最初に出会ったスター団のしたっぱがネモによく効く向上心の塊でものすごいアホだった   作:うみじゃけ

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38.オーガポンは誰の手に?友情のラストバトル!

 

 

 

—ゼイユとスグリの家—

 

 

 

「あ、ごめん。先生から電話来た。なんです先生?」

 

 お祝い会の最中、ゼイユが誰かから電話を受ける。察するにブライアからだろう。

 

「はい、はいはい……え? あ、はあ……はい……わかりました……はい…………それじゃあ」

 

「どうかしまスター?」

 

 イレギアがブレイクダンスしながらゼイユに尋ねる。

 

「外でやんなさいよ。実は――」

 

 ゼイユはブライアから聞いたこと……テラスタルの研究が進んだこと、そしてもうすぐブルーベリー組である自分たちは帰ってしまうことを伝えるのだった。

 

「そうか……寂しくなるな」

 

「鬼さまともお別れか……それはちょっと、ううん、すごく寂しい……」

 

「ぽにお……」

 

「オーガポンも寂しそう。それならスグリとゼイユについていく?」

 

「ぽにぽに……」

 

「あー、それはそれでアオイと離れ離れになるのは嫌がってるわね」

 

「あれ俺は?」

 

「ぽに」

 

 オーガポンがイレギアから目を逸らす。

 

「俺は!?」

 

「ぽにぽに!」

 

 『冗談だよ!』とオーガポンが悪戯に微笑む。

 

「先輩の扱い方をもう心得てるみたい」

 

「さっすが長生きしてるだけあるわね」

 

「ううん、おちょくられてるみたいでスター……」

 

「でもどうするべ? 元々違う学校だし……それに修学旅行で来てるからみんなキタカミにはいられねえや」

 

「ぽにー……」

 

「アオイ、イレギア、あんたたちうちに転校しなさいよ」

 

「い、イヤだぜ……ダチもたくさんいるしなにより――」

 

「じゃあさ! 誰かがオーガポンをゲットするのは?」

 

 アオイの提案に、三人と一匹は目を丸くする。

 

「おっ! そいつは良いアイディアだぜアオイぃ! 誰かの手持ちにいればスマホとかで顔も見れるしな!」

 

「おれスマホ持ってない……」

 

「会いたくなったらアタシが貸すから」

 

「よっしゃあ! 決まりだな! どうやって決める? バトルで決めるか? アローラに伝わるバトルロイヤルとかで!」

 

「それも良いけど……せっかくならキタカミっぽいことで決着つけない?」

 

「キタカミっぽいこと? なんだよゼイユ?」

 

「ふっふーん、それはね……」

 

 

 

—キタカミのどこか—

 

 

 

「鬼退治フェスよ!!」

 

 翌日、ということでキタカミの広いところにやってきました。

 

 ルールは簡単! 集めるきのみは4つなので、各自自分の集めるきのみをひたすら集めるべし!

 

「ねーちゃん、自分が強いからってこれ選んだ……」

 

「うっさい! 手ェ出るよ! キタカミを離れるんですもん、最後はキタカミ流をやるべしよ!」

 

「おっし! やるからには全力全開! 俺とモトトカゲの連携を見せてやるぜ! ゴーグルオン! ――痛え!」

 

「アギャス!」

 

「がんばろうね、コライドン」

 

「アギャア!」

 

 ゼイユとスグリは貸出されているオドシシだ。

 

「ぽにおーん!」

 

 オーガポンは集めたきのみが盗まれないように見守る係、そして号令係だ。

 

「ぽーに……おん!」

 

「うおお! 一気に集めまスター!」

 

「アギャーッス!」

 

「早っ!」

 

 瞬く間にイレギアは限界である30個を集めていく……が、まだ止まらない

 

「今の俺たちならやれる! 限界を超えて50個もちでスター! よっしゃ戻るぞモトトカゲ!」

 

「アギャス!」

 

 モトトカゲが勢いよく振り返る。のしかかる重量と遠心力が合わさり――

 

「うおォン!!?」

 

 ――イレギアは吹っ飛んで落馬した。

 

「ぐえーっ! 痛っててぇ……ん?」

 

 そしてきのみを辺りに散らばらせていたため、食いしん坊ポケモンのゴンべやヨクバリスたちが群がりきのみを奪っていった。

 

「うわあああああああ! 持っていくなーっ!」

 

「バカが自爆したわ! 今のうちに稼ぐのよ!」

 

「助けんの!?」

 

「まあ勝負だからねー」

 

 こんなハプニングもありつつ、勝負は進んでいき……

 

「ぽにおー!」

 

 勝負が終了する。勝者は――

 

「勝者、アオイ! なかなかやるじゃない!」

 

「やったー!」

 

「まさかの俺が最下位……トホホでスター」

 

「あんな無茶するからね。それにしてもスグ、あんたもすごいじゃない! あたしよりもたくさん集めるなんて!」

 

「にへへ……でも、負けちゃったな……でも、楽しかった!」

 

 スグリはとてもすっきりした笑顔でアオイを、そしてオーガポンを見つめている。

 

「アオイ、鬼さまを頼んだな!」

 

「うん! ありがとうスグリ!」

 

「鬼さま、アオイをあんまり困らせんなよ?」

 

「ぽにぽに!」

 

「俺じゃねえんだからそんなに困らせてこないだろ!」

 

「あんたは困らせる側でしょーが」

 

 ゼイユがイレギアにツッコミをして4人と一匹が笑顔になっていく。

 

 その後、アオイはオーガポンとの真剣勝負に見事勝利してゲットまで進んでいくのだった……

 

 その日の夜――

 

 

 

—ともっこプラザ—

 

 

 

