雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

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第11話 USJ襲撃事件翌日

 ヴィラン連合によるUSJ襲撃事件の翌日は、学校は臨時休校となった。

 特に課題も出ていないので1日フリーとなる。

 ちょうどよいので、週末に組立をするつもりだったトレーニング機器を組んでしまう。

 

「よし、これでトレーニング室使えない時でも大丈夫、と」

 

 正直余計な出費だが、防音がしっかりしてるなら設備を使わない意味はない。

 早起きしてランニング以外の運動もこなせるのは有意義だろう。

 肉体増強系にはどうやったって劣るのだ。しっかり鍛えないと。

 

 慣らし運転もかねて、一通りのメニューをこなしたところで、ちょうどい時間だから近所の安売りスーパーへ。平日ならセール品も手に入れやすいだろう。

 

「あれ、麗日さん」

「あー、茉芭(まつは)ちゃん、奇遇だね」

 

 スーパーに入ったところで、麗日さんとばったり出くわした。

 雄英生が住むアパートが多い地区だし、こんなこともあるか。

 改めて見渡すと、ちらほらと雄英生らしい客の姿がある。

 

「あ、そうそう。私のことはお茶子でいいよ?」

「そう?じゃあ、お茶子ちゃん、折角だし一緒に回ろっか」

「うん」

 

 回るのがおしゃれなファッションビルとかではなく、食品スーパーというのがなんとも所帯じみているが。

 

「さて、今日は肉と魚、どうするかなー」

「私は今日は特売狙いかなぁ、ちょっと寝すぎちゃって、まだあるといいけど」

 

 狙いの商品は何かと聞くと、1袋30個入りのお餅だとか。お値段298円。

 確かにめっちゃ安い。

 多分、季節的には売れ残りの在庫処分だろうなぁ

 

「良かった、まだあった!」

「うーん、お餅は普段あまり食べないから、私はいいか」

 

 購入制限があるなら、買って譲ることも考えたけど、その必要もないみたいだし。

 3袋分だから2か月ぐらいは余裕で持ちそう。

 どれだけお餅好きなのか。

 

 

「あ、サバが安い。今日は鯖味噌にして、朝は塩焼きにするかー」

「ホントだ。私も買っていこう。あれ?でも1匹でいいの?電気君の分は?」

「電気とは別に暮らしてる。お互い一緒に居なきゃってわけじゃないし、見られたくないものあるじゃない。特にオトコノコは」

 

 視線をお茶子ちゃんの凶悪な膨らみとか、腰のラインに向けると意味が分かったのか、真っ赤になる。

 

「か、からかわんといて」

「アハハ、ごめんごめん。まぁ、ヒーローやるならちゃんと自立しましょう、ってことだね」

 

 お餅の袋が3つ入って重たい買い物籠に更にサバが追加。

 重さとして誤差だけど……この先にある特売の鶏肉はお互いねらい目だよね、ってなると、最終的にかなりの重さになるが大丈夫なんだろうか。

 って、お茶子ちゃんなら重さは関係ないか。学外なんで、バレなければだけど。

 あぁでも重たそうにしているから、自重してるらしい。

 

「カート、取ってくるから待ってて」

「あ、ありがとぉ」

 

 その後も、タイムセールという悪魔の誘惑と戦いながら、食材を購入していく。

 これは荷物持ちしたほうがよさそうだね。

 

「ううう、お買い得品に調子に乗って買いすぎた~」

「ドンマイ。手伝うよ。部屋どのあたり?」

 

 聞けばお互い逆方向。

 お茶子ちゃんの住んでいる部屋もこのスーパーは徒歩圏内ではあるけど、電車だともう1駅向こうが最寄になる。地形的に線路が弧を描いてるから仕方ないね。逆にそうでないと、お茶子ちゃんの部屋は駅から遠すぎるし。

 私の部屋のほうが近いので一旦そちらに寄ってから、お茶子ちゃんの部屋へ行くことに。

 

「ふえ~、豪邸やないかい!」

「いやいや、ただの女子専用アパートだからね!?」

 

 あー、そういえば、雄英生が主な住人なのに、引っ越しの挨拶以降、他の住人とはまだ会っていないなぁ

 先輩とのコネクションはあって損はないのだけど。

 そういうのがやり易かった、朝食付きの第一候補がダメだったのは地味に痛い。

 

「ちょっと散らかってるけどごめんねー」

「ううん、全然。綺麗じゃない」

「お掃除ロボって偉大だよね。ちょっと休憩してから、お茶子ちゃんの部屋に行こう。生もの出して。冷蔵庫で預かるから」

 

 ソファーに座ってもらって、預かった肉と魚類を冷蔵庫にしまう。

 後で移動するときは保冷剤あったほうがいいか。

 

「冷たい飲み物、麦茶しかないけどいい?他が良ければ用意するけど」

「麦茶好きだからいいよ」

 

 お茶とお茶請けに買ってきたシュークリームをだす。甘味は正義。

 

