やらせてみれば、ギレーヌは教師として優秀だった。
ただし手に執るのは教鞭ではなく、木剣だ。
まずはお前の腕を見せてみろ。
そう言われて、普段から使っている木剣を手にギレーヌと相対する。以前までエリオットに剣術の手ほどきをしていたキリーは言った。
相手を観察すべし、と。
曰く、相手を見ればその戦力差が分かると。重心の位置を、得物の握りを、視線を、筋肉の起りを、そして呼吸を。それらを読み切れば、相手の狙いが判り、どこに隙があるのかも判るのだ。
その観点からギレーヌを見てみれば、戦力差は圧倒的だ。比べる気にもならない。
ボレアスの用心棒兼エリオットの師として雇うと話が纏まったとき、ボレアス家剣術師範のキリーとギレーヌは一度剣を交えていた。
キリーは優秀な剣士だ。
平均的な兵士の才能限界が各流派中級なのに対し、剣神流上級と水神流中級を修めている。
その彼が、一太刀のもとに破れた。
まずは一撃、と踏み込もうとしたキリーは木剣を振り上げる前に斬って捨てられた。
完膚なきまでの敗北だった。
エリオットには、斬撃の起りも、振るわれた刀身も視認できなかった。ただ残心をとるギレーヌと、崩れ落ちるキリーが見えただけだ。
それ程に差があるのだ。
剣神流上級剣士と王級剣士とは。
エリオットは眼前のギレーヌを油断なく見据えた。
ギレーヌは居合。攻撃を誘い後の先を取るカウンター主体の構えだが、剣神流剣士のそれは些か趣きを異にする。居合の構えより放たれる抜刀の剣速は驚異的だ。諸手で上段より放たれる唐竹と遜色ないほどに。
機動力に優れるギレーヌは自ら間合いを詰め、刃圏に捉えた瞬間悉くを斬って捨てるのだ。
故にこそ、間合いの外であっても油断は許されない。僅かなりとも隙を見せれば、それを知覚したギレーヌはその瞬間に内懐まで詰め寄ってくるだろう。キリーとの立ち合い、その時の爆発的な速力を思えば、瞬きする間すら許されない。
故に、動けない。
どのような動きをしても明確な敗北のビジョンが浮かび上がり、それがエリオットの足を縛り付ける。
「……こないのか?」
険しい顔で冷や汗をかいたまま動かないエリオットを見て、ギレーヌはため息をつくと木剣を下ろした。
「気持ちはわからんでもないが……打ち込まなければ実力もわからん。とにかく打ってみろ」
「……わかった」
ギレーヌの叱咤にエリオットはじり、と僅かに間合いを詰めた。
エリオットは未だ七歳。所詮は剣神流初級の出口あたりをうろうろしている程度の技量である。胸を借りる気持ちで打ちかからなければやっていられない。
剣をだらりと下ろしたギレーヌは、先ほどの居合と異なり明確な隙を見せていた。
左の肩口──右手に下ろした剣から対角線上の、最も遠い位置。そこに、気合と共に踏み込んで木剣を振るう。
「──ふむ」
ギレーヌはエリオットの袈裟懸けの斬撃に、左半身を半歩引き容易く木剣を合わせた。
防がれた。そこに驚きはない。むしろ当然の帰結である。故に思考も動きも止めず、立て続けに木剣を振るった。
ギレーヌは合格だ、と言わんばかりの表情だった。こちらも当然と言えば当然だが、晒された隙をエリオットがしっかりと見抜けているか、というのも見ているのだろう。
弾かれた勢いを殺さず切り返し、逆袈裟の振り下ろしを右肩口に見舞う。当然、翻った木剣によってすげなく打ち返される。せっかく詰めた間合いをわざわざ離すことはしない。子供のエリオットに比べギレーヌの方がリーチは長い。
続く横薙ぎは剣先によって払われ、振り下ろしの一撃は半歩下がることで間合いを外される。しかし、エリオットの唐竹の一撃は振り下ろしの最中で軌道を変え、突きに変化した。
