雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

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第99話 決戦(1)

 期末試験は無事にクリア。実技はインターン先の評価を試験の代わりにするのだとか。もちろん、提出した報告書なども実績に加味される。要するにプロヒーローの報酬システムをそのまま、実技成績に転用するつもりらしい。

 そこそこの評価は貰えると信じたい。

 

「あぁ~あ、春休みだってのに、インターンで1日も休みがないなんて~、お花見したかったー」

 

 桜並木を眺めながら、三奈ちゃんがぼやくけど気持ちはわかる

 確かに桜も満開。この満開の桜の下でみんなでワイワイやるのは楽しそうだ。

 

「冬休みも実質なかったよね。入学初日に「放課後マックで談笑したかったならお生憎」とか言われた通りになってて、草も生えない」

 

 つまりほとんど働きっぱなし。どんなブラック企業だって感じだけど。授業のある日が実質的に休みと言うのがなんとも悲しい。ちゃんと青春したければ普通科に行けってことだね。

 うん、まぁ、恋愛方面でも思い切り青春しまくってるわけで、お前が言うな、ってなりそうだけど。

 

「アレ?今度のインターン、遠征だって」

「あら、ホントね」

「梅雨ちゃんたちも?マジで。俺らも。俺らも」

 

 先日の大規模なチームアップの件もある。つまりいよいよ本番だ。

 ワン・フォー・オールとオール・フォー・ワン。二つ個性の因縁が彩った闘争の歴史に一つの区切りがつく……はずだ。

 

「戻ってきたら、お花見したいね。進級祝いと慰労会を兼ねて」

「いいねー!やろう!」

「よいですわね。ならば皆さん、怪我などせずに無事に戻ってきてくださいませ」

「「「「おー!」」」」

 

 壊理ちゃんはもちろん、B組や心操君も呼んでパーっとやりたいな。たまにはバカ騒ぎもいいだろうし。

 

 

 事後の楽しみのためには、今日、ここでしっかりと勝たないと。

 蛇腔総合病院を捜索するメンバーは、エンデヴァーを中心に編成されている。

 エンデヴァー事務所のサイドキックたちもほぼ全員、この場にいる。街の治安維持にあたるメンバーは最小限にも足りない。

 

 そのうえで後詰に雄英を含むヒーロー科の仮免取得者たち。

 突入班に私とデク、それと先日のお試しで何だかんだと評価されたようで、ショートと爆豪君もいる。ワン・フォー・オール関係ではショートや爆豪君はオマケ扱いになるのだけど、こればかりは仕方ない。

 

 オールマイト関係で言うと、サー・ナイトアイはエンデヴァー班の後方指揮を統括する。ルミリオンは突入側だ。センチピーダーとバブルガールは地元で解放戦線シンパの制圧と普段よりヒーローが少ない中での一般犯罪対策にあたるらしい。

 

「突入!」

 

 塚内警部の掛け声で、エンデヴァーがまず足を踏み入れる。

 突然現れたナンバーワンヒーローに騒然とする院内に、塚内さんが令状を示して叫ぶ。

 

「な、なんですか!!」

「ヒーローと警察だ!テロおよび幇助、誘拐、殺人、死体損壊、その他の容疑で強制捜査を行う!!」

 

 死穢八斎會の時もそうだったが、令状を読み上げると同時に一斉に警官隊が動く。今回、大きく違うのは盾装備の警官と自動小銃を持っている警官がペアになっていてより戦闘を強く意識している点。

 

「職員は現在の場所で動かないで手を上げろ!患者は誘導に従ってください」

 

 銃口は油断なく、戸惑い気味の職員はもちろん患者たちにも向かっている。これは患者の中に超常解放軍のメンバーがいても大丈夫なようにとの用心。

 プッシーキャッツのマンダレイがテレパスで病院中に警告を出した。

 

『全員、避難してください!ここは戦場になる可能性があります!』

「エンデヴァー!こっちだ!!」

 

 あらかじめ潜入していた警察官がパジャマ姿で呼びかけてくる。霊安室へ案内してくれるのだろう。

 

「ミルコは霊安室に。ブルーアンバーは護衛と共に予定の行動をとれ」

「おう!先行くぜ!ルミリオンっつたな!ついてこい」

「「はい!!」」

 

 建物の配置図は頭に入れてある、迷わず進むと目指す施設にたどり着く。当然、施錠されているが、それは力づくでいく。

 

「デク!ぶち破って!ショートと爆豪君は通路を警戒」

「はい!」

「わーってら!!」

「わかった」

 

