ありふれない暗殺者は世界最強と共に……   作:翁月 多々良

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 察しの良い方は気づくことでしょう。

そう今回登場するのはあのポカただぁああああああああああああああ!!!

 



※注意、ここからFGO第二部、七章のネタバレが多少含まれます
未プレイの方でネタバレを受け付けない方はここで止めることをお勧めします。


 
 いやぁ~前々から思ってたんですがね?高いところから落ちたのに池ポチャ無傷って都合良すぎね?って思ってたんですよぉ〜

 だから……ね?





第7話:邂逅(かいこう)〜錬成師と武器商人〜

 

 

 〜ハジメside

 

 一面霧か霞に覆われた灰色の世界、ハジメが目を覚ましたとき、目の前に飛び込んだのはその景色だった。

 

 

 ハジメ「ここは、一体、…………僕は確か……」

 

 

 ハジメは己の記憶を辿る。靄がかかった思考がようやく働き始める

 

 

 ハジメ「そうだ……確か、橋が壊れて落ちたんだ。……それで……あれ?」

 

 

 しかしハジメはその後に起きた事がどうしても思い出せないでいた。記憶喪失というやつだ。

 

 

 ハジメ「……それよりここは一体?……迷宮の中……なのか…………?」

 

 

 不安もある、恐怖もある、しかし、思い出せないことにいつまでも囚われるわけにはいかない、それよりも今は己の現状を確認しなければならない、ここは何処で今どうするべきなのか。

 

 

 

 

 

 数時間、ひとしきり歩いた中で気づいたことがある、それはまず目覚めたあともそうだったが、あれだけの戦闘をした後でここまで長時間歩いているのに疲れを一切感じない、それどころか体が異様に軽いこと、そしてこの場所は先程の洞窟の閉鎖感はなく何処が外を思わせる開放感があること、この2つである。

 

 歩いても 歩いても一切代わり映えのしない灰色の景色。いい加減不気味に思い始めたとき、ハジメの視線の先にオレンジに輝く明かりが見えた、焚き火だ。

 

 誰もいないところに火なんて起こるはずはない、ハジメは期待半分警戒半分でゆっくりと近づく、良くも悪くもこの場所は開けすぎていて万が一のときに身を隠す場所がない、ここが未だ迷宮の中の可能性がある限り魔物が出ない確証なないからだ、

 

 ハジメはゴクリと生唾を飲み明かりへと一歩一歩近づいていくすると━━━

 

 

 ???「そう警戒するな、ここには危険は無ぇ」

 

 

 

 少し軽薄そうな男の声が聞こえた、人だッ助かったッハジメはそう思い安堵し、声のする方へと近づく。

 

 

 ハジメ「すいませんッ気づいたらここにいて、一体ここはどこなんですか?━━━っ!!」

 

 ハジメはある程度近づくことで声の主の姿を目にし、驚愕する。

 なぜなら、声の主は現代、つまりハジメたちの世界の黒いスーツを着込み黒いジーンズを履き、サングラスを掛け、前髪を中心で分けた金髪ストレートといった中性ヨーロッパのファンタジー世界ではありえない格好をしていたからだ。

 

ハジメは自分の格好と見比べてどちらが異世界から来たかわからなくなってしまう。そんなハジメの混乱を余所にその人物は話を続ける

 

 

 ???「おっ誰かと思えばお前かぁ〜、さっきの戦いは良かったぞ、いやぁ~無理やり呼び出されて、つまらん仕事を押し付けられたが、実にいいものを見た!来たかいがあったってもんだ」

 

 

 その飄々とした言葉を聞いてハジメは更に混乱する、どうやら目の前の人物は自分のことを知っていて、先程の戦闘も何かしらの方法で見ていたらしい、しかしハジメはこの人物に全くの心当たりがない、

 

 

 ハジメ「い…一体あなたは……」

 

 

 ???「おいおい質問は一つずつで頼むぜ、いくら俺でも聖徳太子のおっさんみたいなことはできねぇよ」

 

 

 ハジメ「えっええっとぉ……」

 

 

 ???「いいか?小僧、俺はお前を気に入っている、だから一定のことは目を瞑ってやる、一つ一つ丁寧に、はっきりとだ。さもないと━━━━━次はないぞ

 

 

 その人物はをハジメに強烈な圧をぶつける

 

 ハジメ「━━━っ!!?」

 

 ハジメはその圧に気圧されるも必死に言葉を選ぶ

 

 ハジメ「……っあなたは、誰なんですか?」

 

 

