ありふれない暗殺者は世界最強と共に……   作:翁月 多々良

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 今回のサブタイ………何気に小洒落てない?

 あとお気に入り登録100名突破有り難うございます!!m(_ _)m


第9話:カンケイ〘巡〙〜教皇と陰陽師〜

 

 

 ここは聖教教会の本山、そこの長として充てがわれた豪華絢爛な一室に老人はいた。

本来付き従う信者も、給仕の者たちも下がらせて一人でいるには広すぎるその部屋で唯一人佇む。傍から見れば老人が一人黄昏れているだけに見えなくはないが、実際は違った。

 

 老人は今、密談の真っ最中だった。

本来、この場にいない遠くに居る者と会話をする魔法など、この世界には存在しない、アーティファクトならあるいはと思うが、そんなアーティファクトもここにはない。なら老人は、どうやって密談しているのか?

その答えは至極単純、正確にはこの場所にはもう一人(・・・・)潜んでいたからだ。

姿が見えない訳でも、気配を消している訳でもない。その者には今、己の肉体を構成するだけの力を持っていなかったのだ。

 ならばその者はどうやって存在し、今老人と密談ができているのか?その答えもまた、単純な話だった。

 

 

 イシュタル「話が違うのではないですかな?法師殿(・・・)

 

 

 老人、イシュタル教皇は己が()に潜むその者にそう不満を垂れる。

 

 法師「何も違くはありますまいッイシュタル殿ォ?

 

 法師と呼ばれたその者は、イシュタルの不満気な物言いとは対象的に、まるで愉快だとでも言いたそうな上機嫌なテンションで答える。

 

 法師「貴方様が拙僧に御望になられますは、言峰何某の排除にございますれば、その目的はこれにて見事ッ!!果たされ申した。何か不服がお有りか?」

 

 イシュタル「あぁ、大有りだとも、二つ(・・)もなッ!」

 

 どこまでもぺらぺらな法師の態度に苛立ちながら、イシュタルはその二つの不満をぶつける。

 

 イシュタル「まず1つに、貴方の術による洗脳が完璧ではなかったこと、そしてもう1つは、先程も言った通り私が望んだのは言峰ハンナの排除(・・)です。生きて逃げられれば元も子もない、何のために貴方に私の体を貸した(・・・・・・・)とお思いか?」

 

 

 そう、先日突如として大半の神の使徒、クラスメイト達の様子がおかしくなったのはイシュタルとこの謎の法師なる存在によるものだった。

しかしそれが、不完全なもので終わってしまったことはイシュタルにとっても想定外のことだった。それについて法師がこれまた愉快そうに説明する。

 

 法師「えぇ、えぇぇ、拙僧もあれには度肝を抜かれもうした。この様なザマ(・・)な拙僧でも、あの程度の童共の心の隙を突くのは容易いと高ぁ括っておりましたが

 ンンンンンンンンッ失敗失敗ッこれは愉快!!実にッ!!」

 

 イシュタル「何も愉快ではありませんわッ!!

ンッン“しかし、何故に失敗したのか聞きたいものですな」

 

 法師の態度に遂怒鳴るイシュタル、一つ咳払いを挟み気を取り直して先を促す。

 

 法師「そもそものお話ですがね?イシュタル殿、あれは洗脳なんてものでは御座いますぞ」

 

 イシュタル「なんとっ!?」

 

 法師「あれは、ただそう思い込ませる(・・・・・・)ように仕向けただけにて、魔法、術、などと言うよりかは手品のようなものだございます。」

 

 イシュタル「思い込ませただけ!?手品!?そんなことではいつ気がつくかわかったものではございませぬぞ!!」

 

 イシュタルの心配も最もだ。だが、気にすることはないと言うように法師は話を続けた

 

 法師「丁度、彼らは同胞を喪った直後でございましたからなぁ〜。

 誰ぞが打ったやもしれぬ流れ弾に当たり、人死が出る。その場にいた者共はこう思うことで御座いましょう

 

 “もしかしたら自分が打った魔法(タマ)が当たってしまったのでは?”

