ありふれない暗殺者は世界最強と共に……   作:翁月 多々良

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 今年もじいじの水着来なかったよ………(´Д`)ハァ…

  エイ(⁠(っ'-')╮=͟͟͞͞ブォン


第10話:カンケイ〘廻〙〜弟と親友〜

 

 時は少し遡り〜

 

 

 浩介side〜

 

 愛子「━━━という事情だそうで………」

 

 

 地球で言えば朝の9時頃、天之河によって食堂に集められた俺たちは愛子先生に今朝起こった事件について告げられた。

 

 

    ━━━━ 言峰 ハンナの失踪 ━━━━

 

 「あっ?何だよそれっ!?」

 

 「逃げたってこと?」

 

 「無いわぁ〜」

 

 「私、まだどこか信じてたとこあったんだけど今回でそれも失せたわ」

 

 堰を切ったように飛び交う罵詈雑言、あの日からクラスの殆どが彼女にあたりが強くなっている。それが今回の事件を受けて更に悪化したように見える。全くとんでもない掌返しだ。

 

 

 愛子「それにあたって、本日の訓練は中止、皆さんには自室にて1日中待機と指示が出ています。」

 

 

 「はぁ!?巫山戯んなよっ!!連帯責任ってか!?」

 

 そこでさらなる情報を与えられてクラスメイト達は不満を爆発させる。俺はその光景がどうしても我慢ならなかった。

 ふと俺はある一点を見つめる。そこには朝風呂に入ってきたという少し頬を紅潮させた八重樫さんと、ブランケットを肩から羽織り、今までになく真剣な表情の白崎さん(・・・・)がいた。

 今朝、ようやく目覚めたらしい白崎さん、クラスメイト達は大いに喜び、彼女の身を案じる者たちはは後を絶たない。逆に、そこで言峰さんについて触れる者は一切いなかった。

 

 きっと無事に目覚めた白崎さんを見て喜びの裏には困惑があったのだろう、こいつらは都合の悪いことには蓋をして、見ないふりをし、そんな自分を擁護するために少しでも責る材料を探してはそれを大げさに騒ぎ立てている。

 

 さっきも言ったが俺は、この光景がどうしょうもなく我慢ならなくて無意識に手に持った紙切れ(・・・)を思いっきり握りしめていた。

 そんな俺に重吾と健太郎が声をかける

 

 

 永山「あれ?、浩介、今来たのか?」

 

 野村「おいおい遅刻かよ浩介ぇ〜しっかりしろよなぁ〜」

 

 

 あぁ~いつものやつか、お願いだから今だけはよして欲しかった

 

 浩介「最初からいただろうがっ……」

 

 苛立っていたこともあってか、つい語尾に力が入る

 

 

 永山「おっおう」

 

 野村「なっなんか悪りぃ……」

 

 そんな俺のただならぬ雰囲気を察したんだろう二人は少し歯切れが悪かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暫くして、ミーティングという名の喧騒は幕を閉じた。

 

 

あの後皆俺を含め、各々の部屋へと戻り待機している。

俺は今朝枕元においてあった紙切れにもう一度目を通す

 

 

 {  コウちゃんへ〜             }

 {                      }                                          

 { ━━━━━                }  

 {                      }

 { 多分、もう気付いてると思うけど      }

 {                      }

 {                      }

 { 久しぶり、                }

 {                      }

 { 私、言峰 ハンナはアナタのお姉ちゃんです }

 {                      }

 { まぁ久しぶりとは少し違うと思うけど    } 

 {                      }

 { 大きくなったね、元気にしてた?      } 

 {                      }

 { この間ははぐらかしてごめんね       }      

 {                      }  

 { パパとママはその後かわりありませんか?  }

 {                      }

 {                      }

 {                      }

 { 未だに私のことを捜索してくれている皆には }

 {                      }

 { 申し訳ない気持ちでいっぱいです      }

 {                      }

 { ですが、もうその心配はいりません     }

 {                      }

 {                      }              

 {                      }

 { 私なんかのため(・・・・・・・・)にこれ以上労力を割かないで }

 {                      }

 {                      }

 {                      }

 { 私はもう大丈夫だから、だからどうか皆も私 }

 {                      }

 { の分まで幸せでいてください        }

 {                      }

 { 短い間だったけど私をお姉ちゃんにしてくれ }

 {                      }   

 { て                    }

 {                      }

 {        ありがとう         }

 {                      }

 {              〜お姉ちゃん  }

 {                      }

 {                      }

 

 

  浩介「はぁぁぁ……………………。」

 