 ???「ん?俺か?んん〜普通に教えてやってもいいが……それじゃあつまらんだろぅ。

 そうだな、俺はしがない武器商人(・・・・)だ俺を呼ぶときは気軽にお兄さんでいいぞ━━」

 

 

 ハジメ「は…、はぁ……あっえっと僕は━━━」

 

そのお兄さんが一応名乗ったためにはじめも名乗ろうとしたが、

 

 

 お兄さん「あぁ、名乗る必要ない、それ(・・)はもういらねぇからなぁ、そうだなぁ……とりあえず座れっ疲れんとはいえ立って話すのも違うだろ?」

 

 

 そんな不思議なことを言ってハジメに座るように促してくる、ハジメは言われるがままごく自然に焚き火を挟んでお兄さんの対面に座る。

 

 

 お兄さん「俺の対面か、クソ度胸かよっ」

 

 ハジメ「ああっ!すいませんっこの方が話がしやすいかとぉ!」

 

 お兄さん「あぁ、そうかしこまるな、別に怒っちゃいねぇよ」

 

 

 実際、妙なことに対面に座ったハジメ本人あまりの緊張に、押し黙ってしまう。このお兄さんを前にすると、まるで初めて王様と謁見したとき、……いいやそれ以上の圧と緊張を感じる。なのにまるでそうしないといけないかのように、ハジメはお兄さんの対面に座ってしまったのだ。

 

パチパチッと焚き火の音が妙に大きく聞こえる気がする

 

 

 お兄さん「ん?、他に聞きたいことがあったんじゃねぇのか?」

 

 ハジメ「あっ!えぇっと…そ、そうっ!さっきまで僕、大迷宮にいたはずなんですっ!で、でも気づいたらここにいて……ここ明らかに外って感じですよね?、一体ここはどこなんですかっ!?」

 

 

 ハジメは堰を切ったように質問を投げかける。少しでも自分の現状を把握しなければ行けなかったからだ、自分は一刻も早く大迷宮を脱出し、皆のもとに、地球に、家族の元に、無事に帰えることができるのか?その不安を一刻も早く解消したかった。

 

 

 お兄さん「ここか?ん~~なんて言ったらいいか、」

 

 

 お兄さんは少し考え込むと己の中で考えをまとめたのか「よしっ」と意気込み説明を始める

 

 

 お兄さん「ここは戦い終えた戦士達の楽園、“ミクトランパ(・・・・・・)”、そう呼ばれる場所だ。」

 

 

 ハジメ「み、……ミクトランパ……?」

 

 なんだか高級洋菓子の様な名前にハジメがあらぬ想像をする中、お兄さんは話を続ける

 

 

 お兄さん「いやっ異世界だから、どっちかって言うと、出張版ミクトランパ(・・・・・・・・・)といったところか………、

ここが“奈落”って場所だってんで、ちょっとこじつけた感は否めないが、こうやって繋げることができている。

 こんな横暴が許されちまってるのは抑止力(・・・)が全く意味をなしてないってことだ……全くっ抑止のお偉様方は今頃何をやっているのやら………まぁ、自分でやっといて何だがな……………。」

 

 

 

 そう言うとお兄さんは先程のテンションが一気に急降下し、まるで、使えない上司の愚痴を漏らす中間管理職の様に項垂れた始めた。ハジメは終始、お兄さんの話を理解できないでいたが、一点、たった一点だけ気になることがあった

 

 

 ハジメ「……戦いを……終えた…………?」

 

 お兄さん「ん?あぁ〜、ちょっと詩的に表現しすぎて分かりずらかったか、まぁとどのつまり、簡単に言っちまうと━━━━━

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        “あの世だよ”

 

 

 

 

 

 ハジメ「………………………………えっ?」

 

 

 その一言でハジメの思考が止まる。ハジメは自分が何を言われたのか理解できなかった、いや、理解したくなかったのだ。そうやって思考を拒否するハジメにお兄さんは追い打ちをかける。

 

 

 お兄さん「……なんだよ、さっきまでの態度で大体察しは付いていたが、気づいてなかったのか?自分が死んだことに(・・・・・・)…………。」

 

 ハジメ「ッ━━━!!」

 

さっきまでの楽しそうな態度を一転。お兄さんはまるでつまらないものを見るような目で小枝で焚き火を突きながら話し続ける……

 

 お兄さん「だってそうだろ?……あんな高さからただの人間(・・・・・)がなんの備えもなしに落ちたんだ、それで生きてるって思ったほうが常軌を逸している。」

 

 ハジメ「……ど…………どうすれば…………。」

 

