雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

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第100話 決戦(2)

―――Side:荼毘

 直前までドクターが支離滅裂なことをがなっていたけど、今は静かだ。

 先に逃げ出した?死柄木を置いて?

 しかもハイエンドが一体も起動していないで残ってる。あのジジイが攻め込まれた状況で出し惜しみ?ありえねぇだろ。何が起きている?

 んで、こっちにエンデヴァーがいると言っていた。ならもう氏子さんはどうでもいいか。既に逃げたか死んだか、どっちかだ。

 

「ちっ!ミルコかよ。相性考えて呼んでくれよな、氏子さん!」

「荼毘だっ!こんなところで炎使いかよ!!」

 

 ちょうどのタイミングで部屋に飛び込んでくるミルコ。呼ぶのが遅ぇよ!通路で迎え撃てば楽だったのによ!

 

「遠慮はするなよ!ブルー!やっちまえ!!」

 

 無線?ブルー……?この違和感、アイツか!雄英のガキ!鬱陶しいが、遠くから見てブレーカー落としてる程度だろ。見えないところから何ができるってんだ!

 

「っと、あっちはエッジショットにホークス。こっちはエンデヴァーにミルコ……とルミリオン?だっけ?まぁ、贅沢なことで……なにっ!」

 

 ルミリオンが消えた!?そうか、奴の個性は確か透過……ちっ!炎が出ねぇ!イレイザーヘッドか?どこに潜んでいる!?

 

「パワー!」

「がぁっ!」

「よ、っと、このチビ脳無が転移元か。クセェな、カメムシかよ、ったく」

 

 くそ、こんな無様な目にあうなら、スピナーに殺されてたほうがマシだったぞ!

 

「ミルコ!ルミリオン!無事だな!そいつは、荼毘か。イレイザー」

「了解。ブルー、そっちはどれくらい持つ?……わかった」

 

 なんだ?まさかイレイザーと同じ個性がもう1人?なんだよそれ!?ブルー?あのガキが!?オール・フォー・ワンや改造もなしに、どうやってイレイザーの個性を……何だよそのバケモノ……

 

「エンデヴァー!……殺す!俺の炎で!くそっ!出ろよ!邪魔するんじゃねぇよ!イレイザー!姿を見せろよクソヒーロー!」

 

 俺の炎は最強なんだ。エンデヴァーだって焼き尽くしてやれるんだよ。

 だから邪魔するなよ。なぁ!

 

「到着しました。荼毘ですが、眠らせますか?」

「いや、先に情報を聞きたい」

「わかりました」

 

 わかってはいたけど、やっぱりコイツか。さっさと捕まえてマスタードにくれてやりゃよかった。いや、常にエンデヴァー、焦凍、緑谷、爆豪がそばにいた。

 所詮は金魚のフンの索敵屋、そう甘く見たのが失敗だった。

 そのイカレバケモノを守るように、爆豪、緑谷……それと焦凍。

 

「テメェが……くそ、合宿の時に殺しとくべきだったか」

「テメェにブルーアンバーは殺させねぇよ、荼毘」

 

 焦凍?なんでお前がそのバケモノを庇う?それをさらに庇うエンデヴァー、だから、なんでだよ!

 

「落ち着け、焦凍。貴様は群訝山荘にいたはずだ。そのミニ脳無の個性か?」

「……あぁ、それがどうかしたか?轟炎司さんよ」

 

 つまんねぇこと聞くなよ。アンタが俺に聞くべきは、もっと他にあるだろ。ほら、ほら、ほらぁ!

 

「ふむ……なぜ貴様だ?超常解放軍なら外典とか言う氷使いか、マスタードの方が状況に合うはずだ」

「……しらねーよ、ドクターに聞け」

 

 単にパニックになって付き合いの古い俺を優先しただけ。それだけの話だ。にしてもつまらねぇなぁ

 察しろよ、空気よめねぇ男だよな!エンデヴァー!!

