パーティメンバー♀とズッ友のつもりのTS転生者   作:雄跡

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気づかないふりしてたんですけど

「ナオ〜ン」

 

 街近くの森の横を沿った道。俺達四人の前には猫のような、いや猫そのものな鳴き声を発するデカめのトカゲ。それこそ猫くらいの大きさ。

 

「いたいた。あれ仕留めるだけで今日おしまいだから。半ドンのためにも確実にやるわよ。いつもの配置で、初手ドレミちゃんお願いね」

 

「周りに危険なのナシ。アレに集中してヨシ。リーダー、半ドンて何?」

 

「……壁張るからいつも通りよろしくドレミちゃん。えーと、"境をなぞって 絶対の対 魔力障壁(シールドお願いします)"」

 

「了解」

 

 見えない壁をまとったドレミちゃんがトカゲに向かって発射した。あのトカゲ程度であれば実力的には防御は不要にも思えたが、周囲に他の危険もなく街にも近いなら魔力を温存する必要もない。念のため、というのは俺も大賛成だ。

 

「…………あの子私と二つしか違わないじゃん……」

 

「……特殊だったんじゃない?環境。ほら、そんな子じゃない?」

 

「マノさん、半ドンってなんですか?」

 

「あんたは私より二つも上でしょうが!!」

 

「あ、やべ」

 

 ドレミちゃんがトカゲに着弾した環境破壊音と共に、彼女からそんな声が聞こえた気がした。

 土埃が晴れると、トカゲは無傷で奇妙なリズムで首を上下に振っていた。

 

「これマノさんのせいじゃないですか?」

 

「ちょっと待ってこの音……」

 

 ──ンクッ──ンクッ──ンクッ

 何か込み上げるような音がトカゲから聞こえる。そして、こちらに向かって口を開け──

 

「猫が毛玉吐くときのやつ!!ペットシーツ持って来て!!」

 

「間に合わないんで第一発見者がトイレットペーパーで処理してください」

 

「バカ!!各自回避とりなさい!!」

 

 直後、トカゲの口から握り拳ほどの塊が一直線に飛んで来る。

 ドレミちゃんは回避、マノさんは射線外。

 

 ──そして俺はススキに押し倒され地面に寝転んでいた。

 確実に俺かススキのヘッドショットを狙った一撃。

 幸いススキの咄嗟の判断のおかげで俺の頭は無事。俺を押し倒したススキの頭も俺の胸で受け止められている。俺達の後方にあった木には深々とあの塊が刺さっている。何あれ?鱗の塊?毛繕いして鱗剥がれんのかあいつ。

 

「リーダー!森に入ったら探すの面倒!」

 

 敵対者をビビらせたトカゲは背を向け森の茂みにダッシュしていた。

 

「分ぁってるわよ!!ススキとどめの準備!逃すかぁ!クソトカゲ!"岩と壁 どっちだ?(囲む感じでお願いします)"!!」

 

 逃げ場を奪うようにトカゲの前方から左右にかけて地面が迫り上がる。

 逃走経路を断たれたトカゲはこちらに向き直り首を振り出した。

 

「はい!させない!"ユニコーンと鉄に赤い糸 これなんだ?(あいつの口に一本だけ)"!」

 

 マノさんの詠唱と共にトカゲを囲う地面から一本の棘が生え、上顎から下顎を貫く。もうあの鱗玉は吐けないだろう。

 

「よし!ススキ!とどめお願……なんでまだ詠唱してんのよ。過剰でしょ」

 

「"……り 内側 可観測 懇願 回想 不安定 喘ぎ"」

 

「……え、ちょっと。聞いてる?おーい?顔怖くない?……ねえ!怖いから!何!!なんなの!怖いって!!詠唱の内容も訳わかんないし!!」

 

 トカゲは動けなさそうなのでドレミちゃんもこちらに退避済み。治療魔術以外はよく分からん俺でも分かる。なんかド派手なのが一発かまされそうだ。

 

