折原臨也と実力至上主義の教室 作:あいうえお
折原臨也の所属する一年Aクラスは、クラスのリーダーが二人存在する。
一人目は葛城康平。生真面目な堅物であり、学力においては疑う余地もなく優秀な人材であることは確かなのだが、悪目立ちの多い臨也は何かと目の敵にされることが多い。
そして、もう一人のリーダーというのが、現在臨也の目の前で席を陣取るセミロングの女子生徒。
「私の派閥に加入して頂けますか? 折原くん」
入学以来、クラスの二分が顕著になってからというもの、臨也はこの少女──坂柳有栖から執拗な勧誘を受けるようになった。
臨也はなぁなぁで話を引き延ばしていたが、それももう限界らしく、ここの所は毎日のように同じ話題で声を掛けられている。
「君たちさ、そんな年で政治家の利権争いの真似事なんかしちゃって、凄いもんだよね。それって楽しくってやってたりするのかな。俺にはイマイチ共感できないんだけど」
「葛城くんの考えは保守的すぎます。彼と私で手を取り合うことは難しいでしょう」
「だから俺に、君に与して欲しいって?」
「はい」
臨也は腹の内で既に出している答えをひた隠しにし、困ったような素振りを取り繕う。
「あなたと同じ中学にいた者から、あなたが一体どういう人間なのかを聞きました。万引き、暴行、恐喝、イジメ、放火──ありとあらゆる非行事件の影には、常にあなたが存在していたのだとか」
「それは言い過ぎだね。俺は頼られると断れない性格だからさぁ、誰かを傷付けたいだの、誰かに復讐したいだのって相談事をつい引き受けちゃうだけさ。首謀者って言い方はやめてくれ」
「ふふ。私があなたを評価しているのはそこです。あなたは『常に誰かから頼られる立場』であり続けました。そのお力を是非とも私に貸して頂きたい」
坂柳は手を差し伸べるが、臨也の答えは決まり切っている。
何度聞かれても、彼が芯を曲げることはないのだ。
臨也は昨日や一昨日と同じように今日も告げる。
「有栖さんとは仲良くしたいと思ってるよ。でもさ、俺は康平くんとも友人なわけだから、どちらの贔屓もできないんだよねぇ。てか、君たちが俺に向けてる感情って全部過大評価だし、足を引っ張ってしまうのは忍びない」
「双方の味方になりたい、と?」
「そゆこと」
「……その考えで他者からの信頼を得られるのは中学までですよ。立場の曖昧な者は最も信頼できない。折原くんは双方の味方ではなく、双方の敵になろうとしています」
「その悪意的な解釈も、君を彩る魅力の一つだね、有栖ちゃん」
「ちゃん付けは辞めて欲しいと何度言えば」
真意を欠片も覗かせない臨也の言動に、坂柳は警戒の色を滲ませる。
彼女が臨也を自派閥に吸収したがっている理由で一番大きな部分が、そこだ。
「相変わらず、折原くんは理解が出来ませんね」
理解もできなければ分析もできない。
少女にとって臨也のような人間は初めてだった。
行動原理、価値観、趣味嗜好、誰とでも一言二言交わせばそれらの傾向はある程度分かる。そうすれば、その人間がどういった動機でどのような行動に出るか予測も立てやすいというものだ。
しかしながら、臨也においてはそれが全く理解できない。
「難しいこと言ってるかな、俺。ただみんなと仲良くしたいってだけなんだけどね」
「そう言うのは簡単です。しかし、私の目にはあなたが『みんなの味方』ではなく『みんなの敵』といった姿に映っています。折原くんは本当に、他人と懇意になろうという気があるのですか?」
周囲に怯えているわけでもなく、周囲に迎合しているわけでもない。
そんな彼の軸がどこにあるのか、少女にはイマイチ把握できない。
性根から共感能力の低い異常人とでも思えれば話は簡単だったのだが、臨也の声や姿形は他の誰よりも鮮烈で人間的すぎた。
「これは警告です。私に助勢しないのなら、私はあなたをAクラスの敵と見なします」
「──それは脅迫か? 坂柳」
高校生らしからぬ強い声音が響く。
無毛の男子生徒は二人の間に割り入り、坂柳を睨むようにして制した。
「ご安心ください、葛城くん。どうやら私は今日も折原くんに振られてしまったようなので」