 俺は項垂れてため息を吐く、予想していたとはいえ何度目を通しても直視したくない現実だった、なぜなら

 

 浩介「ハッこの文体、遺書かよ……」

 

 

 その内容は彼女、言峰ハンナの正体が今まで探し続けていた大好きな姉で、もう自分達のもとには帰ってこないという風に記されていた。その書き方はまるで遺書のようで、つい苦笑する。

 

 

 

 姉ちゃん『っ……だ………い、丈夫…………大丈夫、大丈夫だから…!私が………ついてるからっ……コウちゃん・・・・・には………私が付いてるからっ!!』

 

 

 浩介「……っずっと…俺の側に……ついてるんじゃ……無かったのかよぉ〜〜」

 

 

 唐突に迷宮での事を思い出し、自然と涙が溢れ鼻声になる、そんなときだった

 

 トンットンットン

 

 窓の方から戸を叩く音が聞こえた。今、この部屋の窓は一時的に止んでいた雨が再び再開し、その急な豪雨により雨戸を締めているため外の状況が分からなくなっている。ドアからではなく窓からのノックに訝しみながらも恐る恐る戸を開いた。そこにいたのは

 

 

 野村「よっ浩介ぇ〜ッ!中入れてくれ〜土魔術で傘作ってるからって言っても寒ぃ〜よぉ〜!!」

 

 浩介「はっ!?けっ健太郎!!?」

 

 そこに居たのは友人の野村健太郎だった。確かに彼の部屋は自分の隣、土術師である健太郎なら足場を作ってここに来ることも可能だろう。しかしそのあまりに突飛な行動につい立ち尽くしてしまう……

 

 野村「おいーっ!早くしてくれぇ〜風引いちまうっ!!」

 

 浩介「あ、あぁ!」

 

 

 俺は言われるがまま窓を全開にして健太郎の体を支え、素早く室内に招き入れる。

 

 野村「いやぁ~ひどい雨だった〜ベっくしょ~い!!!

 

 浩介「汚ねぇーなぁ何してんだよオメェー?バカだろ」

 

 野村「しゃーねーだろっ暇で暇で仕方ねぇんだ!反対の部屋にいる重吾も誘ったんだけどよぉ〜『待機命令に準じるっ』なぁーんて真面目ぶるんだからよぉ〜てかバカは余計だバカは!」

 

 俺がなんでここに来たのか聞くとどうやら待機時間が暇でしょうがないらしい。確かに今まで忙しく新鮮なことばかりで暇になることなんと特になかったから、現代人にとってまともな娯楽が存在しないこの世界では1日中室内監禁は確かに退屈だろう。

 

 浩介「だからって普通外から来るか?雨振ってる中を」

 

 野村「だって普通に廊下歩いたら守衛さんとか、先生とか、メルド団長とか、大人たちに怒られっかもしんねーだろ?だから土術師である俺にしかできないスマートな方法を取ったわけだっ!!どうだぁ〜冴えてんだろ?」

 

 浩介「やっぱバカだろ」

 

 野村「うるせぇ!」

 

 

 そんな手間をかけてずぶ濡れになるくらいなら1日待てなかったとかと俺は健太郎の盲言を斬って捨てた、その後は健太郎が持ってきたテーブルゲームをいくつか遊んで暇つぶしを謀ったが3時間くらいで二人共飽きていた。そんなときに健太郎が呟く

 

 

 野村「コレも全部、言峰のせいだよなぁ~」

 

 

 

 

 浩介「…………はぁ?

 

 

 唐突な呟きに、俺は固まる、怒りや悲しみといった負の感情が俺の中をグルグルして考えがまとまらない中、無情にも健太郎は話を続けた

 

 野村「あいつが魔人族の手下になって俺たちに危険な目に合わせた挙げ句、情で天之河や八重樫さん達に助けてもらっておいての逃亡だぜ?それのとばっちりを今俺達は受けてんだホント嫌になっちまうよなぁ〜!」

 

 

 いや、冷静に考えればあの時、健太郎含めてこいつらはあの教皇のクソジジイになにかされたのは確かなんだ、あの人に絶対の信頼がある俺と違って簡単に騙されちまうのはどうしようもないことなんだろう………

 

 野村「ホントとんだ悪女だよあいつは、聖母みたいな微笑み振り撒いといて裏ではどんだ腹黒な性根隠してたんだろうなぁ〜」

 

 

 

 ………あぁ……でも………

 

 

 

 野村「最悪の裏切りもんだよアイツはッ!!」

 

 

 

 それを割り切れるほど俺は大人じゃないみたいだ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボガっ!!!!