「良い夜ね。イレギア……明日が出発なんて信じらんないわよ」

 

「俺もだよ。もっとゼイユたちと一緒に居たかったが……林間学校だ、仕方ねえ」

 

 夜風が涼しい田舎の空気が2人の間に吹いていく。ともっこ像の無くなったこの公園で、2人は向き合っていた……お互いにモンスターボールを持って。

 

「スグリたちには言わなくてよかったのか?」

 

「良いのよ。あたしもしたかったの、真剣勝負ってのを」

 

 半分だけ本当だ。もう半分は――2人きりになって、2人きりだけの時間を過ごしたかっただけだ。

 

「よろしくお願いしまスター! ……なんて、普段なら言うところだが、今回はトゥルーバージョン! ポケモントレーナーのイレギアが勝負を仕掛けるぜ!」

 

 ヘルメットもゴーグルもつけていない生身のイレギアがゼイユに勝負を仕掛ける!

 

 

 

 

 

ポケモントレーナーの イレギアが 勝負をしかけてきた!

 

 

—BGM 決戦!イレギア—

 

 

ゼイユ●●●●●●VSイレギア●●●●●●

 

 

 

 

 

「いくわよグラエナ!」

 

「先鋒は任せたぜキリキザン!」

 

 始まった、とても素敵な時間。

 

「ぶち上げて行こうぜシャンデラ!」

 

「火力なら負けないわよキュウコン!」

 

 とても楽しい、とても心地いい。

 

「やっちゃってハハコモリ!」

 

「ここからだぜマタドガス!」

 

 いつまでも続けばいいのに。

 

「出番だぜピッピ!」

 

「まだまだよモルペコ!」

 

 でも、もうすぐ終わってしまう。

 

「畳みかけるわよヤバソチャ!」

 

「終わらせねえぜルカリオ!」

 

 だから、最後まで出し切る!

 

「最後はお前だ! アカツキ!」

 

「ならこっちも……お願い!ミロカロス!」

 

「そのポケモンは……!」

 

「あの時ゲットしておいたの! あたしに似て美しいでしょ?」

 

「おう!」

 

「……ふふっ」

 

 はにかんで、嬉しくなってしまう。

 

「いくぜぇゼイユ!」

 

「来なさいイレギア!」

 

 全力で2人でぶつかり合うのだった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーあ、やったやった……つっかれたーあ」

 

「ホント、柄にもなく全力でやっちゃったわね」

 

 真剣勝負が終わり、イレギアとゼイユはベンチで休んで夜風に当たっていた。

 

「でもま、楽しかったな!」

 

「うふふっ、そうね!」

 

 2人で笑い合って……さっきまでのバトルのあれこれを話し合う。

 

「そういえばスター団って結局なんだったのよ」

 

「ああ、あれか? あれは俺が人気者になるために所属していた組織でな……本当はもう解散してるんだが、敬意を表してああいう格好をしてるんだぜ!」

 

 そして――いよいよゼイユは話を切り出した。

 

「……ね、ねぇ?」

 

 ゼイユの声は、夜風に溶けそうなほど小さかった。さっきまであれほど強気にポケモンを繰り出していた人物とは思えないほど、頼りなく震えている。

 

「ん? どうしたんだよ恥ずかしがって」

 

 イレギアは軽く首を傾げる。その仕草一つ一つが、ゼイユにはやけに遠く感じられた。

 

「そ、その……あんたって彼女とかいる?」

 

 言い切った瞬間、心臓が一拍遅れて跳ね上がる。聞いてしまった。もう戻れない。

 

 沈黙はほんの数秒だった。けれどゼイユにとっては、やけに長く、残酷な時間だった。

 

「おう、いるぜ」

 

 即答だった。迷いも、含みもない、あまりにも自然な声。

 

「そうなのっ! なら…………え?」

 

 思考が追いつかない。理解より先に、身体の奥が冷えていく。

 

「前に言ったろ? ライバルのネモ! ライバルであり恋人だ!」

 

 言葉が続くたび、胸の奥で何かが静かに崩れていく。音も立てず、ただ確実に。

 

「ぁ…………」

 

 何か返さなきゃ、と思うのに。口が開かない。声を出そうとすると、喉が詰まる。

 

 視界がじわりと滲んだ。

 

「ぜ、ゼイユ? なに……泣いて…………?」

 

 その言葉で、初めて気づいた。頬を伝う温かさに。

 

「えっ……」

 

 触れようと伸ばされた手が、やけに優しく見えて――だからこそ、耐えられなかった。

 

「ハンカチいるか?」

 

「要らない!」

 

 弾くように声を荒げ、手を払いのける。強く振り払ったつもりだったのに、指先は微かに震えていた。

 

「これは何でもないから! じゃあ! また明日!」

 

 振り返らない。振り返ったら、崩れてしまうから。

 

 夜道を駆ける足音が、やけに大きく響く。息が上がるのに、止まれなかった。

 

 ……残されたイレギアは、その場から動けずにいた。ゼイユの背中が見えなくなっても、しばらく立ち尽くしている。

 

「……やっちまったな」

 

 小さく呟いた声は、誰にも届かない。正直に言っただけだ。嘘はついていない。なのに胸の奥が、妙に重い。

 

 ゼイユの表情。泣きそうで、それでも必死に平静を装っていた顔が、頭から離れなかった。

 

「……くそ」

 

 ベンチに腰を下ろし、夜空を見上げる。星はいつも通り瞬いていて、今日が特別な夜だったことなど知りもしない。

 

 追いかけるべきだったのか。それとも、あれで良かったのか。

 

 答えは出ないまま、夜風だけが静かに吹き抜けていった。

 

 その後もイレギアは電話をかけたりはしなかった。

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