「振ってなんかいないよ。恋愛風に言うなら、俺は君のことも好きだけど他の子のことも好きだから、際限のない愛で皆を愛する代わりに浮気を許してくれ、って言っただけじゃないか」
「それを世間一般的には振られたと言うのです」
「憐れだな、坂柳。この男が誰にも従わんというのは明白だろう」
言って、葛城康平は臨也の襟をつかみ上げた。
「言葉で理解できない奴は、それ以外の方法で懲らしめるしかないのだ」
「あはは。俺ってば今からボコボコにされるの? それは構わないけど、抵抗するかしないかを決めるためにも一応理由を聞かせてくれ」
「理由だと? そんなこと言うまでもない」
掴んだ襟を叩きつけるように振るい、葛城は強引に臨也を座らせようとする。
すると、臨也は上着を脱ぎ棄ててするりと拘束を逃れ、飛び跳ねるようにして後部の机に着地した。どこかから「忍者!?」と驚くような声が上がる。
「パルクールというやつか。まるで猿だな」
「猿って、康平くんが暴力を振るうからだろ」
「何が暴力だ! お前は抑えつけておかないと逃げるだろう! ……お前は昨晩、他のクラスの女子階に赴き悪事を働いたと聞いているぞ。どういうことか説明しろ」
「またその話か。俺は高い所が好きなんだ。そして寮の上階には女子が住んでいた」
「それで?」
「いやそれだけだよ。立ち入り禁止の20時以降には立ち退いたから、ルール的には何の問題もない」
「……お前にはルールとモラルの違いを叩き込んでやる必要があるようだな。来い、説教だ」
「アハハ、コワー」
そう言いながらも、臨也は手招きされるがまま立ち上がり、全く怯える様子もなく葛城の傍に歩み寄った。それは、葛城が本質的に善良で、支配的であっても暴力的でないという人間性を臨也が知っているから──ではない。
臨也が他“人”に向ける態度は良くも悪しくも一環している。
誰に対しても平等に親しく、舐めてかかり、時には寄り添うことだってあるだろう。
「……やはり、折原くんは葛城くんにだけ心を開いているようですね」
「そう見える?」
「はい。仮にもクラスのリーダー格である葛城くんに対して、そこまで警戒も緊張もなく尊大な態度を続けられるのは、心を許している証拠です」
「そういうお前こそ、折原と特によく長話をしている所を見るがな」
自分の席に戻った臨也は、二人の小競り合いに挟まれてしまう。
傍目からはさながら、Aクラスの二大巨塔である二人が折原臨也を取り合って争っているような構図にも見えるだろう。
「平和だなぁ」
臨也はそれを迷惑に思うでもなく歓迎する。
極論、彼にとってはそれだけでも良かったのだ。
人間に交じって人間を観察し、人間を愛でる。それだけで臨也は満たされる。
この特殊な学校ならば勝手に火種が転がってくれるため、わざわざ自分でそれらを集める必要もない。勝手に着火する様を見ているだけで、今は満足だった。
「おっと、無駄話が過ぎましたね」
「……そうだった。折原、今日こそお前の性根を叩きなおしてやろう。そこに直れ」
「いやぁ、活発な二人のリーダーに恵まれて俺は幸せだなぁ」
「ヘラヘラするな」
──だけど、あともう一つ。
更に過激なスパイスがあれば、尚のことこの日常の味わいは深くなるのかもしれない。
臨也はこの学校が奏でる未知の相乗効果に想いを馳せて、目を閉じた。
「オイ、誰が寝て良いと言った?」
×××
坂柳有栖にとって、折原臨也は異物だった。
敵とも味方ともとれないイレギュラーであるからこそ、対応が難しい。
自分の手駒として吸収することが出来ればそれに越したことはなかったが、どうやら彼には何かに属するという社会的欲求が欠落しているようで、彼女の勧誘には一度として揺れることもなかった。
坂柳が最も恐れているのは、“折原派”が顕在化することである。
現在、Aクラスは坂柳派と葛城派という事なるリーダーを持つ派閥が存在している。しかし、それらの派閥争いにはっきりと関与しているのはむしろ少数派だろう。
大多数なのは誰がリーダーでも構わない、と静観している生徒である。
そういった大数を味方につけるには、葛城と自分のどちらが優秀であるかを証明すればいいのだが、その過程の中で静観派が争いに疲れ切ってしまったら?