「それにしても1人暮らしには広くない?茉芭ちゃんって実はお嬢様?」

「いやいや、業スーとか激安スーパー大好き庶民ですよー」

「こんな広いところの家賃出せる庶民がおるかーい!」

 

 錯乱気味のお茶子ちゃんがかわいい。

 

「いやー、入学前に投資で一山当てたの。親が金出してる電気のほうは3駅向こうの普通のアパートだよ」

「格差社会の闇を見た!」

「私が稼いだお金で通ってるんだから、誰にも文句は言わせなーい!」

 

 あっちは親のお金。こっちは自腹。社会的には高校生なのに、どちらがマシかはまぁ、いっか。

 

「もう少し狭くてもよかったんだけどさ。条件に合う場所がなくてねー」

 

 そうは言ってもそれほど無理難題を言ったつもりはない。

 女子専用、監視カメラとセキュリティ、1Kなら7畳以上できれば1LDK、風呂トイレ別までが必須。出来れば防音や共用のジム。朝食があればさらに良し。

 いや、十分贅沢だったか。

 第一希望だったとこは1LDKだったのだが、トラブル(*1)の結果、2LDKのこの部屋に。

 そういった経緯を話すと、微妙に複雑そうな顔をした。

 

「私はさ、お父ちゃんとお母ちゃんに楽させたくて、ヒーローを目指したの。要はお金なのよね。茉芭ちゃんは、もう自分でこんなところ住めるくらいに稼げてるんでしょ?何でヒーローになりたいの?」

 

「小さいころに憧れたヒーローがいたの。その人みたいに真っ直ぐ背筋を伸ばして、自信をもって笑って誰かを助けたい。そう思ったから。それが切っ掛け。雄英を受けたのはそれが半分」

 

「半分?」

 

「そ。後は幼稚な反発。『お前の弱個性では雄英なんて受かるはずない。受けるならすべて自分でどうにかしろ』だって。親が言うこと-?って感じで捻くれちゃってさ」

 

 個性と希望進路との向き不向きは常に付きまとう。

 お茶子ちゃんは悪いこと聞いちゃったという顔をしていた。

 

「両親とは一応は和解済み。つまんない話してごめんね」

「ううん、聞いたの私だし。じゃあ、今は理想に向けて一直線!かな?」

「かな?理想って、蜃気楼みたいなもんだから、いつまでも届かない気がするけど」

「あの、さ……そういう理想がある人から見ると、お金目当てって、やっぱ不純、かな?」

 

「え?なんで?電気なんかヒーロービルボードに載ってモテたいとか金持ちになってモテたいとか平気で言うよ。切っ掛けなんて何でもいいじゃない。金に見合わない仕事(ヴィラン)だから逃げる、とか言うなら軽蔑するけどさ」

 

 とっかかりは何でもいい。

 職業としてのヒーローなんだ。収入目当ては立派な動機でしょう。

 

「そっかー……誰かにそう言ってもらえると安心する」

「どういたしまして。でも、緑谷君に言ってもらったほうが嬉しいんじゃ?」

 

 おお、瞬間湯沸かし器。

 判り易くて良き。むくれてしまったお茶子ちゃんに手を付けていなかったシュークリームを献上して許してもらった。

 

 そのあと、気分を変えてお部屋探索。

 機材を置いたばかりのトレーニング室に「贅沢すぎる!」と卒倒されかけたけど、休日に使いに来てもいいよ、と言っておいた。

 

「話し込んだらちょっと遅くなったね。鯖味噌でよければ食べていく?」

「茉芭ちゃんの手料理は魅力的だけど、荷物もあるし遅くなると悪いから、また今度」

「じゃあ今度、お泊りでもしよっか。響香とか三奈ちゃんも呼んで」

「うん!」

 

 日が落ちる前に、お茶子ちゃんの荷物を持ってお部屋まで送っていった。

 何というか、フツーに安心できる部屋だった。

 そしてラッキーなことに、ちょうど帰ったところで偶然、3年の先輩に挨拶する事が出来た。

 

「貴方が新しく入ってた新入生の子か~、全然会えなかったよね~、不思議!」

 

 スタイルも顔もよいが、何とも不思議ちゃんな先輩だった。

 って、ニュースで名前が出たことのある先輩とか、これはものすごいラッキーなんじゃないだろうか。

 

「は、初めまして。ヒーロー科1-A上鳴茉芭と言います。波動先輩でよろしかったでしょうか?」

「あ、知ってるんだ。うれしいな~」

「は、はいっ!え、えっと、ニュースで少し」

 

 いや割と本気で憧れです。あんな風に自在に飛んでみたい。

 

「そっかー」

「あ、お世辞じゃないですよ。先輩の飛んでる姿、憧れます」

「うれしいなー、ありがとー」

 

 あぁ、うん、天然すぎて女子ウケしないパターンの人だ。

 ともあれ、折角だからと聞いてみたら、曰く、色々なタイミングが少しずれているらしい。

 そのせいで別学年の先輩方とは挨拶以上のことができていないとか。

 他の先輩方もどうやら気にしてくれているようで、朝のジョギングの時間帯を教えてもらえた。

 日を改めてお話する約束も取り付けたし、お茶子ちゃんのおかげで、実に良い日となった。女神かな?

