第1話 入学試験(1)
人類総人口の約8割が特異体質。
『個性』を持って生まれてくる超人社会。
個性を悪用する
「わぁ…………」
ソレを見たのはただの偶然。
幼い日の私が熱を出して保育園をお休みした日。
熱はあるけどじっとしているのも退屈でぐずる私に、母はタブレット端末を渡してきた。
暇つぶしに何か、と思ってたまたま見た動画サイトで目にとまったのは、ある女性ヒーローの動画。
素人の撮影で古い時代の映像なのか、画質は悪い。
けれど自在に空を舞い、
荒い画面越しでも伝わる芯のようなもの。
はっきりと言葉にできないまでも、子供なりに憧れ、こうなりたい、と願ったその姿。
不法にアップロードされた映像なのか、何かしらの事情があるのか、元気になった後、双子の片割れである電気にも見せてやろう、と思った時には動画はすでに消されていた。
その後、いくら調べても動画は見つからないし、ヒーローネームすら判らない。嘘じゃない、いたんだって、随分と泣いた覚えがある。
今となれば真偽はどうでもいい。”彼女”は確かにそこにいたし、私は彼女に憧れたことに間違いはない。
彼女のように誇りを胸に真っ直ぐに立っていられる人になりたい、と願った。
それが私、上鳴
ヒーローになりたい。
そう心に決めてから10年ちょっと。
国立雄英高校ヒーロー科はそのヒーローに必須の資格取得を目指す養成校。
その実技試験の説明を待つ講堂の中に私はいた。
「受験生のリスナー!今日は俺のライヴにようこそー!Everybody! Say Hey!!」
説明を行うのはボイスヒーロー・プレゼントマイク。
ラジオMCで人気のあるヒーローだがその第一声に応えるものはいない。
緊張をほぐそうと思ってのことかもしれないが、盛大に滑っていた。
「こいつぁシヴィー、今年はみんな真面目だねぇ」
そりゃそうだ、と冷めた視線を送るが堪えた様子はない。
多分、午前中の試験説明でも会場冷え切っていたんだろうなぁ。
ノリにノッてくる年ってあるんだろうか?いや、毎年このノリはさすがにないか……ない、よ、ね?
「よーし受験生のリスナーに実技試験の内容をサクっとプレゼンするぜー」
ところで雄英って国立だから教師も公務員。
ラジオのパーソナリティっていいのかなー?と思うが、そもそもヒーローは副業可だっけ。じゃあ、教師業も副業のうちだからいいのか。
思考が明後日にそれたので、試験のことに考えを戻す。
筆記試験は全国複数会場で一斉に実施。
実技試験は雄英高校で複数日にわたって実施される。
ここで足きりがあるという噂を聞くが、それでも実技試験の受験票は届いた。
自己採点で言えば、電気の成績はかなり危うい。
それでも筆記を通ったということは、足切り自体が根拠のないうわさか、あってもハードルは低く設定されていて、その分、多くの個性を見たいということだろう。
母数が増える分、自己採点の結果まず受からないが、雄英の校舎に入ってみたいという物見遊山の記念受験組も多いとは思うが。
「私、E会場。電気は?」
「D。ちぇっ、マッハと一緒なら楽できたのに」
「そうならないように別にしたんだだと思う。まぁ、お互い頑張ろ?」
軽く握った拳を合わせる。男の子同士なら絵になるんだろうけど、あいにく私は女だ。
私の名前は上鳴
隣のチャラ男は双子の兄、上鳴電気。
ともに雄英高校ヒーロー科を受験する。
まぁ、ヒーロー科1本で勝負するわけではなく、電気は普通科併願、私はサポート科併願だ。
単純に家を出たいってのもあるし、ヒーロー科がダメでも自分の個性を活かす道として悪くないとサポート科を併願している。
だからと言って、あっさり落ちてやる気は毛頭ない。
私だってヒーローになりたい。
かと言ってヒーロー科一本で勝負できるほどの強個性は、私には発現しなかった。
電気は……まぁ、勉強嫌いだから、うん。
どもあれ、このためにここまで出来る限り、体も個性も鍛えてきた。
散々『お前には無理だ』と言われたが、それぐらいで諦める気はない。
午後すぐの試験だからお昼は会場入りする前にエナジーバーで済ませた。
あまり食べすぎると動けないし。
バスに分乗して到着した試験会場E。
刑務所よりも高い壁、最近デビューした
その先にあるビル街。
うん、この施設見たさに記念受験する気持ちわからんでもない。
感心するのは後でいい。
会場の広さに対して同時受験者数は36人。
