「容赦しない……か、変わっちゃったねしほちゃん」
「なんの事? 私は元からこんな性格よ? 変わってなんていないわ」
数時間前、歩達がアクターとの戦闘を始める少し前の出来事。
神子のワープにより理代の下へと辿り着いたしほは、旧友との再会に懐かしみを覚えることはなく、ただただ目の前にいる敵をひたすら睨み続けた。
「そっかぁ、私の思い違いだったんだ。良かったぁ変わってなくて、私のカワイイしほちゃんでいてくれたんだ」
「……埒が明かないわね、良いから早く、理代を返しなさい」
話の通じないミツルを相手に、しほは次第に怒りを隠せなくなってきた。
当時はお互いに困ったことがあれば何でも相談することの出来る親友だったのだが、今はそれどころか、話の通じない別の何かと言っても良い程になっていた。
そもそも、当時のミツルはしほの事をしほちゃんなんて呼んでいなかった。
「えーやだよ。私まだしほちゃんと話足りないもん。それに、この娘を返したら直ぐにでも此処を出てく気でしょ? そんなの認めないよ、もっとお話しようよ」
常に自分のペースを崩さないミツルであったが、しほと出会ってからはどこか落ち着きが無い、そもそも彼女の目的が分からない以上、しほも理代もまともに動くことはできないだろう。
ミツルの異常性を理代は間近で体験している。だから、彼女がこの状況で突然自分を殺してもおかしくは無い、そう理代は―――
落下しながら考えていたのだった。
「って、何で落ちながら自分だけの世界に入ってるにゃー!?」
「やれやれ……元から変な人だと思ってたけど、例の彼女と会うとここまで周りが見えなくなるとはね」
「分析してる場合!? 良いから早く着地用の固有魔法使ってよ!」
「む、それ系なら仙華のを使ったほうが手っ取り早いだろ?」
「あれは発動条件に上手く当てはめないと不発になるから、出す前に落ちてペチン!! だよ!」
「へぇ、随分面倒くさい能力だこと……」
「だからヒメのを使ってって言ってるにゃー!!」
各々が現状に違う考えを持ち、段々と地面に付きかけている中、理代は自身が魔法少女になっていないのを思い出した。
魔法少女の姿なら、この位の距離から落ちたとしてもしばらくの間激痛が走る程度で済むが、今の姿じゃ、済むなんて言ってられない。
間違いなく死ぬ、理代はそう確信し、途端に身体が恐怖を覚えだした。
「……ッ! 理代! 何で魔法少女に―――」
「あれ、しほちゃん今気づいたんだ。タイミング悪いねーそんなに私に夢中だったの?」
「……後にして、今は理代を無事にするのが最優先よ!」
しほが空中で槍を理代に向かって投げ、投げられた槍を掴み理代に近づいた。
「言ってる意味がよく分からない」
「まぁつまり投げた槍を掴んで一気におねえさんの近くまで行ったって事だね」
「余計に分からないんだけど」
理代の近くまでよったしほは、理代の服の何処かにマインドハートがあると思い、理代の全身を探した。そして何とか彼女の右ポケットからマインドハートを見つけ出し、理代に差し出した。
「しほ先輩、ありがとうございます!」
「礼は良いわ、とにかく着地するわよ」
「え? でっでもどうやって――――」
「こうやるのよ」
そう言うとしほは槍を地面に向けた。
理代はその時、ある事を察したのであった。
「しっしほ先輩まさか……」
「しっかり掴まってなさい」
槍を突き刺して地面に当たらないようにしようとしている。
地に当たらなければ良い理論を投げ出したしほに対し、理代はもう受け入れるしか無かった。
「おーあっちはもう着地体制に入ってるね」
「感心してないで、早く魔法使ってよ」
「……もう、分かったよ。ヒメったらごうじょー」
しほと理代は槍を突き刺し無事地上へ、姫と仙華、そしてミツルは仙華の持つ“固有魔法”でそのまま着地した。
「―――さて、話の続き始めよっか」
地上に降りて一番に話しだしたのはミツルだった。
そのまましほ達の前に近づきだしたので、しほは警戒体制を強め、理代は今この状況で理代自身が一番ベストだと考えうる散弾銃をミツルに向けた。
「折角地上に来たんだよ? もう安全圏なんかないし、そっちもこっちも大戦争。あっちでドンパチやってる神子のとこと合同に殺りやっても良いんだよ?」
「……遠慮しておくわ、けど」
理代は明日奈達と合流しなさいと、しほはミツルに近づきながら理代にそう伝えたのであった。
この状況で狙われているのは自分だが、しほがやろうとしている事が何なのか、理代は気づき、言われるがまま走った。
「―――まさか」
そう、しほは一人で三人を相手する道を選んだのだ。
「いいの?私はともかくあの”二人“は相当強いよ。しほちゃんじゃ敵わないと思うよ?」
「……どうかしらね」
しほは息を深く吸い、吐いた。その目に映るのは敵のみ、今の自分にできることは、仲間にとって害になるかもしれない存在を一早く排除する事。
たとえそれが昔の親友でも構わない。ただ、仲間の幸せを邪魔しようものなら。
「一人残らず、叩きのめす」
「――はぁ、はぁ……!」
無我夢中で走り続けた。ここまでくればあの娘達もこない筈。
それでも無事とはまだ限らないし、もしかしたら既に追いつかれてるかも……。
でも、しほ先輩の意思を無駄にしちゃ駄目だ。
一刻も早く明日奈ちゃん達と合流しないと……!