「ほう。やるじゃないか」
「──ッ!」
突き込まれた木剣を叩き落とし、ギレーヌはエリオットが構え直すのに先んじて木剣を突きつける。
「だが、得物を手放したのは減点だな。筋力も握力も、齢を考えれば当然だが……そら、もう一度だ」
じんじんと痺れる手に顔をしかめ、エリオットは再び構えた。中段の構えから上段に移行する。
基本にして堅実な中段に比べ、より攻撃的な上段の構えは剣神流を修める剣士でも使用者が多い。
エリオットはギレーヌの言葉を思い出す。とにかく打ってみろ、と。まずはエリオットの剣を見定めようという腹なのだろう。だとするならば、上段に移行するのは当然の成り行きだ。
先程の唐竹の焼き直し。だが今回の一撃は明確に速かった。
上段からの振り下ろしは疾い。振り上げるという動作が要らず、気合そのままに打ち下ろすだけで良いからだ。そして今度は突きに移行するフェイクも使用しない。深く踏み込んだそれは、間合いを半歩外された事への警戒からだ。
ギレーヌはその一撃に躱すでも打ち払うでもなく、木剣を合わせた。
振り下ろされる木剣に、自らの木剣の側面で擦り上げるように軌道を反らす。木剣を振り切ってしまった姿勢のエリオットは、無防備な脳天を木剣を振り上げた姿勢のギレーヌの目の前に晒す構図となってしまう。
それを悟ったエリオットは、唐竹をたまらず転がって交わしながら間合いの外に出た。
「動きを止めるな!」
ギレーヌの叱声。息を吐く暇もなく再度打ちかかる。
エリオットによって二度、三度と振るわれる木剣を躱し、三撃目をギレーヌは受け止める。鍔迫り合いになろうかという瞬間、その顔面目掛けて砂利が撒き散らされる。
エリオットが先程地面を転がったとき左手に握り込んでいたのだ。だがそれすら読んでいたかのようにギレーヌは片手で砂利を防ぐと、残った片手で鍔迫り合いの状態からエリオットを吹き飛ばした。
「──ぅぐっ!」
受け身を取れず、うめき声を上げる。
相手が身を起こすのを待たず、ギレーヌが馳せた。
振るう一撃は当然加減している。が、狙いは容赦がない。脳天に振り下ろした剣に、嫌な感触があった。
──ぬるり、と剣の勢いを殺され、流される感触。まだ荒く、不恰好なそれは紛れもなく水神流奥義
無理な体勢と、加減していたとはいえギレーヌの一撃を受け流せるはずもない。だのにエリオットの木剣は驚くほど正確にギレーヌの木剣に絡みつき──反撃に転じられずとも、確かに軌道を逸らしてのけた。
だがギレーヌはそれで動揺することも、重心を崩すこともなく、逸された勢いを殺さず体勢を転じ、掬い上げるような一撃でエリオットの木剣を弾き飛ばした。
「よし、だいたいわかった」
エリオットは終わりの合図に荒い息をついた。
一分に満たない攻防で体力を使い果たしたようだった。
「よく動けている。技も、まだ粗いが年の割にはずいぶんいい。中級剣士なら不意をつければいけるかもしれん」
「……ギレーヌ、あの目潰しは読んでたのか?」
「ん? ああ。地面を転がったあと、左手の握りが甘かっただろう。それに鍔迫り合いになった瞬間妙に軽かったから、それで察した」
一つ一つの技はまだまだ甘い。
同年代のそれよりもひと回り上と言ったところだろう。粗さはあるが、将来性を感じさせる。
だが、その戦略眼は天賦のものだ。
砂利を使った目潰しもそうだが、最後に見せた水神流の技もだ。最初は無理な体勢から成功させたことに驚いたが、だからといってあれほど正確に対応できるはずがない。あれは上段からの打ち下ろしが来ると分かっていたからこその応じ手であった。
それを考えれば、吹き飛ばされたときは受け身を取れなかったのではなく、取らなかった、と考えるのが自然だ。