 

 

 

 

 野村「グベっ!!?」

 

 

 気づけば俺は隣に座る健太郎顔を真正面から思いっっっきりぶん殴っていた、殴られた拍子に健太郎は背中から後へ飛び部屋の家具を破壊する

 

 野村「なっ!?なにフんだこうフヘッ!?」 

 

 

 俺に顔面の真ん中を殴られた健太郎は滝のように鼻血を流し、その鼻はあらぬ方向へと曲がっていた

 

 浩介「ふざけんなよッ………お前、いやお前らはッ……」

 

 

 でもそんな事に今の俺は構わない

 

 

 浩介「お前らはッ!!今まで何見てきたんだよッ!!俺たちが理不尽に戦場に送られないように身を粉にしたのは誰だ!!学校で生徒の困りごとを率先して解決してたのは誰だッ!!全部、全部あの人だろッッ!?あの人のおかげだろ!!??」

 

 

 俺は声を張り上げる、外に聞こえでようが止める気も無い

 

 浩介「それをお前らは何だ!!恩を返すとか言っときながら、その恩人より会ったばかりのちょっと偉いだけのジジイの言い分を信じんのかよ!?」

 

 

 あのジジイが何をしたのか知らない、魔法なんてある世界だ洗脳なんてお茶の子さいさいなんだろう、でも、だからって………だからって許せなかった。こうも簡単に態度を変えるこいつらがッ!!

俺は激情に任せて健太郎の胸倉を掴み顔が触れそうなほど近くに引っ張り上げる

 

 浩介「とんだ悪女だぁ?ざけんなッ!!お前が、お前らが、あの人の何を知ってんだぁぁッッ!!!」

 

 俺はそのまま健太郎の顔面にもう一度鉄槌を落とそうと拳を振り上げ━━━━

 

 

 

 野村「フンッ!!

 

 浩介「ガッ!?」

 

 拳を落とそうとした俺に、健太郎が俺の顔面に頭突きをしてきた。完全に意識外の攻撃、健太郎ほどじゃないが当たりどころが悪く俺の鼻もピカソのようになり、鼻血を吹き出す。

 脳震盪によろめき地面に尻餅をつく俺、対しておでこを抑えながらも健太郎は立ち上がって俺を見下ろしていた

 

 野村「痛ってぇ〜〜〜〜ックソッあぁ〜浩介ぇ?お前は散々上から目線で言ってくれたがよぉ~」

 

 浩介「ッ!!」

 

 回復を待たずして健太郎がいつもの調子で呑気に話しだした。俺は反撃しようと健太郎の方へと顔を向けるも次の健太郎の言葉に動きを止めることになる。

 

 

 野村「お前こそ言峰さんの何を知ってんだよ?

 

 

 

 

 浩介「━━━━━━━━━━」

 

 

 俺はその問いかけに答えられなかった、あの人は俺の姉だ、優しくて、活発で、元気で…………でも俺が知ってるそれは10年前のもの、教室での彼女は、優しさこそあれ、その容姿を含めあらゆるものが変わってしまっていた。彼女が攫われていた10年間その間に起こったことも、その間の彼女の変化も、俺は何も知らない………

 

 浩介「お……俺は………」

 

 野村「ふぅ~、何だよおまえもなんも答えらんねーじゃねーかよ」

 

 健太郎は座り込んだまま動かない俺を見ながら頭を掻くと話を続けた

 

 野村「確かに、お前の言う通り言峰は学校では良いやつだったよ、俺も例に漏れず世話になったことはある。でもそれはその人の一側面でしか無いだろ?

 浩介、お前は言峰がホントに敵じゃないって言い切れんのかよ?」

 

 浩介「!!ッそれは━━」

 

 

 勿論、あの人が敵な訳がないっ!!でもさっきの健太郎の言葉と、俺が彼女のすべてを知らないという事実が、それを口に出すことを許さなかった。

 

 野村「まぁ〜でも、俺も言えた義理じゃねぇよ、確かにお前の言い分も最もだし、いや正しいと思う。でもだからって割れきれるわけじゃねぇからよ……」

 

 そういう健太郎もまたどこか迷ったような曖昧な答えを返した

 

 

 野村「でもそのぉ~何だ、俺も言い過ぎた部分があるし悪かった」

 

 浩介「!?ッ………………謝る相手が……違ぇだろ……」

 

 

 微妙な空気が流れる室内に突如健太郎がこぼした謝罪、それに対して素っ気ない悪態しかつけない俺に自己嫌悪を抱いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから健太郎は「とりあえず今日は帰るわっ!」と明るく返して何食わぬ顔で部屋の扉(・・・・)から出ていこうとして、ちょうど俺の部屋の前を通ってきた守衛さんに見つかり、俺たち二人は仲良くお叱りを受けた。ついでに怪我の治療も………

 

 

 次の日見事に風邪を患った

 

 浩介「べっくしょ〜〜〜いッ!!

