最初に出会ったスター団のしたっぱがネモによく効く向上心の塊でものすごいアホだった 作:うみじゃけ
オリジナル作品のプロットを考えていたら気が付けばこんなに時間が……とりあえず本編をどうぞ。
アラガネノクの咆哮がてらす池に木霊する。室外だというのにいやに双頭の叫びが鼓膜に響いた。
「出番だぜアカツキィ!」
しかしイレギアはそれに負けないように大声でアカツキを繰り出す。
「行くよ、ウェーニバル!」
「行くわよモルペコ!」
「みんなを助けるべ、オオタチ!」
「ぽにお!」
イレギアに続くようにアオイ、ゼイユ、スグリがポケモンを繰り出し、オーガポンもまたお面を被って戦闘体勢を構えていくと、アカツキの額が紅に輝き出す――!
「『ブラッドムーン』!」
イレギアの指示によってアカツキの額から紅の極太のビームが放たれる!
豪速で放たれたそのビームはアラガネノクに迫り……しかし、ディアルガの頭がひと睨みするとビームの速度がだんだん遅くなり、遂には動かなくなってしまった。
「な、なんだあ……!?」
「時間を……操ってる……?」
イレギアとアオイが驚いているのも束の間、今度はパルキアの頭が睨むと、『ブラッドムーン』のビームが消えてしまい、なんとイレギアの真上に召喚されたのだ!
「危ないっ!」
ゼイユが手を伸ばす……しかしその短い距離も届かずにビームはイレギアに直撃してしまうのだった……!
「先輩!!」
弾け飛ぶイレギアの体躯。黒煙を纏いながら彼はてらす池の奥深くに沈んでしまうのだった。
「……るさない」
イレギアを追って池の岸にまで足を沈ませたゼイユが怒りに全身を震わせる。呟くその言葉には憎悪が滲んでいた。
「許さないわよあんた! よくもイレギアを……あたしの友達を! ゼッタイに許さないんだから!!」
凄むゼイユが叫び、手持ちのポケモンを全て繰り出した……そして、カチューシャで前髪を上げてアラガネノクを蛇のような座った瞳で睨みつける。
「後悔しても、もう遅いべさ……!」
一方のイレギアはてらす池に沈みながら、むしろ脚を揺らして奥へと進んでいっていた。
(ヘルメット被っててよかったぜ……おかげで軽傷で済んだ)
明らかに衣服はボロボロだが、彼自身は特になんともないようだった。嘘だろ。
しかしそれでもイレギアはなにかやるべきことがあるようにてらす池の底へと泳いでいく……ゴーグルをつけていたので水の中でもよく見えて、赤い霧が湧きだすその底には、アラガネノクに切り裂かれたミロカロスが倒れ伏していた。
(やっぱりいたぜ! コイツも治してやんないと……とりあえず地上に……)
イレギアがミロカロスを持ち上げようにも、巨体ということも鱗が滑ることもあって上手く持ち上げられなかった。
(うーん……そうだ! 一回捕まえちまえばいいんだ!)
そう考えてからは早かった。イレギアのモンスターボールの中にミロカロスを収めたのを確認すると、イレギアはすぐさま地上に向かって泳ぎ始めた。
しかし地上に近づくにつれて違和感がイレギアを過ぎった。
……何も聞こえないのだ。
既に戦闘は始まっているハズ……だというのにそれらしい音が全く聞こえないのだ。
不思議に思いながらもイレギアは水面から顔を出す。ゴーグルをつけたままだったので目をこすることなく地上を把握するが……
「…………どこだ、ここ」
そこは言わば、地の底といった印象だった。
てらす池にも見られた、つまりエリアゼロで良く見られる結晶が天井や壁に点々と生えており、一番驚きなのが、その結晶でできたであろう巨大な樹木だった。
「————」
そして、不思議な気配のするキョジオーンが鎮座していた。
「あんな植物あるわけねえ……あのキョジオーンは一体……いや、そんなことよりもだ!」
結晶樹木の生えた土地にイレギアが上陸すると、濡れた衣服もそのままにミロカロスを繰り出す。
「なあっ!?」
そして次の驚きが彼を襲う——ミロカロスだったはずのその身体がヒンバスにまで縮んでしまっていたのだ。
「まさか……あいつの攻撃を受けたからか!? あいつらに教えないと……水没してる……」
スマホの故障を嘆きつつも、イレギアはバッグから医療箱を取り出してミロカロスだったヒンバスを治療していく。
「げんきのかたまりがねえ……使いきっちまったのか……そうだ! なあキョジオーン!」
1番の頼みの綱が無いことに落胆しながらも、そこにいたキョジオーンにイレギアは叫ぶ。
「あんたの塩を分けてくんねえか!? その塩には回復効果があるってペパーが言ってたからな、傷口に塩は良くはねえと思うけど……頼む! こいつのピンチなんだ!!」
見ず知らずのポケモンの為に誠心誠意頭を下げるイレギア。相手が自分の言葉を理解できるポケモンかどうかも分からないまま、しかし感情だけを頼りに問いかけると……
「————」
……不思議な気配のキョジオーンはその大きな手をイレギアに差し出すと、指を擦り合わせることで塩を彼に分けてやるのだった
「っ! ありがとう……!」
キョジオーンの塩、手持ちにあったきずぐすり……使える物は全て使って治療した結果、ヒンバスは安静になって安らかな寝息を立てるのだった。
「ふう、峠は越えたってやつか? 知らねえけど……とはいえ、ここは一体どこなんだ?」
ヒンバスをボールに戻してから改めて現状確認をすれど、謎の一言に尽きた。
念の為写真を撮っておこうとしてもスマホが故障しているので下手に動かせない。ポケモンの力を借りようにも手持ちのポケモンはここにはいない……おそらく『ブラッドムーン』の衝撃で手持ちが自分から離れてしまったのだろう。
「だとしたらあっちは安心だな。なんたって俺のポケモンがいるんだからな! それにアオイだっているし!」
ひとまず不安要素の一つが無くなったことを良しとして、これからどうするべきか……悩んでいると、キョジオーンがイレギアの肩に触れる。
「あっ、さっきはありがとうな! おかげで助かったぜ!」
「――――」
イレギアが感謝を告げるも、それが分かっているのかどうかは知らないが、キョジオーンは湖に浮かぶこの場所からある方角を示した。
「あっち……に、なにかあるってのか?」
キョジオーンは答えることは無く、それだけ示すと元からそうであったかのように結晶樹木の傍で鎮座していった。
「他に道がないんだ。行ってみるっきゃねえ」
試しに潜水してから再び顔を出してもてらす池に戻れないことを確認したので、イレギアはキョジオーンの指し示した方へと泳ぐ事にするのだった。
「それにしても不思議な空間だな」
写真が撮れたのならいくらでも撮っていただろう神秘的で、それでいて人間が立ち入っては行けないと精神に訴えかけてくるような忌避感がイレギアの中を渦巻く。
「この先に……何か、ある……?」
湖から再び出たイレギアはその先に何やら道が出来ていたので、はやる心臓の鼓動を抑えながらも慎重に足を進めるのだった。
自発的に煌めく結晶たちのおかげで光源が無くとも足元まで照らされているが、このような物質が実際にあるのか……以前エリアゼロに立ち入った時に考えたことが再びイレギアの脳裏に過ぎった。
そして――イレギアは奥地に辿り着いた。
「すっ…………げえ…………」
まさに感嘆の意。イレギアは目の前の光景に立ちすくんでしまった。
眼下に広がる巨大な結晶は見上げる限り広がり、壁一面にも結晶が広がっている。グリーンブックに記された宝石のある場所と言われても納得するような場所だった。
「とはいえ、こんなところになにがあるってんだ……?」
しかし元の場所に帰りたくて脚を進めたイレギアにとって、この場所が何を示すのか皆目見当もつかなかった。
ともかくこの場所を探索しようと歩き回っていると……その空間には不釣り合いなくすんだ結晶を見つけるのだった。
「なんだあ、これ……」
大きな結晶にへばりついていたくすんだ六角形の結晶はヒビが入っており、触れてしまえば崩れてしまいそうなほどボロボロになっている。
「これが俺を連れて行ってくれる……なんてな」
そうは思いつつ、イレギアはその結晶に手を伸ばす――彼の指が触れた瞬間、鮮烈な光が空間を支配する!
「うおっ、眩しっ!!?」
衝撃で吹っ飛ばされそうになりながらもイレギアは光を発する結晶の方を睨みつける。しかしその膨大な光量にイレギアの身体が押し上げられてはるか後方へと押し飛ばされてしまう。
「あ、れ…………」
壁に激突するはずが、そのまま吹き飛ばされたままでいる……そんな違和感を覚えたまま、イレギアは浮遊感に身を任せていた。
「ここは……なんだ……」
エリアゼロとはまた違った意味で神秘的な光の空間――その凄さにひたすら感動するのも束の間、ある一点が黒くくすんでいく。
「あっちに何かあるのか?」
そう決定づけて進もうともがいてみるも身体はただそこにあるだけ……そもそも空間や時間という概念がそこにあるのかすら分からなかった。
くすんだ一点はだんだんと広がっていき、遂にはイレギアはそれが何か形を持って近づいてきていると感づいた。
「竜……いや、亀……?」
姿形は小さく、ヒンバスのように矮小で醜い亀がイレギアの元へと辿り着く。それがなんなのか、何を意味しているのか分からないが、イレギアは藁にも縋る勢いでそれに問いかける。
「俺を……元居た場所に返してくれ!」
「――――鬘倥>縺ッ閨槭″驕ゅ£繧峨l縺」
クロガネノメ、アラガネノクと同じような、理解できない言語で話されている感覚。
それを聞き遂げたその瞬間、イレギアの身体は重力を帯びて落下していく。
「うわおおをああああああああおおおおあああ!?」