 

 

 

 それにより童らは責任、人を殺したかもしれない恐怖、その他多くの罪悪感という名の重圧に押し潰されそうになることでしょう、その感情は平和ボケした現代の若者にはあまりにも重い、ここに至るまでに罪悪感は坂を転げる雪玉が如く膨れ上がっていたことでしょう

 そこに拙僧は体のいい逃げ道を用意して差しあげたのです。

 

  “言峰ハンナがすべての黒幕である”とっ」

 

 イシュタル「そこであの声(・・・)ですか……」

 

 

 『えっじゃあ白崎さんを眠らせたのってそういうことなの!?』

 

 そう、あの糾弾劇にて、ハンナが悪だと決定づけたあの声はクラスメイトの誰のものでもなかったのだ。

 

 法師「上手いものでしょう?拙僧、女声も心得ておりますれば」

 

 そう得意げに語る法師、しかしそこでイシュタルは疑問に思う

 

 イシュタル「しかし、あの場にいた誰の声にも似ていなかったのでは?いくら精神の隙をついたとはいえそんな誰ともわからない声に普通は騙されるものでしょうか?」

 

 

 当然の疑問、しかしソレすらもものともせず、得意げに法師は応えた。

 

 法師「ンンンンンンッそこでッ!!そこでにございますよぉ~今の拙僧に許された最大の力を持ってあの場にいた貴方様とますたぁを除いた全ての者に暗示をかけたのですよ“誰の”とは言わない、まるで知り合いの声のように聞こえるという暗示を……。

拙僧があの場で使った異能は只この一手のみでごいますぞぉ〜〜ッッ!!!」

 

 まぁそれしかできなかったわけではございますがと、最後にそう付け足した法師にイシュタルはただ戦慄していた。

 

 右も左も分からぬ世界、体の自由も力の行使も制限された状態で外道とも思える人心掌握、状況を己の思うままに操り、小さな力で大きな結果を残したスマートなやり方、神の使徒達(子供)など足元にも及ばない、これが、神の使徒(かれら)の世界の、英霊と呼ばれる存在、しかし、だからこそ腑に落ちないし、不満もあった

 

 イシュタル「ならば何故、そこまでしてあのような不完全な結果だったのですか?」

 

 

 あそこまでお膳立てしたにも関わらず神の使徒サイドどころか此方側にも術の影響が及んでいない人間がいる現状に、イシュタルは当然の疑問を投げかける。

 それを聞いた法師は薄く笑みは残したが明らかにテンションが下がったように応えた

 

 法師「ン、ンンン……それに関して言えば先程も申した通り、完全に誤算だったと言う他ありますまい……」

 

 イシュタル「誤算ですと?」

 

 法師「えぇ、えぇ、まずはこの手品の弱点(・・)について、イシュタル殿にお伝えせなばなりませぬ………」

 

 法師の勿体振った態度にイシュタルは早く話せと先を促す。

 

 法師「この手品の弱点、それはズバリ心の芯強さにございます。信念、情念、覚悟、夢、希望そういった確固たる“芯”を己の中に持つ者には、この手品は通じにくいのです。あっ無論生半可なものでは駄目です。現代の若者の将来自分はこう有りたいといったあやふやなものでは決してこの手品の術中からは逃れられますまい。拙僧の見立てでは、最悪メルド騎士団殿だけは通用しないと思っておりましたが………」

 

 イシュタル「フム、光輝殿に、八重樫殿……他にも神の使徒の中でも上位の者たちには効果が見られませんでしたね、流石はエヒト様がお喚びになられた方々だ。」

 

 法師((まぁ拙僧から見てもあの光輝なる小僧のアレは、また別モノでしょうが、ンンンッ))

 

 イシュタルは己が信仰する神の見事な人選に感嘆する中、法師は話題に上がる童っぱの本質に対し密かに嘲笑を向ける。

 

 イシュタル「大変、喜ばしいことですが………しかし、たがらこそ危ういですな」

 

 法師「おぉやぁ?何故に?」

 

 先程までの恍惚とした表情を潜め、イシュタルは話題を戻す

 

 イシュタル「それ程までの傑物達にこちら側の目的とは反する考えを持たれた以上、神の使徒の中でも求心力を持つ彼らの行動が折角手に入れた(神の使徒)を奪い返されかねない。何より彼奴、言峰ハンナと合流されるようなことがあったら一大事です。そういう点においても、あの小娘は絶対に排除せなければならなかったものを……」

 

 イシュタルの悔いる様子に法師は一瞬違和感を覚えていた、一見当然のように見えるその様に、法師は思わず口をついて聞いてみた。

 

 法師「いやはや、しかしイシュタル殿?異教徒とはいえ、そこまで言峰某を目の敵にする理由がわかりかねますなぁ〜?