ちょうど一般受験の合格枠と同じなのはどうでもいいが、広さに対してごく少数なのは、仮想ヴィランが少ないのか、取り合い防止か。
どちらにしても討伐で稼ぐなら優位な場所を先取りするに限る。
『はぁ~い♪スタートぉ』
甘ったるい掛け声に視線を上げると、そこにいるのは18禁ヒーロー・ミッドナイトの姿。
私と同時に数名がダッシュ。
何人かはミッドナイトに見とれて多少遅れながら駆け出した。
「早えっ!」
「獲物持って行かれちまう!」
「なら俺はこっちだ!」
速度特化、移動系個性の持ち主にはかなわないが、素の身体能力での速さはそこそこ自信がある。
名である
何考えてるんだってお婆ちゃんが激怒したらしいけど。それでも「マッハなのにおそーい」なんて言われないよう頑張ったのだ。
「せーのっ!」
この日のために用意した安全靴に、全力の速度と体重を乗せたドロップキックが1点ロボを粉砕。
思わぬ脆さを感じながら3点ロボへ。
先ほどではないにしても、まともに決まれば大の大人でも悶絶するだろう蹴りは装甲に軽い凹みを残すだけ。
「助走が足らないとダメかー」
『目標補足……ブ殺ォォォス!』
「10分しかないし。時間かけたくないからっ!」
背後に飛び乗って、個性を使って回路内の電子の流れから制御コンソールをたどる。
特別なセキュリティは仕掛けられていない。というよりもこういう事も想定されているのだろう。操作コンソール外部から操作し、私を命令者に認識させる。
「おバカで助かった!行けっ!!」
『ブブブブブブ殺ォォォ………?』
数体の1点ロボをハックした3点ロボで倒しながら、戦闘を感知して寄ってくる仮想ヴィランを蹴散らしていく。
大通りに湧いて出た数体を追加で倒したところで、限界となった3点ロボにもとどめを刺す。
合格ラインがどの程度かわからない。もう少し倒しておきたいところだ。幸いにもすぐに追加が現れた。ただ戦闘音でロボの居場所をつかまれたのだろう。
他の受験者を呼び寄せることになり、乱戦に発展する。
幸いにして3点ロボは攻めあぐねている連中が多いので、横取りにならないよう気を付けながら、新たに掌握した3点ロボで雑魚を中心に叩いていく。
「う、うわぁぁぁっ!」
悲鳴が上がったほうを見ると取りこぼされた1点ロボに囲まれている。
どこかで拾ったらしいガードレールの鉄パイプを武器にして、1点ロボの攻撃を受け止めている。囲んできた残りに対応する余裕はなさそうだ。
「ちょっともらうよ!動かないでね!!」
残り時間を考えれば、もうロボ操作を続ける必要もない。
足になってもらった3点ロボ2号からありったけの電子を引っ張り出して、隣のロボに放電を誘発してたたきつける。過電流を受けた1点ロボは焦げ臭い匂いを立てながら停止した。
「ふぅ、横取りしてごめんね?後はやれる?」
「あ、あぁ、ああ、ありがと」
「残り少ないけど、お互い頑張ろう」
そして残り3分のタイミングで、0ポイント仮想ヴィランが登場する。
施設内のビルを上回る全高は少なくとも10m以上の高さがある。
それを支える強固な構造と装甲は、ヒーロー見習い未満の受験生にぶつけるには高い壁。
「いやいやいや、殺意高すぎるでしょ雄英」
見るや否や、逃げ出す受験生たち。
それは身の安全を図るという意味で正しい。
倒してもポイントにはならないと明言されている。
そう、ロボを「倒した」ポイントにはならない。
「けど、この程度で絶望してちゃ、やってらんないってことでしょう?」
そうは言いつつ、内心ガクブルではある。
打ち下ろしのパンチはその余波だけで吹き飛びそうな暴風をうむ。
それなりのポイントは稼いだと思うが、まだ心もとない。ここは逃げて、他を倒しに行く方が正しいことはわかっている。
そもそもサポート科でもいいのだ。
それでもいいのだけど、それ以上に、ここで逃げるのも嫌だった。
「
周辺のロボの残骸など操作有効範囲内の電子を引っ掴む。
それを足元に集めると狙った手ごたえ。
「私は!飛べるっ!飛んでみせるっ!!」
全力でのジャンプと、集めた電荷により生じたイオノクラフト効果が合わさり、ロボの背中に飛びあがる。後は単純作業。
振り落とされないように装甲の隙間につかまって、3点ロボを思い出しながら停止コマンドと誤認させる電子の流れを作り出す。焦りもあって確かな手ごたえがないまま、何度もコマンドを叩き込んだ。
