最初に出会ったスター団のしたっぱがネモによく効く向上心の塊でものすごいアホだった 作:うみじゃけ
「ふわあぁ~っ……」
「ねーちゃん、でっけえあくび」
モトトカゲの背中にイレギアとゼイユ、コライドンの背中にアオイとスグリが乗りながら鬼が山の山道を走っていく。そんな中、イレギアの後ろから腕を回してくっついていたゼイユは大きくあくびをする。
「寝不足は美容の天敵でスター」
「仕方ないでしょ。昨日のあんたの話最後まで聞いたんだから……てか、それならあんたも寝不足のハズじゃない。なんだって朝からそんな元気なのよ」
「俺はショートスリーパー……1日2時間寝れば十分でスター」
「大人になったら便利な能力ですね」
「おれはぐっすり寝たいべ」
現在、イレギアたちは鬼が山の山頂にあるてらす池に向かっていた。オーガポンの落とした碧の面を直すためのけっしょうのかけらを取りに行くのだ。
「というかワタシたちも行ってよかったの?」
「いいのよ。よそ者が来るのゲゲゲーって感じだけど、あたしが許してあげる」
「いや、そういうのって管理人さんとかに許可貰った方が良かったんじゃねえかなって」
「変なトコで真面目ね。別にイイでしょ。バレても怒られるくらいだし」
「ダメだと思うけど……でも、まあいっか、急いでるし」
「アオイって意外とさっぱりしてるんだべな」
「割り切りよくねえとバトルの腕も鈍っちまうからな! そんくらいがむしろ良いんだぜーっ!」
「な、なるほど……」
「スグー、アホの言う事聞いちゃだめよー」
4人は談笑しながらてらす池への道を駆けていく……その一方で。
ともっこ像の前に現れたキンシバイ。その傍にはモモワロウが浮遊している。
「ちゃんと食べたみたいだね」
昨日の夜、ともっこ像に供えられていた山盛りの供え物が食べかすを残して無くなっていたのだ。通りすがりのポケモンたちが食べ尽くしたのか、あるいは……——『ガタン』、ともっこ像から妙な音が響く。
「モ、モモ……モモワーイ!」
モモワロウがモモの殻を縦半分に破って真の姿を露わにしながら叫ぶと、それに呼応するようにともっこ像の目が3対とも光ったかと思うと……紫色の光の柱が天高く輝いた!
「うわっ、なんだべあれ……!?」
その光は遠くにいたスグリたちにも届いた様で、その異様な光景にコライドンもモトトカゲも足を止めて眺めていた。
「あっちは……ともっこプラザの方角だな。ちょっと行ってみまスター!」
「そうね。キタカミのピンチかもしんないし……さっさと行くのよ!」
「うおお待ってろキタカミの危機ィ!」
「ワタシたちも行くよ! 捕まって!」
「わ、わかったべ……!」
ゼイユは全力でイレギアの腹に手を回し、スグリは控えめにアオイの肩に指の力を強めるのだった。
数分後、イレギアたちはライドポケモンから降りてともっこプラザに訪れていたのだが……ともっこ像があった場所は瓦礫の山になっていたのだった。
「こいつは一体何事でスター……?」
「……ん。ああ、イレギアさんたちか」
「あんたキンシバイ、なんだってこんなとこにいんのよ」
ゼイユがともっこ像があった場所に変に突っ立っているキンシバイに訝し気な視線を向けるも、当の本人はそれをのらりくらりと躱しながら『いやね』と口を開く。
「昨日置いたお供え物が無くなってて、それに驚いてたら急に光って……で、なんとこの瓦礫の中からポケモンが3匹現れたんだ」
「3匹のポケモンって……まさかともっこ!?」
「さてね。見たこと無いポケモンだったからそうかも」
「で! で! そいつらどこ行ったのよ!」
「うーん……あっちかな」
キンシバイが曖昧に指し示した方角をイレギアが凝視する。
「キタカミセンターだな! よっしゃ急ぐぞ!」
「ええ、今回は感謝するわよキンシバイ!」
イレギアがモトトカゲを繰り出し、すぐさま2人で乗って駆けていく。
「ワタシたちも急ごうっ、スグ……リ?」
アオイもコライドンの入ったモンスターボールを構えるも、キンシバイを眺めるスグリが気になって振り返る。
「どうかしましたか、スグリさん」
「……嘘ついてねえよな?」
スグリが射抜くような視線をキンシバイに浴びせるも、またも彼はなんでもないように振舞う。
「ボクは秘密主義だけど嘘はつきません。嘘かどうかは行ってみればわかりますよ」
「…………」
「スグリ?」
「ちょっとスグー! アオイー! とっとと行くわよー!」
「……うん」
ゼイユとアオイの言葉に引かれるようにスグリもこの場を後にした。キンシバイはそんな彼らの姿を手を振って見送っていた。
全速力でコライドンとモトトカゲを急がせた先、管理人を始めとしたセンターの職員たちが集まっていた。
「なんとさっきまでともっこさまがセンターにいらっしゃいましてね! キタカミセンターで保管していた輝くお面を持っていこうとされていましたので、センター職員一同どうぞどうぞとお返ししたんです!」
