「どうぞ、汚いですけど」
「お邪魔しま〜す」
「お邪魔します」
「お、お邪魔します」
やけにソワソワした様子で、女性陣が入室する。この前掃除したおかげで、一応人を上げても恥ずかしくないくらいの仕上がりにはなっている。そんな中、速攻で定位置に動いて、愛用のクッションに体重を預ける自堕落なセンパイもいた。
「あ、おかまいなく」
「じゃあセンパイ以外の分の飲み物だけ取ってきますね」
「ちゃんと構ってよ〜」
客人だよ? と偉そうなことを言った彼女には、冷蔵庫で冷やしといたワンカップを投げつけ、二人のために缶チューハイを渡す。先程コンビニで買い込んできたつまみを展開し、割り箸をセットすれば、もう状況は完璧。カシュッと子気味いい音の後に、アルミ缶同士がぶつかり合うべこっとした音が鳴った。
「あー、最近お気に入りなんすよねこのシリーズのチューハイ」
「結構果実感あって美味いな」
「そうそう、スト虚無ほどアルコール感に振り切れてないし、味の方の質も高いから好き」
最近だとスト虚無も、8パーセントで飲みやすいやつ出してたけど。とはいえ、やはりブランドイメージというものはあるからな。
「それにしても、後輩さんの部屋ってこんな感じなんですね」
「あはは、何もなくてつまんないでしょう」
「そうか? 所々に個性出てる気がするけどな」
たしかに、本棚には雑多な趣味の本が置いてあるし、戸棚の奥の方を探せばコレクションしてあるピックケースも出てくる。部屋の隅に立てかけてあるギターは、最早インテリアと化してしまっているけど。
「前はもっと趣味の物で溢れ返ってたから、マシになってるくらいだよ〜」
「一番ヤバイ時期はピックとかスコアとか床にめちゃくちゃ散らばってましたからね」
収集していたトレカも散乱していたので、玩具箱をひっくり返したみたいになっていた。そんな時期にまで入り浸っていたセンパイは、いま思うと図太いどころの騒ぎではない。
「まあセンパイの部屋もだいぶ汚いですもんね、衛生面はうちより怪しそう」
「そんなことないもん!」
「缶とか洗って捨ててます? 生ゴミは忘れず出してます? 流石に月一回は掃除してますよね?」
「ぐぬぬ……!」
「お母さんみたいな畳み掛け方ですね」
実際、掃除してあげたこともあるので間違っていない。形状記憶合金みたいに、すぐに元に戻ったけど。
「そんなこと言うなら、私にも考えがあるよ」
「何に対抗してきてるんすか」
「……押し入れの左上、奥のダンボール箱の中」
「!?」
全員の視線が押し入れに向かった。咄嗟に隠すように立ち塞がって「なんで知ってるんですか!?」とセンパイに言う。
「ごめんごめん、ヒマな時に漁ってたら見っけちゃって」
「最悪の暇潰しだ……」
「へ〜〜〜〜」
「ふ〜〜〜〜ん」
PAさんと星歌さんの生暖かい視線が刺さる。その『私理解ありますよ』みたいな絶妙な表情をやめていただきたい。
「だいぶ気になるな」
「いや面白いものじゃないですから! むしろお見苦しいですし!!」
「大丈夫ですよ、後輩さんも男の子ですもんね?」
「理解ある彼女ムーブやめて!」
「前見た時にはそんなにえぐいのは入ってなかったな〜」
「何出てきても引かないから、見せろ」
「いいじゃないですか、減るものじゃありませんし」
「オレの精神が! すり減る!!」
宅飲みの悪いところが出た。大学生みたいなサイアクのノリである。
オレの名誉にかけて、このあとの顛末と、結局何が入っていたのかについては秘すことにする。ひとつ言えることは、コレクションの整理と移動が検討されているということだ。