 

「わかった。後は警察の仕事だな。無力化に2人の力を使い続けるのも拙い。眠らせてくれ、ブルーアンバー」

「ちょ、ま、話は―――」

「言いたいことは警察にどうぞ。では全機能休眠(オールスリープ)

 

 この、バケモノがぁ……クソ親父、ヴィランの本名ぐらい、聞け、よ……

 

 

―――Side:ブルーアンバー

 まさかここに荼毘が出てくるなんて。さっさと無力化できてよかった。それにこっちに大火力の持ち主が来たってことは、群訝山荘のほうが楽になったという事。

 

「おつかれ。それにしても、スゲェな、ここ」

「うん。人の悪意を煮詰めたような部屋だね」

 

 何というか、悪趣味の極みと言う場所だった。

 多数の脳無の製造用カプセルに、ハイエンドと呼ばれる個体らしい脳無たち。

 今はそれらすべてが電源を落とされたか、最小限度になったカプセル内で佇んでいる。

 

 

「おぉぉぉ、止めろぉぉォ!儂の、儂のハイエンドたちがぁぁ、マスターピース足り得る死柄木弔に触れるなぁ!!」

 

 情報が欲しいと、起こした殻木は荼毘のことなど忘れたかのようだった。狂乱状態で脳無と死柄木の心配だけをしていた。

 何とも見苦しい。

 動いていた脳無はすべて倒され、起動直前だったハイエンド個体は休眠状態を維持したまま捕獲……いや、押収されている。

 

 想定された被害に備えて、アクスレピオスからホワイトマウスも派遣されていた。そこで医学的な意見が欲しいと言うことで、殻木のデータを確認してもらっている。

 それはいいんだけどさ、スタンドアロンの個人サーバーだからって、ノンパスはやめようよ?楽でいいけど。

 

「せめて、せめてウーマンちゃん達5体だけでもぉぉぉ」

「女性型の脳無か、悪趣味だなご老人」

 

 こればかりは同意です。

 そしてこの秘密施設の最奥に眠る、死柄木弔。全身の神経が完全死亡寸前ぐらいに活動が低調。個性の方は、なんというか、実に奇妙な感じを受ける。

 一言で言えば、胎動と言うか、動いていないのに活発。デクのワン・フォー・オールの様にエネルギーに満ちたまま静かに澱んでいる感じを受ける。

 

「心臓が動いてないようだが?」

「個性の人工移植を行うためには面倒な手術と時間が必要なのじゃ、負担を和らげるために仮死状態とし、この装置は生命維持装置であり蘇生装置でもある!」

 

 善悪は別として、自身の成果をとかく誇りたいというのはわかった。

 

「待たせたね。私が来たよ」

 

「おう、オールマイト。こうして見ててもコイツを出しちゃならねぇって、ヤベエ感じが伝わるよ」

 

 ミルコの表情は真剣そのもの。私はそこまでの恐怖を感じないが、得体のしれない感じは受ける。この辺の感覚が、プロとしてくぐった修羅場の差だろうな。

 

「なぁ……本当にやるのか?このまま、心臓ぶっ潰したほうが良いだろ?」

「議論の場ではないが、俺も同感だ。どうだ、ホワイトマウス」

 

「正直、人道問題を別にすれば、私も同意見ですね。データを信じれば、彼が目覚めたら、このあたり一帯、塵になりますよ」

 

「……だそうだ。それでもやるのか?オールマイト」

 

「ふむ……確かに常識的に考えればその通りだね……ドクター殻木。聞きたいことがある」

「なんじゃ?事ここに至ってつまらん隠し事はせんよ」

「悪党なりの美学かな?まぁ、いい。ここで志村天狐君、いや、死柄木弔をそのまま目覚めさせたらどうなる?」

 

 その質問は理解はできる。生きているなら、司法の裁きがいるし、ただ前代未聞の生体改造を受けた複数個性の保有者、どうなるかなんて想像つかない。

 

「因子自体は定着しきっておらんが、死柄木の体の一部になっておる。この国の裁判は悠長だからの。安全な場所で安静に過ごせるし、多少ペースは落ちるが定着はする。その後は、オール・フォー・ワンと死柄木次第じゃが……」

 

 そこで言いよどむ殻木。その表情は自分の研究成果を誇る科学者のそれと、理解を拒む恐怖が入り混じったものだった。

 

「おそらく、死柄木の肉体は保有する無数の個性に対応すべく、成長、いや……進化を始めるじゃろう。神野以前に最大限貯めこんだ無数の個性を含有したオール・フォー・ワン!死柄木の崩壊!超再生!オールマイトに匹敵する肉体!それでなお足らぬ混沌を飲み込み、無限に成長する肉体、それが死柄木弔じゃ!!

 うひゃひゃひゃ!奴が、死柄木こそが!儂と先生の作り出した究極!個性特異点を超えるべく産み出した新人類!いや()人類!!

 マスターピース足るモノじゃ!」

 

 さらなる自慢を聞けば、泥花市を廃墟に変えた戦闘で、死柄木弔自身が持つ個性は大幅に成長したらしい。崩壊が連鎖するとか。

 それに加えて、オール・フォー・ワンの移植に伴う強化改造を受け、オールマイトに匹敵するパワーと、ハイエンド脳無と同じ超再生まで付与されている。

 つまり、完全な自意識を持った究極の脳無、ある種の生体兵器になり果てたのが、今の死柄木弔となる。

 しかもどう拘束しておいても、放置したら完成してしまう、と。

 

「今の話で決まりだ。死柄木弔、いや、志村転狐として彼を終わらせるためにも、彼が宿したオール・フォー・ワンを倒さねばならない。そして、オール・フォー・ワンとワン・フォー・オールの血塗られた歴史に幕を引く」

 

 他の理由として、司法の裁きを受けさせるためにも、無害化をしない事にはどうにもならない。

 あくまで人として、裁判を受けさせるというなら、無力化は必須。そのために最大の不確定要因であるオール・フォー・ワンを取り除くのは間違いではない。

 とはいえ、仮死状態の死柄木に対して個性を潰しにかかるのは、悪質なリンチととられかねない。かなりグレーな要素はあるけれど、そこは新旧ナンバーワンヒーロー・オールマイトとエンデヴァーの手腕に期待しよう。

 

 

 ホワイトマウスが殻木と荼毘の回収のため、警官隊と共にやってきた塚内さんに何か確認をしている。ただあまり良い結果ではなかったようで、ホワイトマウスは首を横に振っていた。

 

「どうしました?」

「うん、いや、ちょっと提案をしてみたんだけどね」

「……なるほど」

 

 多分、個性破壊薬かな。やっぱり残していたか。確かにアレなら、と思うけど許可は出なかったと。血清も残してあるだろうし、処置としては悪くないとは思うけど。

 

「結局、やるしかない、という事ですね」

 

 漠然とした不安感はあるけど、死柄木弔と言う、別に危機感知や野生の勘など無くても危険とわかる存在に気後れしてるだけだろう。

 なら、気合を入れよう。

 結局やるしかないと、エンデヴァーがため息交じりに頷いた。

 

「……わかった。ならば予定通りだ。警察や参加予定外のヒーローは直ちに退避」

「定着処理は50%で止めました。想定よりも、弱体化はすると思います」

 

 ホワイトマウスの言葉にエンデヴァーが首をかしげる。

 

「50%?完成まで4カ月。今なら7割強との見込みだったが……ご老人?」

 

「あぁ、その、なんじゃ、儂も表に少しは顔を出さんといかんし、使えれば強力な巻き戻し個性や解放軍から入手した個性を組み込めないか実験するのが、思いのほか楽し、いや、手間取っての」

 

 拘り過ぎた結果と言うか、遊びすぎてそうなったと。けれど、私たちにとっては朗報だ。この不気味な男の中に、壊理ちゃんの因子が取り込まれずに済んでよかった。

 

 ホワイトマウスは施設の停止を再確認して、安全圏に退避した。興味はあったようだけど、戦闘力と言う意味ではこの場では私に次いで低いので仕方ない。

 

 対オール・フォー・ワン、個性そのものと精神世界のような場所で戦闘と言うトンデモに参加するメンバーはかなり豪華だ。

 オールマイト、エンデヴァーの新旧ナンバーワンに、ミルコ、イレイザーヘッド、意外にもプレゼントマイク。

 ルミリオンは残念だけどここまで。戦力としては当てにしたいけど、個性「透過」があの空間でどのように作用するかが不透明すぎるし、検証の時間も惜しいので。

 そして9代目継承者デク。

 さらに本人が強く志願して、大・爆・殺・神ダイナマイト……あの、その名称、いいのかな?ついでに私が言うなって感じだけど、長いし、ダッサ。

 

