最初に出会ったスター団のしたっぱがネモによく効く向上心の塊でものすごいアホだった 作:うみじゃけ
翌日、ブライアの呼びかけによって生徒たちは公民館の前に集められていた……が、そこにゼイユの姿はなかった。
「これで全員……ではないがメンバーは揃ったね」
「…………」
スグリは心配そうな顔で俯いている。
「ゼイユ、どうしたんだろ……」
「…………さぁな」
「……?」
アオイも心配そうにイレギアに話しかけるが、当のイレギアはどこか遠い目をしていた。
「それでは管理人さん、どうぞ」
「はい。えー、みなさんおはようございます。なんとみなさん全部のペアでキタカミの歴史看板巡り……オリエンテーリングを終えられました!」
「「やったー!」」
「とっても楽しかったです!」
「うん……とっても楽しかったね、みんな」
「キンシバイくん、ポダンくん、ナモさん、プペーくんは班のように行動していましてね」
「へえ、ワタシたちみたいですね先輩」
「だな、楽しめて何よりだぜ!」
「……はい!」
さっきの杞憂だったか、とアオイは思い直す。
「いやー、どうもありがとうね。本当にお疲れ様でした! オリエンテーリングの参加賞を配りますね」
管理人からそれぞれにキタカミもちセットが配られて行った。
「これは?」
「これはキタカミもちを作るための方法やら必要な道具が入ってるセットでしてね、アカデミーに帰っても作れると思いますよ!」
「ほへー、あのもち美味しいから嬉しいぜ!」
「ですね!」
「本当はもっと時間がかかると思ったんですがみなさん優秀で! 林間学校終了まではまだ全然期間がありますのでアカデミーの生徒さん方はご自由にキタカミにご滞在ください……それと」
管理人はブライアの方を向き、言葉を促す。
「ああ……諸事情で申し訳ないが、私、ゼイユくん、スグリくん、キンシバイくんのブルーベリー組はひと足先に学園に戻らなければならないんだ」
「なっ……ホントなんです!?」
「どうしてですか……?」
「…………」
イレギアが大袈裟に驚き、アオイが尋ねる……スグリは相変わらず俯いている。
「本当にすまないね。大穴関係で進展があって、どうしても行かなければならないんだ……引率として同行していたが、君たちは実に優秀なので私がいなくても大丈夫さ」
「そう……ですか…………」
「先輩……?」
イレギアの予想以上の凹み方にアオイは違和感を覚えた。
「っ……そういうことなら頼られないとな! 人気者の俺がみんなを導いてやるぜー!」
「ふふっ、頼もしいねイレギアくんは! すみませんが以降のお世話は管理人さんにお願いしますよ」
「はいはい、大丈夫ですよ」
「あ、一応サザレお姉さんもいるから安心してねー」
「それは逆に不安というか……それはともかく、キンシバイくん……みんなに言いたいことがあるんだって?」
「はい」
極彩色の髪を持つ中性の彼、キンシバイはにこやかに微笑んで一歩前に出る。
「ポダン、ナモ、プペー……君たちと出会えて本当に楽しかった。改めてお礼を言わせてくれ、ありがとう」
「えへへっ」
「また遊ぼうね!」
「いつでも連絡ちょうだい!」
「イレギア、アオイ……もちろん君たちとも。リーグ部の序列5位として、いつか君たちとも戦いたいね」
「おう! 俺は世界一になるんだ、その過程でお前とも戦うだろうからな!」
「ふふっ、ワタシも戦いたい!」
「よかった……またね、みんな」
キンシバイが一歩下がったことを確認すると、ブライアは手を叩いて口を開く。
「それじゃあかいさ——」
「ま、待って!」
しかしそこへスグリが口を挟む。
「おや、スグリくん……君も何か?」
「う、うん……先生、おれもみんなに言いたいこと、ある……」
スグリもキンシバイに倣って一歩前に出る。
「そ、その……ねーちゃんはちょっと体調が悪いみたいで、代わりにおれが……おれ、は、村の出身で、実は……みんなのこと、最初はよく思ってなかったんだ」
「「「えぇー……」」」
「え、そうだったの?」
アオイの疑問にスグリは「うん……」と頷いて頬をかく。
「おれたちの大切な場所に土足で入ってこられる気がして……けど、一緒に過ごしてみると全然そんなことなくって……実際、みんなと話してみると面白くて……食わず嫌い、よくないなって思った! ……です」
スグリはたどたどしく、しかしはにかんで笑う。その姿を見てアオイもイレギアも……ポダンたちも嬉しそうに笑っていく。
「だから、その……楽しかった! みんな来てくれてありがとう! 特にアオイ……」
スグリはアオイの目を見て、アオイもスグリをじっと見つめる
「来てくれたのが、アオイで良かった……!」
「ワタシも……会えたのがスグリで良かった!」
「にへへ……」
「えへへ……」
「俺もスグリと会えてよかったぞー!」
「ぼくもー!」「わたしもー!」「ボクもー!」
2人が揃って笑っているところに、イレギアも叫び、それに続いていく……キンシバイは含み笑いをするだけだった。
「……一瞬一瞬が輝かしい子供たちの時間は大人からすると眩しすぎます」
「だねえ……」
ブライアの言葉にサザレはうんうんと頷いていく。
「というわけで一旦林間学校はひと区切り! 管理人さんにお礼を言いましょうか!」
「おう、じゃあせーの!」
「「「ありがとうございましたー!」」」
「ええ、みなさん……ありがとうございまスター!」
管理人は渾身のスター団ポーズを披露した!
「おお!管理人さんもスター団に!?」
「ボタンに怒られそう……」
「わやじゃ……」
「ゼイユ、体調はどうだい?」
ゼイユの祖母が部屋の扉をノックしながら尋ねる。
「んー……ちょっとよくなったかな」
「そうかい……いつでもいいから、顔を見せてね」
「うん……」
祖母が離れて行ったのを確認すると、ゼイユは布団から出ていく。
「あんな別れ方……やっぱりよくない! 会いに行かないと……!」
部屋から出ようとして……ふと異様な気配を感じて立ち止まる。
「…………なに?」
ふと振り返ると、窓からすり抜けて入ってくる謎の浮遊物体……桃?
「モ、モモ……モモワーイ!」
「!?」
「…………ならないと」
「強く、ならないと……」
「そうすれば、人気者に…………」
「待っててな、イレギア」
ロトロトロト……イレギアから着信だ。
「…………」
ゼイユはそれを拒否し、ブロックした。
次回からはブルーベリー編ですが……原作、二次創作とともに違う方向になりそうです