 お兄さん「ハンッ…どうすればってそんなもん決まってんだろ?お前の戦いは終わった、あとはここでゆっくり過ごせばいい、それだけの話だ…………。」

 

 ここまで言われてしまったらハジメは、もう理解するしか無かった自分はすでに命を落としているのだと…………

 

 

 

 でも、

 

 

 ハジメ「…っ納得できないっ!!」

 

 お兄さん「納得しろ……それがこの世の理だ」

 

 ハジメ「そんな、いきなり言われてっ諦められる訳が無いだろっ!!」

 

 お兄さん「…………なんだぁ?お前、まさか帰りたいのか?地上に?」

 

 ハジメ「当たり前だ!!」

 

 

 ヒートアップしたハジメは勢いのままにお兄さんに詰め寄ろうと近づこうとする。しかし次の瞬間、

 

 ズンッとお兄さんから先程とは比べ物にならないくらいの圧が発せられ、ハジメの動きは止まってしまう。

 

 

 お兄さん「理解できんな、なぜ貴様は休息を受け入れない?貴様はよくやった、あんな有象無象が蔓延る戦場で、貴様は自分ができる最大のパフォーマンスを魅せ、そして散った、戦士として見事な誰の文句もつけどころもなく見事な最後だった。」

 

 

 お兄さんは話しながらおもむろに胸ポケットからタバコを取り出しそれを吹かす、一本、吹かし終えるとサングラス越しにハジメを睨む

 

 

 お兄さん「それがいざ自分の現状を理解して、この体たらく、命おしさに無様を晒すか…………これ以上俺を失望させるなよ小僧?これ以上何か囀るなら言葉を選ぶことだ…………。」

 

 

 お兄さんの雰囲気が明らかに先程とは違う、なにか一言余計なことを口にしたら死ぬことはすぐにわかる、いやとっくに死んでいるのだけれども……ハジメが思考を巡らせていると、ある考えがハジメの中で浮上する、

 

 

 

 “なぜ、こんな理不尽なことで説教されなければならない?”

 

 

 

 そうだ、そもそもの話自分が今死んでしまったのは神が理不尽に自分たちから日常を奪ったからだっ!!

 

 死にたくないから、誰にも死んでほしくないから、一生懸命戦って足掻いて、その結果なぜ自分がこんな扱いを受けなければならないのか甚だ理解できないっ!!

 

 

 ハジメ「死にたくないって、生きていたいって思うのは当たり前のことじゃないんですか……」

 

 お兄さん「あ?」

 

絞り出すようなハジメの一言にお兄さんは僅かに反応する。そのまるでハジメに興味のないような態度に、ハジメのくすぶる衝動に油を注いだ、

 

 

 ハジメ「ッ━━━!!僕はっこんな訳もわからない誰かの気まぐれみたいに命を落とすのはまっぴらゴメンだ!!自分の人生に意味を見出したいとか、何かを成し遂げたいとかそんな高尚なものは何もないっ!!

 

ただ……ただ帰りたいだけだ、元の世界に、家族のところにッッ

それを邪魔するっていうのならたとえ誰だろうと……()だろうと容赦はしない!!」

 

 これまでの様々な理不尽に確固たるハジメの強い意志が気弱だったハジメの何かを変えようとしていた。そのはじめの変化に呼応するように、ハジメの周りを漂う霧が……いや空間そのものが一瞬、揺らいだように見えた……

 

 

 お兄さん「━━━━ほほうッ……」

 

 

 ハジメから何かを感じ取ったお兄さんは先程までの能面顔から一転、少し口角を吊り上げた

 

 

 お兄さん「実に大層なことを口走っているようだが、今お前が死んでいることには変わりはない、死んだ生き物は生き返らない、この理を覆すことは誰にもできない、それこそ()にでも頼まなきゃなぁ~」

 

 

 そう、いくらハジメが意気込んでもハジメの“死”という結果は覆らない

 

 

 

 

   普通であれば……。

 

 

 ハジメ「貴方ならなんとかできるんじゃないんですか?」   

 

 ここまでの態度で流石のハジメも感づいていた、目の前の人物は自分と同じ放浪者などではないということを…、 

 

 

 お兄さん「ほう、で?その心は?」

 

 ハジメ「…………それ、本気で言ってますか?