「止まれ!とまれ、とまれ、とまれ――――っ!」
『試験終了。受験生は速やかにゲートに戻ってください』
確かに動きを止めたと思えた手ごたえと、試験終了はほぼ同時だった。
「あ~、頭いったあぁ」
流石に無茶がたたったか、頭痛をこらえつつ慎重にロボから降りるのはちょっと情けなかった。
―――Side:教師陣
数日後。すべての試験結果が出そろい、モニタールームには雄英教師陣が揃っていた。
「実技の総合成績出ました」
「レスキューポイントが0で1位は凄いわねぇ」
「後半、他が鈍っていく中で派手な戦闘で敵を引き寄せ、撃破し続けていた。タフネスのたまものだ」
「対照的にヴィランポイント0で8位」
「大型ヴィランに立ち向かった受験生は過去にもいたけど、ぶっ飛ばしちゃったのは大したものね」
「動きを止めたのはもっと見てませんね」
「レスキューポイントが撃破より低いのは?被害を抑えるという意味ではもっと高く評価していいと思うのだけど」
「あぁ、それは停止命令がログに残ったのが試験終了の後だったんですよ」
「何それ?他は見たままなのに、この子だけデータで判断?不公平じゃないの?」
「そうは言ってもな。本体に故障も破損も一切ない。実力も研鑽も本物だが……その……」
「それより8位の少年。パワーは凄いがそれであの大けが。まるで個性が発現したばかりの幼児のようだ」
戦闘だけで主席となった少年、個性に振り回されている少年、そしてどうにも分かり辛さがある少女。
ほかの上位勢も一癖ありそうな連中ばかり。
今年も苦労しそうだと、抹消ヒーロー・イレイザーヘッドこと相澤消太は小さくため息をついた。
オリ主のあこがれのヒーローはオールマイトのお師匠様こと志村菜奈です。
動画は万が一を考え、気付いたオールマイトとグラントリノが手を尽くして消しました。もちろん動画の存在は捏造設定です。
そしてオリ主が頑張りすぎた結果、原作主人公の緑谷君は順位を1つ下げています。
ちなみにメタ発言がありますが、転生者ではない設定です。この世界線では水星の魔女が放映済みということでw
電気のほうは原作よりいいポジションでしょうけど、10位には届いていません。
オリ主:
氏名:上鳴
個性:電子操作
電子を知覚し操作できる。
その外見等:
女性、原作キャラ上鳴電気の双子の妹。髪の色は濃紺、瞳は琥珀色。
身長153cm
現実には中1平均身長をやや下回るのでおチビの部類。胸部装甲はそのうち描写しますw
その他キャラ設定(特に個性関係)はどうせブレるので、完結したらまとめて書きます。
上鳴=雷
茉芭=まつはー>マッハ(音速)ー>速
で、「雷速少女」ですが、別に雷速で動いたりはしませんw
上鳴電気は地毛か染めてるのかよくわからないので、染めてるか個性で色が変わった、と言うことにしておいてくださいw
身体能力高すぎと言われそうですが、個性による身体能力の増強・増幅系がないキャラでもかなりの超人ぶりを見せてる世界なので、ハンター世界並に空気にプロテイン含んでそうです。
幼少期から個性を使って鍛えた、ということでお目こぼしをw
雄英の受験形態は捏造改変です。
大体、以下の内容です。
アニメの描写では、半日で筆記と実技をやっているように見えますが、倍率を考えると非現実的。
試験問題流出のリスクを考えれば、筆記は全国一斉でないと、ということで大して意味もないのに変えてます。
(※2023/5追記 原作漫画では筆記と実技が別日程と明記されてます)
ヒーロー科の倍率が毎年概ね300倍、一般入試の合格定員36名なので、志願者数が約1万。
そも1万人分の戦闘を見て審査するのには時間がかかりすぎる。まぁ、複数試験日があったとして主人公組が何日目かは判りませんが、それにしたってちょっと非合理的過ぎる。
と言うことで、筆記と実技を分けた2段階方式、要はセンター入試に近い形態ですね。
いっそ本作世界では、ヒーロー科を有する高校はセンター方式で一次の筆記試験は全国共通、としておきましょう。そこから志望校へ願書を送付、とw
とは言え、作中の補習組の様子などから筆記での足切りはある程度緩いとは思いますが。
まぁ、補習組は「ヒーロー基礎学」等の専門カリキュラムが多くて学習速度に追いついてない可能性もありますが、描写を見るに素で微妙なようなので、実技の比重高めで多少成績が足らなくてもヒーロー科は受かるとしています。