敢えて体勢を崩し地面に這うことで、上段からの一撃を誘ったのである。
それを咄嗟の判断でやってのけたのだとすれば、歳に見合わぬ胆力と判断力を持ち合わせていると言っていい。
なにより、剣神流との相性も良さそうだ。
「今日はとりあえずここまでだ。暇ができたらあたしに声をかけろ、稽古をつけてやる」
×××
ギレーヌの教えを受け、一年が経つころにはエリオットのギレーヌへの対応もすっかりこなれていた。
公の場でこそ互いの立場に沿った態度を取るが、プライベートな空間では敬語など使わなくなって久しい。
「エリオット! 脚を止めるな! 動き続けろ!」
「おぉッ!」
裂帛の気合と共に、ギレーヌに対する打ち込みを続ける。エリオットの息はほとんど上がりかけ、脚は震えていた。
午後の剣術の鍛錬の前には、重りをつけた木剣を背負って走り込み、そしてその直後に素振りと型をこなし、それからギレーヌとの乱取りへと移行する。
体力を資本とするのは剣術のみならず、どのような武術、兵法でも基本である。故にこそ文句はない。何度か弱音は漏れそうになったが……というか、漏らしたが。
剣の聖地の道場では、聖級に至るまではどこも似たようなものだという。ようやく中級の認可に至ろうかという程度のエリオットならばその待遇は当然だ。
振るった渾身の一撃が、それを更に一段階上回る技でもって返される。衝撃にたまらず尻餅をついたエリオットが、悪態をつきながら立ち上がった。
ギレーヌの技量は圧倒的だ。三大流派最大の勢力を誇る剣神流でも五指に入る実力者であるギレーヌは、ボレアスの擁する剣客でも文句なしの最強である。
弱者は、強者に学ぶものだ。
その技を、その術理を目に焼き付けるのだ。
「わかったか?」
「ああ……」
膝をついたエリオットに、ギレーヌは言葉少なに問いかける。顔を上げたエリオットは決然とした表情で頷いた。
その応酬が幾度か続き、エリオットの膝が笑い始めた頃、ギレーヌは一度乱取りを中断した。訝しむエリオットをよそに、用意した案山子に相対する。
「よし、そこで見ていろ」
ギレーヌは師として優秀だった。彼女の振るう技は、常にエリオットのそれよりも一歩上を行った。エリオットは少しずつ、そして着実に理想の剣に近付いていく。
ギレーヌは感覚派だった。かつてなんとなくで剣を振るい、なんとなくである程度の域まで到達したギレーヌはしかし、そこで行き詰まった。
自分の扱う技術の理論を理解せねば、より高みには登れない。そう師に諭されたギレーヌは、考えを改めた。
合理だ、と彼女の師は口を酸っぱくして言っていた。
武とは、剣とは如何にして対手を効率的に殺傷せしめるか、そこに全てが集約される。
修練場に立てられた案山子。それを補強し、使い古された鎖帷子と古びた鎧を着せる。
中古の鉄剣を括り付けたそれは、アスラ王国正規兵と装備の分では遜色ない。
ギレーヌは先ほどまで振っていた木剣を置くと、何の変哲もない鉄剣を手に取った。長さ、重心ともに極めて普通。鍛造されてすらいない安物の鋳造剣である。
それを二度、三度と振って感覚を確かめると、案山子と向かい合う。──瞬間、ギレーヌの体が奔った。
それは瞬きほどの刹那だった。
白刃が一閃され、袈裟から真っ二つに両断された案山子が、無残な金属音と共に地面に崩れ落ちた。
「これが《光の太刀》だ」
合理だ、とギレーヌは口にした。
このあたしが師の真似事か、と皮肉に思いながら。
踏み込みを、重心の移動を最短、最速、最適に動かし、全身の闘気をこの一閃の為に集約するのだ。
