魔法少女の相談役始めました   作:チョコーン

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本 当 に す み ま せ ん で し た

本 編 は 大 増 量 10000 弱 文 字 で す


ウィッチ ザ ヘイト6

 「……上手く、いった?」

 

「なんとかね……でも、油断は禁物よ」

 

二人の『絶望化』は恐らく解除された。

……けれど、まだ終わってない。残った三玖ちゃんをどうにかしないと、取り返したなんて言えない。

倒れた二人は回収した。このまま連れ帰られてやり直しになんてなったら元も子もない。

 

「距離は十分……後はバリアの解除を待つだけ……!」

 

現在、三玖ちゃんがしている行動は、『盾を構える』→『バリア発動』→『バリア解除』→『盾を構える』の繰り返し。

バリアの解除まで数秒かかるが、解除から再発動の間は無防備の状態になっている。

 

だからこの間に、攻撃を当てられれば、三玖ちゃんも助けられるかもしれない。

念には念を入れ、弾速の早いライフルを選んだ。

1フレームも見逃さないように、スコープを睨む。

 

「……ん?」

 

――スコープの先にいる三玖ちゃんは、未だに守りを固めていた。

しかし、とある違和感を感じた。

それは、彼女の『盾』だった。

以前までのあの盾は、少し大きいだけで、いたって普通な盾だった。

けれど今その盾は、見るからに元の形から変えられていた。

 

「あんな形じゃなかった筈……」

 

バリアが薄まるにつれ、盾の前部分が変形し始めた。

そして、その中から、大砲のような形のものが、粒子を帯びながら現れた。

 

「理代先輩!! 逃げてくださ――!」

 

狙いは既に私に向けられていた。

奏ちゃんの声も虚しく、粒子を帯びた光線は発射された。

 

守る態勢をとったとしても、無事じゃすまない程の威力。あんなものをまともにくらったら、魔法少女の身体であっても無事で済まない。

 

間に合わない。そう心の中で感じながら、目の前に広がる粒子の集まりを、私はただ眺めていた。

 

 

 

 

何も見えなくなった。暗い暗い視界の中で、一つの光が輝いていた。

それをよく見ようと近づくと、光は次第に大きくなった。

そして、底の見えない暗闇は、光に包まれた。

 

「……え?」

 

気づかぬうちに閉じていた瞼を開くと、光線が私の真上を通っていった。

確実に当たる距離や角度ではあった筈だけれど、ほんのギリギリ、私に当たらず、次第に光線は縮んで消え去った。

 

「な、何で……? 今、確実に……」

 

「理代! 大丈夫!?」

 

しほ先輩が駆けつけ、私を担いで安全な所に避難させようとした。

彼女に担がれていく中、周囲を見渡すと、周りに合った岩や足場が浮き始め、形を変えていった。

 

周囲だけでなく見えない範囲からの足場もこちらに降り注ぎ、私達の道を防ごうとする。

 

さっき、三玖ちゃんの攻撃が当たらなかったのは、これが原因だろう。

 

改めて彼女の方を見る。足場既に空中にあり、三玖ちゃんも『絶望化』状態にあるとはいえ、同様を隠せてはいなかった。

 

「あんな所まで……どうやっていけば」

 

「なんとか乗り移っていくしかなさそうね」

 

と、三玖ちゃんの元へと向かえる足場を探していると、上空から叫び声が聞こえてきた。

 

上を見上げると、降り注ぐ足場の上に掴まりながら絶叫している歩君がいた。

 

……歩君!? なっ何で足場に!? まっまさかここに来る道中で足場が浮き始めてここに来ちゃったの!?

 

 

「歩くーん!! 大丈夫!?」

 

「りっ理代ぉ!! 助けっ助けて!! この足場思ったより不安定で……っ! 少しでも気を抜いたら振り落とされる!!」

 

「ちょっと待ってて!! 今助けるから!!」

 

幸いにも近くにちょうどいい距離の足場が見つかった為、飛び移りながら歩君の近くにまで辿り着いた。

……けど、さっきよりも動きが活発になってる気がする。

このままじゃ歩君が振り落とされちゃう……!