もう誰がリーダーでもいいから、クラス内紛争なんて早くやめてくれ、という意見が多数派を浸食していく可能性がある。
そういった時、恐らく神輿を担がれるのはあの折原臨也だ。
彼の人脈は広く浅く、漠然と優秀であるといった印象が蔓延してしまっていた。
「折原くんは、やろうと思えば自分の派閥を立ち上げることも可能でしょう」
「アイツにそんな度量があるとは思えないけどね。アイツはただの目立ちたがり屋よ」
自身の側近的立ち位置である神室真澄に手を引かれながら、他に誰もいない廊下で坂柳は胸中を零す。
「少なくとも、彼の横の繋がりは私よりも広いですよ。仮に私と葛城くんが表立って争うような状況下になれば、混乱の中で皆さんの信頼を勝ち取ることもできるでしょう」
「……随分とあの男を買ってるのね」
「えぇ、折原くんは早めに手に入れておきたい。真澄さんにも動いてもらいます」
「あたしに何をさせようっていうの?」
「対立か協調か、彼に明確な選択肢を突き付けます。やることなんて簡単ですよ。──あなたの最も得意なことです」
もしも協調の選択肢を取るのなら、それでよし。
しかし、頑なに彼が対立の意思を曲げないのなら──坂柳は折原臨也を、葛城康平と別種の敵対勢力と認定することになるだろう。
×××
高度育成高等学校には、生徒たちが自給自足できる衣食住はもちろん、未成年として平均的な娯楽の数々も用意されている。
学校から支給されたポイントを消費すれば、好きなようにそれらのサービスを受けることが可能だ。
授業のない休日、臨也は同級生の女子たちに誘われてショッピングに繰り出すことが多かった。
今回も似たような面子に誘われてケヤキモールに訪れていたのだが、
「いやぁ珍しいね、真澄さんまで一緒に来てくれるだなんて」
「……勘違いしないで。単なる気分転換」
「うんうん、有栖ちゃんの介助は大変だろうしね。気分転換も大事だ。それじゃ、今日はめいっぱい楽しもうか」
臨也は神室の肩に手を伸ばすも、鬱陶しいものを見るような目ではたき落とされる。
「あんたって女たらしなの? 連れの連中、女子生徒ばっかじゃん」
「言ったろ、俺は頼られたら断れない性格なんだ。つまり遊びに誘われたら断れない性格でもある。女子にばっかり誘われる理由なんて、俺に聞かれても困るよ。彼女たちに聞いてくれ」
「……」
色事にさしたる興味がないとはいえ、神室の一般的な感性を持つ女子の一人だ。
彼女の目から見て、折原臨也はとびぬけて容姿が良い。眉目秀麗という言葉がそのまま具現化すれば、彼のような姿になることだろう。女子からの誘いの声が多いのも頷ける。
正直、坂柳の命令で彼に着いて行っているとはいえ、こうして隣り合って話しているだけで神室は僅かに気分が高揚していた。
人畜無害な美少年のフリをしているだけで、臨也には無条件に異性を引き付ける外見的ステータスがある。
「ねぇ臨也くーん、あたし新しいアクセ見に行きたーい。安い店教えて~!」
「おっけー。それじゃ、一通り見て回ろうか」
臨也は日課のように、理由もなく学校の敷地内をブラつくことがある。
そのため、女子の誰よりも学内の店に詳しいという奇妙な知識の偏りがあった。
一同は彼の案内するままに女性服や装飾品の販売店を訪ね、正午を迎えようとしていた頃。
「みんな、ちょっと休憩しよう」
「えー、次のお店目の前じゃん!!」
「ゴメンね。俺疲れちゃって。そこのベンチで休んでるから、次の店にはみんなで入ってくれるかな?」
道すがら、自販機で購入したジュースを片手に臨也は道沿いのベンチに座った。
小さなベンチだ。面積はせいぜい二人座るのが関の山である。女子たちは不服そうな声を漏らすが、晴れやかな臨也の笑みを受けて、渋々店の中に入っていった。
「……あたしも疲れたから、休む」
その流れから一人抜け出し、臨也の隣に腰掛けた神室は、人形のように整った少年の横顔をまじまじと観察し始めた。
──彼が警戒に値するような人間性だとは思えない。
それが、数時間行動を共にして彼女が抱いた感想である。
勿論坂柳からの命令には従っているが、その正当性については甚だ疑問が残る。
