ありふれない暗殺者は世界最強と共に……   作:翁月 多々良

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 4日連続は流石に無理でした……。


 さてお待たせしました皆様、真打、降臨!!

 詠唱って考えんの難しいですねぇ~


第16話: 死告天使(アズライール)

 

 ハサンside〜

 

  

 コツコツッと、この広い空間に私の足音のみが木霊する。

 

 私の技能の一つ”天使降臨“

 

 

実はこれ、魔力を一切消費しない。その代わり、とても手のかかる儀式が必要となる。魔力に寄らないため、長ったらしい詠唱も必要となる。しかし、もうこれしかこの状況を打開する手立ては思いつかなかった。

 

 私はゆっくりと人型ヒュドラに歩み寄り、そして

 

 

 

 

 ハジメ、ユエ「「なっ!?」」

 

 ゆっくりと膝をつき正座した。

 

 戦場のど真ん中、更には敵を前にして座り込んだ私に南雲君もユエさんもあまりの驚愕に同時に声を漏らす。

 

 私はそれを無視して、続ける。顔を伏せ、両手の掌を自身に向けた状態で肩口まで掲げる。

 

 これは私の宗教の礼拝の作法だ。

 

 無論そんな無防備な私をそのままにする人型ヒュドラではない。先程のように銀の魔法陣を光らせ、無数の光弾を撃ち放つ。

 

 ハジメ「!ッチィッ」

 

 それを見た南雲君が残りもう本当に僅かな魔力を振り絞り、“錬成”で私達に壁を作る。

 やはり、残り滓ほどの魔力で作られた石壁は脆く、立ちどころに破壊されるが、無いよりはマシである。

 

 壁が無くなる前に私はさっさと祈りを捧げる。

 

 

 

 

 

 ハサン「〜我、当代の翁がここに乞い願う〜」

 

 

 

 あぁ、本当に嫌になる。なんで知らないはずの祝詞がこうもスラスラと口をつくのか………

 

     

       「〜愚かな我が身を許したまへ〜」

 

 

 

 私が祝詞を紡ぐにつれて私の周りに蒼白の炎が現れる。

 

 

 その炎が私を包む、しかし熱くはない……それどころか凍えるほどに冷たい……。炎が私を包むほど、私の意識がぼやけていく。まどろみに誘われるように、私が私じゃなくなるみたいに……

 

 

       「〜力及ばぬ〜」

 

 

 

 神なんか、私は信じない……信じる者は救われる?

ハッそんな事は断じて有り得無い…………!

 

 

       「〜未熟な我が身を救いたまへ〜」

 

 

 私だって……昔は、救われたくて必死に祈った事があった。まだ幼い頃、敵対組織に捕まり拷問されたとき、臭い長老衆に輪姦(まわ)されたとき泣いて、喚いて、神に救いを求めた……神に縋った。

 

 

    「〜我が身、晩鐘を簒奪せし咎人〜」

 

 

 

 誰も助けてはくれなかった。なのに私の無駄に頑強な精神は狂う事すら許しはしなかった。

 

 

    「〜その身、粛清を転嫁する悪人〜」

 

 どんなに死ぬ思いに会おうと、どんなにこの身を汚されようと、どんなに人に憎まれようと、私は正気を保ち続けた。正気のまま生き続けた、まともなまま殺し続けた……。

 

 

 この世の地獄だ……

 

 

    「〜この身、いずれ裁かれる刻来れど……」

 

 

 いつしか私は希望を捨てた……ただ惰性のままに生きながらえ続けた。神は人を救わない……居ないのだから救えるはずがない……。

 

 

    「〜今このとき、鐘を打つ愚行を許したまへ〜」

 

 

 異世界の神も、きっと碌なやつじゃないだろう。

 

 神なんてクソだ……だけど

 

    

 

    「〜今ここに、捧げられる先代の(かしら)を贄に〜」

 

 

 ……だけど今だけは……このときだけは、祈ってやるから…

 

 

    「〜我が身を器にて顕現せよ〜」

 

 

 

 ……助けてよ…………神様………

 

 

 

 

 

 

 

 

     「死告天使(アズライール)“!!