このトータスの地に降り立ったとき、彼奴めも申しておりました通り、我らは異界の住人。そこにそちらの事情を持ち出すのは不毛ではございませんか?」

 

 そう、いくら己の宗教を至上とする者でも同じ世界の異種族、異教徒であれば、イシュタルの対応もまぁ何らおかしくないのかもしれない、しかし今回は時が来ればそのうち去る異邦人、イシュタルのソレは本来そんな人間に対する執着ではないのだ。

 法師の言葉にイシュタルはまた不機嫌になると思われていた、

 

 イシュタル「……………………貴方にソレを話す筋合いはございませんね」

 

 法師「おや?」 

 

 

 

 少しの沈黙の後拒絶の言葉が帰ってきた。お互いの相性の悪さを考えるに当然の返答だったが、何処かバツの悪そうな顔をするイシュタルに法師の疑念は深まる一方だった。

 

 法師「まぁこれ以上は拙僧には関係のない話でしょうし良しとしましょう。それに………

 

 

      ”そろそろ頃合いのようです“……」

 

 イシュタル「?頃合い……?法師殿それはどういう━━━

 

 

        “プツンッ”

 

 唐突に話題を切り上げた法師の謎の物言いに疑問を抱いた瞬間、イシュタルの意識は闇へと溶けた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ???side〜

 

 

 その人物は現在、己の自室で使い魔から貸し与えられた1つ目の模様が描かれた怪しげな形状護符を取り出しその護符に語りかける。

 

 

 ???「首尾はどうだいキャスター?」

 

 

 キャスター「ンンンンンッお許しを、ますたぁ殿ッッ順調に乗っ取りは完了しましたが、肉体の掌握には少しお時間をいただきたくぅ」

 

 護符からキャスターと呼ばれた人物の声が響く、キャスターが喋るたびに護符は紺色の魔力の光を点滅させる、その様は通話越しの相手が言葉とは裏腹に愉快な心情を表しているようであった。

 

 ???「おいおい勘弁してくれよくれぐれも僕の計画に間に合わないなんてことはないようにね?まぁ心配してはないけどさ」

 

 その人物とキャスターは長い付き合いになる、その人物にとって彼?はそれほどまでに信頼に足る人物だった

 

 キャスター「ご心配には及びませんぞますたぁ、拙僧ますたぁの信頼に見事に応えてみせまする」

 

 通話の先でキャスターは法衣(・・)を翻し踊るように宣言する。その動きは見た目通りの老人とは思えない軽やかなステップだった。その様子を給仕や部下たちに見られれば驚愕に目を皿にすることだろう。

 

 ???「一応言っとくけど気取られないでよね?君にはこれから教皇(・・)の立場を利用して僕の計画のサポートをしてもらうんだから」

 

 その人物は頬を膨らませて昔からオトボケ癖のあるキャスター、先程呪法により”イシュタルの体を乗っ取った法師“に注意を促す。

 

 キャスター「えぇ、心得ておりますとも、ますたぁ」

 

 ???「もうっ!ちゃんとしてよねっ」

 

 

 そのままその人物は「全くぅ〜もうっ!」と悪態をつきながら通話を切った。

 そして自室から出て、城内に張り巡らせた仕掛けを確認して回る。

 

 ???「ふふっふふふふふふっ………」

 

 

 彼女(・・)は微笑む巡らせた奸計(カンケイ)が順調に進んでいるからか、

 

 

 ???「ふふっふふふっははははははははっ!!」

 

 

 もしくはその謀の先にある理想の光景に思いを馳せてか、真実は彼女のみぞ知る。

 

 

 ???「はははっはははっははははははっっ!!」

 

 

 現在は深夜、軽やかなステップを踏み、まるでおとぎ話のお姫様か、ミュージカルのヒロインのように踊り狂う。

 

 

 ???「はははっはははっはははははははははっ!!」

 

 

 しかし、見張りの騎士も、廊下を歩く給仕も彼女の奇行をとがめない。彼らの目はどこか虚ろでその場に起こる出来事を認識できないでいた。

 

 

 ???「あぁ~楽しみだなぁ〜」

 

 

 いや、認識できなくて良かったのかもしれない、なんせ………

 

 

 ???「もうすぐだよ………」

 

 

 月明かりという名のスポットライトに照らされて、舞うダンサーは、その舞とは反して………

 

 

 ???「待っててね……………光輝君

 

  月明かりに照らされた彼女顔は、とても悍ましい笑みを浮かべていたのだから………

 

 

 

 

 

 

 

 





 ここでヒント!!

 彼がキャスターなのにはちゃんと意味があるのさっ(^ν^)

 今回は後半があるからちょっと短かったよ〜


 そして改めましてお気に入り登録100人ありがとうございましたm(_ _)m

 更新はまちまちですが何卒これからもよろしくお願いします
感想もドシドシ来てもらって大丈夫です!多分、きっと


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