伊予川三玖という惨めで、情けなく、使い物にならない少女は、この世に産まれて来るべきじゃなかっと私は思っている。
兄さん達のように運動も勉強も出来なくて、お母さんに何も喜ばれるような事が出来なかったし、お父さんにとって大事な娘にもなれなかった。
次第に私は、何で私はこんな出来損ないのまま産まれてきてしまったのだろうと思うようになっていった。
そう思い、家を出て、近くの川沿いにまで行くと、一人の赤い髪の女の子が、川の近くの橋で佇んでいるのを見つけた。
私は彼女を気になり、遠目から彼女を見ていると
「―――ん?何だよそんなじっと見つめて、アタシの顔に何かついてたか?」
「ふぇ!?えっあっえっと……その……」
声を掛けられてしまった。
突然の事だから私は声が出ず、また何時ものようにおどおどと情けない行動に出ようとした。
「あっ……いや、その……別に脅してる訳じゃ…」
知ってます。でも私はそうと分かっていてもこんな反応をしてしまうんです。
「……一緒に川見る?」
「え?」
◁◁◁◀◀◀
「成る程なー、確かにムカつく家族だ。アタシのばーちゃんが知ったら斧持ってわからせにいくだろーな」
「ずっ随分アグレッシブなおばあちゃんなんですね……」
「まーな、それもあってか、今も昔もアタシにとっての一番尊敬できる人はばーちゃんだけなんだ」
「―――そう、なんですか」
私は、どうだろう。今までの人生、尊敬できる人なんていただろうか?
兄さん達も両親も、学校の先生も、学校の子達。それに近所の人達。
どれも私が尊敬できるような人じゃ無かった。
見て見ぬ振りをする人間を、私は尊敬出来なかった。
「……なぁ、お前はそれでいいのか?」
「え?」
「これからもお前は親や兄貴たちにバカにされたままでいーのかよ?アタシはヤダぞ」
「えっあっ……でっでも、私、お母さん達がいないと学校とか、……そっそれに」
「それに?」
「わっ私といると、兄さんみたいに事故に巻き込まれて死んでしまうかもしれないんです」
「―――え?」
しばらく前、私の上の兄が海外の学校へ留学する為に飛行機に乗った際、事故に巻き込まれ死亡してしまった。
それを知った両親は亡くなった兄を哀しむと同時に、私に対しとある言葉を吐いた。
お前がいたから、あいつは死んだと。
何を言っているのか分からなかった。私の所為で兄さんが亡くなった?
そんな事無い、その筈なのに、あの親は全部私の所為にしようとした。
「……何だよソレ、頭可笑しいってレベルじゃねーだろ!」
「そっそう、思ってくれるだけで嬉しいです」
「思うに決まってんだろ!お前は何も悪くねーよ、なのに何で……!」
「……」
「親っにとって子供は大切な宝物だろ…!何でその親が子供を虐めんだよ…!」
……宝物、確かにそうかもしれない。
でも、あの親にとっての宝物は兄達だけで、私はそんな宝物の間に生まれたゴミ。
「―――なぁ、お前って良く此処に来るのか?」
「え?あっまっまぁ…嫌な事があったらこの辺をふらふらと……」
「よし分かった。じゃあこれから何か辛い事があったらさ、必ずアタシの所に来な!」
「え!?いっいやその……え…!?」
「何だかその話聞いてからモヤモヤすんだよなー、それに」
「そっそれに?」
「―――こうやって誰かに本当の私のまま話せるの、嬉しいんだ」
当時の私は、この言葉を理解できていなかったけれど、次第に、私が彼女と過ごしていく内に、この言葉の意味を理解できるようになった。
……本当に、この時は心から嬉しかったんだろう。
その時の私はそれを感じ、小さく頷いた。
すると、彼女は目を光らせながら
「マジ!?よーし!なら今日からアタシらはもう親友だな!」
と言った。きょっ距離を詰めるのが早い……。
「あっえっと……そうですねありがとう御座いますえっと……」
「―――あ、名前言うの忘れてたな。アタシは室星 遊。気軽に遊って読んでくれよな!……あっそういやそっちの名前も聞いてなかった」
「……三玖」
「?」
「いっ伊予川……三玖です」
「そっか、三玖かいい名前だな!」
そう言われると、私は何だか嬉しい気分になった。
それからというもの、私は何か辛い事があると遊ちゃんの所へ行くようになった。(……そういえば何時から遊ちゃんって言うようになったっけ?)