 

同じく足場を乗り継いでいるしほ先輩も、バランスを保つのが難しくなり、足を踏み外しそうになっていた。

 

「あと少しなのに……!」

 

無理に動けば足場に激突して落下してしまうかも知れない。

かと言ってここで立ち止まっていれば、遠くから私達を伺ってる三玖ちゃんに攻撃されかねない。

 

どうにか策を練って歩君を助け出そうと考えていると、突然下から私達を呼ぶ奏ちゃんの声が聞こえた。

 

「たっ大変です! 明日奈先輩と遊先輩が目覚めてそっちに……!」

 

「えっ!?」

「なんですって……!?」

 

下を見ると、二人の攻撃をくらったのか、奏ちゃんがボロボロになりながらこちらに来ていた。

恐らく、二人を止めようとしたのだろう。

けれど暴走中の彼女達は止まること知らず、奏ちゃんの制止も虚しく、目的を果たそうとしているのだろう。

 

そう考えては見たけれど、一番気になったのはそこではなく、あれ程までの攻撃をくらっても尚、二人は何事もなかったかの様に動いている事だった。

 

「それどころか回復してるみたいね……一体、二人にどんな細工をしたの……!」

 

「細工……?」

 

「心当たりはあるわ。事が落ち着いたらしっかり説明するから、今は二人をまた止めるのを最優先にして!」

 

「でもそれじゃあ歩君が……」

 

見ると既に歩君は既に気絶しかけていた。

このまま放置していたら何時落下しかても遅くない。

しほ先輩は再度考え出し、この状況をどうにかしようと模索している。

すると突然、何かが私達を横切り、歩君の前に立った。

 

明日奈ちゃんだ。明日奈ちゃんが横切ったんだ。

現状何もできない歩君に狙いを定めた彼女は、ただ彼を眺め続けている。

 

止める声も今の彼女には聞こえない。急いで向かおうとするものの、遠くの足場から遊ちゃんがこちらに来ようとして来るのが見えた。

 

それに気付いたしほ先輩は、真っ先に歩君の側に近寄ろうとする。が、運動神経の高い遊ちゃんは、アクロバティックに足場を行き来し、一瞬の内にしほ先輩に攻撃を仕掛けた。

 

「ぐぅッ……!」

 

槍で攻撃を受け止めたものの、この不安定な足場の中、有利にとれている遊ちゃんの攻撃は止まない。寧ろ彼女の攻撃に押され、しほ先輩が足場を踏み外しそうになっている。

 

「ッ……!? しまっ……!」

 

止まない攻撃の中、遂にしほ先輩はバランスを崩してしまった。

暴走する遊ちゃんにとって、この状況は絶好のチャンスでしか無かった。

 

叫ぶ声も届かない。ただ目の前にあるモノを全て散らそうとする彼女に、あの時の様な呼び掛けはもう効かなかった。

――そして、それと同時に。

 

「うッ……? あれ? 僕気絶して――」

 

気絶していた歩君が目覚め、彼を眺める明日奈ちゃんの手が動き出した。

 

「待って!! 止めてぇ!!」

 

身体が勝手に動いた。無防備な彼を守ろうと思ったからなのか、身体が無意識の内に行動を始めた。

この距離では届かない。そう理解していながらも、目の前で起こる現実を否定したいと感じたから。

 

「あゆむく―――」

 

彼女の持つ大剣が、遂に振り下ろされた――――。

 

 

 

 

 


 

目が覚めた時には既に、明日奈の大剣が僕に向かって振り下ろされていた。

脳は働いてはいるが、身体が醒めてないからか、身動き出来ない。

ふと目を閉じる。人間危険な時は視界を遮断する事で身を守ると何処かで聞いた。(眼瞼閉鎖反射って言うらしいよ)

 

今回ばかりは避けようにも避けきれない為、流石に終わったか? と僕も感じたが、いつまで経っても意識が消えない。

ふと頭を触る。切られた形跡も、その上にある筈の鉄の感触も感じない。

 