 そもそも事情を話した場でそれ以上の話を聞くのを拒否したのに、何を勝手をと思うのだけど、緑谷君的には爆豪君にも一緒に挑んでほしいらしい。

 ヒーロー名すら決めていない仮免をそんな危険に晒せんと、渋ったエンデヴァーに渋々と開示した名がこれだった。

 どうも、先にベストジーニストに告げるつもりだったらしい。

 私は当然だが、接続役なので参加。そのガード役に、No6ヒーロー・クラストとショート。ショートはどちらかと言えば戦闘班に行きたいだろうけど、私の精神安定を優先してガード役だそうで。

 なら置いていったほうが良いのだけど、それはそれで本人が拒否をした。それに純粋な火力において、トップヒーローにも劣らないのは事実なので、予備戦力を兼ねる。

 ほか、異常があった場合に即脱出をするための人員としてリューキュウが待機する。いやホントに贅沢な布陣。

 

 そういえば、ヒーローたちが何をするかを知って、殻木は酷く慌てていた。

 個性に宿る意思を殺しに行こう、っていうのは普通、考えないよね。でもその慌てぶりが実現性の高さを教えてくれる。

 

「では。始めます。"One for All" and Heroes connect to "All for One" ,let's go to the battle stage.」

 

 英文を使うのは格好つけ……の部分は否定しないけど、単語の意味がシンプルでイメージがぶれないようにする一種の自己暗示。個性・電子操作が全力で、死柄木弔と緑谷君、デクを核として、この場全員を”繋いだ”。

 

 

 

「なんだ、あれは」

「こちら側が、ワン・フォー・オール。あの天にあるビル群はオール・フォー・ワンでしょう」

 

 ワン・フォー・オールの方は前回に見たのと同じ、荒廃した部屋の風景。

 私たちからは空中に二人の男性が立っているように見える。

 若いほうが死柄木弔。USJで見た時から1年弱。改めて見ても別人のような凄味がある。

 もう1人、アレがオール・フォー・ワン。

 

「ふ、ふふふふ……思ってもいなかったよ、弟よ。まさか君の方から僕の下に来てくれるなんて」

「……先生?」

 

 オール・フォー・ワンの心象風景が変わる。ワン・フォー・オールに合わせたのか地続きの大地に代わった。だが、同時に現れたのはオール・フォー・ワンに従う、従うことを強制された個性らしい人影の軍勢。

 彼らを睥睨する玉座にあるのはオール・フォー・ワン。傍らに立つのは死柄木弔。

 

「僕がなぜ、君を、ワン・フォー・オールを欲するか、わかっているかい?」

 

「貴様は魔王に憧れた。魔王は滅びず、幾度でも甦る。そのために、ワン・フォー・オールを欲したのだろう?己の意思と記憶、蓄えた個性ごと確実に次の依り代に乗り移るための箱舟として」

 

「その通り!流石は我が弟。よくわかっているじゃないか。自身がやっていることでもあるから、当然だね」

「一緒にするな!」

 

「同じさ。違いは合意の有無だけだろう?さぁ、弟よ。僕と一緒に永遠を歩もうじゃないか」

 

 それは著しい差だと思いますよ。

 

「はん!御託はいいんだ!ここでお前が死ねば、すべて終わりってことだろ!?オールフォー!」

「あぁ、君はミルコだったね。正直、兎なんて、そそる個性じゃないんで引っ込んでいてほしいね。僕に従うなら、有用な個性の一つや二つ、分けてあげてもいいよ?」

「ふざけろ、殺す!」

 

 歯をむき出しにして荒々しく笑うミルコ。

 

「下らんやり取りはもういいだろう。奴を殺せばタルタロスの本体も、死柄木に移植された個性も終わるのだろう?ならば制圧するのみ」

 

「あぁ、エンデヴァー。折角ナンバーワンになったのに、オールマイトの軍門に下った気分はどうだい?僕は君にも注目してたんだぜ。その歪んだ力への希求。どうやら全部さらけ出して禊を済ませたつもりらしいけど……君、まだだぜ」

 

「何を言っている」

 

 揺さぶりをかけよう、と言うのは間違いがない。

 その後で出てきた言葉はとんでもないものだった。

 

「荼毘。彼は轟燈矢だ。あの偏執狂は君の前に立ちふさがらなかったかい?」

「なん……だと……」

「荼毘が……燈矢兄……?」

「え……」

 

 死んだという話だったけど、生きていた……ってこと?多分、オール・フォー・ワンのハッタリか、そうでないなら、自分達で隠して隠蔽し、死んだと思わせていた?