腕も脚も、四肢のいずれかのみに力が偏ることなく、その軌道に一切のブレを無くすことで剣速は光速に至るという。故に《光の太刀》。剣神流上級剣士が振るう《無音の太刀》を凌駕する、文字通り一撃必殺の剣である。
これこそ合理の極致。剣の道を極めた者が振るえば、断てぬ物はないという。
「これがいずれお前が至る場所だ。──お前には才がある、エリオット。腐らせるなよ」
「……応」
エリオットは頷いた。
彼にはその極致が見えていた。
ただ眼前の敵を、一刀のもとに斬って捨てる──
その理念に特化したものこそ剣神流である。
エリオットには知る由もないが、日本で言うところの薩摩示現流が在り方として最も近いかもしれない。
この一年鍛えられたエリオットには、ギレーヌですら感嘆するほどに
生来のものを鍛えられたエリオットは、その成長を加速させ──いずれは稀代の剣士として名を馳せることとなるだろうと、ギレーヌに予感させた。
×××
古めかしく
下々の市民、自らが庇護する領民たちに、為政者としての偉大さを知らしめるならばそれで十分だろう。領民たちが気にするのは雲の上の貴族たちがどのような生活をしているのかではなく、明日の自分たちの生活なのだから。故に為政者の屋敷の威容と、夷狄を防ぎ、討ち払う防壁と精強な兵に感謝と安心を得る。
だが貴族の屋敷は下々の民に武威と威厳を示すためにあらず、他の貴族を招く場でもある。
それがただ頑強さと峻険さのみに重きを置いたものならば、招いた貴族は社交界において武骨者の誹りを受けるだろう。
故に内装、調度品から執事や使用人の教育に至るまで、貴族は惜しまず財を注ぎ込む。それが貴族としての財力と品格を問われるものであるからだ。
城塞都市ロアにおいてもその法則に例外はなく、このロアの町長兼、城主の執務室もまたその中の一つである。
その部屋の主たるフィリップ・ボレアス・グレイラットは、その眠そうに細められた目を落としていた。ウェーブのかかった艶のある茶髪に、細身ながらもすらりと高い身長。結婚前はさぞや貴族の子女に秋波を送られたことだろう美丈夫である。
エリオットの父たるフィリップは、この城塞都市ロアの町長として、政務の一切を取り仕切っている。
長い脚を組んで執務室のソファに腰掛けていたフィリップは、傍目にもわかるほどに上機嫌だった。
フィリップの前の応接テーブルの前に、湯気のたつ紅茶のカップを置いた初老の男性が、控えるように傍に立った。
「ああ、アルフォンス。すまないね」
アルフォンスと呼ばれた白髪混じりの初老の紳士は、ボレアス家に長く仕える執事であり、サウロス、フィリップの信任の最も篤き者である。
「何か、良い報せでもありましたかな?」
「というよりは、面白い報せかな」
主人の珍しい様子に声をかけたアルフォンスに、フィリップは一枚の便箋を手渡した。
紙質は貴族同士の遣り取りに使われるほど高価なものではないが、平民の手が届く範囲ではかなり上質である。封蝋の印こそグレイラット家だが、見覚えのあるボレアスのものではない。ノトス、エウロス、ゼピュロスのものでも無いことから鑑みるに、グレイラット姓を名乗ることを許された傍流の下級貴族だろうか。
差し出し人の欄に在る名前は──
「……おや。パウロ・グレイラット殿ですか」
「ああ。私の従兄弟のあいつさ」
アルフォンスは丸い片眼鏡の位置を調整し、封蝋を開いて内容に目を通した。
よほどフィリップと気安い関係なのか、最低限の形式に則った挨拶から、砕けた文体での本文が続いている。
パウロ・グレイラットはノトス家の先代当主アマラント・ノトス・グレイラットの嫡男であったが、当主との折り合いが悪く、十数年ほど前に出奔したとアルフォンスは聞いていた。