 

 最後の祝詞(セリフ)を発した瞬間、私の意識は炎に呑まれた………

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

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sideout

 

 

ゴォーン  ゴォーン  ゴォーン

 

 

 戦神より、奈落の権能を分け与えられた人型ヒュドラは、何処からともなく聞こえてくる鐘の音に訝しむ。

 

 突如自分の目の前で死にぞこないの内の一匹が謎の炎に燃やされてから聞こえだした。

 

 人型ヒュドラは警戒する。あんな業火に燃やされたにも関わらず、女の気配は死んでいなかったからだ。きっとなにか仕掛けてくるのだろう。そう思った瞬間━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ━━━空気が凍った。

 

 

 

 

 

 

 

 炎が晴れて現れたのは死にぞこないの女などではなかった。

 

 さっきまで女がいた場所に………

 

 

 

 

 

 

 恐怖が……

 

 

 

 

 

 

 

  

   “死”が…………立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

全身闇一色の様相に、顔にだけ目立つ真っ白な髑髏、その二つの眼窩から覗く冷たい蒼の視線に、体が縮み上がる。

 

 眼の前にいるのに、気配が全くつかめない、完全にぼやけて捉えられない、だが確実にそこにある(・・・・・・・・)

 

 

 

 無理だ……勝てない……死ぬ………

 

 先程までの万能感は何処へやら、人型ヒュドラは本能が理解した。

 

 己はここで死ぬと……

 

 

 ガシャ、ガシャと鎧の擦れる音と共に死がこちらに歩いてくる。

 

 人型ヒュドラは後退りするも、体に力が入らず震えるだけで全く進まない。

 

 

 

 ”死“『 “迷宮より逸脱せし要の歯車よ、晩鐘は汝の名を指し示した。”

 

 気づくと死から言葉が発せられる。言葉を反さぬ筈の己でも何故か理解できてしまう。頭の中に染み込むような言葉。

 

 それはまさに”死の宣告“

 

 

 「キュ、キュルゥアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 ガシャ、ガシャと更に近づいて来る死、恐怖が最大限に達した人型ヒュドラはありったけの魔力を込めて、ハジメ達との戦いでも見せなかった特大の極光を死へと放った。

 

 触れたものすべてを焼き焦がす滅却の光、たがそれを……

 

 

 ザァアアアアンッ!!

 

 死はその手に持つ、何の変哲もない大剣のみで切り払ってしまった。

 

 “死”『 ”告死の羽“

 

 人型ヒュドラに一定の速度で迫る死、人型ヒュドラも逃げるように後退る

 

 なのに、距離を離すどころか、ますます二者の距離は縮まって行く。

 

 “死『 ”首を断つか“ 』”

 

 人型ヒュドラのすぐ目の前まで迫った死、その大剣を人型ヒュドラへと薙ぐ。

 

 「キュ、キュル、キュルゥアアアアアアアアアアアアンッ!!」

 

 だが、仮にも己は迷宮の最後の守護者、死を拒絶するため、目一杯雄叫びを上げ、体中すべての蛇の頭が死へと、その牙を突き立てようと飛び出す人型ヒュドラ。しかし、端から見ればその様は、駄々をこねる子どものようでいっそ哀れに見える。

 

 そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “死”『 死告天使(アズライール)

 

 

 

 

 発せられたその言葉と同時、人型ヒュドラの7つの視点すべてが空を舞う。何が起きたのか?それを理解する前に人型ヒュドラは……いや、オルクス大迷宮最後の守護者、通称ヒュドラは

 

 永久に(・・・)この世を去ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ユエside〜

 

 

 

 ハジメ「なんだ……ありゃぁ……」

 

 ユエ「…………」

 

 

 ハジメと私は今、目の前で起きた事が理解できずにいた。

 

 ハサンが詠唱と共に蒼い炎に包まれたかと思えば、そこから人型ヒュドラなんて屁でもないような圧倒的なプレッシャーが……いや正しく“死”を、錯覚するような感覚に陥いるほどの存在が現れた。