違和感を感じ目を開く。すると、明日奈が、僕に向かって大剣を振り下ろす直前で手を止めていた。

 

何が何だか分からず、気の抜けた声が出た。

遠くに見えた理代も、何が起こっているのか理解できていない様だった。

しばらくして、明日奈が口を開く。

 

 

「―――あ、あゆむ……ん」

 

「明日奈……!? 明日奈何だよな!? 何でまたその姿に……」

 

「わかんない……気付いたらまたこの姿になってたの……」

 

「気づいたらって……」

 

「頭が……さっきからズキズキするの。私が私じゃ無くなっちゃう様な……変な感覚」

 

今の明日奈は、以前の『絶望化』時の姿と瓜二つ。

しかし以前と違って、感情の高ぶりや特有の目や口が無くなる現象は起こっていない。

 

「明日奈……ちゃん?」

 

「理代ちゃん……無事だったんだね」

 

「大丈夫なの? 意識は戻ったみたいだけど……」

 

「まだちょっとぼんやりしてるけど……さっきまでみたいに身体の自由が効かないって程じゃ無いかな」

 

返事を効いて、理代の顔に安堵の表情が浮かび上がった。

僕が合流する前に彼女達と戦り合ってたのだろうか。

しばらくすると近くの足場から、しほ先輩が遊を肩に抱きながらこちらに来た。

 

「明日奈……! 貴女も戻ったのね」

 

「しほ先輩!! ゆーゆん!!」

 

「へへっ……なんだ、明日奈も戻ってたんだな。これで安心だな……」

 

「あまり喋らないの。あんな無理な戦い方して……魔力を消耗し過ぎよ」

 

「わりーわりー……はぁ、ちょっと疲れたな。頭がガンガンするぜ」

 

「全く……それにしても、どうして急に元に?」

 

明日奈と遊はしほ先輩の質問に、少し悩みながらも互いに顔を合わせ、自分達の身に何があったのかを語りだした。

 

気づいたら見知らぬ館にいた事。

自分達の魔具とマインドハートにとある細工をされた事。

あるビデオを観させられた事……。

 

話が進むに連れ、しほ先輩はしかめっ面を表に出すようになった。

 

「……本当に、何を考えているのかしら」

 

「アタシらも断片的にしか聞いてねぇけど……何か、救済がなんだとか言ってたぜ」

 

「魔法少女がこの先、生きていく為に……だとかも言ってたよ」

 

何だそりゃ。救済だとか言い出したら怪しさ満点だわ。と言うかあの娘達、あの年でそんなスケールのデカいこと言ってんの?

もうお兄さん怖いよ、最近の小中学生頭良過ぎだよ。

 

「でも……その救済に必要なのが『絶望化』って事なの? そんなの可笑しいよ。誰かの心を傷つけて、精神的に追い詰めることが救済だなんて……」

 

現状『x-masc』の連中が何を目的としているのかを僕らは理解できていない。

そもそも本当に救済が目的なら、わざわざ理代や奏を誘拐する筈がない。となると別の目的があるのだろう。

頭の中で考えを巡らせると、ある言葉を思い出した。

 

――あっあの娘は……! 私達にとっての希望なのよ! だから、止めるなんてしちゃ駄目!

 

人と『異端』を融合させた『絶望化』。もしやあれが、彼女達の望む救済なのだろうか。

 

「――あのさ」

 

もし二人も奏の様に、『異端』と融合させられていたのだとしたら……そう考えた僕は、二人に確認を取ろうとした―――

 

 

 

―――が。

 

「……っ!? みんな伏せてッ!!」

 

突然、光線が僕らを横切った。

 

「今の、三玖ちゃんの……!」

 

「えっ……!? まさか三玖も同じ姿に……?」

 

僕の問いかけに、しほ先輩は軽く頷き、三玖のいる方向を見続けた。

 

「他の二人とは比べものにならない程に強化されてるわ。三玖の能力も相まって、まだ一度も攻撃を通せてないわ」

 