そして、八年ほど前にロアのこの屋敷を訪れ、仕事を斡旋してくれと頭を下げたのだ。
「今度は
「優秀なのはわかりましたが……よろしいのですか?」
アルフォンスは眉根を寄せ、なんとも曖昧に混ぜ返した。
五歳で水聖級を習得した無詠唱魔術師──俄には信じ難いが、とんでもない天才というのも存在するのだろう。それがどれほど凄まじいことなのかは、魔術の素養のないアルフォンスには判別しかねるが。
だが、ノトス現当主の兄を領内で面倒を見ているというだけで厄介事だというのに──その嫡子をロアで住まわせようという判断は、アルフォンスには理解し難い話であった。
もしそれが他家に知られれば、要らぬ邪推を招く事となろう。ノトス現当主ピレモンは人望が薄く、評判もよろしくない。ノトス家に知られたなら、その子を担ぎ上げてノトスの頭をすげ替えようとしていると思われてもおかしくない所業である。
「確かに、毒としても薬としてもとんでもない劇薬だけどね。要は知られなければいいだけの話さ。そもそもパウロがフィットア領にいる事すら、私と父さんしか知らないんだ」
「そう、サウロス様が仰られたのですか?」
「……まあ、そういうことさ。一番乗り気なのは父さんだよ。父さんはパウロを気に入っているからね」
アルフォンスの言葉に、フィリップは苦笑いして肩を竦めた。
「でも聖級魔術師なんて、宮廷魔術師か、王族の守護術師として身を立てられるレベルだよ? 出来るなら、上手いこと囲い込みたいじゃないか」
まあ、うちに来る理由を考えれば望み薄かもしれないけどね、と続ける。
なんでも、彼女はラノア魔法大学へ入学したいらしく、自分とブエナ村の幼馴染の二人分の学費を稼ぐつもりなのだという。
「歳も近いし、エリオットに魔術を教えて貰ってもいいかも知れないね」
「ふむ。最近はエリオットお坊ちゃまも大分落ち着かれた事ですし、それもよろしいでしょうな」
「そら、ここを見てくれよ。『俺の娘に手を出さないよう山猿を見張っておいてくれ』だそうだ」
「なんと、まあ」
親馬鹿ですな、と漏らしたアルフォンスに、フィリップはさも愉快だと言わんばかりに肩を揺らした。
「ああ、愉快だ。──でもまあ、女一人のためにS級冒険者の地位を捨てた奴だ、ある意味当然かもね」
「では、お迎えするという方針で……いつ頃いらっしゃるので?」
「ブエナ村は近いけど、受け入れの準備も諸々含めて……ま、一ヶ月といったところかな」
「畏まりました」
「頼んだよ」
機嫌良くカップに口をつけるフィリップに、アルフォンスは恭しく頭を垂れてその場を辞した。
アルフォンスは多忙である。執事として、即ち使用人たちを束ねる者として屋敷の雑務の一切を取り仕切っているアルフォンスの業務には、無論食客を迎える準備も含まれていた。
「まったく、困ったお方ですな」
フィリップの政治的手腕は主人の贔屓目抜きで非常に高い。ボレアスの当主争いも、年齢というハンデさえ無ければ彼が制していただろうと思わせるほどに。
フィリップは未だにボレアス当主の座を諦めていない。パウロの子とやらも、囲い込むか、あるいは傀儡にするか、大なり小なり利用する心算なのだろう。ノトス直系の嫡子とは劇薬だ。存在をちらつかせるだけでもかなりの反応が見込めるだろう。
並の政治家なら持て余すほどの手札も、フィリップならば使いどきを見誤らず利用するに違いない。故にロアに招くのだろう。
ただ面白がっているだけ、という可能性も捨てきれないのが、フィリップの難物たる所以でもあるのだが。
「どちらにせよ、私は私の役割を果たすだけですな」
ルディ子再登場は次回から