最初に出会ったスター団のしたっぱがネモによく効く向上心の塊でものすごいアホだった   作:うみじゃけ

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37.これこそ《テラスタル》の真価?オーガポンの帰るべき場所!

 

 

 

—てらす池—

 

 

 

「ところでアンタ、当たり前だけど池に突っ込んだからずぶ濡れね」

 

 カチューシャを元に戻したゼイユの言う通り、どこからか現れたイレギアだったが全身服が張り付いてびしょびしょになっていた。

 

「それもそうだな……だが、そんな時はこいつらだぜ! 改めて出てこい!」

 

 しかしイレギアはしょげることなく、むしろ元気よくポケモンを繰り出す。呼び出されたのはシャンデラとイキリンコだった。

 

「俺に向かって『ねっぷう』! そして『ぼうふう』!」

 

「モシモ……?」

 

「キィー!」

 

 シャンデラが『マジにやるんスか?』とでも言いたげな視線にイキリンコは『あたぼうよ』とでも言ってそうな鳴き声で返す。

 

 それを聞き入れたシャンデラはしぶしぶといった様子で、しかし全力で『ねっぷう』を放ち、それに合わせるような形でイキリンコもまた『ぼうふう』を風に乗せてイレギアへとぶつける。

 

「うおおおおおおおおおおお!! すげえ風来てるぜ! あったかくて服も乾いてる気がして……う、うう、浮いてる~~~~っ!!?」

 

 そして当然ながらポケモンのわざは下手をすれば怪我では済まない事故の原因となるため、イレギアは吹きすさぶ強風にあおられて遥か上空へと投げ出されてしまった……やなかんじー。

 

「あわわ……あの人だいじょうぶだべ……?」

 

「ぽにお……?」

 

「大丈夫でしょ、イレギアだし」

 

「だね、先輩だし」

 

 吹き飛んだイレギアに対してゼイユもアオイも冷静な反応を示している。唯一当然のごとく慌てているスグリとオーガポンがまるで部外者のようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

      ――――わあああああああああああ!!」

 

 

 

 

 

 数秒経ってイレギアが空から落ちてきて、てらす池に人型の穴を作る。

 

「モシモシ……?」

 

「お、おーい……」

 

 シャンデラが心配そうにのぞき込み、スグリもまた穴の奥に落ちていったであろうイレギアに声をかける。一応心配ではあるのかアオイとゼイユも穴の奥を見下ろした。

 

「ひ、ひどい目に遭いまスター……ヘルメットが無かったら即死だったぜ……」

 

「ちょっと! 危ないじゃない! もうすぐで当たりそうだったわよー!」

 

「ぐえーっ! そっちでスター!?」

 

 ゼイユが的外れな怒りをイレギアへとアーボックツイストに乗せて仕掛ける……アオイ、スグリ、オーガポンは苦笑いを浮かべていた。

 

「……ま、無事でよかったって言ってあげるわ。というかいきなり変な奴が現れて忘れてたけど、あたしたちけっしょうのかけら取りに来たんじゃない。取る前にアンタが乾燥しちゃったら二度手間よ?」

 

「へっへっへっ……その辺は無問題!」

 

 ゼイユがもはやイレギア以外のことに憂いていると、イレギアは穴から飛び出してポケットから拳大の結晶を取り出した。

 

「ンジャカパーン! っと、もちろん取ってきてるぜ!」

 

「おおっ、やるじゃん! あのどさくさに取ってきたわけね!」

 

「さすが先輩、目ざとい~」

 

「そんな余裕あったんか……?」

 

「余裕とかそういう問題じゃねえよ。やるように言われたことを守っただけだぜ」

 

 イレギアはあっけらかんと言いながらけっしょうのかけらをスグリに託す。

 

「言われたことを……守る……」

 

 スグリはイレギアのことを実はまだ信用できてはいなかった。

 

 村の外から現れた人……アオイとはすぐに打ち解けるも、そのほかの……何より、あの姉が早くも仲良くなったその人物に少なからず警戒心を抱いていたのだ。

 

 しかし土壇場の判断力や行動力には目を見張るものがあり、スグリは自分でも知らないうちに警戒を、そして信用をしていたのだった。

 

「ぽに?」

 

「……イレギア、さん。良い人だべな!」

 

「ワハハハハハ!! なんせ俺は学校の人気者だからな! お前もスター団に入って青春しようぜ!」

 

「気になってたけど、そのスター団ってなんなの? 怪しい団体だったら許さないから!」

 