現状、三玖は普段から使う盾で防御し、新たに付けくわれられたレーザー(?)を使って遠距離からの攻撃に徹してる。

……個人の感想になるが、一ついいだろうか。

三玖の盾になんてもん付けてんだぜってぇ許さねぇぞx-masc。

 

「そこ?」

 

「……とにかく、今は三玖を助けるのが最優先ね」

 

「任しときなっての! アタシらが加わればいけー!?」

 

 

突然、遊が胸を押さえながら膝をついた。それを心配した明日奈が声をかけようとすると、同様に座り込んでしまった。

 

「まず……またさっきまでのアタシらに引っ張られる……!」

 

「あはは……もう時間が無いみたい」

 

明日奈はこの状況で笑いながらも、その表情は苦しそうにしている。もう、タイムリミットは残りわずか。このままじゃまた二人が暴走してしまう。

 

「そう焦んなっての……! なぁに、アタシらの事はほっとけ。そっちは三玖を助けてやれよな」

 

「大丈夫……なんとか、策は考えたから……まぁ即席で作っちゃったから、上手くいくか分かんないけど。」

 

「二人共……」

 

一ヶ月というまだ短い期間だけれど、僕にとっても、理代にとっても、二人はかけがえのない存在となった。

三玖だって同じだ。長い様で短い間ではあったが、この一ヶ月が、僕にとって一番楽しい時期だったよ。

 

――だから、その感情をこれからも、持ち続けていたい。

 

「……どんな策なんだ?」

 

彼女達の案は至って単純なものだった。僕は少し考えてから再び二人の顔を見て、頷いた。

 

「分かった。やってみよう」

 

「……! そうこなくっちゃ!!」

 

「おっしゃ! そうと決まれば作戦開始だー!」

 

「……えぇ、やってやりましょう」

 

「三玖ちゃん……待っててね」

 

それぞれの決意を胸に、伊予川三玖救出作戦が開始された。


 

「……?」

 

岩山が飛び交う中、伊予川三玖は一人、盾を構えながら獲物を探していた。

空中に浮く足場を眺めながら、隠れている歩達を見つけ出そうと、光の通さない眼で探している。

 

何度か光線を放ってはみたが、全て避けられてしまっので、一旦放つのを止めた。

 

元々魔力消費の大きい技だった為、彼女自身発動自体は渋ってはいたが、アクターから「ダカラ? 魔力の消費なんてその気になれば調整できるんだかラ、出し惜しむ理由なんて無いでしョ?」 と、薄れゆく記憶の中で言っていたのを思い出した為、命令通り試す事にした。

 

結果的に一日に一度が限度なこの技も連発できるようになったので、彼女自身、もう悩む事なく射線上に現れた彼らを必ず狙い撃つという決意を胸に、盾を持ち続けている。

自分が何者なのか、少し前まではハッキリと理解できていたのだが、時間が経つにすれ薄れていき、最早彼女に、伊予川三玖という名前さえも思い出せないのだろう。

「……!」

 

しばらくすると、遂に理代達が浮かぶ足場から姿を現した。

三玖は見逃すことの無いように、直ぐ様盾を構え、光線の準備を始めた。

 

狙ってくださいと言いだけな理代に照準を合わし、魔力を一点に集中させる――

 

 

その時だった。

 

 

「行くぞッッ!!」

「せ ぇ の!!」

 

背後から現れた明日奈と遊が、技を繰り出しながら理代と共に落下した。

 

突然の事で焦りだした三玖は、直ぐ様バリアを張り、攻撃を守った。

しかし、この状態では攻撃ができない。身を守ることは出来るが、相手を倒す事のできないこのバリアでは、いずれ魔力切れでその隙を狙われてしまうのだ。

 

「クソッ! やっぱ硬ぇ……!」

 

「でも魔力は削れてる筈! ななしー先輩!」

 

明日奈と遊は攻撃の手を止め、一度三玖の前から離れる。

が、一瞬の隙を見逃さない様に、今度はしほが奏を抱えながら、自慢の魔具で攻撃を始める。

 