 

 俺が…………なんでやねん

 

 昨日ずぶ濡れだった健太郎は元気いっぱいに快晴の青空の下、他のみんなと元気よく訓練している。あの野郎風邪を俺に移しやがったなッ………いやぁ〜なんとかは風邪を引かないってよく言うしなぁ~そんな事を考えながら俺はその怠さに任せて眠りについた。

 

 

 

 

 

 目が覚めたら天井がオレンジ色に染まってた、どうやら夕方になったらしい。一日寝ていたおかげがすっかり体の怠さは消えていた。コレで明日から訓練にも復帰できるだろう…………

 

 その時俺は気づいてしまった。果たして俺に訓練をする意味はあるのか。俺は元々戦争には不参加のつもりだ、訓練してるのだって自衛のためで、無事に家に帰って、姉ちゃんを早く見つけるためだった。でも……

 

 俺はあの紙切れを手に取る、姉ちゃんからの、もう家には帰らない旨を伝える手紙…………………戦う、生きる目的を見失っちまって、淀んだ空気の中にいたくなかった俺は、なんとなく部屋の外に出ることにした。

 

 意味なく城の中を徘徊して城の塔と塔を繋ぐ渡り廊下に差し掛かったとき神山の後に隠れていく夕日を見る、程なくして夕日は神山のうらへすっぽりと隠れる

 

 

 浩介「あっ…………」

 

 何かを求めるように塀に身を乗り出し手を伸ばすもその手のひらは虚空を掴んだだけで何も得られはしなかった。暗くなった世界で何もない手のひらを見つめるグーパーグーパー開閉を繰り返す手のひらの先、遥か下は歪な形の岩が立ち並ぶ地面、らしくもない考えが頭をよぎったとき俺はあんまりにも滑稽な自分に苦笑した

 

 浩介「ハハッシスコンここに極まれりってか?バカじゃね〜の………そこまでの度胸、俺にはねぇよ………」

 

 誰に話すでもない悪態が口を付いたときだった

 

 

 

 

 

 ???「あら?遠藤君?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雫side〜

 

 

 行きと違い帰りは時間をかけて城へと帰った私は、泥だらけの体を洗おうと着替えを取りに香織の部屋に入る。すると

 

 

 香織「雫………ちゃん?」

 

 雫「!?香織?香織ーーーーっ!!」

 

 今まで昏睡状態だった親友の香織がベットから上半身だけを起こして目を覚ましていた、つい私は泥だらけの姿で抱き着こうとしたが寸前で自分の状態を思い出し思い留まる。その後先に入浴と着替えを済ませてから香織に事の次第を説明した。

 

 香織が5日は眠っていたこと、南雲君が奈落に落ちて死んだと思われていたこと、ハンナが魔人族のスパイで南雲君の死と香織の昏睡を企てたなんて疑いがかかったこと、それらすべてを何故かクラスメイトの殆どが信じたこと、ハンナが捕まり、そして逃げたこと、それを私が追っかけたこと……

 

 私の長い説明を香織は慌てずゆっくりと自分の中で咀嚼してくれていた。説明をあらかたし終えて、私は雨でぐちゃぐちゃになってもう読めなくなっていたハンナからの手紙の内容を口頭で話した

 

 香織「そっか……良かった南雲くん生きてるんだ……」

 

 雫「信じてるの?こんな確証もない話を……」

 

 香織「当然だよっハンナちゃん隠し事はあったかもしれないけど……嘘は、ついたことなかったからね」

 

 その顔はいつもの笑顔よりも力強く、確信を持った真っ直ぐな眼差しだった

 

 雫「香織、あなたはどう思う?ハンナのこと」

 

 香織「勿論っ許さないよっ!!ちゃんと私達二人の前で誤ってくれなきゃ!!

 

 雫「えぇ、そうね」

 

 

 どうやら、聞くまでもなかったらしい、香織は私と同じ答えを出した。しかし━━━

 

 香織「でも……私は待ってるだけなんて嫌!!」

 

 雫「!?」

 

 香織「私は、南雲くんを……うんん南雲くんだけじゃない勿論ハンナちゃんも、私の大切なものは私自ら掴んでみせる!これからは待つだけじゃだめ、私の方から迎えに行くんだ!!