「あげちゃったの!?」
「お腹を空かされていたようでスパイスたっぷりのキタカミもちを一瞬で平らげてくださった!」
「もてなしちゃったの!?」
「キタカミもちは栄養満点! もっと大きく強くなられますな!」
職員たちが先ほどまでいたであろうともっこたちを祀り上げているのを横目に4人が作戦会議に入る。
「どーするよ。お面まで取られちまったぜ」
「ともっこは悪い奴でお面はオーガポンのものなのに! 本当のこと言えないのしんどい!」
「ともかく今はともっこたちの居場所を聞かないと」
「んだな……で、ともっこたちは今どこに?」
スグリが珍しく前に立って職員たちに問いかけると、彼らは少し面食らいながらも少し悩んでから告げる。
「鬼が山に登って行かれたよ。恐れ穴にひそんでいる鬼をやっつけにいかれたのかもな」
「なっ……!」
「さすが我らのともっこさまじゃ! 頼もしいですなぁ、ハッハッハ!」
「ハッハッハじゃないんだけど! ……本当の歴史が正しいならきっとともっこたち、オーガポンに復讐しにいったんだ」
「きっとそうだべ……鬼さまはお面に力で戦うんだ。でも、お面を持ってない今襲われたら鬼さまと言えど……!」
「助けにいかないと!」
「完全に入れ違いになっちまったな……モトトカゲたちも全力を出したからちょっと今からは難しそうだ」
「なら『テレポート』で……でも、それだと2人しか連れてけないや」
「気合入れてもう1人ぐらい連れてけねえか? 俺は後で合流でいいから!」
「うーん、エスパータイプのポケモンでパワーを吊り上げればなんとか……」
「それならそっちは任せまスター! 俺はボーマンダでぶっ飛ばすぜ!」
イレギアたちがそれぞれの道を急いでいる中、恐れ穴の前ではともっこ3匹——イイネイヌ、マシマシラ、キチキギス——がオーガポンを囲んで何やらお面を差し出しているように見えた。
「が、がお……」
オーガポンがイイネイヌの差し出した礎の面を取ろうとすると、イイネイヌはそれをもたげて取れないようにする。マシマシラもすばしっこく避けて、キチキギスに至っては空からの見物としゃれこんでいた。
「ヌンダフル!」
「マシキャ!」
「キチチッ!」
遊び終えたのか、それともここからが遊びなのか、ともっこたちはお面を被ると意地の悪い笑みを浮かべながらオーガポンへと迫っていく。
「……がお」
何の対抗手段もないオーガポンはただただ怯えて身体を縮こませるくらいしかできずにいた……そんな時だった。
「——飛んだ! っ、オーガポン!」
誰も居なかった恐れ穴への道に3人のニンゲン、そして2匹のポケモンが瞬く間に現れたのだった。
「サーナイト、グレンアルマも、手伝ってくれてありがと!」
アオイはポケモンたちに労いの言葉を告げながらボールに戻していく。
「うひゃあっ、『テレポート』ってなんかぐらぐらするべ……」
スグリはテレポート酔いでふらふらと千鳥足でそこらをふらついている。
「そんなことより……あんたら!」
ゼイユは酔いを感じさせない怒気でともっこらを睨みつける。
「あたしが来たからにはあんたたち、蘇ったことを後悔させてやるわ!」
「ヌ?」「マ?」「キ?」
ゼイユの怒りを真正面に受けてともっこたちが一歩だけたじろぐも、すぐさま作戦会議にはいってひそひそ話を始め……数十秒後に再び彼らの前でお面を被って構え出す。
「「「オオオ————ッ!!!」」」
「ふぅん、やる気みたいね。それならこっちと合わせて3対3、容赦なんてしてあげないから!」
「おれもけっぱる……鬼さまいじめたこと、ゆるさねえ!」
「ワタシだって! お面も返してもら——あれ? なんだか暗く……?」
アオイが違和感を口にした通り、周囲が夜闇のように暗さで満ちていく……それにともっこたちもまた驚いて周囲を窺っていると、どこからか輝いた球体が放り投げられる。
「うわっ、まぶしっ!」
「なんだべこの光っ……!?」
「この光……まさか、《テラスタル》!?」
アオイの指摘した通り、それはパルデアのみ現れる特異現象である《テラスタル》の輝きだった。
そしてその《テラスタル》のエネルギーを受け取っているのは、語らずとも分かる通りともっこたちである。
「ヌヌヌ……!」
「マママ……!!」
「キチチ……!!!」
「何よこれ……ともっこたちがどんどん大きく……!」
《テラスタル》の力によるものか、それとも事前に食べたキタカミもちに含まれていたスパイスのよる作用か、はたまたオーガポンの持っていたお面を被った影響か……定かではないものの、ともっこたちの身体はみるみるうちに大きくなっていく。
更にテラスタルジュエルの冠の代わりに被っていたお面もまた《テラスタル》による輝きを受けて大きく、そして煌々と光だしたのだ。
「ヌンダッフル!!」
切り込み隊長はイイネイヌのようで、なんとアオイに向けて殴りかかった!