しかし、その攻撃の対象は三玖ではなく、奏にだった。

 

「頼んだわよ!」

 

「任せてください……!」

 

奏は震えながらも、しほの攻撃を受け止める。そして、自身の固有魔法で反射し、三玖のバリアに当て続けた。

しかし、しほの攻撃は至近距離での攻撃の為、奏自身の負担も大きい。

それでも、しほの唯一無二とも言える打撃力と、奏の反射の力によって、三玖は大幅な魔力消費を強いられてしまった。

 

「……ッ!」

 

バリアが薄まり、姿勢を崩しかける。

寸での所で足を踏み出し、体勢を整え、バリアの強度を強めた。

 

「グゥゥゥ……ゥ……」

 

「奏! 耐えて、あと少し……!」

 

しほが何度も呼びかけても、奏の身体には既に限界が来ていた。

しほもこれ以上は無理だと悟ったのか、奏に下がる事を命じた。

 

「……あれ」

 

「理代!! 後を任せたわ!」

 

続く第三の攻撃。先程までの攻撃の最中、彼女……理代が選び出した。高火力の銃火器。

それを理代は一斉に発射し、三玖へ一点集中させた。

 

「へへっ……スゲェなこの光景」

 

「けれど、これでもまだ……」

 

「大丈夫です……! 後は最後の切り札を……!?」

 

突然、明日奈の身体が崩れた。

 

「明日奈……?」

 

 

「おい明日奈、どうし……!?」

 

明日奈の元へ駆け寄ろうとした遊も同じ様に倒れ始め、二人は共に胸を手で押さえつけだした。

 

「まさか……もう限界が!?」

 

「あぁクソッ……! 身体が……引っ張られ……!」

 

「明日奈ちゃん!? 遊ちゃん!!」

 

「来ないで!!」

「来んな!!」

 

理代が二人の元へと駆け寄ろうとすると、二人は大声でそれを止めた。

 

「理代ちゃんは今すべき事に集中して!! 私達なら大丈夫だから!!」

 

「あと少しで三玖を救えるんだ! そのチャンス無駄にすんじゃねーぞ!!」

 

息が切れ切れになる二人。それでも、彼女達は望んでいる。

自分達を紡いだキミなら、自分達の心を開いたキミだから、この作戦を決行したのだ。

 

「……うん」

小さく、目の前の友に小さく頷く理代。

次に取り出したのは、小さな拳銃。

突然、今まで使用していた銃火器とは威力も何もかもが違う物が出てきた為、三玖の警戒心は限界を超えた。

最大火力のレーザー砲。既に準備は出来ている。

 

「――私のすべき事……か」

 

理代の口角が少し上がる。

脳内に過去の出来事が、次々と過っていく。

自分がここまで来れたのは、皆のお陰だと、改めて実感しながら、理代は引き金を引いた。

 

それと同時に、三玖のレーザー砲も放たれた。地面を抉り取り対象物を逃がすまいと迫ってくる。

当然、理代の放つ弾では、何をどうしたって対抗できない代物だ。

――そう、理代の放つ弾なら。

 

「――『スパイダードレイン』」

 

銃口から放たれたのは、弾では無く、大きな蜘蛛の巣状の網だった。

 

「色々な本やテレビを読んで思いついた技……こんな所で使うなんて」

 

理代の出した網は、放たれるレーザーを包んでいく。吸収する量が多いからか、次第に綻びが出来てきたが、それでも理代はその場から離れなかった。

 

「……」

 

一方三玖は、レーザーの威力を高める為、魔力を大量に消費しだした。すると彼女の周りに張られていたバリアは薄くなり、消えていってしまった。

魔力の供給が、レーザーに集中してしまい、バリアの方に行き着かなくなってしまったのだ。

しかし、それでもレーザーを溜め込むのに精一杯の理代は中々近づかず、その場に留まり続けた。そして遂に、網が解け、中に溜め込まれていたレーザーが暴発した。

 

「……ふぅ」

 