 流石に今の状況で無駄に反発することはない。無理やり扉を開けて入ったのは分電盤室。

 この蛇腔総合病院、地下に秘密施設のがあるのは確実。

 警察の行った調査では、もう一つ、重要な情報があった。

 

 設備の規模に対して、電力消費量が異様に多い。

 

 つまり、電気を大量に食う設備を持っているという事だ。

 省エネ関連で行政に指導も受けていて、「治験や個性由来の特殊な症例研究」の特殊施設に必要と言う事だった。

 少なくとも、ここに何かしらの設備があることは確実。施設規模から自家発電装置があるのは確実だけど、定期的な燃料の搬入は確認されていない。周辺にも同じような行為をしている施設はない。

 ならば、病院側の電源を共用しているはず。

 

「ビンゴ」

 

 霊安室の方に向かう回路を見つけ、その先を探る。ヤバイものへの電源から優先して落としていかないと。

 

「デクも警戒を……エンデヴァー!ミルコ!!隠し通路に脳無多数発見!」

『おう、見えてるよ!エンデヴァー!動き出してるぞ!!』

 

『塚内です。地上部分には殻木がいない。捜索を頼みます』

「了解。関係施設の停止と並行して捜索を急ぎます」

『任せます。脱出路があったら教えてください』

 

 電子操作による知覚範囲は地上において1kmの範囲。地下探索はやはり障害物の密度が高いので、距離は半分程度に落ちる。

 幸い、それぐらいあれば蛇腔総合病院のカバーは十分だった。

 それでも音、と言う要素があるイヤホン=ジャックには地中探索能力では大きく劣る。

 ただ、電線、つまり私が最も楽に扱える自由電子が流れる場、それを介せば話は別。各施設を無視して私が分電盤室を押さえたのは、ここから施設の全容を把握するためだ。

 人の神経を見るように、建物の中の電線だけを見ることは容易。

 いま、私はこの場にいながらにして、蛇腔総合病院とその隠し施設の全容を把握できている。

 

「ミルコの進路上に、脳無の製造、保管用と思われる機器類多数。給電カット中。また、霊安室以外の隠し通路に脳無らしき反応多数。殻木は発見次第、落とします」

 

『やむを得んな。任せた』

「はい!脳無が動いた!私はまだ動けないから警戒よろしく!」

「はっ、もう見えてんぜ。かかって来やがれ、この有象無象共がぁ!」

「デクは怪我だけは避けて!スタミナも温存!」

「はい!」

 

 一般の入院患者の退避は終わったようだ。地上施設の電源は照明を残して一気に落とす。自家発電装置は警察が真っ先に押さえている。

 殻木が研究に使うサーバーと思われる経路への給電も切った。

 無停電電源装置(UPS)があるだろうけど、研究者としてまともで、データの保全を優先するならUPSに切り替わった時点でサーバーが停止処理に入る。いっそクラッシュしても構わないし。

 そうすれば追加の脳無を目覚めさそうにも、制御機器が反応しないから不可能になる。

 

 これまで逮捕、いや、捕獲された脳無のデータから、本来は死体である脳無の起動に高電圧が使われている可能性が高いらしい。

 まるで物語のフランケンシュタインだ。

 改造人間と言う意味では同類だし、ある意味でオマージュなのかもしれない。リアルでやるなと言いたいが。

 

 周辺を捜索していくと、ある意味お約束というか、個性による転移があるから大丈夫と思っていたのか、行き止まりとなっている場所に殻木を発見した。

 それと、アレは死柄木?……今は後回し。カプセルの中だからとりあえず無害だろう。

 

「ミルコとルミリオンは進路そのままで大丈夫です。殻木を発見。落とします」

『……この距離でか?ったく、おっかねぇな。どうせ本番はこの後だろ。問題ないなら好きにしな!』

「はい。全機能休眠(オールスリープ)

 

 勿論、好きにしますとも。超長距離攻撃が可能、と言うのは、街中のヴィラン退治と違って、人目や標的の取り合いを気にしないでいいシチュエーションにおいて無敵と言う事なんです。

 ロングレンジミサイルは偉いのだ、と古い本で白いダークエルフが言っていた。

 

「警戒!おそらく転移!」

 

『見えてるよ!ってかクセェ!!神野や福岡のアレだ!』

 

 資料で見た、オール・フォー・ワンが使う異臭を伴う転移。

 この状況下で誰を転移させたのだろうか。

 

『荼毘だっ!!』

 

 この状況で炎使い!?群訝山荘の方はどうなったんだろう。

 

 

