はんたーの読切集   作:はんたー

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俺はキャロル。獅子座のキャロルだっ!(戦姫絶唱シンフォギア×聖闘士星矢)

 キャロルside

 

 

 

 

 

「パパ……」

 

 俺は死にかけながらも今は亡きパパへと思いを馳せていた。

 パパは偉大なる錬金術師だった。村に蔓延する疫病を救うため、錬成した薬で数多くの人間を救ってきた。いつも他者を慈しみ、世界をより良いものにしようとしていた。俺はそんなパパを誇りに思っていた。

 だけど、パパは裏切られた。

 錬金術師としての研鑽をただの奇跡と断じられ、神の御業を騙る悪魔などという戯言によって異端審問による冤罪の贄となった。

 

『キャロル。生きて、もっと世界を識るんだ。それがキャロルの……────』

 

 パパの最後の言葉は今も心に残り、へばりついていつ。だから、世界をバラバラに分解しようと考えた。だが、その為の聖遺物を収集する過程でこんな罠にかかるとは……何とも間抜けな様だな。

 周囲は大量のノイズであふれかえっており、俺の錬成した魔力もつきかけ、ろくな錬金術を使えそうにない。

 俺は百年もの月日を世界への復習のために費やしてきた。こんなところで終わるわけにはいかない。だが、それと同時に俺の嗜好にはあきらめの感情も溢れていた。もう疲れた。このままパパのもとに行ってもいいかもしれない。そう考え、俺は瞼を閉じようと────

 

「このようなところに迷子がいるとはな」

 

 瞬間、眩い閃光が世界を覆う。その光に俺は思わず眼を背ける。閃光が収まると、そこには白銀の銀狼とともに宙に浮く黄金の鎧を纏いし戦士の姿があった。

 

「少女よ。貴殿は何を求め、世界の破滅を求めるのだ?」

 

 黄金の戦士の問いかけに俺は困惑する。こいつは何者だ? なぜ俺の目的を知っている? なぜ俺を助けたのだ? 頭上の上に浮かぶ疑問を棚上げにし、俺は素直に答えた。なぜ答えたかは俺にもわからん。だが、不思議と目の前の存在に嘘はつけないと悟ったのだ。

 

「俺はパパの願いを叶えるためだ」

 

「父の願い……とな?」

 

「ああ。パパは言った。世界を知れと……だから俺は世界を分解するっ! 解剖して分解すれば、万象の全てを理解できるはずだからなッ!」

 

「それで……お前は何をするのだ? 世界を分解した後、何を行おうという?」

 

「何もしない。父親に託された命題は世界を解き明かすこと。それ以上も以下もない」

 

 俺の回答を聞いた黄金の戦士はその鋭い視線を維持したまま、俺に言の葉を紡いだ。

 

「……なるほど。それがお前の道か……愚だな。貴殿は父の真意を何も知ろうとはしていないということだな」

 

「なんだと?」

 

「貴殿は世界の真意など知ろうとはしていない。父の真意も何もわかっていないと言っているのだ」

 

「貴様っ! 訂正しろっ!」

 

 俺はなけなしの魔力で“四大元素(アリストテレス)”を放ち、目の前の黄金の戦士に放つ! その破壊の一撃に黄金の戦士は跡形もなくなる────俺はそう確信していた。

 

「空虚な力よ。元素(自然の力)を借りながら、その意味をまるで理解していない。この程度の力では────」

 

 その時、俺は見た。元素を超えた────自然そのものが巨大な獅子となる様を。

 

「我が八つ目の感覚の足元にも及ばぬ」

 

「ぐっ、ぐわぁぁぁぁっ!?」

 

 周囲の遺跡が崩れ、森そのものが襲い掛かってくる! これは錬金術? いや、これはそれよりはるかに高次元な……。

 

「き、貴様────死人だな! 何故迷い出てきた!」

 

 俺は男をよくよく見る! 男は足元が半透明になっており、目の前にいるにしては気配が薄弱すぎる。俺は目の前の存在を聖遺物のミセル幻覚、もしくは残留思念の類だと断じる。それを聞いた男は眉一つ動かさずに俺に逆に説いてきた。

 

「それは、どの次元においての話だ?」

 

「なに?」

 

「肉体の死は最終的なものではない。状態の変化にして魂の次元の上昇にすぎん」

 