 だって私は“突撃娘”だからねっ」

 

 雫「香織……」

 

 香織「私、もっと強くなるよ。それで、あんな状況でも今度は守れるくらい強くなる。だから……雫ちゃん」

 

 雫「なに?」

 

 香織「力を貸してください」

 

 雫「……」

 

 あれから香織は、変わった。いや違う、好きなものには一直線なところは何も変わらない。変わらないまま、彼女は強くなった。ハンナとの決別の日以来、色々と考えてきたのだろう、大切なものを失いたくない、諦めたくない、そんなどこまでも切実で真っ直ぐな想いを叶えるために、それらを阻む現実と戦う覚悟をしたのだ。

 

 

 雫「もちろんいいわよ。私も一緒にとことん付き合うわ」

 

 

 ならば私も強くなろうっ

 

 ハンナ『ねぇ、なんで剣なんか振ってるの?』

 

 その問に納得のいく答えが出せるまで……。

 

 

 香織「雫ちゃん!!ありがとうっありがとう!!」

 

 雫「礼なんて良いわ、親友でしょ?」

 

 香織が私に抱き着き何度も礼を繰り返す中、不意に部屋の扉が開けられる。

 

 

 光輝「雫! 香織はめざ……め……」

 

 龍太郎「おう、そろそろ時か……ん……」

 

 

 

 光輝と龍太郎だ。招集ついでに香織の様子を見に来たのだろう。二人共まだ寝巻きで、光輝は何故か顔が包帯でグルグルのミイラと化していたが……

 さて、そんな二人だが、現在、部屋の入り口で硬直していた。私が訝しんで尋ねる。

 

 

 

 雫「あんた達、どうし……」

 

 龍太郎「す、すまん!」

 

 光輝「じゃ、邪魔したな!」

 

 

 

 私の疑問に対して喰い気味に言葉を被せ、見てはいけないものを見てしまったという感じで慌てて部屋を出ていく。そんな二人を見て、香織もキョトンとしている。一瞬思案した私ははその原因に気がついた。

 

 現在、香織は私の膝の上に座り、私の両頬を両手で包みながら、今にも、き……キスできそうな位置まで顔を近づけているのだ。私の方も、香織を支えるように、その細い腰と肩に手を置き抱き締めているように見える。タイミングが悪いことに今の私は風呂上がり、顔も少し紅潮している

 

 はぁ〜まぁつまり、不本意ながら激しく百合百合しい光景が出来上がっているのだ。

 私は呆れて深々と溜息を吐くと、未だ事態が飲み込めずキョトンとしている香織を尻目に声を張り上げた。

 

 

 

 雫「さっさと戻ってきなさい! この大馬鹿者ども!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 愛子「━━━という事情だそうで………」

 

 

 「あっ?何だよそれっ!?」

 

 「逃げたってこと?」

 

 「無いわぁ〜」

 

 「私、まだどこか信じてたとこあったんだけど今回でそれも失せたわ」

 

 その後まぁ色々あって光輝たちを締めたんだけど、そのまま先生による今朝の出来事の報告が始まった、見て分かる通り酷いものだった。皆んなが洗脳を受けているとはいえ、ハンナへの物言いに思うところがないと言えば嘘になる。香織も口頭では聞いていたけど、現状の悲惨さを自分の目で確かめるために真剣な眼差しでその場にいた。前なら泣いていたのに本当に彼女は強くなったんだろう。

 そのままその日は香織と二人でいたかったけど、ハンナの方を持つ私達は少し警戒されてるから大人しく自分の部屋へと戻り、一日部屋で素振りなどの自主練をした。

 

 

 

 次の日、

 

 雫「ゲッホゲッホッ!!

 

香織「全くも〜ッ雨の中走って、夜通しで自主練してたら風邪くらい引くよぉ〜!!」

 

 雫「ご、ごめんなゴホッゴホッ!」

 

 私は見事に風邪を引いていた強くなろうと決意した矢先にこれだ、ままならないなぁ~今は訓練の時間、だけど”治癒師“の香織は私の看病をしようとしてくれている。しかしせっかく強くなろうと踏み出した彼女の足を引っ張る訳にはいかないッ!