 

貴方は、この場所の事情を知りすぎてる、先達の教えの範疇じゃない。それに自分で言ってたじゃないですか

 

   『 繋げることができている 』って…、だから空間をくっつけるなんて超常的なことができる貴方なら死者蘇生なんかもできるんじゃないかと……………。」

 

 

 ハジメは気丈に振る舞う、が言葉の端々に不安が隠せない、これは飽くまで希望的観測でしか無い、だがそれを押してでもハジメはその予想に縋るしかなかった。

相手は存在的にも状況的にも格上、ここで弱気を見せれば主導権を一方的に握られてしまう。ハジメはお兄さんの鋭い眼差しに怯むことなく睨み返す。

 

 ハジメ「………………………………ッ」

 

 お兄さん「…………………………………………。」

 

 

 

 

 お兄さんは……………………ハジメの心情をすべて見透かしていた。

 

 強い言葉の裏に隠しきれていない恐怖、四肢の震え、呼吸の乱れ、超常の存在である前に一流の戦闘者である彼には戦場に出て間もない素人であるハジメの腹芸など通用する訳もないのである。だからこそ目の前の少年が圧倒的格上たる己の圧に対し怯えはするも逃げずに己の意志を通そうとしている。もう既に死んでいるからの自棄ではなくまだ生きたいからこその足掻き……

 

 動機こそ、一度死んだ身でもう一度生きたいなど彼にとって到底許しがたく、生意気で贅沢なもの言いではあるが、運命()に立ち向かい()おうとする、その姿勢は彼の好む戦士として称賛できるものであった。

 

 

 お兄さん「フッ……たしかに。気分が良かったとはいえ要らん事まで口走った俺の落ち度だったな……

 

 あぁ、お前の言う通りッッ! 俺はここを任されている存在だぁ。お前を地上(・・)に戻すことなんて造作もない」

 

 ハジメ「!!ッそれじゃぁ!」

 

 お兄さん「ただしッ!!……タダってわけにも行かねぇわなぁ~

なんせ命に関わることだ。何もなしじゃ筋は通らんだろう?」

 

 ハジメ「ッ!!」

 

 喜びもつかの間ハジメの表情が一気に強張る、お兄さんはほくそ笑み話を続ける

 

 

 お兄さん「さっきも言ったと思うが俺はこう見えて武器商人(・・・・)だ。しかしここ最近商品の実入りが少なくってなぁ武器を提供してくれればお前を地上に送ろう、あまり高望みはせんが最近現代武器にハマっている。銃、とかあったら嬉しいんだがなぁ?」

 

 ハジメ「…………。」

 

 お兄さん「ん?どうした?急に黙って」

 

 ハジメ「すいません……今手元に武器はありません……」

 

 

 そんなものこの状況下持っているわけがなかった、訓練前騎士に渡されていた素朴な剣は先の騒動中何処かへ手放してしまった。………しかしハジメはここに活路を見出した

 

 

 

 お兄さん「それじゃあ話にならん諦めて━━━」

 

 ハジメ「ですがっ!!僕ならお望みの武器を作り出すことができます!!」

 

 突き放そうとするお兄さんの言葉を遮りハジメは大声で宣言し、更にまくしたてる。

 

 ハジメ「僕の天職は錬成師です。材料と確かなイメージ、環境さえ整えばお兄さんのお望みの現代武器、それこそ銃やそれ以上のものを作り出すことができます。」

 

 お兄さん「ほう……」

 

 

お兄さんが興味を見せるやいなやハジメはここで勝負に出る

 

 ハジメ「ですがそれは逆に言えば材料と環境が揃わなければ作り出すことはできないということです。」

 

 お兄さん「何が言いたい」

 

 空気が一瞬で引き攣る、しかしハジメは怯まない

 

 ハジメ「スゥーッ……ハァ〜〜〜〜ッ!」

 

緊張で逸る気持ちを抑えるため深く深呼吸をし強い眼差しをお兄さんに向ける

 

 ハジメ「お兄さんは、武器商人と言いました。ならこれは商売の話です。僕は貴方の望む商品を望む形で提供できその対価として僕は生き返る。ですがそもそもの話生き返ることができなければ武器を作ることもできません。

 お兄さんがこの空間をこの世界に繋げてる以上戦場で散った命がここに送られてくる可能性もその人達が武器を持っている可能性もありますが、現代武器を用意できるのはこの世界では僕だけです。」

 

 お兄さん「………………………。」

 

 ハジメ「フゥーーーッ………。

 

ですので、 “先に僕を生き返らせてくださいッ” そしたら必ずお兄さんの期待する武器を、……いや期待以上の武器を提供することを約束しますッ!!」

 

 お兄さん「!!ッ…………」

 

 ジャックと豆の木もびっくりな交換条件にお兄さんが今までに見せない驚愕の表情を見せた。ハジメも自分が無茶苦茶言っていること思ってたし理解もしていた、だが完全に不可能な手段だとも思わなかった。