「っ——!」
「アオイ危ない!」
間一髪でスグリがアオイを突き飛ばして一緒に逃れたことで最悪の事態は避けることが出来たが……巨大化とお面のパワーが重なったこともあり、イイネイヌの腰の入った拳が地面を穿ち、ヒビが入り、走り——恐れ穴への道が見るも無残に崩壊してしまったのだ!
「「「わああああああああ!!!」」」
アオイ、スグリ、ゼイユが慌てて空を掴む中、元々崩壊することがわかっていたかのようにマシマシラは行動に移していたようでそれぞれに指示を飛ばしており、自身はサイコパワーでゆっくりと降りていき、キチキギスはイイネイヌの肩を掴んで降下しているところだった。
「何よあいつら! 息ピッタリじゃない!」
「そんなこと言ってる暇ねえべ! とにかくええと……!」
「コライドン! みんなを——あわわっ」
足場がなく不安定なこともあっただろう、アオイはコライドンのボールを手から滑らして空に放ってしまう。
「ぽにおー!」
さらにオーガポンも足場が崩れるのが遅かったためか、一足遅れて落下してしまうのだった。
「——取ったぜアオイ!」
このままアオイたちは地面へ真っ逆さま……になる前に、コライドンのボールをボーマンダで飛んできたイレギアがキャッチする。そしてその後ろからは彼らを助けにイレギアのポケモンが翔けてきた。
「わわっ、ギャラドス!」
「ゴゴゴ……!」
アオイはギャラドスが下から優しく受け止めてからそのまま空を泳いでいく。
「おっとと。ありがとっ、金ピカさん」
「クレー!」
ゼイユをサーフゴーは空飛ぶスノーボードに乗りながら受け止めて地面へと滑り降りる。
「んにゃっ……んん? なんだかぶよぶよしてるべ」
「シビビ!」
スグリがシビルドンが柔らかな身体でもって受け止めながら地面に下ろしていく。
「そんでお前らにはこれをくれてやる! 『ダブルウィング』!」
イレギアがついでとばかりにボーマンダの翼で落下軽減に集中していたマシマシラに激突して川に落とし、返す刀で重い荷物を運んでいるキチキギスの脚にぶつかってイイネイヌを背中から地面に落としていく。
そして最後にはイレギアはオーガポンをその手に収めるのだった。
「どーよオーガポン! 俺の輝かしい登場はよーっ!」
「ぽに! ぽにおー!」
「自分だけカッコつけてずるいのよー!」
イレギアは腕の中からオーガポンの賞賛を受け、下からまんざらでもない様子のゼイユの声を聴きながら地上に向けて手を振っていた。
「キッチチチ……! ——キチ!?」
イレギアの大盤振る舞いが面白くないのか、キチキギスが嘴を鳴らして恨めしそうに彼を見ていたところ——顔の横からスパッと竈の面を持ち去られてしまう。
「キィー!」
「ナイスだぜイキリンコ! そして……!」
川の方では水面を駆けるルカリオがマシマシラから井戸の面を、地面には崖を伝って降りてきたキリキザンがイイネイヌから礎の面を奪取することに成功していた。
そしてお面を奪われた影響か、それともひとつの《テラスタルオーブ》では限界だったのか、ともっこたちの《テラスタル》が失われていく。もちろんお面も元の大きさに戻っていった。
「へっへっへっ、どうよ俺のポケモン捌き! 悔しかったら取り返してみろってんだ!」
「ええそうよ! そんときはあたしたちが相手になって上げる!」
空からイレギアが、そして陸からはゼイユが囃し立てると、アオイとスグリは同様にボールを構えてともっこたちを睨む。
「……マシキャ!」
マシマシラの号令に頷くように、イイネイヌ、キチキギスは撤退を選んでそそくさと鬼が山から立ち去っていった。
「一昨日来やがれってのよ!」
最後はビシッとゼイユが決める!
怒涛の勢いでともっこ戦もスキップ(ちゃんと戦闘書いたほうがよかったかも?)!要はお面とり戻しゃすればいいのよ!