「どういう意味だっ!」

 

「肉体が死しても魂は違う。私が貴殿の前に立つのは……貴殿の父の頼みだからだ」

 

「パパのっ?」

 

 俺は亡霊の言葉に自らの言葉を失う。パパの頼みだと? そんなわけがない。だって、俺は────パパの望みを果たそうと……。

 

「貴殿は父の望みをかなえようとはしていない。ただ、貴殿の父を奪った世界に復讐をしようとしているだけだ」

 

「ち、違うっ! 俺は、パパの望みをかなえようと……」

 

 亡霊の邪念泣き澄んだ目に射竦められ、言葉が出てこない。何なのだこの男は。亡霊の類なら、百年生きる中で幾度か見たこともある。だが、今までの存在とは次元の違う。そんな俺の動揺を余所に男は言葉をつづけた。

 

「貴様にはその凝り固まった邪念に囚われ、世界の仕組みを何もわかってないのだ。まずはその邪念を解きほぐそう」

 

 瞬間、景色が変わる。俺の前にはあの時の────パパが殺される際の光景が浮かんでいた! 

 

「なっ! これは……!?」

 

「今一度見るがよい。貴殿の父親の最期の姿を」

 

 火をかけられ、徐々に炎がパパの身体を包み込もうとしている。俺はそれを見て急いでそれを止めようとするが、愚かな民衆に阻まれ、進むことができずにいた。

 

「は、離せ! パパが……パパがっ!」

 

 パパが炎に包まれている。嫌だ。こんな光景を見たくない。俺はこの光景を見せている亡霊を睨みつけるが、亡霊は安らかな瞳で眺めるだけだ。

 

「見ろ。あれが、本当に、世界を恨んでいる男の瞳か?」

 

「っ!?」

 

 俺はその時、初めてパパの顔を見た。亡霊と同じく、安らかな瞳で俺のことを見据えている。まるで、世界を滅ぼそうとする今の俺を責め立てるかのように……。

 

「貴殿の父親は錬金術を極めた者の一人。そんな彼が、何故抵抗も見せずに火を掛けられたか……それがわかるか?」

 

「……わからない。何も……」

 

「父親は命を懸けて、貴殿に教えたかったのだ。赦しを……他者を傷つけることなく、自らの意志を全うする信念を……」

 

「あっ……」

 

 その時、俺は理解した。パパが世界を知れと言った真意を。パパは無念の中で死んだんじゃない。パパはパパの信念を貫き通したんだということを……。

 

「俺は……奇跡を殺すことを夢見て生きてきた。だが、パパはそれを望んでない。パパは、自分の分まで世界を見ることを望んでいたんだ……」

 

「その通り。世界を知る。それは世界を分解しただけでは果たせん。世界を知るには己を知り、思いを知り、根源たる宇宙に目を向けなければならん……今一度己と……命題と向き合い、世界を知るが良い。キャロル・マールス・ディーンハイムよ……」

 

 そう言い残し、亡霊は姿を消していった。“金色の獅子”をその場に残して……。

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 

 

 

 あの運命の日から長い年月が過ぎ去った。時代が進むに連れ、人々の営みも変化し、世界も変わっていく。

 ああ、世界を知るという命題は未だに果たせそうもない。だが、それでいい。パパの分まで世界を知る。俺の命が尽きるまで、この命題が終わることはないのだから。

 

「の、ノイズだァァァァァァ‼」

 

「死にたくない! 死にたくない! 死にたぐッ……あぁぁあッッ!!」

 

 だが、俺の命題の邪魔する無粋な輩は何時の時代にも現れるものだ。俺は最近のお気に入りだった“ツヴァイウィング”のライブ会場に現れた雑音を鬱陶しく思いながら、眼の前の光景を見ていた。

 ノイズと称される雑音が、片端から人間を襲う。そのノイズに触れられた女子供が、体の形を変えて塵と化す。逃げ遅れた人間たちは次々とその化け物に灰にされていく……本来ならば。

 

「えっ?」

 

 哀れな観客にノイズの魔の手が迫りくる前に、突如として巨大な槍と剣が突き刺さった。

 

「……どういうことなの? ノイズに触れてたはずなのに、炭素になってない?」

 