一緒に遊んだり、普段の生活の愚痴を言い合ったり、遊ちゃんの家に遊びに行ったり、毎日が楽しいの連続だった。
――でも、ある日を境に、私は遊ちゃんの所へ行かなくなってしまった。
お父さんからの虐待が酷くなった。来る日も来る日も殴られ、身体のあちこちに青い痣が出来た。
私はそんな今の私を遊ちゃんに見られたくなくて、彼女に会うのをやめてしまった。
そんな時、私の家に一体のうさぎ(?)のお人形がやってきた。
「やぁ、お嬢さん。どうやらお困りみたいだね?どうだい?少しお喋りでもしないかい?」
「……しない」
「おや、随分早いお断り。何か辛いことでもあったのかい?」
人形が喋るという常軌を逸した自体が私の眼の前で起こっているけれど、今の私にはそんな事さえどうでも良く感じてしまった。
「僕の名はキャロット、君にとっても良いニュースを伝えに来たんだ」
先ほどお喋りはしないと断った筈なのに、人形……キャロット(?)は構わず喋り続ける。(何だかヘラヘラしてて怖い……)
「……良いニュース?」
「そうさ、君の願いを一つ叶えてあげると言うこの世で最も良いニュースさ!」
「……願い?」
「そーそー、友達が欲しいだとか、病気を治してほしいとか、色々あるだろ?人間誰しも叶えたい願いはある筈だろ?」
―――叶えたい願い。その言葉を聞いて、私はある日の事を思い出した。
そうだ、確かあの日は遊ちゃんと会わなくなった日の前の日の出来事だった筈。
遊ちゃんを守れるような人になりたい。……でも今の私に、遊ちゃんを守れるような資格はあるのだろうか?
「……」
「―――ふーん、それが君の願いかい?」
「えっ!?あっあの私まだ何も言ってな」
「少し君の思考を見てみたんだよ。成る程ね〜その遊ちゃんって子を守りたいのに、そんな彼女を裏切った自分にそんな資格は無いと考えているんだ〜」
ぜっ全部読まれてる……もしかしてさっき怖いって言ったのも読まれてたの……!?
「えっそんな事考えてたの? いや今さっき発動したからそれについては初耳何だけど、えっそんな事考えてたの?」
「そっそんな事考えてました……」
「……まぁ良いや、流石に回想で引き延ばすのは流石に悪手過ぎるし、本題に入るよ。君の願いを一つ叶えると言ったけど、それには一つ受け入れて欲しい事があるんだ」
受け入れて欲しい事。キャロット曰く、願いを叶える代償として、これから先魔法少女となって『異端』と戦わなければいけないとの事だった。
戦うという言葉を聞いて私は怖気付いてしまったが、彼のある一言で私は魔法少女になる事を決めた。
「分かったよ伊予川三玖。君の願いはさっき言った通りで良いね?」
「―――うん」
「分かった。君の願いを承認しよう」
「―――後悔しないね?」
「しません」
◀◁□◇▲■◀◁
「今思うと、後先考えない願いだったよね」
「うん。でも後悔はないよ」
「……そうだね、遊ちゃんとも再会出来たし、理代さん達にも会えた」
―――コイツ硬いネ!全然聞いてなイ!
―――三玖!? どうしたんだ!? おい!
「でも、私がやった事の所為で、遊ちゃんも私も絶望化しちゃった」
「皆を巻き込んで、危険に晒しちゃった」
―――伊予川さん!伊予川さん!
―――火憐ちゃん危ない!避けて!
「こんな盾じゃ守りたいものも守れ無いよね」
「……そうだね」
「結局私は、役に立たないままだったね。遊ちゃんや理代さんに頼りっぱなしで、何も成長しなかったね」
「……本当は、あの日篠目さんにそれを相談したかったんだ」
「変な嫉妬で陥れようとしたのに?」
「後悔してるよ。ちゃんと話してみて、悪い人じゃないって分かったもん。初めて異性の人と話して楽しいと思えたのが篠目さんで良かったよ」
「でもあの人何だか気持ち悪かったよ」
「まっまぁ……今背負ってる時も手の絡め方が変だったりしたけど……」
―――川
「あの人の側にいると、初めて遊ちゃんと会った日の事を思い出すんだ」
―――予川
「あーあ、もっと話したかったなぁ……遊ちゃんや理代さん達、そしてあの人と……」
――伊予川
「でももう無理だよ。私じゃあんなの……」
―――伊予川!!
「……? 篠目さん?」
―――大丈夫だ!お前ならやれる!!お前のその盾ならどんな物だって守り続けられる筈だ!!
「ッ……!でっでも!無理ですよ!私なんかじゃ皆さんを守る事何て出来ません!それに……これは全部私の所為なんです!私の所為でこんな事に……!」
「そう、全部私の所為。今まで積み上げた物を蹴飛ばして、大勢を死地へ招いた。全部私の所為でね」
――そんな事ない!……って伊予川の声……? 何処からだ……
?
――ばかむ!何ボソボソ言ってるのよ!!アンタも手伝いなさい!