 

 雫「香織、ゴホッ私は大丈夫だから、こんなの寝てればば治るわよ、だからあなたは訓練に行って……」

 

 香織「でもっ雫ちゃん!」

 

 「香織様、雫様もこう仰せですので、後は私共にお任せくださいッ」 

 

 香織「ニアさん………わかりましたあとはお願いします」

 

 

 私の付きメイドのニアに言われて香織は渋々了承してくれた。

 

 雫「アナタもごめんなさいねニア」

 

 ニア「いいえ、これが私の役目ですからッ雫様もひどい熱なんですから無理をなさらぬよう今日はゆっくりお休みください」

 

 私は彼女のお言葉に甘えて、彼女の鼻歌をBGMにウトウトと眠りについた━━━

 

 

 

 ━━目が冷めた頃には日も暮れてあたりは真っ暗だった。そして熱もすっかり冷めていた。1日寝たことが功を奏したのだろう。今ニアはタオルの水を変えに行ってるのか部屋にはいなかった。私は剣を取って部屋を出る、元気になったのなら日課の鍛錬をしなければならない。しかし、それがバレると香織にもニアにも小言を言われかねないので別の場所を探すことにした。

 誰もいない(・・・・・)城の塔と塔を繋ぐ橋の上、ここならそれなりに広いし人目もつかないそう思っていたときだった。

 

 

 ???「ハハッシスコンここに極まれりってか?バカじゃね〜の………そこまでの度胸、俺にはねぇよ………」

 

 誰もいないはずの場所に人の声、一瞬幽霊の存在を疑って驚愕したけど、良く見たら塀の方に人影が見えたその人物は……

 

 雫「あら?遠藤君?」

 

 浩介「ッ!!……や、八重樫さん」

 

 クラスのもう一人の暗殺者、遠藤浩介君だった。彼は普段から気配が分かりにくくて、私の気配感知にも最初は引っかからないから、自己主張してくれなきゃその存在すら忘れてしまいそうになる。だが今回は、いつもより存在感が濃い気がした……

 

 雫「どうしたの?こんなところで」

 

 浩介「八重樫さんこそ、何してるんすか?」

 

 雫「私は自主練よ、情けないけど今日一日風邪で寝込んじゃってね、今はこうして元気になったから誰もいなさそうな場所で日課をこなそうとしたのよ」

 

 浩介「驚いた、八重樫さんも風邪なんか引くんすね」

 

 雫「ちょっとッ!ソレどういう意味よ!!」

 

 そうやっていつの間にか他愛のない雑談を繰り広げていた。

 

 浩介「俺も、今日は風邪で寝込んでて、さっき元気になったとこ、ここに来たのは………気まぐれ………」

 

 雫「へぇ〜奇遇ね二人して風邪引くなんて」

 

 彼とは今まで特に関わりがなかったからこういった話をするのはとても新鮮だった。そんなとき彼の手にあるものが握られているのが目に入る

 

 雫「ッ!!遠藤君それは!」

 

 浩介「あ?………あぁ気にしないでくれこれは別に」

 

 はぐらかそうとしているが私はその紙切れ(・・・)が気になって仕方がなかった

 

 雫「ねぇそれ、手紙(・・)よね?」

 

 だってそれは、私がハンナからもらった手紙の紙質に酷似していたから

 

 浩介「なっなんで!?」

 

 雫「お願いッ見せてくれないかしら?」

 

 なんで彼が?って疑問はある、だがそれ以上に私はそれを見なきゃいけない、そんな理由の分からない衝動のままに遠藤君に詰め寄った

 

 

 浩介「なっなんのために?」

 

 彼は訝しみながら、手紙をまるで大事なものを守るように胸に掻き抱き、後退りする

 

 雫「お願いッ大事なものっていうのは何となく分かるわ!だけどどうしても私はそれを見なきゃいけないの!」

 

 私は誠意を見せるため深く頭を下げて懇願する

 

 雫「絶対に悪いようにはしないッ内容も口外しないッだからッ!!」

 

 浩介「ちょっちょっと、落ち着いて」

 

 

 

 

 そう言って彼は根負けしたのか、恐る恐るだが手紙を見せてくれた、そこに書かれていた内容は━━━

 

 

 

 雫「ハンナが……遠藤君の………お姉…さん!?」

 

 想像の斜め上を行くものだった、予想通り、この手紙はハンナからのものだったしかし、書かれていた内容は予想外で驚愕する。遠藤君は「信じられない?」と聞いてくる。

 彼の家庭の事情は聞いている。一度光輝が周りに迷惑をかけるなと、見当違いな絡みをしていたから覚えている。10年前の双子のお姉さんの誘拐と行方不明、地球でも彼は学校の掲示板や町の電柱にお姉さんの当時の顔写真のビラを貼りまくっていた。