 親子の再会と言う雰囲気ではなかった。だから気にしなかったけど……なんていうか、性格が悪すぎる。

 けど、拙い。私以上にエンデヴァーとショートが動揺している。切り離すのは可能だけど、そうすると繋ぎなおすまでに向こうに対策を取られる可能性がある。

 動揺するエンデヴァーにオールマイトがその肩を叩く。

 

「エンデヴァー、奴のいつもの手口だ。奴と話をするだけ無駄だ。今は後に回してくれ。あっつ」

 

 消えかかっていた炎が再度、全身から吹き上がる。

 

「わかっている。俺を誰だと思っている。()ナンバーワン」

「頼むぜ、ナンバーワン。それにショートも!」

「げほっ、わ、わかりました」

 

 背中を思いきり叩かれて咽てる。もうちょっと加減を、と言うか、わざとか。

 こういう事を自然にやれるから、ナチュラルボーンヒーローなんて言われるんだよなぁ、オールマイトって。

 

「ふぅっ……考察も後悔も後回し。今やるべきは一つ」

「あぁ、それにヤツをこれ以上調子に乗せるな。焦凍、最短でケリをつける」

「わかった」

 

 エンデヴァーの言っている「ヤツ」ってオールマイトのこと言ってません?

 

「さて、これでケリをつけようぜ。オール・フォー・ワン」

 

「あぁ、無粋だねぇ、オールマイトそして、弟子君。こんな珍しい現象、彼らの感想や思うところを聞いてみたってかまわないだろうに――」

 

「フルフォルム100%、さらに発勁、疑似150%!!」

「「「「デトロイト・スマーーーシュ!!」」」」

 

 うん、なんというか、9人の継承者皆さんが、オールマイトの必殺技を放つっていうのは、なんとも凶悪。これができるからこそ、この精神世界と言うか、個性のみで構成された世界での決戦を挑んだのだろうけど。

 現実だったら、神野どころではない被害を生む強力無比な一撃。

 

 だが、その強力な攻撃だが、徐々に破壊が復元されているようだ。

 

「ふぅむ……超再生は個性のみの世界だと無生物のオブジェにも作用するのか。実に興味深い。いや、これは個性自体が傷ついたとみるべきか。しかし超回復の効きが弱いな」

 

 余裕の態度を見せるオール・フォー・ワン。自らに従う個性の軍団によほど自信があるのだろう。

 

「弔、君にも働いて……あぁ、肉体はまだ仮死状態で本人は夢の中か。やれやれ周到なことだ。処理もどうやら不完全なうえに、肉体、脳が働いてないから、こちらの私を使うとしても、思うように動かせない……反応の悪さから、いいところ、3、4割と言ったところか。弔が動けないから、彼からのリンクも切れないし、私が切ると一方的に倒される……よく考えたものだ。なら仕方ない。弔、君はそのまま眠るといい。永久にね」

 

「……先、生?」

 

 死柄木弔の姿が薄れる。消えた、と言う感じではないが、オール・フォー・ワンの奥深い場所にでも封印されたのだろう。

 

「さて、君たちを倒し、弟の個性を手にすれば、僕は目覚め、完璧な魔王になれる。さぁ、私の可愛い個性達。私のために働いておくれ」

 

「「「ウォォォォォ」」」

 

 オール・フォー・ワンに従う個性の軍勢と歴代ワン・フォー・オールにトップヒーローたちを加えた絶望的なまでの数量差の戦いが始まった。

 

「させん!ショート!今は合わせろ!」

「おう!「赫灼熱拳ジェットバーーーンッ!!」」

 

「ハウザァ!インパクトぉっ!!」

「おぅ!なかなかやるじゃないか、ダイナマァ!満月乱蹴(ルナラッシュ)

「るせぇっ!獲物横取りすんじゃねぇ!」

 

 エンデヴァーとショートのジェットバーンが押し寄せる無数の個性達を吹き飛ばす。

 それに続いてダイナマイトとミルコが抜けてきた敵を吹き飛ばす。

 

 ワン・フォー・オールの歴代の方々は遊撃となってこの精神世界内から湧き出る奪われた個性達と戦っている。

 

「出る。ショート!お前は予定通りブルーアンバーを守れ」

「わかった」

 