現に地球でも借金をして会社を興すなんて話は稀ではない、投資という概念だ、ハジメは自分の命という負債を負う覚悟をした。

 

 

 お兄さん「クッ」

 

 ハジメ「…………?」

 

 お兄さん「ハハハハハハハハハハハハッ!!この状況で飽くまで対等な取引に持ち込もうとするかッッ肝が座っているッ目を疑う愚かな判断、目を疑う決断力だ、いいだろう!取引成立だ!」

 

 ハジメ「!!?ホッ本当ですか!!」

 

 お兄さん「あぁ、お前の未来に興味が湧いた。投資させてもらおう。

 全くっここまで印象の振れ幅が激しいやつは初めてだ。俺は今最初の頃よりお前を気に入ったぞ。」 

 

 ハジメ「あ、ありがとう……ございます……ッ」

 

一気に緊張が解かれ安堵とともにはじめの目から滝のように涙が溢れる。

 

 お兄さん「あ?礼など不要だ、これは列記とした取引でビジネスだ。だがこれは仮契約のようなもの、商品が俺のとこに提供されるまでお前を死の運命から突き放すことはできない、いつか負債を受けるときはかならず来るだろう。それを肝に銘じておけ。」

 

 ハジメは涙を拭い素直にその忠告を聞き入れ強く頷く

 

 お兄さん「よしっ火から離れろっすぐに上へ上げてやる。あっ言い忘れていたがここは少し本店(・・)と事情が違ってな地上に戻った瞬間お前はここで起きたことはすべて忘れる」

 

 ハジメ「えっ…………ええぇ!?じゃじゃあ取引した意味はぁ!?」

 

 急なカミングアウトにハジメが狼狽した瞬間

 

 お兄さん「なぁ〜に、時が来れば勝手に俺が取り立てに来てやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       ━━━━━それじゃぁなっ」

 

 

          ドンッ

 

  

 ハジメはいつの間にか後ろに空いた落とし穴に落ちていった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ザァーと水の流れる音がする。

 

 

 

 冷たい微風が頬を撫で、頬に当たる硬い感触に「うっ」と呻き声を上げてハジメは目を覚ました。

 

 ボーとする頭、ズキズキと痛む全身に眉根を寄せながら両腕に力を入れて上体を起こす。

 

 

 

 ハジメ「痛っ~、ここは……僕は確か……」

 

 

 ふらつく頭を片手で押さえながら、記憶を辿りつつ辺りを見回す。

 周りは薄暗いが緑光石の発光のおかげで何も見えないほどではない。視線の先には幅五メートル程の川があり水の音の正体はこの川だろう。ハジメは川から少し離れた岸に大の字で倒れていたらしい。

 ハジメは痛む体にムチを打ち立ち上がる、とりあえず状況確認と冷えた体を温めるために火起こしをする。淡々とこなす作業の中不思議と孤独感はない。

 

 ハジメ「何か長い夢を見ていたような……」

 

 作業中ふとそんな思考に走るもすぐに首を振り作業に集中する。

 

 

 ハジメ「とにかく今は、なんとか地上に戻ろう。大丈夫、きっと大丈夫だ」

 

 自分に言い聞かせるように呟き、決然とした表情でジッと炎を見つめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 休息もそこそこにハジメは行動を開始した、慎重に慎重を重ねて奥へと続く巨大な通路に歩を進めた。

 

 ハジメが進む通路は正しく洞窟といった感じだった。

 

 低層の四角い通路ではなく岩や壁があちこちからせり出し通路自体も複雑にうねっている。二十階層の最後の部屋のようだ。

 ただし、大きさは比較にならない。複雑で障害物だらけでも通路の幅は優に二十メートルはある。狭い所でも十メートルはあるのだから相当な大きさだ。歩き難くはあるが、隠れる場所も豊富にあり、ハジメは物陰から物陰に隠れながら進んでいった。

 ここまで窮地はなく滑り出しは順調。このまま何事もなく無事地上に帰れるかもしれないっそういった希望を胸にハジメは前へ進む━━

 

 そうやってしばらく進んだハジメは今、

 

 

 

 「キュ!」

 

 ハジメ(………嘘だと言ってよママン………)

 

 窮地に立たされていた……

 

 ハジメが出会ったのは一匹の兎だった。真っ白い毛の後ろ脚が異様に発達し、全身に赤黒い線が走った兎。その兎が二本の尾をもつ狼の群れを蹴りで薙ぎ倒したのをハジメは今目の当たりにしていた。

先程の間の抜けた可愛らしい鳴き声は兎の勝鬨?であった。

 

 乾いた笑みを浮かべながら未だ硬直が解けないハジメ。ヤバイなんてものじゃない。ハジメ達が散々苦労したトラウムソルジャーがまるでオモチャに見える。もしかしたら単純で単調な攻撃しかしてこなかったベヒモスよりも、余程強いかもしれない。

 

 ハジメは、「気がつかれたら絶対に死ぬ」と、表情に焦燥を浮かべながら無意識に後退る。

 

 

 

 それが間違いだった。

 

 

  

         “ カラン ”

 

 

 

 その音は洞窟内にやたらと大きく響いた。

 下がった拍子に足元の小石を蹴ってしまったのだ。あまりにベタで痛恨のミスである。ハジメの額から冷や汗が噴き出る。小石に向けていた顔をギギギと油を差し忘れた機械のように回して兎を確認する。

 

 

 

 兎は、ばっちりハジメを見ていた。

 

 

 

 赤黒いルビーのような瞳がハジメを捉え細められている。ハジメは蛇に睨まれたカエルの如く硬直した。魂が全力で逃げろと警鐘をガンガン鳴らしているが体は神経が切れたように動かない。  

 やがて、首だけで振り返っていた兎は体ごとハジメの方を向き、足をたわめグッと力を溜める。

 

 

 

 ハジメ(来る!)

 

 ハジメが本能と共に悟った瞬間、蹴りウサギの足元が爆発した。後ろに残像を引き連れながら、途轍もない速度で突撃してくる。

 気がつけばハジメは、全力で横っ飛びをしていた。

 

 直後、一瞬前までハジメのいた場所に砲弾のような蹴りが突き刺ささり、地面が爆発したように抉られた。硬い地面をゴロゴロと転がりながら、尻餅をつく形で停止するハジメ。陥没した地面に青褪めながら後退る。

 

 兎は余裕の態度でゆらりと立ち上がり、再度、地面を爆発させながらハジメに突撃する。

 ハジメは咄嗟に地面を錬成して石壁を構築するも、その石壁を軽々と貫いて兎の蹴りがハジメに炸裂した。

 咄嗟に左腕を掲げられたのは本能のなせる業か。顔面を粉砕されることだけはなかったが、衝撃で吹き飛び、再び地面を転がった。停止する頃には激烈な痛みが左腕を襲う。

 

 ハジメ「ぐぅっ――!!」

 

 見れば左腕がおかしな方へ曲がりプラプラとしている。完全に粉砕されたようだ。痛みで蹲りながら必死で兎の方を見ると、今度はあの猛烈な踏み込みはなく余裕の態度でゆったりと歩いてくる。

 

 

 

 ハジメの気のせいでなければ、兎の目には見下すような、あるいは嘲笑うかのような色が見える。完全に遊ばれているようだ。

 

 

 

 ハジメには、尻餅をつきながら後退るという無様しか出来ない。

 

 

 

 やがて、兎がハジメの目の前で止まった。地べたを這いずる虫けらを見るように見下ろす兎。そして、見せつけるかのように片足を大きく振りかぶった。

 

 

 

(……ここで、終わりなのかな……)

 

 

 

 絶望がハジメを襲う。諦めを宿した瞳で呆然と掲げられた兎の足を見やる。その視線の先で、遂に豪風と共に致死級の蹴りが振り下ろされた。

 

 

 

 ハジメは恐怖でギュッと目をつぶる。

 

 

 

 ハジメ「……」

 

 

 

 しかし、いつまで経っても予想していた衝撃は来なかった。

 

 

 

 ハジメが、恐る恐る目を開けると眼前に兎の足があった。振り下ろされたまま寸止めされているのだ。

 まさか、まだ遊ぶつもりなのかと更に絶望的な気分に襲われていると、奇妙なことに気がついた。よく見れば蹴りウサギがふるふると震えているのだ。

 

 

 

(な、何? 何を震えて……これじゃまるで怯えているみたいな……)

 

 

 

 〝まるで〟ではなく、事実、兎は怯えていた。

 

 

 

 ハジメが逃げようとしていた右の通路から現れた新たな魔物の存在に。

 

 その魔物は巨体だった。二メートルはあるだろう巨躯に白い毛皮。例に漏れず赤黒い線が幾本も体を走っている。その姿は、たとえるなら熊だった。ただし、足元まで伸びた太く長い腕に、三十センチはありそうな鋭い爪が三本生えているが。

 

 