―――Side:ホークス

 突入が始まった。予定時刻通り。

 スケプティックが慌てていたから、蛇腔病院の方にも奴が作った人形でもあったか、あるいは突入するヒーローに気付いたか。

 セメントスが建物を文字通り割って、突入路を作る。

 個性・増電で行った大規模制圧攻撃を雄英生が止めていた。たしか、チャージズマ。あのエンデヴァーと一緒にいたお姫様の双子の兄貴だったか。

 アッチは普通の電気系個性なのね。それでも中々の練度。ほかの子達もかなり強い。今年の雄英生は凄いねぇ

 

「それに引き換えこっちときたら……」

「ひぃぃぃぃ、殺さないで殺さないで、ごめんなさい、ごめんなさいぃ」

 

 流石に殺すほどのことはないが、広域制圧能力と言う点でマスタードを放置するのは危険。他の人海戦術隊メンバーもそうだが。性質としてはミッドナイトのそれに近い。悪意が乗る分の厄介さもある。

 不確定要素になりうるので制圧に来たのだが、少し早まったかもしれない。

 旧異能解放軍メンバーに殺される前に保護と考えたのが甘かったか。用心のために展開しておいたザコ羽根が数枚、炎に焼かれて消えた。

 

「……んだ。やっぱ、ホークス、テメエはそっち(ヒーロー)側か」

「やあ、荼毘……いや、轟燈矢君……危ないね。個性は人に向けて撃っちゃいけません、って教わらなかった?」

「生憎と、あのクソオヤジは火力のあげ方しか教えてくれなくてよ」

 

 正体を暴かれたってのに動揺もなしか。

 

「お、おぉぉい、だ、荼毘、な、仲間だろ、た、だす、け、ひぃっ!」

 

「あ゛?仲間?……寝言を言うなよ。「ヴィラン連合なんてどうでもいい」だっけ?あと「復讐に力を貸せ」だったっけ?なぁ、連合じゃなく、解放戦士でもねぇなら、テメエは敵だよなぁ!」

 

 足から噴き出る高温の炎。とっさにマスタードを抱えて飛びのく。

 

「嘘だろっ!……でもまあ、羽根(ぶき)はだいぶ減っちまったなぁ?」

「……仲間も燃えるところだったぞ!」

 

「人の話聞いてないのか?ソイツは仲間じゃない。俺を利用しようとした蛆虫だ。不快な虫は踏みつぶして処分しねぇとなぁ……そうだろう?ヒーロー?」

 

 コイツ……個性の相性が最悪の上に、閉所。差し当たってはマスタードを逃がさねば。

 ヴィランであってもまだ子供。更生の余地なんて期待できないほどに腐っているが、簡単に殺させるわけにはいかない。

 

「俺を?俺たち連合を、じゃないのかい?轟燈矢君?」

 

「お前がその名前で呼ぶなよ、鷹見啓悟。俺を、だ。あぁ、俺も連合も死柄木もどうでもいいんだよ。あぁ、偽ヒーローのあのクソオヤジを殺すつもりで連合を利用しようとした。そうだ、偽物を殺し尽くせばあの野郎も殺せる。そう、俺はステインの意思を全うし、すべてを焼き尽くすんだ!!」

 

 全身の火傷の痕からさらに肉が焼ける匂いがする。コイツの火傷痕はやはり自分の強すぎる個性のせいか。流石に死を覚悟したのだが、その炎は俺を焼くよりも早く、あらぬ方向に向けられた。

 

「なんだよ、トカゲ……スピナー、なんの用だ」

 

「なに、そこの裏切り者のガキ。せめて一時は仲間と認めた者の手で楽に死なせてやるのも慈悲と思ってな」

 

「へぇ、ならなんでお前の殺気は俺にも向くよ」

「ひぃっ、い、いやだ!俺は死にたくない!」

 

「荼毘もマスタードも旧解放軍の連中を雑に扱いすぎだ。連中の粛清リストに名前載ってるんだ。死柄木も居ねぇし、ヒーローに潰される前に混乱に乗じてって、連中を止めきれなくてよ。ならせめて、仲間のよしみで、と思ってな」

 

 憐れみと同時に何というか澄んだ殺気。羽根の付け根がビリビリしてる。強い。

 

「へぇ……トカゲの分際で俺を……あ?あぁ、そうか、いいぜ……氏子さん」

 

 荼毘の口から福岡で見た臭い泥が吐き出される。しまった逃げられる!