「にしても、何だか遠すぎるような……?」
遊園地のアトラクションらしき物は目の前に見えている筈なのに、近づいてない気がする。
―――まさか、またあの娘が……?
「……」
一先ず、スナイパーライフルを出してみる事にした。
もしかしたら彼女が近くで隠れてるかも知れない、前回はそうだった。
それに、枯羅統さんが言うには、「ぶった切ったら消えたわ、刺激を与えれば能力が崩れるって所かしらね」との事。
どこでも良い……という訳にはいかないだろうけど、やってみなきゃ分からない。
私はゆっくりと引き金を引いた。
弾は飛び出して直ぐ、空中に止まった。
それと同時に辺りが歪みだし、本来の光景が私の目の前に広がった。
「……!?」
辺りには、仮面を被った少女達が倒れていた。
「なっなにこ―――「理代ちゃん危ない!」」
突然、私は誰かに腕を引っ張られ、宙に飛んだ。
何が起きたか分からなかったけど、脳の理解が追いつくと、私を掴んだのが明日奈ちゃんだと分かった。
「あっ明日奈ちゃんこれは―――!?」
「説明は後! 早く逃げるよ!」
私にそう答えを返す明日奈ちゃんの顔は、普段の彼女からは思えない程の焦り様だった。
「やっぱり、あの時仕留めておいた方が良かったんだ……! ななしー先輩の言った事が正しかった!」
「明日奈ちゃん落ち着いて! 他の皆はどうしたの……!?」
「……とがー先輩とにぼにぼは、あゆむん達を助けにわざと
「……遊ちゃんと三玖ちゃんは?」
「―――二人は」
その時だった。
明日奈ちゃんが言葉を発するのと同時に、また景色が変わった。
それが原因となったのか、明日奈ちゃんは平衡感覚を見失い、そのまま私達は地面に落下した。
見上げると、『御園 神子』がそこに立っていた。
「はい、鬼ごっこはもうおしまいだよ。赤いおねーさんとちっちゃい娘はもう捕まえたから、今ここで私が二人に触ったら、ゲームオーバーだね」
「――二人に何をしたの?」
「何って……送ってあげただけだよ? とっても良いところにね。以外と大変だったんだよー? あのバリア、モヤモヤを跳ね返しちゃったんだから」
「だからね、バリアが消えるほんの一瞬を狙ったの。そこでまずはちっちゃい娘を狙って、そのあと赤いおねーさんを送ってあげたんだよ〜」
「……送ったって、どこに?」
「秘密、まぁ行けば分かるよ?」
あの時とは違う彼女の表情。
笑っている筈なのにどこか不気味な感じ。
そんな彼女の気迫に、私は怖気づいてしまった。
「言う事さえ聞いてくれれば酷い事はしないからさ〜ね? 私について来なよ〜」
「……一つ聞いても良い?」
「……? 何?」
「私が貴方達について行ったら、他の皆を傷つけないって約束できる?」
私がそう問いかけると、彼女は考える素振りをしだした。
そして、しばらく経ってから、
「さぁ? 私は良いけど、どうせ仙華ちゃん辺りがダメって言うと思うからさー」と答えた。
その答えが聞きたかった。彼女達の組織の事はあまり知らないし、その目的が魔法少女にとって希望になるのなら乗ってもよかった。
けど、そんな事は無かった。
彼女達の強引で身勝手な行動を私は肯定したくない。
「悪いけど、私は貴方達の仲間にはならないよ」
その答えに彼女は、御園神子は驚いた顔を一瞬だけした。
「……交渉決裂ってやつ? じゃあサブプランの強制送還を―――」
「それも」
……断らせてもらうよ。
「!? テーザーじゅ」
その時だった。
突然遠くの方から鼓膜に響く程の爆音が響いた。
銃口が振れで狙いが定まらなくなり、結果的にテーザー銃による攻撃は当たらなかった。
……けど、彼女も揺れに耐えきれなかったみたい。足をついてへたり込んでる。
狙うなら今しかない、まだ一発分残ってるんだ。
私は彼女に向かって発砲を―――――?
「……相打ちってところかな?」
「―――! 一体何時から……!」
「早技は得意分野なんだよ〜だからこう……ぱぱって感じに仕組めば、あらびっくり! 種を仕掛けも誰にも分からない状況よ完成〜!」
弾が、撃てなかった。装弾数は足りてた筈、それなのに出てきたのは空弾。彼女は傷一つ付かず、嘲笑った。
「アハハハハ〜! ……はぁ、さて私もう行くね。お姉さんの勝ちでも良いよ? このまま続けても負けるのは私の方だし」
私はアクターちゃんの様子でも観に行ってくるよと、彼女は先程の表情からは考えられないほどの冷たい声で私に告げた。
納得がいかない。あのまま続けていたら負けていた? 違う、あのままこの戦闘を続けていたら、負けていたのは彼女じゃなく私の方だ。
彼女の固有魔法を見抜けないままで、友達を全員連れて行かれた。
……何も、勝てている所は無かった。
「待って―――!」
彼女に向かって伸びる手は、掴むには程遠い。このまま逃がせばまた被害が出る。
そう考えている内に、彼女はまたモヤを発現させ、その中に―――
「―――ん? ヘブぅ!?」
「……え?」
「みっけ、アンタでしょ? あの時裏山に幻覚を張ったのは」
「〜〜〜〜ハッ! だっ誰!? 私は確かにアクターちゃんの方に座標を合わせたのに!?」
「アクター? ……あぁ、あの自爆した奴? 安心しなさい、首をトンとしてあげただけだから」
中から出てきたのは、枯羅統さんだった。
「枯羅統さん……! あっ歩君達は―――!」
「無事……とは言い難いけど、皆生きてるわ。私が来る前にあの娘達がアイツを弱らせてくれたみたいだし」
「……アクターちゃんが負けたの?」
仲間が負けたのを聞いて驚いたのか、彼女の顔は先程までの明るい顔とは違って、明確に暗い顔をしていた。
……少なくとも一人は取り押さえられたんだ。彼女としても仲間が負けたのは信じたくないだろう。
「さ、アンタも投降しなさい。大人しくしてれば痛めつけはしなおわよ?」
「……あの、枯羅統さん。実はしほ先輩が―――」
「……? あの娘がどうかしたの?」
「それが――――「あの人ならもう片付けたよ」」
突然、声と共に黒いモヤがまた私達の前に現れた。
中から出てきたのは、さっきまで私を監禁してた『薙姫』だった。
「少々てこづったけれど……まぁ黙らせる事には成功したんでね。二人の戦闘に割って入って強制的に止めさせてもらったよ」
「―――! しほ先輩に何をしたの!」
「実物を見た方が早いんじゃないかな」
そう言うと彼女はモヤを再び出し、中からしほ先輩を取り出した。
しほ先輩の片腕が無くなっていた。
「――――!」
「これぐらいいくらでも治せるからね……マインドハートを破壊しなかっただけ温情を思ってほしいよ」
「でも〜片手を切るぐらいまでしないと止められなかったんでしょ〜? 三人がかりでも無理とかヒメちゃん弱くなったんじゃなーい?」
「……顎蹴られて捕まりそうになってるキミが言う事かい?」
「私は仕事したもん! 三人共送ってあげたんだよ、何なら私が一番仕事したと思うけどなー」
「……はぁ、まぁいいか。撤収するよ、ここももうすぐ消えそうだし、アクター達を引っ張って拠点に帰ろう」
帰ろうする彼女達に、私は居ても立ってもいられなくなった。
誰か一人でも捕まえないと、何も成し遂げないまま、失っただけで終わる。そう私は考えた。
けど、枯羅統さんが私の肩を掴み、それを止めた。
「貴女の気持ちも分かるわ。けど、今貴女が動いてもアイツ等は止められないわ、最悪貴女が連れてかれる可能性があるわよ」
「けど……!」
「歩もアイツの妹も他の三人も無事よ。しほも片腕こそ無いけどここにいる。……ここで貴女が動いて連れてかれたら、同じ事の繰り返しよ」
「……ッ」
そうだ。元々今回は私の個人的な行動でこんな事態にまで発展したんだ。
私があのまま勝手に行動せずにいれば、皆の負担を減らせた。
ここでまた私が行けば、歩君も、しほ先輩も……皆だって。
「……だから、今は止めなさい」
引き金を引きかけた右腕を降ろし、私は逃げる彼女達を見逃した。
徐々に裏世界が消え始め、元々あった廃れた遊園地が目の前に広がった。
しばらくすると、とがめ先輩達が歩君達を連れて私達と合流した。
奏ちゃんも五十鈴ちゃんも無事だったが、歩君はあの時の爆発での怪我が尋常ではなく、気絶していたままだった。
奏ちゃんは自分のせいだと自分で自分を責めていたが、そんな事ない。
奏ちゃんは何も悪くないよ。
―――けど、
私は何ができた?
一章最終話間近ですがここまでで歩君にどんな印象を感じました?
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おー……ええやん
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影薄過ぎない?
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ロリコン
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今からでも理代ちゃんに主役の座よこせ
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ヤンデレに×××されろ