「……今は考えてる場合じゃねえ。翼、その人達を安全なところに! その間、私が時間を稼ぐ!」

 

「え、ええ、奏!」

 

 現れたのは天羽奏と風鳴翼。ツヴァイウィングの双翼。この二人がノイズを斬り裂き、観客を守ろうとしているのだ。

 

「っ、くッ……」

 

「はぁ……はぁ、がハッ!?」

 

「! だ、大丈夫、奏!?」

 

 少し前まで、ステージ上で音楽を紡いでいた歌姫たちは、今や戦姫となり、ノイズと戦っている。だが、その体に疲労の色が見え始めているな。特に天羽奏は消耗が激しいと見える。

 

「クソ、時限式じゃ、この辺りが限界かよ……!」

 

 意識を失いかけ、口から血を流した天羽奏。

 

「奏……! 奏!?」

 

「心配すんな翼……これくらい……」

 

 そう言いながら、天羽奏は立ち上がり、歌を紡いでノイズを貫かんとする。なるほど……あれがシンフォギアか。歌を歌うことで、神話のよろいを顕現させる力。

 だが、幾ら二人で支え合おうと、気力がまだあろうと、天羽奏のほうは体がシンフォギアを維持できていないな。恐らくは、薬物か? それで無理やりシンフォギアの力を顕現させているのか。

 

「なっ!? 危ないっ!」

 

 突如として上の階の客席が崩れ落ちる。今、天羽奏の後ろには客席と一緒に落ちたであろう少女。へたり込む茶髪の少女にノイズは今にも襲い掛からんとしていた。

 

「ぐ、ぐああああああっ!?」

 

 悲鳴を上げる体に鞭打ち、天羽奏はそのノイズをガングニールで一閃する。少女に触れようとしていたノイズは、消え去った。

 だが、殺しやすい少女を優先して狙っているのか、天羽奏の方に大量のノイズが形状を変化させ、少女目掛けて攻撃を始めた

 

「くそっ!!」

 

 天羽奏は後ろにいる少女を守るために槍を回転させ、ノイズの攻撃を防いでいく

 

「うおおおおおおおお!!!」

 

 天羽奏は叫びながらノイズの攻撃を防ぐがいくら槍を回転させてもノイズの勢いは止まることなく続いていく

 そして、天羽奏のシンフォギアのパーツはどんどん砕けていき

 

「あっ……!?」

 

 砕けたパーツが少女の胸を貫いた。少女の胸から、鮮やかな赤が噴き出した。血だ。砕けたガングニールの槍の破片と共に、飛沫となって瓦礫の間に墜ちていく。貫かれた胸は、絶えず赤く染まっていく。

 それを見た俺は流石に見逃せないと介入を決意する。

 

「……ここまでだな」

 

 俺はただ呆然と被害を見ていたわけではない。俺達は歴史の影に隠れるべき存在。奴ら装者にはあの女も関わっている以上、見つかれば面倒なことに巻き込まれるだろう。だから援助はバレぬように。先程から俺は“小宇宙(コスモ)”を燃やし、観客に被害が出ぬようにサイコキネシスでの守りに専念していた。無論、装者達には気づかれぬようにな。

 だが、その縛りが被害を生んでしまった。本来、表立っての介入をするつもりはなかったんだが……これ以上の被害は看過できん。俺は数百年の付き合いとなる“聖衣”を次元から呼び出し、装着する。

 

「俺の身を纏え“獅子(レオ)”よ」

 

 俺の呼びかけと同時に獅子のオブジェは変形し、あの時の亡霊と同じく金色の鎧となりて俺のみを包む。

 

 

 

 

 

 ****************************

 

 奏side

 

 

 

 

 

「おい! 死ぬな!! 目を開けてくれ!!!」

 

 私は倒れ込んだ女の子の肩を掴みながら、必死にそう叫んだ。しかし女の子は答えない。ただ、胸から夥しい量の血を垂れ流している。この状態はまずい。速く、速く治療しないと……。

 

「生きるのを諦めるな!!!!」

 

 私のせいだ。私のせいでこんな目に……死んでほしくない。私はその思いを乗せて大声で叫ぶ。

 すると小さく、だか確実に、女の子は目を開け応えてくれた。

 ……よかった。これならまだ間に合うかもしれない。

 私は安堵すると同時に決意する。未だ生きることを諦めていないこの子に、自分がしてやれることをやるために……。

 