――ばかむ言うな悪霊!!今僕は伊予川と話してるんだ!!
「篠目さん……!」
「―――どうして彼は、こんなにも私を気に掛けるの? こんな状況でさえ、私を……」
―――決まってんだろ。
――僕は『相談役』だぜ?
「―――だから、伊予川……いや、三玖。お前ならできる。僕の勘がそう言ってるんだ!!」
「……!!」
「……分からない、やっぱり分からないよ。何でそこまでして私なんかを期待するの?」
「……私にも分からないよ。でもね」
「何だか彼といると、心が落ち着くんだ。貴女もそうでしょ?」
「……うん、落ち着くよ。だって」
「貴女は私」
「私は貴女」
「ね、また一つになろうよ。そして、篠目さん達を守ろう」
「―――うん、一つになろう。だって、私の盾なら何だって守れるんだから」
◀◁◀◁◀◁
「絶対無敵シールド!!」
「うおっ!?」
突然三玖が僕の背中の上で意識を失いどうしたもんかと考えていると、突然僕等の周りに先程よりも広い円状のバリアが現れだした。
そのバリアは劣勢になり始めた為一箇所に固まることにした僕等を囲むかのように広がっていた。
「なっ何!?何か広がった!?」
「伊予川さん!!目覚めたんだ!ってこのバリア何!?」
「まっまた攻撃が来ました!!」
マジか!?あの『異端』、今まで戦ってきた個体より攻撃面も耐久面においても優れている上に、駆け付けてきた八人の攻撃も碌に効いていなかった。
と言うか一撃が重すぎる。
眼の前にまたもや『異端』の手が振り下ろされる。
「―――そんな攻撃、効きません!!」
三玖がそう一言言うと、振り下ろされた筈の『異端』の腕が、弾き飛ばされた。
「想いの力は無限大なんです。私の攻撃は絶対に破れません!」
「篠目さんや皆さんを必ず守ります!!」
「三玖……!」
「篠目さん、私を背負ってあの『異端』に近づいて下さい!このバリアならアレを倒せるかも知れません!パンチしてやって下さい!」
「はい!?」
何無茶言い張るんすか三玖はん!?いやいやいや、幾らこのバリアが頑丈だとしても、それが何時まで耐えられるか分からないだろ!?それにアレに近づくなら僕以外はそのバリアに入れない気が……?
「安心しなさい、私達を見くびってもらっては困るわ。私達で『異端』の攻撃をこっちに向ける。その内に一発かましなさい」
「枯羅統……!」
「感謝しなさいよ。アンタならやれる」
アンタがその娘に期待してるなら、私達も同じ様に期待させてもらうわ。と、枯羅統は微笑みながら言った。
「伊予川さんならやれる筈よ。頑張って!!」
「私達も全力で御守りするよ!!いこ!水樹ちゃん!」
「うっうん!伊予川さん、頑張って!」
「まっ守ってくださってありがとうございます……!この恩しっかり返します!」
「オーホッホッホ!後輩が頑張ってるんですのよ?私も先輩としてしっかり見守ってますわ!」
「魔法少女としてならウチらの方が後輩ネ、でも伊予川さン!ウチらにお任せネ!」
「――頑張って」
駆け付けてきてくれた七人も、伊予川の事を応援してくれている。(キャラ濃いなこの娘ら)……何弱気になってんだよ僕は、三玖なら大丈夫だと言ったのは僕だろうに。
三玖だって僕の事を期待してくれているんだ。
その期待に、応えなきゃな。
「しっかり捕まってなさい!!」
枯羅統が僕と三玖を『異端』の間近くまで謎の技量で跳ね飛ばした。
あの時以来の『異端』との戦闘だ。でも、今はあの時とは違う。
「行けるよな!!三玖!」
「はっはい!!」
気付けば、『異端』の目の前であった。
それに気づいたのか、『異端』は何度も僕等に攻撃してくるが、バリアによって防がれる。
当たり前だ。三玖の盾が、お前みたいな奴の攻撃を通すわけ無いだろ?
今まで手こずられてくれた分、しっかりお返しするぜ。
グローブの一撃が、『異端』に重くのしかかる。
「ふーん。心配になって行ってみたケド、育ててた真っ白ちゃんを倒しちゃうなんてネ」
「まぁいっか。てゆーか神子の奴、何処にいるか分からないんですケド」
「二人も痺れ切らしてるし、仕方ない、この私が直々迎えに行くとするカ」
「……あの白髪も気になるけどネ」
気付けば回想シーンだけで二千文字超えてて笑う。
展開的に次々回辺りで区切りが付くかもしれません。
と言うかこの話しだけで何ヶ月かかっとるんだ。
一章最終話間近ですがここまでで歩君にどんな印象を感じました?
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