雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

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後日談4:雄英二輪愛好会

「一佳、そっち終わったー?」

「おっけ。今終わった」

 

 手につけた作業用のグローブを外して、キーをひねってセルをまわす。

 各部に残ったオイルが焼けて白煙を出すが、それもしばらく待つと落ち着いた。

 

「よっし、コレで作業終わりだね」

「やっとかー、コレで自分たちの分やれるよー」

 

 ヒーロー科の活動も2年目に入ると、多少の余裕も生まれる。

 通常の年なら、仮免取得に向けて追い込みとなるのだけど、今期は1年時点で取得済み。インターン活動についても課題で実施されてから全員が継続して続けている。

 

 超常解放戦線はまだ大量の構成員が残っているけど、現状では資金源であったデトネラットなどが潰れたことで身動きが取れない状況だろう。

 

 おかげで外出制限もだいぶ緩くなったので、私と一佳で趣味を楽しむための二輪愛好会を立ち上げていた。

 勝手愛好会でいいと思ったのだけど、そこに口を突っ込んできたのがパワーローダー先生。

 車やバイクも大好きなようで、訓練機材でもあるオフロードバイクの整備と引き換えに、場所の提供と顧問をしてくれると言うので話に乗った。

 

「こんな機材もあったんだねぇ」

「2年下期からの任意科目だしね。市街地活動がメインだから、あまり人気がないらしいけど」

 

 泥や石除けのガードに野外用の大型無線機を備えた車体は、軍用に近い武骨さを持つ。国内の山岳救助などではヘリコプターの出番の方が多いから、経験したところで活かす場は少ない。

 要するにパワーローダー先生の趣味半分の授業である。対ヴィランを志向する生徒には人気がないだろうな。その分、雑な扱いやメンテナンスがおざなりな車両もあって、1台、焼き付いていたエンジンの修理がやっと終わったところだった。

 サポート科の人が修理しないのかと思ったけど、課題制作とかで意外と時間がないらしい。ただし授業以外はラボに入り浸る発目さんを除く。

 エンジンを止めて、保管場所に動かしてから自分のバイクをガレージに入れる。

 

「レブルかー、もとはプレマイのだっけ?」

「そ、プレゼントマイク先生から安く譲ってもらった」

 

 去年の死穢八斎會関係で移動の足が必要になった際に借りたレブル250。どうもオール・フォー・ワンに一矢報いることが大分嬉しかったらしい。お礼とかでタダ同然で譲ってくれた。

 関連して個性で見てほしい人がいるとも言われているが、それについては調整中らしい。

 

「クォーターでいいの?確かに評判はいいけど」

「大型は来年取るけど、別にいいかな。取り回し楽なほうが良いし、飛ばしたいわけじゃないし」

「でもスクーターは嫌、と?」

「別にそういう訳でもないけどね」

 

 操作してる感があって楽しいのはミッションだと思う。風を切る感覚や疾走感を楽しむだけなら、ミッションでなくても構わないけどね。

 

「さて、ちゃっちゃとやっちゃおうか」

「おっけ」

 

 自分のものになったので、今日は一佳に手伝ってもらって少しだけ弄る予定。

 ドライビングポジションの調整を兼ねてハンドルの交換とタコメーターを追加。幸い、ドラレコとスマホホルダーは搭載されていたのでそのまま使わせてもらう。

 ハンドル回りをばらしながら、その横にある一回り大型のオートバイに目を向ける。

 

「YZF-R3かぁ、がっつりスポーツ系に行くと思わなかった」

「いーだろ。速いよー。乗ってみる?」

 

 地下にあるパワーローダー先生ご自慢のミニサーキットで、ってことだろうけど他人のバイクはちょっと。

 

「遠慮しとく。ちょっと足つき厳しいし」

「せめてあと2cm欲しいよね」

「ブーツでどうにかできるけど、まぁ、厳しいね。ちゃんと乗るならローダウンしたくなる」

 

 身長ばかりはどうしようもない。この1年、色々あったけど身長は伸びてないし。

 

「そう言えば、轟は?」

「ちょうど免許取りに行ってる。電気とかクラスの連中と」

 

 別に二輪ブームと言うわけじゃないけど、外出制限がほぼなくなったので、放課後やインターンが休みの日に外出する人が増えた。

 それで便利な移動手段としてバイク、と言うことらしい。一佳と私が乗り回して遊んでるから、自分達も、となったのだけど。

 250なんだから二人乗りも出来るけど、夏休みまで待たないと違反になるし。

 

 学校側としては免許取得は積極的には推奨していないが、特に禁止もしていない。3年生になったら大型2輪と自動車免許も取っておく予定。

 

「愛しの彼女と一緒にツーリングかぁ」

「無理に取らなくてもいいとは言ったんだけどね」

「どうせ自分に乗るから?」

「…………」

「……ごめんなさい」

 

 セクハラは大概にしようね?まったくもう。

 

「そ、それはともかく、バイクはナニを買うの?マッハ?」

「それだけは買うな、って言っておいた。旧車はメンテナンス大変だし」

 

 普通免許で乗れるモデルもあるけど、基本的には大型免許が必要なマッハⅢがイメージだろう。ただ、どれも超常以前のヴィンテージだ。現存数も少ないうえに無駄に高い。

 実家にはお爺ちