜ! しかも俺、祭りが楽しみ過ぎて甚平持ってきてんだ! 今着替えて見せてやっからなー!」

 

 自由気ままに振る舞うイレギアはあっという間に公民館の奥に引っ込んでしまい、キンシバイたちはそんな彼に肩を竦めるのだった。

 

「相変わらずですね、イレギアさんは」

 

「あはは……あの人はアレが平常運転だからね」

 

「ところで……みなさん、スター団については調べられましたか?」

 

 キンシバイが真剣な眼差しで3人を見つめるも、返ってくるのは気まずい雰囲気だけだった。

 

「実はあんまりわからなかったの、ごめんね……」

 

「そもそもスター団っていう存在は先輩のことしかわかんなくてさ。友達に聞いてもアカデミーの外で活動してるって返されて……」

 

「アカデミーの外……ふむ。やはり、本人に直接聞いた方が良さそうですね」

 

「待たせたなお前たち!」

 

「噂をすれば……イレギアさん、少しお伺いしたいことが——」

 

 キンシバイがそう言いながら振り返ると——ナモ、プペー、ポダンと一緒に目を丸くして呆けた顔を作る。

 

 そこには……目が痛くなるほどにギラギラに輝く甚平を着たイレギアの姿がそこにはあった。

 

「どーよこの甚平! ネットで見つけてコレだった即行ポチったんだぜー!」

 

 しかもスター団のヘルメットとゴーグルは着用したままだった。

 

「なんというか……ふふっ、実に君らしい衣装ですね」

 

「たしかに! 先輩っぽい!」

 

「そう言ってもらえて何よりでスター! ……で、なんか用かキンシバイ?」

 

「そうだイレギアさん。実はスター団についてお伺いしたくて」

 

「スター団について? なんでまた……はっ」

 

 キンシバイの質問にイレギアが訝しんでいると、突如として身構え始める。

 

「ど、どーしたの先輩……?」

 

「感じる……感じるぜ! バトルの気配が! すまねえキンシバイ! 話は後にしてもらうぜ! お疲れ様でスター!」

 

 イレギアは手早くスター団ポーズを披露すると、そそくさと公民館を出て行ってしまった。

 

「バトルの……気配……?」

 

「うーん? そんなのしたかしら?」

 

 キンシバイたちはイレギアの言動に振り回されっぱなしで呆れてしまっていた。

 

 

 

—ゼイユ、スグリの家の前—

 

 

 

 ところ変わってここはゼイユとスグリの家。

 

「まーまー、機嫌治しなって」

 

 祭りに行くために甚平に着替えたアオイ、スグリ、ゼイユだったが、オモテ祭りに必要なお面がアオイの分だけ足りなかったのだ。

 

「お祭り姿のあたしが勝負してあげるからさ!」

 

「ええっ、バトル……?」

 

 ゼイユの突然の言葉にアオイは面食らってしまい、スグリも肩を落として項垂れた閉まっていた。

 

「すまねえべアオイ……ここは受けてくれな……?」

 

「それじゃ、位置に——」

 

「うおお俺、登場でスター!!」

 

 しかしそこになんとイレギアがモトトカゲでドリフトしながら姿を現す!

 

「ようお前ら! バトルの気配に惹かれて俺が来まスター!」

 

「うわ……」

 

「あ、すたーの人」

 

「イレギア先輩! な、なんですかその恰好……」

 

 イレギアがモトトカゲを撫でつつボールに戻してから腕を組むと、意味ありげに不敵に笑った。

 

「へっへっへっ……こういう時のために取り寄せた甚平だぜ! カッケェだろー!?」

 

「ええと……先輩っぽくていいですね」

 

「なんというか、アオイとおんなじ意見だべ」

 

「ヘルメットと合わさって変なかんじ」

 

「な、なんか半端な意見でスター……ともかく、バトルすんだろ!? そんなら俺も混ぜてくれよ!」

 

 イレギアが3人に詰め寄って懇願すると、ゼイユが溜め息を吐きながらアオイの方に振り向いた。

 

「そういうことだから、アオイ、そんでスグ。せっかくだからマルチバトルにしましょ」

 

「ま、マルチバトル……おれするの初めて……」

 

「あら、じゃあ良い機会じゃない。あたしが味方になって上げるわよ」

 

「え、あ……アオイと一緒が、いい……」

 

 スグリが俯きながら意見を告げるも、ゼイユは両手を震わして怒りを露わにする。

 

「はあーっ!? あたしと組むのがイヤってワケ?! 弟の癖に言うじゃない!」

 

「うぅぅ……そういうわけじゃ……」

 

「いいんじゃねえの? 俺もアオイと戦いたかったしさ! それに、俺たちが積み上げた絆の力みせてやろうじゃねえか!」

 

 イレギアが意気揚々と右手を掲げると、ゼイユは溜め息をひとつ零してから怒りを鎮めるのだった。

 

「ま、いいじゃないの。スグ、あんたもポケモン強くしたんでしょ? ねーちゃんがどんだけ強くなったか見てあげる。それじゃ、家の外に出なさい」

 

「よっしゃー! でも祭りにも行きたいから全員1匹ずつにしようぜー!」

 

「へー、あんたの癖に良いアイディアするじゃない」

 

「…………」

 

 イレギアとゼイユが先に歩いていく姿をスグリはどこか意味深に眺めていた。

 

「スグリ? どうしたの?」

 

「ねーちゃん、よそ者とは仲良くしないって言ってたのに、あの人と結構仲良くなってて……なんか、複雑だべ……」

 

「あー、でも先輩ってそういう人だから。スグリも一緒に遊ぼうよ。きっと仲良くなれるからさ!」

 

「うーん……あんまし騒がしい人は好きじゃないべ……」

 

「スグ―! アオイ―! とっとと来なさーい!」

 

「……行こっか!」

 

「うん……!」

 

 アオイはスグリの手を引っ張ってイレギアたちが手を振る方へと駆けていくのだった。

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