背中から風を感じ、別の光が身体中にまとわりついてくる感覚。
「ああああああああありがとなああああああああああああああ!!」
感謝をとにかく告げながら、イレギアは遥か底にまで落下していくのだった――
「あべし!」
イレギアが辿り着いたのはてらす池だった。みょうちきりんな叫び声とともに岸に落下したイレギアはトボトボと地上に上がっていった。
「……荳?譎彫騾?」
そこには傷ついたアラガネノクが苦しみ悶え、どこかへ再び消えていく姿が見えた。
「ざまあみろだべ! アタシさ怒らせた罰だっぺな!」
そしてそれに相対するような、前髪を上げたゼイユが前に立ってそう叫んでいた。
ゼイユは持ちうるポケモンを全て繰り出しており、アオイも奥の手であろうコライドンを繰り出して《テラスタル》までしていた。
「おおっ、もう終わったのか!?」
「うわっ! 先輩だべ!」
イレギアが飛び出すと、真っ先に近くにいたスグリが飛び跳ねて驚いた。
「えっ、ホントに!?」
「っ……!」
アオイとゼイユもまた気づいて振り返るが、ゼイユの方が足早にイレギアへと駆け寄った。
「あんた……怪我はねえべ!? どこも悪いとこ、ねえんか!?」
「お、おう……」
「……あ、ごめん詰め寄っちゃって」
イレギアは思わずといった様子で詰め寄ったゼイユに引き気味だったが、ゼイユもまた自分の態度を省みてそっぽを向きながら離れていった。
「髪型……それにその喋り方」
「へ、変で悪かったわね……ちょっと気合入れてたのよ……!」
「俺はイイと思うぜ! 一目で気合入ってんなあってわかって、それにカッコイイし……あ、方言なのはちょっと可愛いかったな、ギャップってえの? とにかくよかった!」
「…………あっそ」
イレギアの言葉にゼイユはそっぽを向いたまま適当な返事を返しながら髪型を元に戻していくのだった。
「それにしてもお前らこそ怪我とか無かったか?」
「大変でしたよ……攻撃受けたらなんかちっちゃくなっちゃったし、ああ、もう元に戻ったんですけどね」
「そういや俺の捕まえたミロカロスもヒンバスに……あっ、ミロカロスに戻ってる!」
「ブジカーッ!」
イレギアが繰り出したミロカロスに驚いていたところ、てらす池上に広がった彼の手持ちが集まってきた。
「イキリンコ! お前らも大丈夫だったかあ!」
「とっても頼りになったべ。ポケモン同士が指示出して動いてる姿はわや驚いたなあ」
「もう先輩要らないんじゃない?」
「そのくらい俺のポケモンが凄いってことだもんな! ワッハッハ!」
「うーん、皮肉が通じない!」
イレギア、アオイ、スグリが笑い合っている間、ゼイユはあらぬ方向を見ながら先ほどの言葉を頭で反芻していた。
「カッコイイし……可愛いって……」
普段ならいつものことのように感じられるその言葉がどこまでも頭に響いて離れない。彼の笑顔が脳裏に貼りついている。心臓が痛いくらいに鼓動がはやり、顔も上気していく。
「ゼイユがホント、凄い勢いであのポケモン?みたいのに挑んでてカッコ良かったんですよ」
「あんなねーちゃん……ううっ、思い出すだけでも身震いしちまうべ」
「スグ! アレ真似したらぶっ飛ばすからね!」
「うぅぅ……」
というよりも今までの言動もそうだ。友達を傷つけられたら当然怒るが、さっきまでの自分は今までの自分とは思えないものだった。
「なによぉ……あたし、どうしたってのよぉ……!」
脅威が去った安心感となにより、ときめきが彼女の胸を締め付けるのだった。
「ぽにー」
そんなゼイユをオーガポンは何かしたり顔で時々うんうん頷きながら見つめているのだった。
タイトルは『シンオウさまのご登場!ここは一体どこでスター!?』になっています。
アラガネノク はがね/みず
とある探検記にも あらゆるオカルト雑誌にも 一切の記事がない 未発見の 存在で 語られていないのは 目撃者が皆 行方不明に なっている ためだろう
ディアルガのダイヤがあった部分からパルキアの上半身が生え、パルキアのパールがあった部分からディアルガの前足が生えている(本来あった前足はパルキアの腕に変えられ、首はふたつ並んで生えている)、歪な姿のパラドックスポケモンだが、『こだいのすがた』と『みらいのすがた』の入り混じった矛盾だらけのものとなっている。その風貌は上記の特徴に加え、全体的には鱗を纏った恐竜の身体になっているが、2匹の繋ぎ目はエネルギーの流れるチューブで縫われている。
名前の由来——イレギアが名付けたワケではないが——は『荒鉱の躯』とある意味では仮称に近い。
ジクウノガンコウ ドラゴン 変化技 命中率—
フィールドのポケモンを自由に配置でき、わざの命中するターンをずらせる。
咆哮を轟かせることで時空間を異常を起こし、自分にとって都合の良い方へと捻じ曲げる。