 その爪熊が、いつの間にか接近しており、兎とハジメを睥睨していた。

 

 

 辺りを静寂が包む。ハジメは元より兎も硬直したまま動かない。いや、動けないのだろう。まるで、先程のハジメだ。爪熊を凝視したまま凍りついている。

 

 

 

「……グルルル」

 

 

 

 と、この状況に飽きたとでも言うように、突然、爪熊が低く唸り出した。

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

 兎が夢から覚めたように、ビクッと一瞬震えると踵を返し脱兎の如く逃走を開始した。今まで敵を殲滅するために使用していたあの踏み込みを逃走のために全力使用する。

 

 

 

 しかし、その試みは成功しなかった。

 

 爪熊が、その巨体に似合わない素早さで蹴りウサギに迫り、その長い腕を使って鋭い爪を振るったからだ。蹴りウサギは流石の俊敏さでその豪風を伴う強烈な一撃を、体を捻ってかわす。

 ハジメの目にも確かに爪熊の爪は掠りもせず、兎はかわしきったように見えた。

 

 

 

 しかし……

 

 

 

 着地した兎の体はズルと斜めにずれると、そのまま噴水のように血を噴き出しながら別々の方向へドサリと倒れた。

 愕然とするハジメ。あんなに圧倒的な強さを誇っていた兎が、まるで為す術もなくあっさり殺されたのだ。

 兎が怯えて逃げ出した理由がよくわかった。あの爪熊は別格なのだ。蹴りウサギの、まるでカポエイラの達人のような武技を持ってしても歯が立たない化け物なのだ。

 

 爪熊は、のしのしと悠然と兎の死骸に歩み寄ると、その鋭い爪で死骸を突き刺しバリッボリッグチャと音を立てながら喰らってゆく。

 

 ハジメは動けなかった。あまりの連続した恐怖に、そして蹴りウサギだったものを咀嚼しながらも鋭い瞳でハジメを見ている爪熊の視線に射すくめられて。

 

 爪熊は三口ほどで兎を全て腹に収めると、グルッと唸りながらハジメの方へ体を向けた。その視線が雄弁に語る。次の食料はお前だと。

 ハジメは、捕食者の目を向けられ恐慌に陥った。

 

 

 

 ハジメ「うわぁああーー!!

 

 

 

 意味もなく叫び声を上げながら折れた左腕のことも忘れて必死に立ち上がり爪熊とは反対方向に逃げ出す。

 しかし、あの兎ですら逃げること敵わなかった相手からハジメが逃げられる道理などない。ゴウッと風がうなる音が聞こえると同時に強烈な衝撃がハジメの左側面を襲った。そして、そのまま壁に叩きつけられる。

 

 

 

 ハジメ「がはっ!」

 

 

 

 肺の空気が衝撃により抜け、咳き込みながら壁をズルズルと滑り崩れ落ちるハジメ。衝撃に揺れる視界でどうにか爪熊の方を見ると、爪熊は何かを咀嚼していた。

 

 だが、一体何を咀嚼しているのだろう。兎はさっき食べきったはずである。それにどうして、食はんでいるその腕は見覚えがあるのだろう

 

 ハジメは理解できない事態に混乱しながら、何故かスッと軽くなった左腕を見た。正確には左腕のあった場所を……

 

 

 

 ハジメ「あ、あれ?」

 

 

 

 ハジメは顔を引き攣らせながら、なんで腕がないの? どうして血が吹き出してるの? と首を傾げる。脳が、心が、理解することを拒んでいるのだろう。

 

 しかし、そんな現実逃避いつまでも続くわけがない。ハジメの脳が夢から覚めろというように痛みをもって現実を教える。

 

 

 

 ハジメ「あ、あ、あがぁぁぁあああーーー!!!」

 

 

 

 ハジメの絶叫が迷宮内に木霊する。ハジメの左腕は肘から先がスッパリと切断されていた。

 爪熊の固有魔法が原因である。あの三本の爪は風の刃を纏っており最大三十センチ先まで伸長して対象を切断できるのだ。

 

 それを考えれば、むしろ腕一本で済んだのは僥倖だった。爪熊が遊んだのか、単にハジメの運が良かったのかはわからないが、本来ならうさぎギのように胴体ごと真っ二つにされていてもおかしくはなかったのだ。

 

 ハジメの腕を咀嚼し終わった爪熊が悠然とハジメに歩み寄る。その目には兎のような見下しの色はなく、ただひたすら食料という認識しかないように見えた。

 