 

 大きさは人型ヒュドラよりも小さいけれど、それでも2メートル超えの巨躯に、漆黒の鎧と闇色の外套、特徴的な髑髏の面の左右からミノタウロスのような立派な角を生やしている。

 

 死神が実在したらこのような姿なんだろうと、このときはそう思ってただただ恐ろしかった。

 固有魔法が目覚めて以来、初めて死の恐怖を味わった。

 

 それは人型ヒュドラも同じだったみたいで、私達から見てもすごく怯えた様子だった。

 

 あんまり怯えすぎて超特大の極光が放たれたときは驚いたけど、それをなんの魔力もこもっていない、ただの大剣で切り払ったのには更に驚愕した。

 

 その後はあっという間だった。

 

 一定のペースを保ったまま歩く死神に恐怖でまともに動けない人型ヒュドラは最後の抵抗を見せるも、死神が剣を片手で横に薙いだ瞬間、細切れにされ絶命した。

 

 無事倒された人型ヒュドラ、だけど私達はまだ安心できない。

 

 私達三人が必死の思い出倒した人型ヒュドラをたった一太刀で葬り去ったのだ。敵でないとしても警戒は解けない。

 

 

 

 ガシャ、ガシャ、ガシャ

 

 ハジメ、ユエ「「ッ!」」

 

 人型ヒュドラの残骸を跡に、死神は私達の方へと向かってきた。先程と同じゆっくりとした足取りで近づいてくる。

 

 ハジメ「ぐッ……」

 

 ユエ「ハジメッ」

 

 ハジメ「下がってろ……ユエ……」

 

 私を庇うようにハジメが立ち上がりドンナーを向ける。だがハジメはすでに満身創痍。立っているだけでもやっとだった。

 

 そして、

 

 ハジメ「クソ……が……」

 

 ユエ「ハジメッ!」

 

 バタンッと遂に力尽きて倒れてしまったハジメに私は駆け寄る。どうやら気を失っただけのようで安心するが、

 

 死神は未だこちらに歩いてきている。私はハジメからドンナーを借りて死神に向ける。

 

 ユエ「止まって!それ以上……こっちに来ないでッ……」

 

 私が叫ぶと、………なんと、奴は律儀に従いその場で足を止めた。

 

 こいつが何者か?そんなもの教えてもらわなくてもわかってる。

 

 ハサンのご先祖様、初代”山の翁“ハジメ達の世界において暗殺の原典となった歴史的大偉人、そして……

 

 

 

 

 ハサンを苦しめた元凶!!

 

 ユエ「ハサンは……どうしたのッ!!」

 

 

 怖い、怖くてたまらない。ただそこにいるだけなのにこんなに怖い存在を私は知らないッ

 話には聞いていたけどここまでだなんて……ッ!

 

 だけど……こいつが、こいつが……!

 

 私は無意識にドンナーを握る力を強めた。

 ハサンが言ってた。コイツは教団の腐敗を断つ裁定者だって……。

 その教団はとっくに腐敗しているだろう!なのにコイツが教団とやらを野放しにしたせいで、ハサンは、私の友達は苦しんだんだ。

 

 

 

 

 

 絶対に許せない、その怒りの感情をバネに私は震えながらも銃口を“山の翁”のクソジジイ(・・・・・)に向ける。

 ハジメもそれがわかってたから最後の最後にコイツに銃を突きつけたんだ。

 

 コイツはハサンが詠唱したあと現れた。恐らく何らかの技能でハサンがコイツを喚び出したんだろう。でもコイツと立ち代わるようにそのハサンは消えていた。

 

 ハサンは何処に……?