爆風がこちら側にまで飛んできた為、姿勢を保つのに精一杯だった。

しかし目を凝らしてみると、理代の方は耐え切れず後方に吹き飛ばされていた。

もう自分に残されている魔力は少なくない。けれど理代達に自分へ近付く力は残っていない筈。

そう考えた三玖は、盾を降ろそうとした。

 

「―――今だよ」

 

―――その時だった。突然、真下から人影が現れ、何かが自分の肩を掴んだ。

 

一瞬の出来事で理解するのに時間が掛かり、掴む手の先を確認するとそこにいたのは、

 

 

「ようやく追いついたぜ、三玖」

 

そこに、いた、の  は。

 

「少し痛むかも知れないけど、我慢してくれよな!」

 

「――歩 さ…ん?」

 

どうして、なんで、気配なんて無かったのに。

三玖の思考は答えを導くため回転し続ける。

 

それでも、答えは返ってこなかった。

それどころか理解するよりも先に、身体が歩の手を振り解こうと

する。

それでも離そうとしない歩を見て、三玖の心は疑問と恐怖で埋め尽くされた。

 

 

「うおっと!? ……ははっ、そう簡単に話すかよ」

 

「歩君、どう!? 何か分かった!?」

 

歩の視点がある一点を集中し続ける。そして三玖の首元に光る何(・)か(・)を、遂に見つけた。

 

「これ……まさかこの宝石が三人を……?」

 

黒く禍々しく、それでも光を反射し続ける宝石。それが三玖の首筋に埋め込まれていたのだ。

これがもし三人の絶望化の原因だとしたら、これさえ破壊すれば元に戻る。

 

歩はそう確信した。

 

「理代、見つけた! 宝石だ、身体の何処かに宝石が埋め込まれてる!」

 

「宝石……「成る程ね」?」

 

理代が言葉を言い終わる前に、しほは槍を構え、仲間へ狙いを定めた。

ようやく、ようやく見つけられた一筋の希望。

長い様で短い様な試行錯誤。その末にようやく彼女達は辿り着いた。

 

「……意識があるなら、伝えなさい」

 

その声は冷徹だった。

自分達と会った頃の、今にもその槍を自分に向けて振りかざすのかと思わんばかりの声量。

――けれど、どこか優しさも感じ取れる。

 

その声に応答し、意識の消え掛かる二人の少女は、今出来る限りの精一杯の笑みを、彼女に見せた。

 

――そして。

 

「……左肩、だよ」

 

「腹の右横だ。……頼んだぜ」

 

 

笑う二人を、しほは出迎えた。

 


 

三玖の首筋にある宝石を壊すと、三玖の身体は糸が切れたように倒れだした。

意識の失った彼女を抱きしめると、三玖の身体から溢れ出していた黒い何かが薄くなり、元の彼女に戻っていた。

駆けつけた理代と共にしほ先輩の元へ合流し、明日奈と遊の無事が分かると、三玖をそのまま地面に寝かせた。

 

 

 

――それから、しばらくたった後。

 

 

「―――うぅ……ん? ここは……」

 

「……三玖ちゃん?」

 

ようやく、三玖が意識を取り戻した。

 

「理代……さん?」

 

「三玖ちゃん……! 歩君! みんな! 三玖ちゃんが目を覚ましたよ!」

 

「ホントか!?」

 

「良かったぁ〜!」

 

「三玖! 平気か!? 何か悪いとことかできてねーよな!?」

 

「遊先輩落ち着いて下さい!」

 

理代の呼び掛けにこの場にいた全員が一斉に三玖の元へと駆け寄った。(当の本人は何が何だかって分からなそうな顔をしている)

……いやぁ、本当に良かった。意識を失った時はこっちも心臓が止まりそうだったよ……。

 

「あっえっと……私確か―――あ」

 

時間こそ少し掛かったが、三玖の記憶も徐々に戻ってきたようだ。

しかし、ここまでの事を思い出して、三玖は頭を抱え、目元からは涙が溢れ出していた。

 

「……三玖ちゃん、もう大丈夫だよ」

 

「理代……さん」

 

「もう終わったの、三玖ちゃんも、明日奈ちゃんも、遊ちゃんも、皆無事に帰ってこれたんだから」

 

「けど……私、皆さんに酷いことを……!」

 

「ううん、三玖ちゃんは何も悪く無い。三玖ちゃんだってあんな事したくなかったのに、あの宝石の所為で勝手にやらされてたんでしょ?」

 

顔を上げた三玖を、理代は優しく抱きしめた。

三玖の目から流れる涙は、止まることなく流れ続ける。

 

それでも、理代は優しく彼女に「大丈夫」と言い続けた。

 

「辛かったよね。嫌だったよね。でももう大丈夫だよ。これから先も私が――私達がずっと支えていくから」

 

「みっくんが辛い時は、私等皆が支えるよ。……それに、謝るのはみっくんだけじゃないしね」

 

「三玖と同じ様に、アタシらもこれから先変わって行きたい。心配ねーよ、アタシら最強のチームなんだからな!」

 

「その……私、三玖先輩が私と同じ趣味だったの、とっても嬉しかったんです。私あまり強く無いですけど、先輩が困ってたら直ぐ駆け付けます! だから……その、自分を責めないでください!」

 

皆が三玖の側に駆け寄って、涙を流す三玖を励まし続けた。

僕も何か言ってあげられないか、そう考えていると、あの人が、三玖を……いや、皆を抱きしめた。

 

「―――ごめんなさい」

 

「へ? しほ先輩……」

 

「……私、ずっと勘違いしてたの。あの日仲の良かった皆を失ってから、ずっと思ってた。私がいるから仲間が死ぬなんて……ずっと考えてた」

 

「けれど私、貴女達と過ごす日がずっと楽しかった。臆病だったの、寂しがり屋の癖に仲間を作ろうとしない臆病者。……その所為で、結局貴女達を危険な目に合わせてしまったわ……」

 

「だけど、こうやってまた言葉を交わして、抱き締めて――それでようやく分かったの。私はもう一人じゃないって」

 

俯く彼女は静かに、淡々と語る。

けれど、悲しんでいる訳では無い。彼女なりの照れ隠しなのだ。

自分の情けない部分を見せないための照れ隠し。それでもこの言葉だけは顔を上げて言いたい。

 

他の誰でもない、彼女達に。

 

「貴女達に会えて本当に良かった」

 

笑顔でそう言ったのだ。

 

さて、これで今回の騒動は幕引き……じゃないんだよなぁ。

三人を助けられたけど、肝心の『異端』はどこにいんだ……?

一度も見かけてないぞ……?

 

「言おうにも言える雰囲気じゃなさそうだしなぁ……」

 

実際、今僕がここで間に入るのは粋じゃないしな。少し落ち着いてから、『異端』を探そう。

 

――そう考えていると。

 

「……ん?」

 

遠くから、人影が見えた。

……ここに巻き込まれた一般人か? なら早く助けない……と。

 

「……ッ!?」

 

目を疑った。

脳で理解出来ない。

何だ? 何なんだアレは? 本当に人か?

僕の目には確かに人が見えている。……見えている筈だ。

 

それなのに、どうして。

 

 

どうして怖いと思ってしまうんだ?

 

「……? 歩君どうしたの―――」

 

僕の異常に気付いた理代が、僕に駆け寄ろうとする。

ダメだ。

来ちゃダメだ。

今動いたら、確実に―――!

 

「あれ、あそこにいるのって人―――」

 

「ッ!? 理代! あぶな―――」

 

突然、身体が理代を守ろうと、勝(・)手(・)に(・)動(・)き(・)出(・)し(・)た(・)。

理代の視界に映るモノを僕だけにする様に、理代に害がある様なモノから守る為に。

 

そして、僕の視界に映るのは、先程までみえていグチャリ




やっと書きたいところまでこれた〜(2年越し)

一章最終話間近ですがここまでで歩君にどんな印象を感じました?

  • おー……ええやん
  • 影薄過ぎない?
  • ロリコン
  • 今からでも理代ちゃんに主役の座よこせ
  • ヤンデレに×××されろ
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