 

 親友にただならぬ秘密があるのは何となく分かっていたがこれほどに闇が深いのかと絶句する。正直「信じたくない」というのが本音だ、あまりにも酷すぎる現実を直視したくないという気持ちが強い、そして同時に彼が、ここで黄昏れている理由もなんとなく理解した。

 10年間探し続けていた姉が見つかった矢先、遺書のような手紙を残してまた姿を消したのだ、10年、途方もない時間だ、それほどまでの努力を向けていた相手に真っ向から“無意味だ“と叩きつけられたのだ、自暴自棄になるのも無理はない。ひょっとして私がここに来なかったら早まった行動に出ていたのかもしれない。

 

 浩介「ッ……………」

 

 今にも泣きそうな彼の横顔を見て、なんとかしたいと考えを巡らせたとき私はあることを思い付く

 

 

 雫「ねぇ、遠藤君」

 

 浩介「……なんすか?」

 

 雫「どんな人だったの?あなたのお姉さんは……」

 

 浩介「なんすか急に?」

 

 随分と不機嫌な返しだが私は気にせず続ける

 

 

 雫「私達が喧嘩したのって知ってる?」

 

 浩介「えぇまぁ、噂になってましたし、空気最悪でしたしね」

 

 雫「アハハハー」

 

 噂にまでなっていたのか、なんか恥ずかしい……

 

 雫「喧嘩して分かったの、私達、親友とか言ってたけど彼女のこと何にも知らないんだなって、だから私に私達が知らないあの娘のことを教えてくれないかしら?」

 

 浩介「それは……」

 

 雫「プライバシーの侵害なのはわかっているわッでも気にしない、だって私達喧嘩中だものッ」

 

 そうやって開き直る私に遠藤君は渋々答えてくれた

 

 浩介「……………あの人(・・・)は、優しい人だった、優しくて、元気で、活発で……俺と同い年なのに、俺を引っ張ってくれて、いつも無視される俺を一番に見つけてくれて……とっても頼りになる自慢の姉ちゃんでした。」

 

 雫「そう……」

 

 浩介「だけど……………」

 

 どこか遠くを見るような眼差しで虚空を見つめる遠藤君、彼女の事を話す時はワントーン声が明るくなるのを感じていたが、ある瞬間から声の勢いがいきなり消える

 

 浩介「変わってたんだ……この一年俺が気づかないくらい……」

 

 雫「………」

 

 私は黙って話を聞いた

 

 浩介「どんなになろうと絶対に見つけ出す自身はあったんだ、でもっ………でもっ

 

 段々と声に力がなくなり震え始めた

 

 浩介「分からな……かったんだ一年も側にいていながら……こんな事態に……なるまで

 

 彼の目元の隠れた前髪の端から一筋の光が流れる

 

 浩介「俺だって、俺だって何も知らないですよっ!!……何も知らないから、あの人が俺たちを裏切るはず無いって自身が持てなくなった。あの人を信じきれない自分が………心底……憎くて………」

 

 塀に手を掛けて慟哭する遠藤君は力なく膝から崩れ落ちる。そんな彼を見て私は気づいた━━━

 

 雫「ねぇ、遠藤君、知ってる?あの娘ゲーセンのアーケードゲームが好きなんですって」

 

 

 今の彼は少し前の私と同じだと

 

 浩介「………は?」

 

 雫「香織に付き合ってたくさんのゲームをしているうちにアーケードゲームにハマったそうよ!それに、意外と世間知らずなところがあってねあっ今思えば━━━」

 

 

 浩介「いや、いやいや急になんすか!?」

 

 私の話を遮るように遠藤君が声を荒げるそれに対して私は優しさを意識した眼差しを向ける、まるで諭すように

  

 雫「遠藤君、知らないからなんだって言うの?」

 

 浩介「えっ……?」

 

 雫「何も知らないから、嫌な噂が立つから、そんな理由であなたの、あの娘に対する気持ちは何か変わったの?いいえ、変わらないから、今でも大好きだからそうやって苦しんで悩んでるんじゃないの?違う?」

 

 

 浩介「………俺………は………」

 

 雫「いい?遠藤君、知らない事は悪いことじゃない、ただのスタートラインでしか無いの!知らないのなら知っていけば良い、だから私は、私の知らないあの娘をアナタから聞いた、だから私は、あなたの知らないあの娘のことを教えたの」

 

 浩介「っ!!」

 