「……このまま二人で帰っちゃおうか?」
「えっ」
「真澄さん、ずっと退屈そうな顔してたでしょ。俺も同じだよ。中身のない集団の会話に付き合うのは、正直かなり骨が折れる」
突然の言葉に神室はぎょっと身を固める。
「何、つまんないの?」
「まぁね」
「じゃあ、なんでああいう連中に付き合ってんのよ」
「今日は君が来てくれるって聞いたからさ。俺の目的は君だよ、神室真澄さん。俺は君とサシで話してみたかった」
学校に居る時の神室はことある事に坂柳と行動を共にしている。それは、坂柳有栖が一人で長距離を移動することが困難であるという肉体的な事情もあるからだ。
臨也の望んだ通り、確実な一対一で神室と話すためには学校から離れる必要があった。
「君はどうして有栖ちゃんに付き従っているんだい?」
「……そんなことに、理由なんてない」
「それって彼女の人間性が好きだから、って意味なのかな」
「別にそうじゃないけど。あたしには、あの女に従う理由があるから」
「理由? それが重要だ。教えてくれないかな?」
「はぁ、調子乗らないで。言う訳ないじゃん」
口が裂けても言えるものか。
入学早々に万引き行為をし、それを坂柳に目撃されてしまったために、口封じも兼ねて言いなりになっているだなんて。
「まぁ、でも、アイツは葛城よりは優秀だから」
こじつけのような後出しの理由だが、あながち嘘を言ってもいない。
坂柳の近くで生活しているからこそ痛感する、彼女の圧倒的な知性。確実に葛城康平が持ち合わせていない才能だった。
「なるほど、ね。“優秀だから”か……だったら、もしも有栖ちゃんが葛城くんより能力の低い人間だったなら、君は葛城派にクラ替えすることも辞さないわけか」
「……さぁ、どうだろうね」
本音を言えば、派閥争いになんて巻き込まれたくない。
しかし、もしも葛城に坂柳を抑え込めるほどの能力があるのだとすれば、万引きの事実を坂柳ごと消し去ってもらうために葛城に与することもあり得る。
「それなら、ここで改めて考えよう。有栖ちゃんが本当に優秀な人間なのかどうか」
「はぁ? 今更何言ってんのよ。そんなの、みんなだって疑ってないわよ。あの葛城だって、考え方は違うだろうけどアイツの実力は認めるみたいだし」
「俺に言わせれば、その実力を、他人の評価に任せて考えるっていうのが軽率すぎるかな。もっと自分で考えないと」
臨也はポケットからUSBメモリを取り出し、神室に渡す。
「きっと君に必要なものだろうから、譲ってあげるよ」
「何よコレ」
「学校の経営陣で行われた、過去の議事録のデータさ。とある筋から手に入れたんだ」
「……ふーん?」
その“とある筋”について興味はあったが、問いただしたところで臨也は明かしてくれないだろう。それに、ポイントと引き換えにすればどんなものでも手に入る学校だ。学校の資料すら入手する方法があったって不思議ではない。
神室はUSBを受け取り、まじまじとそれを観察する。
何てことない、市販のものだ。
「その中の議事録データには、君にとって重要な情報が眠っている」
「重要、って」
「俺の口から要約してしまうとだね──そのデータは、この学校が『一人の生徒』を不正に入学させた事実を指し示しているんだ」
「!」
「元々、入学が決定していたとある少年がいた。それをこの学校の理事長が独断で排斥し、空いた枠に別の人間をねじ込んだんだ」
「……つまり、裏口入学の証拠ってこと?」
「証拠ってほどじゃないけどね。それを示唆する会話の記録ってところかな」
話が見えてこず、少女は首を傾げる。
確かに出すところに出せば重要なデータになり得るのかもしれない。
しかし、それは自分たちに全く関係のないことだ。
その考えを──臨也の次の一言が覆した。
「ちなみに、この学校の理事長は坂柳有栖の父親だ」
「…………はっ?」
「はは、知らなかったのかな。それとも教えてもらえなかった? 坂柳理事長──本名、坂柳成守。つい先日、本人に『おたくの娘さんは優秀ですね』って風にカマをかけたら、簡単に親子関係を認めてくれたよ」
「……そんな、だ、だったら……」
