泥沼の騎士 〜TSルディ子を救いたい〜   作:つばゆき

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奇襲

 

 

 草陰に紛れ、唐突に飛び出した短槍が歩哨の顔面を貫くのと、背の高い樹木の枝から飛び降りた影が、曲剣の切先をもう一人の延髄に突き刺すのはほぼ同時だった。

 襲撃を受けた二人の歩哨は、絶命する最後の瞬間まで己を狙う刺客の存在に気づかなかったに違いない。声もなく崩れ落ちた骸が帯びていた得物は、その存在意義を無にしていた。

 相手を一切の反応を許さずに殺したいのならば、狙うべきは心臓か、延髄か、脳だとルイジェルドはエリオットに言い含めていた。肺や肝臓といった臓器も貫けば死は免れないが、絶命するまでのわずかな猶予に叫ばれる可能性もあった。

 

「では、俺は突入する。エリオットはルディアと合流しろ」

「ルイジェルド、派手にやれよ」

 

 言われるまでもないとばかりに槍を一閃し、ルイジェルドは扉を蹴破り、倉庫の中へと消えた。

 直後、中から響いてくる絶叫を聴きながら、エリオットは近づいてくるルディアの足音を聞く。

 

「私たちは裏口から回りましょう」

「わかった」

 

 互いに頷き合い、足音を潜めて素早く建物の裏まで回り込む。

 どれだけ静かに動こうとも、丈の長い雑草は二人の足音を響かせずにはいられない。だが突如の襲撃に気を取られている密輸業者たちは、他の雑音になど気を取られてはいられないはずだ。

 さほど苦もせずに回り込んだ二人は、裏口の扉を前に息を潜め──息せき切って飛び出してきた男を、エリオットの曲剣が袈裟懸けに斬り裂いた。

 

「あぎゃあぁッ!」

 

 土埃と共に無様に転がった骸に躓いた男が、転倒する直前に飛来した岩塊に鳩尾を撃ち抜かれ、胃液を吐き散らしながら悶絶する。

 ルディアの放った岩砲弾(ストーンキャノン)である。

 

「バケモンだッ、に、逃げろぉッ!」

「おいッ、裏口にも回られてるぞ!」

 

 逃げ場を求めて裏口へと詰めかけていた数人が、悲鳴に声を上擦らせる。

 見るからに戦闘員という風体ではない彼らは、子供たちを運送する密輸業者や奴隷商人なのだろう。不意の襲撃に逃げ惑い、裏口から逃げおおせようとした彼らは、第二第三の刺客に浮き足だっていた。

 だが屋敷の中に詰めているはずの用心棒(ごろつき)たちは、正面からのルイジェルドの襲撃に泡を喰って、片端から蹴散らされている。救援は望めないだろう。

 

「エリオット、やっちゃってください」

「──ひッ!?」

 

 地を蹴ったエリオットに肉薄され、密輸人たちが引き攣った悲鳴を上げた直後、その首が刎ね飛ばされる。

 宙を舞った首が地を転がるまで、二閃、三閃と曲剣が空を裂く。喉を引き攣らせながら顔を庇った腕ごと二人目の頸動脈を裂き、返す刃で三人目の胴を薙ぎ払う。残る四人目は踵を返そうとしたその刹那に、眼窩から脳を貫かれて即死した。

 舞う血飛沫と血臭に、ルディアは鼻を摘み顔を顰めた。

 魔物は魔大陸で腐るほど狩ってきたが、人相手はほとんど初めてだ。人型というだけで相応の嫌悪感に駆られてしまうのは、未だ前世の意識を引きずっているからだろうか。

 数人の男たちを瞬く間に斬り伏せたエリオットは、岩砲弾を受けて未だに呻き声を上げる男の背を踏みつける。

 

「ぐゥッ!」

「ルディア、こいつもか?」

 

 なんとはなしに問われた言葉。

 肺の空気を吐き出して苦悶の息を漏らす男を見下ろし、止めを刺すんだよな、と事もなげに問われて、ルディアは数瞬躊躇した。

 