 雫「後これは、親友の受け売りなんだけど、ただ待っているだけじゃ駄目、迎えに行って無理矢理にでも連れ戻す気概を持たなきゃ何も手に入らないわ」

 

 私はそのまま呆けた顔だけこちらに向けて地面に突っ伏している彼の胸倉を掴み無理矢理立たせる

 

 雫「しっかりしなさい!!今までなんの手がかりも無かった頃と比べたらとんでもない進歩でしょこれは!相手が拒絶しただけで諦めるの?あなた達の10年はその程度のことで投げ出していいものだったの!?」

 

 

 浩介「!ッい……いやだ……まだ諦めたくない……」

 

 

 私の啖呵が届いたのか、彼の瞳に光が戻る

 

 雫「えぇ」

 

 浩介「まだ、まだ姉ちゃん(・・・・)と皆で“家族旅行”行きたいんだ!!」

 

 雫「だったらくよくよしない!!私達も協力するわ!だから、私達で迎えに行きましょう!」

 

 浩介「はいっ!!」

 

 そうしてその日は私も手紙を貰ったことや、お互いの、知らない彼女の話を沢山した、でも……流石に身内に”薬“の話は酷だと思い、これだけは黙っていた。傲慢だと思われても良い、だってこれは彼ら姉弟の問題でもあるのだから、親友の私から言うべきことではない、彼女の秘密が親友(私たち)だけのものじゃなくなるのは少し寂しいけれど、こうやって人と人との関係(カンケイ)は廻っていくのだろうと私は思った………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 浩介side〜

 

 

 今日はもうすっかり風邪も治って気分も前よりスッキリしてる。昨晩、八重樫さんと姉ちゃんについて話したのが効いたんだろう、完全にモヤモヤが晴れたわけじゃないが、いい意味で色々と吹っ切れた感じがする。その結果彼女の俺への評価が影の薄いクラスメイトから、“影の薄いシスコン”に、クラスチェンジしたのは不本意と言わざる負えない

 

 俺も強くなろう、昔のように姉ちゃんの後ろに隠れる情けない弟じゃない、姉ちゃんと一緒に、いや姉ちゃんを守れる男になるんだ。そのために新しく始めた事(・・・・・・・)もある。でもその前に俺にはまずはやらなきゃいけないことがある

 

 浩介「健太郎っ!」

 

 

 

 

 〜数分後〜

 

 

 浩介「おいっ!!健太郎ーー!!

 

 野村「おっ!?浩介ぇ〜!元気になったんだなぁ〜どうだ?体調の方は?」

 

 また余計な時間が過ぎたがまぁいい、相変わらずこちらの気も知らないで呑気に声をかけてくる。それに救われたことは何度もあったが今それをやられたら俺の真剣な気持ちが萎えそうだ。だがしっかりと誠意を見せなきゃいけない!

 

 

 浩介「健太郎、その………一昨日は、殴ったりして悪かった………」

 

 野村「おうッ許すっ!」

 

 

 そんな俺の覚悟に反して健太郎はあっさりとその言葉を口にした

 

 浩介「えっ良いのかよそんなあっさり!?」

 

 野村「あぁ、だって先に殴ったのはお前とはいえ、言い過ぎた俺にも非があるんだからなッお互い様だよお互い様!まぁ痛かったけどな!」

 

 浩介「お前………」

 

 野村「それにお前は今謝っただろ?だからもう良いんだよ!」

 

 

 俺があんなに覚悟を決めたのが馬鹿らしくなるような発言、でも不思議と悪い気はしなかった。

 

 浩介「すげぇなお前……」

 

 野村「だろ?」 

 

 親しき仲にも礼儀ありとはよく言うけれど、礼儀なんて気にしなくても相手を尊重し合えるのなら、どんな諍いがあっても許し合える、それが本当の友達なんじゃないかと俺は思う。そしてそんな友人を持てた俺はとても幸運だったとも、そのまま俺達は訓練場へと戻って行った………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 野村「なぁ、やっぱりお前って言峰のことを好きなの?Loveなの?」

 

 浩介「………………やっぱりお前はバカだよッ」

 

 

 野村「なんでっ!?」 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 野村が……野村が良いやつすぎる(⁠゜⁠o⁠゜⁠;!!

 そして遠藤君強化イベント確定!!



 前回、キャスターが何をしたのか簡単に説明、

 簡単に言えば、精神天之河の大量増殖ですwww!


 FGO小話コーナー


 やったぁぜ!!遂に届いた!!
 
 じいじの14万のフィギュア!!!

 10ヶ月待ったぜ!!

 
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