お気に入りとか評価とか感想とか皆様ありがとうございます。作中のお店にはだいたいモデルがあるので探してみてください。あるいは飲みに行きましょう。
「カンパーイ」
緩い掛け声とともに、コンと軽い音を立ててアルミ缶同士がぶつかり合う。カシュッと蓋を開けて、そのままごくごくと流し込む。軽度な炭酸の感触とともに、安い甘味料とそれっぽいフレーバーが身体の中に広がっていき、それなりの満足感が得られる。
「はー、たまらんっすね」
「うん、やっぱたまには公園飲みもありだよね」
「気楽さはありますよね」
大人としては終わりですけど、と続ける。でも今日は仕方がないのだ、週末なせいで近場の居酒屋が全部埋まってしまっていて、行き場がなかったのだから。付近には、同じように集まったスーツ姿の群れもいる。コンビニで雑に買った酒缶の群れを傍らに、オレたちはベンチに座っていた。
「やっぱコスパだけならサイキョーだよね、『ストロング虚無』。美味しいし」
「実はこれ美味しいって思えるの、酒カスだけらしいっすよ? 普通の人からしたらアルコール臭くて飲めたもんじゃないそうです」
「えー!? 全然苦くないのに」
実際、一時期のレモン味とかはだいぶアルコール感あったが、最近のはいい感じに誤魔化されてる。そこそこアルコールに慣れてる人からしたら何もわからないレベルなので、そういうところで『ヤバさ』が強調されているのだと思う。
「で、他何か買ってたっけ?」
「え、もう飲み終わったんすか?」
「あたぼーです」
「江戸っ子?」
「次の缶をちょーだい、こんちきしょうめ」
「うわ~、ただの酒カス」
言われつつも、檸檬の酎ハイをぶん投げる。酔っ払いに配慮して、このシリーズの中でも最も度数が低い蜂蜜のやつ。
「あ~初恋くらい甘~~~い」
「センパイにイチバン似合わない発言でビビりました」
「うう、うら若き乙女なのに……」
「本気で言ってます?」
「二割くらいは」
「………………」
「ひゃっ!?」
つんつん、とほっぺたをつついてみる。酒を飲んでいるせいか、体温が高くてちょっと暑い。更に熱くなった頬をもう一度突き、うん、と頷く。
「乙女のハリじゃないですね」
「そんな失礼なことある??」
「化粧水とか乳液とか塗ってます? メイク落とし忘れて寝てたりしません? 徹夜は? 暴飲暴食は控えてますか? ビタミンちゃんと摂ってます?」
「アルコールなら無限に摂ってます……」
泣きながら蜂蜜檸檬を流し込むセンパイ。案の定何もやってないらしかった。
「センパイ、酒やめなよ。オレと一緒にスムージー飲もうよ」
「後輩くんがタバコやめるなら一日くらいやってもいいよ」
「ただの休肝日じゃないですか、それは」
エブリデイ飲酒よりはいいか……? いや誤差か……?
まあタバコは一日吸わなかった程度では何も変わらないので、付き合う義理はまったくない。一度汚れた肺が白くなることはないのだ。ずっと灰色。
「てゆーか後輩くん、おつまみある?」
「はい、さきいかあげます」
「ありがとー。後輩くんも食べな?」
「いえ、大丈夫です。オレにはこれがあるので」
石を擦る音の後に、手の中のジッポが熱を持つ。ちりちりと微かに頬を炙られるような感触と共に、大きく息を吸い込む。
「っあ~~~~美味っ」
「つまみじゃなくてすいこみじゃない?」
「そんなカービィみたいな言い方されても」
事実そんなもんだけど。指でつまんではいるものの、食むのは煙ばかりなので。
「空腹の時にこれやるのが一番キマるんすよね」
「人のこと言わないでほしいね~~~」
まあ五十歩百歩、目くそ鼻くそ、お互い様。
「類友ということで、ここは一つ」
「だいぶ異類かも」
そうかな。そうかも。
「センパイも吸います?」
「吸いません」
すいませんだけど、と続いた。ちょっと梵頭だった。