「……ええと、その」

「た……頼む! 見逃してくれ! 金なら幾らでも払う!」

 

 ルディアの躊躇に光明を見出したのか、男は足蹴にされ地に伏せたまま哀願する。

 その必死な目、鬼気迫る形相にルディアはたじろいで、生唾を飲み込んだ。

 

「駄目だ」

「や、やめ──」

 

 見苦しく助けを乞う男にエリオットは目を眇め、曲剣を振り上げた。振り下ろされた刃は首を半ばまで断ち割り頚椎を寸断し、男を即死たらしめる。

 眼球を上転させたまま己を睨め上げる骸の視線に、ルディアは顔を歪め、視線を逸らす。魔物で嗅ぎ慣れたはずの血臭が、今日はいやに鼻につく。

 そのルディアの様子に気付かぬまま、エリオットは骸の衣服で曲剣の血脂を拭い、先を促す。

 

「行くぞ。今のうちに子供達を助けよう」

「そ、そうですね」

 

 エリオットの視界の外で、口元に袖口を当てがい、血臭を吸い込まぬように深呼吸したルディアは、努めて死体を視界に入れないようにエリオットのあとを追った。

 

 

 

 

 

     ×××

 

 

 

 

 

 倉庫の中は惨憺たる有様だった。

 だが建物内部は閉所ゆえに、空気が澱み、むせ返るような血臭が蟠っていたが、同時に薄暗さによって屋外ほどには損壊した骸を正視せずに済んだ。

 

 誘拐した子供を監禁していた部屋は更に暗く、じめじめと湿り、不衛生だった。

 部屋というよりは牢であり、打ち付けられた格子は頑強そのものである。

 エリオットを見張りに立たせたルディアは、鍵を魔術で破壊すると、軋む格子の扉を開けて中に忍び込む。

 牢の前に立った時点で二人を察知していた子供たちは、ルディアが牢に入るや警戒し、歯を剥いて唸り声を上げた。

 

(獣耳とエルフ耳! しかも手錠に全裸監禁だって!?)

 

 ルディアは鼻息が荒くなるのを自覚しながら、拘束を外そうとして──

 

(──あ)

 

 その少年少女たちの有様を見て、思考を急激に冷却させられた。

 子供達の体には、所々に青黒い痣ができ、内出血の症状がある。それは男女関係なく、そして顔面だろうと容赦なく殴りつけられたのだろう、顔が痛々しく腫れ上がっている者もいる。

 あるいは泣き叫ぶところを鞭で打たれたのか、皮膚が裂けていたり、火傷している者もいた。松明を押し付けられたのだろうか。

 駆け寄ろうとして、猫耳の獣族の少女が、まなじりを釣り上げて威嚇してくる。

 

「あ、あ……ええと、『私は味方です。あなたたちを助けにきました』」

 

 敵意はないと両手を上げて示し、獣神語で話しかけると、その少女は目を見開く。

 

「とりあえず、怪我を治して──」

「治癒魔術が使えるニャ!?」

 

 少女はルディアの言葉に反応するや、その手を握り、猛烈な勢いで引っ張っていく。

 

「えっ、ちょ、待って、待ってください! なんですか急に!」

 

 ニャ!? 語尾にニャだと!? と衝撃を受けるルディアに、その少女は目尻に涙を浮かべ、一人の少女の前まで連れていく。

 そこで、ルディアは絶句した。

 その少女は一際重症で、ぴくりとも動かずにごつごつとした冷たい床の上で仰臥している。その口元で髪の一房が微風にそよいでいることから呼吸があるのは確かだが、急を要する容態なのは瞭然だ。

 

「お願いニャ! マリエラを治してあげて欲しいニャ! このままだと死んじゃうニャ!」

「わ、わかりました……! エリオット! きてください!」

 

 牢の外で曲剣を手に油断なく辺りを見回していたエリオットが、呼び掛けに応じて素早く駆け寄ってくる。

 