「そんな怪しい団体なワケねえだろ? スター団ってのは――」

 

 イレギアがスター団について説明しようとしていた時、てらす池に一人の陰が現れる。

 

「池に沈む結晶……このエネルギーはやはり……」

 

「ブライア先生!」

 

「おや。アオイくんたち、ペアではなく班を組んだのかな?」

 

「あんまりここ……地元の人以外は入るのやめてほしいんですけどー」

 

「神聖な地であることは理解しているよ。一応、管理人さんには許可を取ったのだが不足かな?」

 

「許可取られたんじゃ仕方ねえよな。俺たちもゼイユに許してもらった立場だし」

 

「そういえば管理人さんには言ってない……」

 

「どっちかと言えばおれらの立場が弱いべ……」

 

 イレギアたちのこそこそ声にゼイユが睨みを飛ばすと、3人はそっぽを向いて口笛なんて吹いていた。

 

「…………何してるんですか?」

 

「ちょっとした調査さ。てらす池の水質に興味があってね……ビンゴ! だったよ。何故かはわからないが、てらす池の水はテラスタルエネルギーと同じ波長をもっているんだ。この理由を解き明かせばいずれパルデア以外でもテラスタル現象を安定化できるかもね」

 

「……はぁ」

 

「なに呆けてんだよゼイユ! これはすごい発明かもだぜ!?」

 

「いや知らないし、なに興味津々になってるのよ暑苦しいわね。あの……あたしたち急いでるんで。帰るよあんたたち!」

 

「う、うん……! 鬼さま、手ぇ繋ごっ……!」

 

「ぽに!」

 

 ゼイユは興味ないのか一足先に帰路につき、スグリもオーガポンと手を繋いでその後を追った。

 

「俺は応援してますよ! 夢への道のりに近づけるかもですからね!」

 

「ありがとうイレギアくん。パルデア以外でもテラスタル現象を確立できればテラパゴスに一歩近づけるはず……」

 

「夢、かあ……」

 

 ブライアと別れた後。アオイはそう呟いた。

 

「アオイはなんか夢はあるのか? 俺はもちろん王になることだぜ!」

 

「初めて知りましたけど……まあ、ワタシは今のところないですかね。なんでも叶えられるように勉強しておきます!」

 

「おう! 大事だぜそれは! なにせ……」

 

「元気な若者を見ているとこちらも元気になってしまうね。さて、まずはサンプルを……おや?」

 

 イレギアたちもまた帰路についたその少し後……さらに何者かがてらす池に訪れる。

 

「キンシバイくん?」

 

「こんにちは、先生。もしかして……さっきのを見ていましたか? それとも、異変を聞きつけて?」

 

「異変? 先ほど来たばかりで……何やら鳴き声のようなものは聞こえたが……野生のポケモンとバトルしたのではないのかな?」

 

「……そうですか」

 

 キンシバイは先ほど、謎のポケモンが急に現れてアオイたちと戦ったところを陰から一部始終見ていたのだ。

 

(あのポケモンはどこかシンオウ伝説に登場するディアルガとパルキアに似ていた……急に現れたところも考えるに……いや、まだ推測を出ないけど、もしかしたら……)

 

「用はそれだけかな?」

 

「……すいません、失礼を承知で頼みますが……ボクもテラスタルの調査をお手伝いしても構いませんか?」

 

「それは……構わないが。ゼイユくんに羽を伸ばしてもらっている都合上、私一人では野生のポケモンに対する抵抗手段に乏しいからね。手伝いは大歓迎さ」

 

「では、以後お願いしますね」

 

 キンシバイは腹の奥でほくそ笑むのだった。

 

 

 

—スイリョクタウン—

 

 

 

 スイリョクタウンにまで戻ってきたアオイたちだったが……その入り口で止まってしまっていた。その理由は……

 

「が、がお……」

 

「ここでお別れして、後でお面持ってこようか」

 

「それもそうだが、オーガポンがこの先どうやって寝泊まりするかだな。家までの道も壊されちゃったし」

 

 アオイとスグリがあーでもないこーでもないと悩んでいる最中、スグリが何か告げようと口を開こうとしたりして、最終的に一人でスイリョクタウンへと向かっていった。

 

「スグ? どうしたの?」

 

「……おれ、ちょっと行ってくる!」

 

「ちょっ、スグ!? いけっ、イレギア!」

 

「『とおせんぼう』でスター!」

 

 ゼイユの指示によってイレギアにスグリは行方を阻まれてしまった! もう逃げられない!

