三人称side
2004年2月5日。北海道のとある牧場で一つの命が生まれた。
「よし、生まれた!」
「どうですか……?」
「……やはり、小さいな」
牧場主である男は生まれたての子馬を見て落胆の声を上げた。
馬体が小さいとパワー勝負でどうしても不利になってしまう。
「やっぱり、ナリタタイシンが小さい馬ですからね……」
「母父のナリタブライアンは体の大きい馬だったからな……その血を受け継いでくれたら……と思ったが……」
「やっぱり、サンデーの系列にすべきだったんじゃないですか? ほら、アグネスタキオンとか?」
「しょうがないだろう……サンデーの系列は高い。前回は無理して借金してまでサンデーの種をつけたというのに、全然うまくいかなかったからな……。タイシンは昨年で共用停止。最後ってことでタダ同然の値でつけてもらったんたがらな……」
「この子が活躍できるかどうか……それにこの牧場の命運がかかってますからね……。タイシンもブライアンもすごい末脚の持ち主でしたし、その末脚を受け継いでくれれば……とも思いますけど……」
牧場に勤める数少ない厩務員である男は誕生したばかりの幼駒の体をタオルで拭きながら言う。だが、現実にそんな都合のいいことは起きやしない。十年もの間競走馬の育成に携わってたからこその言葉であった。
やがて、その馬は立ち上がる。その姿は小さいながらも、妙に凛々しく見えた。
「お、綺麗な立ち姿だな……」
「確かに……それに、結構早く立ちましたね」
「だな、案外期待できるかもしれんな」
牧場主と厩務員は幼駒の立ち姿を見ながら、笑みを浮かべるのだった。
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命あるものが死後も消滅せず、生まれ変わりを繰り返して別の存在になる。これを輪廻転生という。
いやさ、眉唾だと思ってたけど、まさか、生まれ変わって馬になるとは夢にも思わなかったな。
前世の名前は思い出せない。唯一思い出せるのは人間だったっていう過去と「ウマ娘」が好きだったことくらいだ。
リアルの競走馬には全くと言っていいほど興味がないんだけどな。ウマはウマでも転生するならウマ娘にして欲しかったものだぜ。
「やっぱり、ナリタタイシンが小さい馬ですからね……」
肌寒い体をビクビクさせながら、なんとか立ち上がろうと踏ん張っていたところに、たぶん、この牧場の主っぽい人と係員っぽい人のことばが耳に入る。
……なんだと? ナリタタイシン?
ナリタタイシンは前世で俺が大好きだったウマ娘の一人だ。小さい体ながら負けん気の塊、人を見返すために一層努力をする姿は憧れを抱いたし、ゲームで何度も育成してみせたものだ。
馬ならば最押しはアグネスタキオンなんだから、タキオンの子供でありたかったなとも思ったが、タイシンも悪くはないぞ。いや、むしろ滅茶苦茶いい!
しかも、このお母さんの父がナリタブライアン……おじいちゃんナリタブライアンってこと!?
馬は血統で決まるとかどっかで聞いた気がするけど、これってめっちゃ良血なんじゃないの!?
実際の競走馬のことはよくわからんけど、なんか滅茶苦茶走りそうじゃん!
よし、こうしてはいられない。
牧場の人達は俺の身体が小さいことを心配してるようだが……ウマ娘は実際の競走馬をモデルにしてる。つまり、ナリタタイシンは本当に小さかったし、身体も弱かった。それでも戦い抜いたのだろう。
ならば、子どもとして生まれ落ちた俺がそれに負けてどうする!
俺は力いっぱい地面を蹴り、なんとか立ち上がった。
「お、綺麗な立ち姿だな……」
「確かに……それに、結構早く立ちましたね」
「だな、案外期待できるかもしれんな」
そうだろう! 何せ、俺はあのナリタタイシンの子どもなんだからな! 舐めんな!
ナリタタイシンの産駒が活躍するところが見たい
連載するかは半々?
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