 言いながらエンデヴァーの背中に氷結で氷を張り付けている。精神世界だから冷やす必要はどれだけあるか疑問だけど、同じ感覚で行動する方が良いだろう。

 

「よし、ブルーアンバー、私の傍を離れるでないぞ」

「はい。頼みます。クラスト」

 

 個性・盾を持ち防御に特化したヒーロー、護るという意味では切島君、烈怒頼雄斗(レッドライオット)と同じ方向性のヒーローだろう。

 

 出力3割と言う発言がどこまで本当かはわからない。事実、デク達歴代継承者の初撃は結果的に効かなかった。現状が互角なら、乗り込んだメンバーの戦力に期待するしかない。

 

「俺らのダチを弄んだ罪、ここで捕らえて償わせてやるぜ!YEAAAAAAAAAH!!!」

「ほうほう、音波攻撃まで再現されるか。素晴らしいね。しかし派手だが、君も要らないねぇ」

「マイク!奴と必要以上に話すな!!」

「あぁ、君は欲しいね。イレイザーヘッド。君の個性は実にレアだ。ドクターに複製させるから、是非、譲ってくれないかな?」

「寝言は寝て言え」

「残念だ。しかし困った。君のおかげで身動きが取れないね」

 

 イレイザーヘッドの個性・抹消は個性のみで形成されたこの場では一種の金縛りとして機能する。その意味では無限サンドバックにできるのに、ワン・フォー・オール歴代の攻撃を耐えきって、徐々にではあるが回復している。

 超回復の限界まで粘るか、または別の要素があるのか。

 精神世界と言うこともあるのか、はたまた本当にこれだけの個性をその身に宿しているのか。多勢に無勢、オール・フォー・ワンの下へたどり着けるのだろうか。

 

「おぉらぁっ!徹甲弾 機関銃(APショット マシンガン)!!見たかぁ!」

「いやいや、中々派手な爆竹だね。少年。名を聞こうか?」

 

「大・爆・殺・神!ダイナマイトだ!テメェをぶちのめす男の名前だ!憶えとけ!この金玉頭ぁ!!」

 

「ふ、ふはははは。まるで小学生だ。その脆弱さで、この場に立ったことが君の罪だよ、大馬鹿神ダイナマイト君、だっけ?衝撃反転」

 

「ぐあっ!」

「かっちゃ、ダイナマイト!」

 

 飛べるメリットを活かして一気にオール・フォー・ワンに肉薄しようとしたけれど、オール・フォー・ワンに従う個性の一人がバリアのようなものでダイナマイトの爆破を本人に返していた。衝撃反転の個性の持ち主だろう。

 同じように、ミルコの踵月輪(ルナリング)やエンデヴァーの赫灼ですら防がれている。

 倒されたはずの個性達も気が付くと復活しているが……都合、良すぎないかな?

 思わず愚痴りたくなるくらい、弱体化されてなお、オール・フォー・ワンと言う個性は強かった。

 この状況、何か間違っている。今の状況、私は明らかに火力不足。

 ただこの場にみんなを連れて来ただけではなく、何かできる事があるはずと、必死に考え続けていた。




タイミング的にギリギリかギリギリアウトのタイミングで荼毘を強制移動させてみましたが、オリ主の遠隔干渉を解禁すると相手になりませんね。
荼毘側からすると無理ゲーすぎる。
なので、会話だけで……と思ったら、エンデヴァーがいちいちヴィランの素性を聞くような光景が想像できませんでした。

私が想定する荼毘は、不利な状況で自ら名乗るタイプじゃないようです。上から目線で、愉悦をにじませて名乗りたがると思ってます。


そしてAFOがそこをつかないはずもなく。嫌がらせだけなら作中トップです、アレはw

正直、覚醒前にカプセル状態の死柄木を押さえておいて、戦闘を行う理屈付けが一番面倒でした。
作中のヒーローって現行犯への対処が主なので。無抵抗状態の指名手配犯に一方的に殴りかかるのはヒーロー側が処罰される可能性があると想定しています。
この決戦の被害を押さえようと、設定を真面目に考察すると法律が立ちふさがるんですよね。職業ヒーローが割と重い足かせになります。
その辺を殻木に補完してもらい、「制御不能な危険な生体兵器に改造された死柄木を止める」と言う建前でドンパチやってる状態です。
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