臨也の言わんとする内容を察し、神室は絶句した。
まさか、そんなはずはない、と信じたい自分がいる。
しかし──結果の為なら手段を選ばず、他人を脅してでも手駒にしようと言う彼女の人間性。
ひ弱な身体に隠れた卑怯な性質をこれでもかと実感してきた神室は、坂柳有栖ならやりかねないと考えてしまった。
「ここは日本で唯一の国営高校。公金によって生徒には楽園のような学習環境が担保されているけど、その分入学は通常の学校よりもハードルが高いだろうね。だから入学できた時点でエリートなんだよ。俺や君のようなAクラスの生徒なんて、エリート中のエリートとも言えるかもしれない」
「……あたしが、エリート…………?」
「でも、もしもそんな学校に、偽物がいたとしたら?」
──もしも、親のコネだけで入学した生徒がいたとしたら?
──その上、不当な権力でAクラスに捻じ込まれた生徒がいたとしたら?
──しかも、その生徒がAクラスのリーダー面なんてしていようものなら?
「俺ならきっと、
「……だったら、坂柳は実は全然優秀なんかじゃないってこと……?」
臨也は答えない。
代わりに背中を押すように、神室の頭をさらりと撫でた。
柔らかい少女の髪が、少年の指に絡まり、風に靡く。
「君が彼女にどんな弱みを握られているかは知らないけど、俺は君の味方でも在りたいと思っているんだ。自分で考えることだよ、神室真澄。困った時は、俺がいつだって君を助けてあげるからさ」
──君がどんな音色を奏でるか、どうか俺に示してくれ。
「……」
神室真澄が坂柳から与えられていた命令は、万引きの罪を臨也に擦り付けることだった。
道中の店で盗んだ商品を臨也の鞄の中に入れ、臨也の部屋のドアノブから入手した彼の指紋を付着させることで、完全な犯人に仕立て上げる。
その事実を突き付けた上で、坂柳と電話を繋ぎ、犯罪を暴露されたくなければ手を組めを持ちかける。
そこまでが、坂柳有栖の計画していた内容だった。
現在、臨也のサイドバックの中でには、神室が隠した盗品のイヤホンが入っている。
あとは坂柳と電話を繋ぎ、臨也に変わるだけでいい。
「──折原」
「うん?」
携帯を取り出そうとして、やめた。
「…………いや、何でもない」
もはや少女は、あの女に従う意義そのものを見失ってしまっていた。
その結果、もしかすると彼女たちは仲互いしてしまうかもしれない。
この亀裂は、決定的なものになってしまうかもしれない。
しかし、折原臨也はどんな結果も歓迎することだろう。
神室は気分を変えるため、視線を逸らした。
息を大きく吸って、吐いて、臨也の座る場所の反対側に目を向ける。
彼女のすぐ隣にあった網性のゴミ箱には、見覚えのあるイヤホンが捨てられていた。
手癖の悪さじゃ臨也の方が上かなーって。
今後の臨也の観察対象は?(参考までに)
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戸塚弥彦
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山内春樹
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山田アルベルト
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石崎大地
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家電量販店の店員
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神室真澄
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坂柳有栖
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葛城康平
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橋本正義