 

 

 翌日、教室の中は昨日の報道についての話が主だった。

 報道に皆が映ったとか、雄英が襲われたんだから仕方ないというのはもちろん、オールマイトの強さにも話が及ぶ。

 

「強かったよなぁ、動きなんて全く見えなかった」

「それを捕まえて、怪我を負わせた黒いヴィラン、アレ、化け物だろ」

 

 それは否定できないなぁ

 介入のタイミングを計って集中していたから見えてしまったけど、もうアレ、気持ち悪すぎてさっぱり理解ができない。事情聴取でも話したけど、どこまで本当のこととして取り合ってくれたことか。

 セミプロ以下の学生が錯乱しての妄想、と思われても仕方ないことだけど。

 

 着席を促す飯田君が周りを全く見てない滑り具合を見せた後、三奈ちゃんが後ろの梅雨ちゃんに問いかける。

 

「梅雨ちゃん、今日のホームルーム、誰がやるんだろ」

「そうね、相澤先生はケガで入院中のはずね」

 

 後、1分ぐらいあれば「誰が来るか賭けようぜ」とかなったかもしれないが、間髪入れずドアが開き、現れたのはミイラ男……もとい、相澤先生。

 

「おはよう」

「「「相澤先生!復帰はえぇぇぇ!!」」」

 

「プロすぎる……」

「相澤先生!無事だったのですね!!」

「無事っていうかな、アレ……」

 

 いやほんと、怪我の内容から普通の生活に戻るだけでも数か月、いや、年単位の時間がかかるはずなのだけど、リカバリーガール以外にも医療系個性を駆使したのだろうが、凄すぎる。

 同時に、プロはそこまでしないといけないという意味で、背筋が寒くなる姿だった。

 

「俺の怪我はどうでもいい。何よりまだ、戦いは終わってねぇ」

 

 その一言に、クラス全体の空気が変わる。いうなれば、微量の殺気すら感じる気配。

 

 

「雄英体育祭が迫ってる」

 

 

「「「クソ学校っぽいものキタぁぁぁぁ!!」」」

 

 

 入学式すっ飛ばされただけなのだけど、ずいぶんと学校行事に飢えているらしい。

 しかし雄英体育祭かぁ

 そうだよね。去年までテレビや動画サイトで見ていたその場に自分が立つんだ。

 

「先生!ヴィランに侵入されたばかりなのに、体育祭なんてやって大丈夫なんですか」

「また襲撃されたりなんてされたら……」

 

 響香と尾白君の懸念はわかるけど、舐められないようにやる、じゃないかな?

 

「逆に開催することで、雄英の危機管理体制が盤石だと示すって考えらしい。警備も通常の5倍に強化する。何より雄英(ウチ)の体育祭は最大のチャンス。ヴィランごときで中止していい催しじゃねえ」

 

 確かに。かつてのスポーツの祭典、オリンピックや各種スポーツのワールドカップは個性を使った超人的なプレイにルール整備が追い付かず、世代を重ねることに形骸化、縮小の一途をたどっている。

 世界総人口の約8割が、個性という特殊能力を持つ超人社会、次世代に移行すれば、無個性はほぼ世界から消える時代が訪れる。

 その時代における、スポーツイベントの花形として、雄英体育祭は熱狂をもって受け入れられている。

 

「当然、全国のトップヒーローも見ますのよ。スカウト目的でね」

「知ってるって」

「卒業後はプロヒーローの事務所に相棒(サイドキック)入りがセオリーだもんな」

「そこから独立しそびれて、万年サイドキックってのも多いんだよね」

 

 私と電気のアパートの大家さんがその典型らしいね。

 雄英近くに複数の不動産をもって、悠々自適の隠居生活ができているから、目立つばかりが成功ではないよ、響香、電気。

 

「当然、名のあるヒーロー事務所に入れば知名度も経験値も高くなる。時間は有限。プロに見込まれれば、その場で将来が開けるわけだ。年に1回、計3回だけのビックチャンス。ヒーローを志すなら絶対に外せないイベントだ。その気があるなら準備は怠るな!!」

 

「「「はい!!」」」

 

*1
第3話参照。管理人が覗きカメラ仕掛けてた




ご都合主義的に、波動ねじれとオリ主がエンカウントしました。
雄英体育祭の後の職場体験、リューキュウのところに行くかはともかく、まぁ、ほぼノープロットで書いてるので少し選択肢を追加しておいた程度です。
てか、ヒーロー殺し以降のエピソードって、当たり前ですが捏造しないとストーリーの外、モブなんですよねぇ
チートっぽいのに微妙に弱いから、絡ませづらいったらない。


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