(ここ、までか……)

 

 私は槍を杖替わりにして、血塗れの体を引きずって立ち上がる。それを見た翼は呆然としながらわたしを見つめている。

 

「奏……?」

 

「わりぃ、翼。一度、心を空っぽにして歌いたかったんだよなぁ……」

 

 その水面のように凪いだ静かな言葉。今際の際に紡がれる遺言に、奏の片翼たる翼はさっと顔色を青くした。

 

「まって奏! それはダメ! 歌ってはダメ‼」

 

 そりゃ、そうだよな。逆の立場なら私だって止める。でも、私はこの子のためにできることをしたいんだ。私は駆け寄ろうとする翼を愛おしく思いながら、最後の歌“絶唱”を紡ごうとする。────その時だった。

 

「その必要はない」

 

「!?」

 

 瞬間、強烈な光が私達の前に降り立った! 何だこの輝き……まるで、太陽のような。驚くべきことに、その輝きとともに、ノイズらはどんどん塵になっていく! 何だ……何が起こってるっていうんだ!? 

 

「中々の奮闘だった。後はこの俺がやる」

 

 太陽のような輝きを放つ光の中から、誰かが金属の音を立てて歩いてくる。そこにいたのは黄金の鎧を纏う金髪の女。その鎧の輝きは死地に立っているにも関わらず、思わず見惚れてしまうほどの美しさと神々しさを纏っていた。

 

「あんたは……?」

 

「あ、危ない!」

 

 翼が叫ぶとともに、ノイズが女に襲いかかろうとする。だが、女は慌てずに拳を構えるだけだ。

 

「喰らうがいい獅子の牙を……“ライトニング・プラズマ”!!」

 

 瞬間、光の線がノイズを斬り裂く! 幾重に折り重なった光の線が女の拳から放たれ、その前に触れたノイズが粉々に粉砕されていく! 

 だが、ノイズの数が多い! いくら粉砕しても、終わりが見えてこない! それを確認した女は余裕の笑みを浮かべながら、掌と拳を合わせ、独特の構えを取り出した。

 

「雑音如きには勿体ないが、どうせなら派手にだ。錬金術と小宇宙を組み合わせた俺の奥義を喰らうがいい!」

 

 そして放たれた拳は水や炎、土に風を纏いながら、一気に衝撃を増幅させる。

 

碧獅子の咆哮(エレメンタル・プラズマ)!!」

 

 その圧倒的な破壊の力は忽ち全てのノイズを吹き飛ばす。私達はそれを呆然と眺めることしかできなかった。

 

「さてと……」

 

「なっ! いつの間に……って、あんたなにを!?」

 

 声の下方向を振り返ると、先程までノイズと戦っていたはずの女がいつの間にかに女の子の前に立っていた! 女は人差し指を立てて女の子の胸を突く。すると、女の子は血色が良くなり、容態が安定していった。

 

「……真央点を突いた。これで何もせずとも数日は持つはずだ。今のうちに治療をするんだな。では、失礼するぞ」

 

「!? まって、貴女は一体!」

 

 翼の呼び声に女はピタリと立ち止まり、振り返る。その笑みはまるで獅子のように気高く見えた。

 

「俺はキャロル。獅子座の黄金聖闘士、“獅子座(レオ)のキャロル”だっ! 覚えておくがいいっ!」

 

 そう言い残して女────キャロルは消えた。まるで、幻だったかのように……。

 

「あの人は一体……聖闘士といっていたけど……」

 

「さあな。取り敢えず今は、あの子の処置が先だ」

 

 私は寝息を立てて眠る女の子をゆっくりと抱きかかえ、二課の本部に戻る。この惨状だ。二課の本部もひどいことに立ってるかもしれないけど、ある程度の設備はあるはずだ。

 

「……また、会えるかな?」

 

 私はあの黄金の戦士とまた出会う日が来ることを祈りながら、思いを馳せるのだった。

連載してほしいのは?

  • 機凱種と龍のグルメロード
  • 俺はキャロル。獅子座のキャロルだっ!
  • シャンフロ〜配信者、神ゲーに挑まんとす〜
  • 翳り裂く戦姫と黒薔薇と
  • 魔法霊媒シャーマン☆マギカ
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