「"逃避 希望 鬼 蹂躙 複合魔術(できる限り苦しめるようお願いいたします)"」

 

 ボッ

 トカゲから鈍い破裂音が聞こえた。トカゲに特に変化は見られないが──その音が連続で、トカゲの内側で響くように鳴り続ける。

 ブチッ

 ドッ

 メリ

 

「えぇ……?エグい音が聞こえて来る……」

 

「ススキ……?一体これは……」

 

「知らなぁい。何アレ、こわ」

 

 その後、皮の下空っぽなんじゃってくらいべこべこになりつつも辛うじて息のあるトカゲは──爆散した。肉片が飛び散るかと思ったけどほとんど皮だけだった。

 

「何、これ……本当に何…………なんで……?」

 

「私にも分かんないわよ。適当にそれっぽい言葉並べて最後になるべく苦しめてってお願いした(放り投げた)だけ」

 

「なんでそんなことしたって聞いてんのよ!なんの説明もなしに長々詠唱されてこんなん見せられたら誰だっておしっこ漏らすわぁ!!」

 

「別にいいじゃない。警戒した方がいいのもいなかったし、これで今日おしまいなんでしょう?温存する必要もないから一発ぶっ放したかったのよ」

 

「苦しめた!理由に!なってない!!」

 

「リーダー、わたしは漏らさなかった」

 

「私だって漏らしてないわよ!そういう表現!!」

 

「マノさん。気づかないふりしてたんですけど。時間経つとどうにも股間が冷たくなってきた気がします。失礼しますね」

 

「脱ぐなあ!!気持ち悪いのは分かるけど!!」

 

 生き物が苦しんで死ぬとこなんて初めて見たわけで。吐かなかっただけ褒めてほしいよね。

 

 

●●●

 

 

「そういやあのトカゲなんだったんですか?危険ではありましたけど。一体狩ってあんなにもらえるの割に合わないように感じたんですけど」

 

 依頼完了の手続きを済ませ帰宅した俺はリビングでくつろぐススキに疑問を投げてみた。

 

「あいつら今が繁殖期で、危険を減らそうってのは当然なのだけどとにかくうるさいのよ。雌を取り合う喧嘩でも交尾でも猫を十倍にしたくらい。軽い討伐依頼っていうより重大な街の環境整備依頼って認識ね」

 

「へーあいつらは雄が雌を取り合うんですねえ」

 

「男がいない分あっちは増えてるってのもあながち間違ってないのかしらねぇ」

 

「まあ私達は取り合うどころか諦めてますけどね」

 

「……そう、ね」

 

 え、何その間は。もしかして結婚する気は普通にあるのか。

 完全に諦めてるもんだと思ってずっと一緒のつもりだったんだけど。

 ……まあ友達の幸せが一番だし。結婚したって友達は続けられるわけだし。ちょっと一緒にいられる時間が減るだけだし。寂しいけど、一番の親友と少し離れるのは寂しいけど。何年離れても俺を友達と思ってくれていた唯一の親友とようやく一緒に過ごせると思ったのに、また離れることになるのは寂しいけど。彼女の幸せが一番だし。

 

「そ、そういえば。二人きりでゆっくりできるのも久しぶりですね」

 

 パーティ結成したてということもあり休日もススキ以外の誰かしらが一緒にいることが多かった。二人でこんな時間を過ごすのは本当に久しぶりだ。

 

「そうねぇ。ドレミもやっとまともに生活できそうだし……」

 

「あはは……。その度はご迷惑おかけしまして……本当にありがとうございました。ススキ、何かしてほしいことがあったら言ってくださいね」

 

「好きなら好きって言って」

 

「好きですよ!好き好き!私はススキが大好きです!!」

 

「…………あり、がと。……いつもよりお返事がやけに元気なのが気になるけれど」

 

「そりゃあ久しぶりの二人きりの休日ですから!」

 