「私は重症者を見るので、エリオットはこの子を治してください。……君、名前は?」

「ミニトーナニャ。お願いニャ、早く!」

「ミニトーナ。エリオットに怪我を治してもらったら、誰かが来ないか見張っていてください。その間にできるだけのことをやってみます」

 

 猫耳の少女──ミニトーナは、ルディアの指示に決然と頷く。

 ひゅぅひゅぅと浅い息を繰り返す少女に向き直ると、その容態を検める。

 荒れてがさついた肌。顔は腫れ上がっており、青あざが全身のそこかしこにある。そして火傷と、骨折が何箇所か……そして、腹部に青黒い皮下出血。

 折れた肋骨が内臓に刺さったか、あるいは内臓が破裂しているかもしれない。

 

「どうしよう……」

 

 痣や骨折や火傷、それに皮膚が裂けた程度なら、中級治癒魔術でも十二分に治せるだろう。だが内臓破裂ともなれば上級以上の治癒魔術でなくては治癒できない。

 仮に骨が刺さっているなら、中級治癒をかけてしまえば刺さったまま半端に癒着してしまう。

 まずは顔の痣から治癒する。どう見ても腹部の方が優先だが、ルディアにできることはほとんどない。腫れ上がった鼻を治癒して、呼吸しやすくするところからだ。

 

「──エクスヒーリング」

 

 詠唱しなければ使えない自分が恨めしい。

 他の魔術はぽんぽんと使えるのに、なぜ治癒魔術に限って詠唱しなければ使えないのか。

 顔の次は腹部だ。(あばら)は折れているが、折れた先でどうなっているかわからない。ぐい、と患部に触れてみて、少女が鈍い反応しか返さないことに焦りを抱く。

 激痛に悶えてもいいはずなのに。

 複数回に分けて中級治癒を詠唱し、肋の骨折だけを慎重に治す。内臓はそのあとだ。

 治療を始めて数分もすると、他の子供達の治癒を終えたエリオットがそばに寄ってくる。

 

「ルディア、何をしたらいい」

「腕や足の骨折と、火傷の治癒をしてあげてください。手が足りなくて」

「わかった」

 

 額の汗を拭う。

 ルディアは医者ではなく、医療の知識もほとんどない。ただできるのは治癒魔術をかけ続けることだけだ。

 だがルディアの懸命な治療に反し、少女の息はただでさえ浅いのにも関わらず、ゆっくりと間隔が長くなっていく。

 

「すみません。私には、これが限界でした」

「……ニャ」

 

 治療の甲斐なく、少女は息を引き取った。

 ミニトーナの耳も力なく垂れ下がり、子供達の中には啜り泣く声も聞こえる。

 

「ありがとうニャ」

「いえ」

 

 救えなかった悔恨に歯噛みしていると、いつの間にか事を終えていたのだろう、ルイジェルドが牢の外に立っていた。

 

「ルディア、終わったぞ」

「ルイジェルドさん、こちらも終わりました」

「その子は……」

 

 ルイジェルドの視線が跪いたままのルディアの足元に行き、沈鬱そうに眉根が寄せられた。

 歩み寄り、膝を折ったルイジェルドがミニトーナの頭に手を乗せる。

 

「すまなかった。助けるのが遅くなった」

「この子は……」

「できれば連れて帰ってあげたいニャ。故郷で燃やしてあげたいんだニャ」

「わかりました。ルイジェルドさん、お願いできますか?」

「いいだろう」

 

 ルイジェルドは首肯して、体温の失せ始めた少女に毛布を被せ、抱きかかえた。

 他の子供達にはカーテンを切り裂いて簡易な服を着せ、更に余った布を足に巻く。裸足のまま外を動くことはできない。獣族ならあるいは平気かもしれないが、怪我をすれば動きも鈍る。

 

「死体は一箇所に集めてある。ルディア、悪いが燃やしてくれるか」

「了解です」

 

 死体は放っておくとゾンビやスケルトンという魔物に変化してしまう。そのため、埋葬ではなく火葬が一般的である。

 冒険者は野党団の討伐といった依頼を受けたとき、余力があればその骸は燃やすのが一般的である。

 