 

「わ、わ、わ……」

 

「何よ急に飛び出して……何する気だったの?」

 

「えっと……ねーちゃんに言ったら、怒るかもだから……」

 

「……怒んないわよ。ちゃんと説明しない方が怒るわよ」

 

「スグリ、教えて?」

 

 ゼイユとアオイの言葉にスグリは一度俯いてから……ようやく口を開いた。

 

「オーガポンの誤解を解く?」

 

「ぽに……?」

 

「うん……それなら、この町が居場所になって、寝泊まりも出来るし、何より、鬼さま、寂しくない……かなって……」

 

「ふーん、そういうことだったの。良いわよ。やったりましょ!」

 

 ゼイユの明るい返事に、スグリは目を丸くした。

 

「え……いいの?」

 

「良いに決まってるじゃない。そもそも伝説がおかしかったんだもの、出るとこ出てやらないと元々気が済まなかったのよ!」

 

「ワタシも協力する! 管理人さんとかに話してみよ!」

 

「俺はこの町以外の人たちに知らせてきまスター! なぁに、そう長くはならないぜー!」

 

 イレギアはモトトカゲを繰り出し、ウィリーしながら向かっていく。

 

「よーし、それなら最後にあたしたちで誤解を解くわよー!」

 

「「おー!」」

 

 

 

—ゼイユとスグリの家—

 

 

 

「――というわけで! お面の修理を祝して、誤解も解けたことも祝して……乾杯!」

 

「「「乾杯!」」」

 

「ぽにおーん!」

 

 すっかり日も暮れてゼイユとスグリの家にて、4人が取ってきたけっしょうのかけらによってお面が修復されたのだ。

 

 4人がジュースで、オーガポンがお酒で乾杯している時も、オーガポンは直された碧のお面を大事そうに抱えていたのだった。

 

「鬼さま誤解が解けてよかったねぇ」

 

 スグリたちの祖母がリンゴと包丁を持ってきながらうんうんと頷いた。

 

「鬼さま、今日からはおれん家に寝泊まりしてもいいから……な?」

 

「ぽに!」

 

「それにお面も全部持って行っていいって言われたし、万々歳よ!」

 

「よっしゃ! それなら隠し芸大会しようぜ! 俺モノマネする!」

 

「よっ、頑張れ先輩!」

 

「全然ダメだったら手ぇ出すからね」

 

「お、おれもやらなきゃダメ……?」

 

「全員やるんだぜ。もちろんオーガポンも!」

 

「ぽにお?」

 

「オーガポンは、なんかできることある?」

 

 オーガポンがアオイの質問に数秒考えると……身体から蔦を伸ばして持ってこられたリンゴを次々と貫いていった。

 

「おおーっ、随分なお手前で……あれ?」

 

 アオイが疑問に思った通り、突き刺されたリンゴたちは徐々に萎んでいっていた。

 

「もしかして、吸収してんだか?」

 

「ほへー、ってことはオーガポンはくさタイプなんだな!」

 

「なに冷静な解析してるのよ」

 

 リンゴが完全にしぼみ切ると、オーガポンが口をもごもごしだして……自分の空いたコップに

 

「ぽろろろろろろろろ……」

 

 果汁を吐き出した。

 

「ぽに!」

 

「あー……」

 

「なるほどー……スグ、あんたが飲んで」

 

「ええっ!?」

 

 オーガポンが笑顔で差し出したそれにアオイとゼイユがドン引きし、スグリにそれを押し付けた。

 

「お、おれが、鬼さまの、飲んだ、鬼さまの、鬼さまの……っ!」

 

 顔を赤らめて心臓の音をみんなに聞こえるほど高鳴らせつつ、オーガポンの使ったコップにゆっくりと唇を点けようとして……

 

「なんだ飲まないのか? じゃあ俺が飲むぜ」

 

 イレギアにかっさらわれてしまった。

 

「お、ウマい! 単なるリンゴの果汁じゃなくて、柑橘系の香りもしててジュースみたいだ! ……なんか酒っぽいな」

 

「そりゃさっきまでお酒が入ってたもの」

 

「あ、あ、あ……」

 

 スグリがギギギ……と軋むように動いてイレギアの飲み干したコップを追いかけていくが、テーブルに置かれたそれを羨ましそうに見ていた。

 

「……また、作ってもらう?」

 

「リンゴもうねえぞ?」

 

「……いい」

 

 スグリは部屋の隅で落ち込んでしまった。

 

「ぽにー?」

 

 オーガポンはそれを不思議そうに眺めていた。

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