 

 

 ”山の翁“『 “案ずることはない、あの娘は今、我の中で眠りに着いている” 』

 

 ユエ「ッ!!」

 

 

 私の心情を見透かすように、唐突に語り出したコイツに私が驚くと同時、“山の翁”は再び歩き出した。

 

 

 ガシャ、ガシャ、ガシャ

 

 ユエ「こ、来ないで!」

 

 “山の翁”『 ”すでに疲労困憊の汝では、その男を運び出すのは至難であろう。“ 』

 

 私はドンナーを向けるも気にしていないと言うように、”山の翁“は歩きながら語りだす。

 

 

 “山の翁”『 ”であるならば、我がその者を運べば良い……。“ 』

 

 

 ユエ「……あ…貴方の手を……借りる気はないッ!」

 

 気づけば、開かれていた奥の両扉へ視線を向けながら出した”山の翁“からの提案。

それを私は強気に拒絶する。確かに今の私じゃハジメを担いで連れて行くのはかなりキツイ、でもだからと言ってコイツに頼るのも、ハジメを預けるのも嫌だ!

 そんな事するくらいなら這いつくばってでも私がハジメを連れて行くほうがマシ!

 

 私はハジメの側に寄る。絶対に渡さないという意思を込めて、こちらに近づく“山の翁”を睨みつける。

 

 が、奴の次の言葉に私は怒りを忘れることになる。

 

 ”山の翁“「 “そう怯えるな、“アレーティア・ガルディエ・ウェスペリティリオ・アヴァタール”

 我は汝等に危害を加える気など無い……愛瞳(あいどう)のと我が再び立ち変わるまで幾ばくかの間がある。愛瞳のが戻ったとて、しばしは目を覚まさぬであろう。

 

 なればこそ、人手があるうちに今一番余談を許さぬその男を、運び出したほうが利口であると、我は思うが?……” 」

 

 ユエ「な……なんで……私の名前(・・)を……」

 

 私は驚愕に目を見開く。だってそれは、その名前は、私がハジメから”ユエ“という名前を貰う前、吸血鬼族の王族だった頃の名前だ。

 

 初対面、更には異世界の偉人が何故私の昔の名前を……いいや私の事を知っているんだ!?

 

 私は再び恐怖する。この老人の底知れなさに……。

 

 コイツは一体、……

 

 

 ユエ「……貴方は……何を……知って……」

 

 “山の翁”『 “枷はすでに解かれた、心せよ星の愛神子(ほしのまなみこ)よ、汝の行く末に絡みつく業は既に蠢き始めた。” 』

 

 私が呆気にとられ油断しているのがいけなかった。その間に、”山の翁“は、まるで瞬間移動でもしたようにいつの間にか私達の背後にいて、ハジメを抱き上げる。

 

 その手つきはとても丁寧で、刺々しい自分の鎧でハジメを傷付けないように配慮した(・・・・)動きだった。

 

 

 “山の翁”『 ”汝の運命(さだめ)がこれより先、悪しき意志に絡み取られぬよう、常々気を配る事だ……“ 』

 

 ユエ「…一体……何のこと……?って…ま…待って!」

 

 “山の翁”はまるで気遣った(・・・・)ように思わせぶりなことを口にする。きっとコイツは私の知らないことを、どこまでも知っているのかもしれない。

 

 それをとても気味悪く感じながら、扉の向こうへハジメを連れて歩いていく奴を私は追いかけた。

 

 気に食わないッ何でハサンは傷つけるのに、私やハジメには配慮するの?

 

 奴のそんな態度を見ていると私は妙に苛立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コイツの行動の節々が叔父(・・)と重ねて見えて……。

 

 

 






 どっひゃ~ッッ!!!色がついたぁ!!

 評価くれた
 H,Sさん、ヤタモトマリさん、96naitoさん、シンク先生さん、赤毛のショーンさん

 ありがとうございますm(_ _)m!!


 今回はじいじが登場するだけなので短かったですが
イラストあるから許してね〜(・∀・)

 




















 ユエ「それはそうと……4日連続投稿できながった罰は……受けてもらう……」

 えっ………い、いや、ま、待って……か、かか勘弁してくださいよ〜

 3日連続でやっただけでもけっこう━━━━

 ユエ「“絶禍”


 ホぎょぉおおおおおおおおおおおおッ!!!


 ハジメ「翁月が死んだッ!!」

 ハサン「こぉの人でなしぃー!!」




 
 
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