「助けてくれて、ありがとう」

「うん。よく頑張ったな」

 

 涙を拭った獣族の少女が、おそるおそるエリオットに礼を言っている。

 そのエリオットが鷹揚に声を返し、その足元が僅かにふらついたのを見て、ルディアは慌てて駆けよった。

 

「エリオット、大丈夫ですか? 怪我でも……」

「いや……ちょっと魔力を使いすぎただけだ」

 

 エリオットの魔力総量は決して多くない。

 初級魔術でも数十回も使えば魔力枯渇の症状が出始める。治癒魔術は消費魔力が多いから尚更だ。

 

「ここじゃまだだめですけど、移動したら休憩もとりましょう」

「ごめん」

 

 子供達を倉庫の外まで誘導し、集めてあった死体の山に火魔術を放つ。二、三〇はあろうかという骸を景気よく燃やすには、それなりの火力が必要だ。

 人脂の焼ける匂いがあたりに立ち込め、ルディアは鼻をつまみながら小さく咳き込んだ。

 

「洞窟は避けて街に戻りましょう」

「ほかの密輸人と鉢合わせるかもしれないからか?」

「正解です」

 

 ルイジェルドがいるならば、夜の森も恐れるものではない。周囲を探索しながら進まなくてはならない分洞窟に比べれば速度は落ちるが、ルイジェルドの目は夜の闇も昼間同然に見通すことができる。

 こと夜間の行軍において彼に並ぶものはない。

 だが、その目論見はほんの数十分も歩かぬうちに頓挫した。

 

「ニャー!」

「わあっ!」

 

 ルディアと手を繋いで歩いていたミニトーナが、前触れなく叫び声を上げた。

 

「ど、どうしたの?」

「さっきの建物に、大きな犬がいなかったかニャ!?」

「え? ええと……」

 

 鬼気迫る表情で詰め寄るミニトーナにたじろぐと、先頭を歩いていたルイジェルドが振り返る。

 

「そういえば、いたな」

「にゃー! なんで助けてくれなかったニャ!」

「子供たちのほうが優先だからだ」

 

 ルイジェルドの腕には少女の亡骸が抱かれている。

 それに気圧されて、ミニトーナは言葉を詰まらせる。

 

「ニャ、でも……でも、セイジュウ様の方が大事だニャ!」

「せいじゅうさま?」

「セイジュウ様はいつか現れる救世主を助ける大切な使命を持ってるんだニャ! ドルディアにとっては子供よりも大事なんだニャ……きっと父ちゃんも探してるニャ」

 

 どこか聞き覚えのある話に、ルディアは首を捻る。ボレアスの屋敷で獣族のメイドに聞かされた話だ。

 セイジュウ、即ち聖獣は、生まれて一〇〇年後に現れる救世主の助けとなる使命を持ち、結界の張られた聖樹にて生まれ、成長するのだという。

 

「……わかりました。では私が戻って助けてきますよ」

 

 その言葉に敏感に反応したのはエリオットだった。

 

「なら俺も行く」

「だめです。エリオットは今魔力が枯渇寸前で結構辛いでしょう?」

「でも……」

「大丈夫ですよ。密輸人も用心棒も全滅させたんですから安全なはずです」

 

 それに、とルディアはルイジェルドに視線を向けた。

 ルイジェルドは少女の亡骸を抱えているのだ。その上更に子供たちの護衛もこなすとなれば、万が一というものもある。

 ここで二人揃って引き返すのはあまりに非効率だ。

 

「わかった。すぐに戻れよ」

「じゃあ、行ってきます」

 

 合流の場所を打ち合わせると、ルディアは身を翻す。

 杖も手放した分今のルディアは身軽だ。走ればさほど時間はかからない。そう自嘲しながら、ルディアは夜の森を駆け抜けた。

 

 

 

 

 

 

     ×××

 

 

 

 

 

「いた、聖獣……」

 