 ススキは複数人のグループの会話には中々自分から入ってこない。一緒に暮らし始めて気づいたが一対一の場だとしても自分から会話を始めることは滅多にない。かといって一人が好きということもなさそうで、就寝時以外は必ずリビングか俺の部屋にいる。

 よし、自分からたくさん話しかけようと思った頃にはパーティ結成で忙しくなってしまった。

 だから、今日みたいな時間を待ち望んでいた。

 

「さっきから二人きり二人きりって……何?二人きりだと何か違うの?」

 

「……そりゃ、ススキとの時間はっ……。特別ぅ?ですから……?」

 

 恥ずかしいがはっきり伝えると決めた俺だ。なんかこう今まで話せなかった分たくさん話したいとかもっと言いたいが特別という言葉でふんわり誤魔化してしまった。まあ特別であることに違いはない。伝えられりゃいいのだ。

 

「……そう…………そういえばあなた。昔に比べて随分とどもらなくなったわよね」

 

「あっ、あれはっ……その……あっ……」

 

「そうそう。そんな感じ」

 

「…………ったんです」

 

「懐かしいわぁ。調子、戻ってきたわね。ふふっ」

 

「恥ずかしかったんです!」

 

「……」

 

「……」

 

「……そう。何が?」

 

 ──せっかくの気持ちを伝えられる機会。

 思えば決心して以降もなんだかんだ話を振られないとこういった気持ちを伝えることはできなかった。ここを逃したら嘘だと思った。

 

「昔から伝えたかったんですよ、ススキには。でも恥ずかしくて。いつも言えなかったんです。大好きとも、ありがとうとも、一緒にいて楽しいとも……。去年、『嫌いなら嫌いって言って』って言われちゃいましたよね。それで私、吹っ切れたんです」

 

 なんだか口が震えてしまう、目の焦点が合っていない気もする。でも止まれない。今まで言いたかったことが次々と口から流れ出る。

 

「だからススキには感謝してもし足りないんです。ただでさえ七年も引きこもってた私を友達と言ってくれたことに感謝してもし切れなかったのに。──これ以上この気持ちが溢れたらどうしようって、私、困ってるんですからね」

 

「…………」

 

「ねえ、だから言ってください。私にできることならなんだってしたいんです。()()()()()言ってください。ススキのそばで()()()、大好きなあなたに報い続けたいんです」

 

「……っ」

 

「……もちろん、あなたが許してくれるなら、ですけど。あの、私ススキの迷惑にはなりたくないんです。こんなわがまま言ってますけどあなたの幸せがそれでも一番だと思いたいんです。────だから。いやならいやって言──」

 

 ススキの指で俺の口が止められる。

 

「それをあなたに言わせたら私、自分が情けなくて泣いてしまうかもよ」

 

 その言葉で、自分が勢いでとんでもないことを口走りそうになっていたことに気づく。

 

「あはは!ススキが泣いたことなんてないじゃないですか。でも、そうですね。さっきのはちょっと勢いが過ぎました。反省します」

 

 本当に反省だ。友達を大切にすると決めておきながら。友達の気持ちを考えて話せていなかった。

 

「ふふっ。どこからが勢いだったのかしら」

 

「はずかったってとこから全部ですよー。あーこれこそ恥ずいったらありゃしない」

 

「あら残念。せっかく本音が聞けたと思ったのに」

 

「本音は本音ですよー。それを整理しきれずにぶちまけてしまったのが恥ずかしかったのであって……。あー!こんなのススキの前だけなんですからね。勘違いしないでくださいよー?」

 

 こんな痴態をススキ以外にも晒すような露出魔だなどと勘違いされたくはない。友達の前といえど吐露すべき痴態とそうでない痴態の分別はつけるべきだ。それができない人間とは親友に思われたくない。

 まあそもそもこんな量の本音が出てしまうほど付き合いの長い友達は今のところススキだけだ。そうそう同じ失敗はできないだろう。

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