 眼前に迫り爪熊がゆっくりハジメに前足を伸ばす。その爪で切り裂かないということは生きたまま食うつもりなのかもしれない。

 

 ハジメ「あ、あ、ぐぅうう、れ、〝錬成ぇ〟!」

 

 あまりの痛みに涙と鼻水、涎で顔をベトベトに汚しながら、ハジメは右手を背後の壁に押し当て錬成を行った。ほとんど無意識の行動だった。

 

 無能と罵られ魔法の適性も身体スペックも低いハジメの唯一の力。通常は、剣や槍、防具を加工、制作するための魔法。その天職を持つ者は例外なく鍛治職に就く。故に戦いには役立たずと言われながら、異世界人ならではの発想で騎士団員達すら驚かせる使い方を考え、クラスメイトを助けることができ、とある交渉にも役立った力。

 

 だからこそ、死の淵でハジメは無意識に頼り、そして、それ故に活路が開けた。

 

 背後の壁に縦五十センチ横百二十センチ奥行二メートルの穴が空く。ハジメは爪熊の前足が届くという間一髪のところでゴロゴロ転がりながら穴の中へ体を潜り込ませた。

 目の前で獲物を逃したことに怒りをあらわにする爪熊。

 

 

「グゥルアアア!!」

 

 

 咆哮を上げながら固有魔法を発動し、ハジメが潜り込んだ穴目掛けて爪を振るう。凄まじい破壊音を響かせながら壁がガリガリと削られていく。

 

 

 ハジメ「うぁあああーー! 〝錬成〟! 〝錬成〟! 〝錬成ぇ〟!

 

 

 爪熊の咆哮と壁が削られる破壊音に半ばパニックになりながら少しでもあの化け物から離れようと連続して錬成を行い、どんどん奥へ進んでいく。

 後ろは振り返らない。がむしゃらに錬成を繰り返す。地面をほふく前進の要領で進んでいく。既に左腕の痛みのことは頭から飛んでいた。生存本能の命ずるままに唯一の力を振るい続ける。

 

 

 どれくらいそうやって進んだのか。

 

 

 ハジメにはわからなかったが、恐ろしい音はもう聞こえなかった。

 しかし、実際はそれほど進んではいないだろう。一度の錬成の効果範囲は二メートル位であるし(これでも初期に比べ倍近く増えている)、何より左腕の出血が酷い。そう長く動けるものではないだろう。

 

 実際、ハジメの意識は出血多量により既に落ちかけていた。それでも、もがくように前へ進もうとする。

 

 

 

 しかし……

 

 

 ハジメ「〝錬成〟 ……〝錬成〟 ……〝錬成〟 ……〝れんせぇ〟 ……」

 

 

 

 何度錬成しても眼前の壁に変化はない。意識よりも先に魔力が尽きたようだ。ズルリと壁に当てていた手が力尽きたように落ちる。

 ハジメは、朦朧として今にも落ちそうな意識を辛うじて繋ぎ留めながらゴロリと仰向けに転がった。ボーとしながら真っ暗な天井を見つめる。この辺は緑光石が無いようで明かりもない。

 いつしかハジメは昔のことを思い出していた。走馬灯というやつかもしれない。保育園時代から小学生、中学生、そして高校時代。様々な思い出が駆け巡るが、最後の思い出は……

 

 

 

 月明かり射し込む窓辺での香織との時間。約束をした時の彼女の笑顔。

 

 

 

 その美しい光景を最後にハジメの意識は闇に呑まれていった。意識が完全に落ちる寸前、ぴたっぴたっと頬に水滴を感じた。

 

 

 

 それはまるで、誰かの流した涙のようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お兄さん「これが最初の試練だ“ 南雲ハジメ ”、俺はお前の未来に、戦士としての可能性に期待する。

 

  だからソレ(・・)は選別だ今はゆっくり休むと良い…」

 

 

 霧が覆う灰の世界で、かの神は焚き火に照らされたその貌に薄い笑みを湛えていた……。

 

 

 

 

 

 






 テス兄のキャラ崩壊しないように最新の注意を払ってたから今回もかなりの難産でしたわぁ〜
 後半もハジメの腕チョンパの件とかまんまやし。

 これからも事の終着点は基本原作沿いですが、ここから大胆に中間の展開が変わる予定だす。
 
 期待して待っててね〜!

次回は白黒挿絵もあるよ(^_^)


 〜FGO小話コーナー〜

 この間、なんとか“じいじ”を2体目お迎えできました〜〜!!

でも漫画と仕事が忙しすぎて風雲イリヤ城全くやってな〜い(´;ω;`)ぴえん

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