 ルイジェルドに詳しい場所を聞いておくんだった、と後悔しながらも、十数分程度の捜索でルディアは聖獣が囚われている部屋を見つけ出した。

 子供たちが監禁されていた部屋と寸法は同じだ。

 その部屋の中央に、成人男性くらいの大きさはあろうかという犬が横になっている。体毛は白く、尻尾が丸くカールしており、つぶらな瞳をしている。だがその犬は頑丈な首輪と鎖に繋げられ、魔法陣の中に囚われている。

 

「でかい豆柴だな、これ……ぁだっ!?」

 

 監禁部屋の牢と同じ要領で鍵を破壊し、部屋に入ると鼻先に鋭い痛みが走った。思わずのけぞって鼻を抑える。知覚した魔力の反応と、一瞬励起した魔法陣から察するに、結界のような作用が働いているのだろう。

 倉庫内を探し回り、苦労して魔力源を断つ。

 豆柴は当初は威嚇し唸り声を上げていたが、鎖と首輪を破壊すると目を瞬き、ぶるぶると全身を振るったあとにルディアに飛びついた。

 

「おお、柴ドリル……って、わわ!」

「わん!」

 

 豆柴、もとい聖獣は、その恵まれた体躯でもってルディアを押し倒し、しきりに顔を舐める。

 

(くそ、かわいいなこいつ……!)

 

 聖獣はルディアの胸元に鼻を埋め、首を傾げると、ふんふんと匂いを嗅ぎ始める。

 

「くうん?」

「えっ、はあっ? ちょっと、そこはアウトですって!」

 

 全身の匂いを嗅いでいた聖獣が、ついにルディアのまたぐらに鼻先を突っ込んだ。スカートではなくショートパンツを履いているため下着に直接というわけではないが、それでも凄まじい格好になる。

 バター犬じゃないんだから、という突っ込みに反応せず、嗅ぐだけ嗅ぐとしきりに首を傾げている。

 なんなんだこのわんこは、と防衛戦を繰り広げていると、騒々しい足音が響く。

 

「──貴様! 聖獣様に何をしているか!」

「へ?」

 

 振り返ると、獣族の戦士然とした男が、鋭い目つきでルディアを睨め付けている。

 どこか見覚えのある容貌──浅黒い肌に、アッシュグレイの髪。どことなく郷愁を感じる外観に、ルディアは動きが僅かに遅れた。

 

「わんちゃん退いてください!」

 

 聖獣をどかし、慌てて立ち上がる。

 だがその動作の遅れはまるで取り戻すことができず、男に先手を譲る形となった。

 胸を反り肺を膨らませるほどに息を吸った男が、片手を口に添え咆哮を放つ。

 立ち上がりかけていたルディアは回避も防御もままならず、それを正面から受けることとなった。

 

(あ、あれ……?)

 

 脳が揺さぶられたような感覚──体に力が入らず、平衡感覚が失われて無様に地面に倒れ込む。

 声に魔力を乗せたのか。魔術の一種なのだろうか?

 

「父上。密輸人と思しき者を一人無力化しました」

「ふむ? ……まだ子供ではないか」

「聖獣様にいやらしい手つきで触れていました。どちらにせよ、ろくな人間ではありますまい。あるいは見た目通りの年齢ではないのやもしれません」

 

 誤解だ! と叫ぼうとして、ルディアは声すら出せなくなっていることに気付いた。

 いやらしく触れられていたのはむしろ己の方なのだ。飼い主ならもっとちゃんと躾けるべきである。だがそう訴えたくともそれが届くことはない。

 魔術も発動できず、抵抗もままならないまま担ぎ上げられる。

 

「子供たちの匂いは儂が追う。お前は聖獣様とその娘を連れて戻れ。儂が戻るまで牢にでも入れておけ」

「は」

 

 




ルディア
 魔物はともかくやっぱり人死にには慣れない。

エリオット
 初めて人を殺したときは結構もやもやしてたし気持ち悪かったけど、今では悪人相手では容赦なし。
 殺す前に躊躇うよりは殺してから悩むタイプ。これはエリオットが脳筋というよりはどちらかというとギレーヌの教え。
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