 

「ドクター!?何考えてやがる!おい、応答しやがれ!!」

「ワリィなぁ、俺はお前には殺されてやれねぇや。あばよ、スピナー、ホークス」

 

 その言葉を最後に荼毘の姿が消えた。

 けど、窮地なのは変わらない。いくらか生存率は上がったけど、スピナー相手に今の俺がどこまでやれるか。

 

「ホークス!お前ヒーローなんだから、俺を助け―――」

「一度、ヴィランとして生きたなら、最後まで貫けよ、ガキ」

「うぉっ、そう簡単に、殺させるわけにいかないんだよ!」

 

 スピナーのナイフが額に突き刺さるのを、羽根で防ぐ。ふぅ、ギリギリ。

 

「……腐ってもヒーロー、か。ホークス」

 

「できれば引いてほしいね。この子は俺が責任もって、司法の裁きを受けさせるから。諸々やらかしてるから、今度は出てこれないと思うけど」

 

 こいつはステインに感化された原理主義者だけど、全くそれに固執してるわけじゃない。現実を見て判断できる。情もある。旧解放軍に殺されるのと、自分で殺す、タルタロスで生かさず殺さず。それを天秤にかけている様子が分かった。

 

「一つ、教えろ。お前にとって、ヒーローとはなんだ?」

 

 ほんのひと欠片でも嘘が混ざっていたら、俺、死ぬな。

 

「エンデヴァーさんだよ。俺の両親は壊れてた。ヴィランとそれをかくまって依存した弱い女。エンデヴァーさんに親父が逮捕されて、架空だったヒーローは現実になった。スピナー、俺はな、ヒーローが暇を持て余す世界が欲しいんだよ。

 俺が穢れて、みんなが安心できるようになるんなら、いくらでも穢れてやるよ」

 

 何を思ったか、スピナーは手にしたナイフを鞘に戻した。

 

「わかった。お前とソイツのいの―――――――ぬぉぉぉぉっ!!」

 

 話の途中で、真っ黒い拳がスピナーを吹き飛ばした。

 

「ホークス!無事か!!」

「ツクヨミ!?」

 

 作戦通りなら後方に下がっていたはずのツクヨミのダークシャドウがスピナーを横合いから殴り飛ばす。いきなりの不意打ちにも、持ち前のタフネスで耐えたらしいスピナーは殴られた勢いを殺そうともせず、建物外に吹き飛ばされた。

 

 つよくなったなぁ……ツクヨミくん。けど、これは喜んでいいのかねぇ?

 まぁ、いいか。スピナーを引き込む機会は又あるだろう。

 

「ははっ、すげぇ……ヒーロー、だ、なぁ」

 

 今日のところは、この頼もしいヒーローの成長を単純に喜んでおこう。

 

 

―――Side:スピナー

 あ~、痛ってぇ……ちょっとは強くなったと思ったけど、アレが学生のパワーかよ。弱いなぁ、俺。

 マスタードを殺さずに済んだのは……よかったか、な。殺しなんてやらねぇ方がいいに決まってるんだし。

 

 荼毘は……多分、ドクターが呼び寄せた。あっちはおそらくエンデヴァーがいる。

 アイツの狙いはエンデヴァーのようだからむしろ本望だろう。ただ、助からないとは思うけどな。

 

 さて、これからどうすっかねぇ

 すでに負け戦だろ、コレ。

 指揮系統も何もグチャグチャ。立て直すにしても、リ・デストロや解放軍系の幹部は地下。抜け出すのもまだ時間がかかる。

 このあたり、死柄木なら何て言うかな?所詮軍隊ごっこ、かな?

 その死柄木はドクターの所だが、この様子じゃ向こうにも手が回っていると思っていいだろう。

 超常解放戦線11万の大勢力と言っても、ここにいる幹部連中や戦闘力上位の上澄みが押さえられたら終わりだ。地方の拠点は精々がそこらにある犯罪グループ、死柄木の言う革命サークルでしかない。

 逃げて死柄木と合流するか。奴もだめならいよいよ1人で活動するか?

 

 それともここで徹底抗戦をするか?集まったヒーロー共の半数ぐらい地獄への道連れにすれば相応に、世に警告を……いや、違うな。

 

 死柄木の望みはすべての破壊。

 俺の望みはステインが望まれた真のヒーロー社会の実現。

 ただ、ステインの主張に具体的な世界観はない。行いの結果としてのヒーローと言うが、そもそもステインが認めたオールマイトですら現代の職業ヒーローのシステムの中で報酬を得て生活していた。

 なら、真のヒーロー社会で求められるヒーローとはなんだ?

 解放論者の言う自己責任の名のもとに個性を好き勝手に使う事か?強けりゃ偉い、ってのは間違っちゃいないが原始的過ぎる。

 ステインはヒーローのありかたに疑問を投げかけた。それが世の破壊にも向いたが、本質はもっとシンプルだ。言ってしまえば、こうあって欲しいって願望だけだ。

 職業としてのヒーローを全否定できない矛盾をはらむなら、落としどころとしては、高いモラルとある種の清廉さを併せ持ったプロヒーローが世界を照らす社会。

 

 ステインはオールマイトのみを唯一の本物とした。逮捕される際に緑谷出久、デクとか言うヒーローを本物、少なくとも生かす価値があると認め、助けている。そもそも本物は多くても構わない。

 俺から見れば、この場で戦っている連中は、敵味方問わず、どいつもこいつも力強く輝いていやがる。マスタードは、ありゃ、芯まで腐ってたけどな。

 

 だが俺から見て輝いているから本物、とは限らない。

 ここで圧倒的にヒーローが勝ったらどうなる?解放戦線の情報網を信じれば、これほどの規模を持つヴィランなんてこの国どころか世界中見渡してもレアだ。

 本物のヒーローが相手するに値しない、矮小なヴィランしかいない世界?

 そんなぬるま湯、今は本物でも、堕落し、腐らないと誰が断言できる?

 

 練磨しなければならない。鍛錬を強いなければならない。ヒーローを磨き上げるのに必要なのは試練。試練に必要なのは俺達(ヴィラン)

 

 本末転倒、矛盾もいいところだが、本物のヒーローを求めるなら、本物の敵がいる。なるほど、死柄木が言う、ヒーローブリーダーってのは間違いじゃないな、コレ。

 

「ははっ、なんだ。簡単じゃねぇか。要は、逃げる理屈を連中にも用意してやりゃいい」

 

 ここにいる超常解放戦線のメンバーは、刹那的な利益のために罪を犯す有象無象と違い、自らの理想を実現するために戦う、真の敵(ヴィラン)。連中はこのまま滅ぶだろう。残る10万弱、こいつらの質は正直判らない。

 ならば一部でも逃がそう。未来のヒーローのため、生きて糧となってくれ。

 気合を入れろ!スピナー!一世一代の大芝居だ!!

 ステインよ!これが俺の答えだ!!

 

 

「聞け!解放戦士諸君!!我々は今、ヒーロー共に包囲され、殲滅されつつある。

 だが!諸君らが、リ・デストロが!死柄木弔が求めた真の解放!それをこんなところで終わりにするか!

 否!断じて否!!

 我々は戦い続ける!

 生きて解放思想を後世に残さんと欲する者よ!俺と共に一丸となって駆けろ!!

 ヒーローが憎いものは武器を取れ!立ち上がり、戦え!血路を開け!解放思想を世に残すための礎になれ!!

 これまでと同じだ!市井に紛れ、再度の決起を求め、新たなるリ・デストロを、死柄木を!解放者を生み出せ!!」

 

 

 包囲網を突破したらあとはバラバラに散って逃げれば、多少は逃げきれるだろう。

 

「貴様ぁ!ヴィラン連合のスピナーだな!貴様にも逮捕―――」

「うるせえよ。今は真贋すべからく、俺の前に立つなら―――死ね」

 

 コイツもよく知らないヒーローだ。ヒーロー飽和社会、いろんな奴がいるけど、情報もなしに一撃だ。どうせ大したことねーからいいか。

 さて、後は逃げの一手だ。あとはギガントマキアが起きてくれたらなぁ

 動かないってことは死柄木はまだ目覚めていないか、すでに逮捕されている。ここを突破できたら、まずは奴の安否を確認しよう。その上で、俺自身がどう動くか決めればいい。

 

「行くぞぉ!逃げたい奴はついてこい!戦いたい奴は好きにしろ!!」




とりあえず、序盤戦はヒーローサイドの圧勝

荼毘に関しては、最初はここでスピナーに殺される予定でした(惨い
流石にそれはないかなー、と、やっぱり親子のご対面をしてもらいます。
そしてスピナー君、扇動スキルに目覚めましたw
なんだかんだ、本作において一番、ラッキーな結果を迎えたキャラだと思います。連合キャラでは一番人間味があって好きなので、かなりの贔屓入ってます。

余談ですが「白いダークエルフ」は国産テーブルトークRPGの草分け、ソード・ワールドRPG(旧ルール)のTRPGリプレイ第3部に登場するプレイヤーキャラ、スイフリーです。
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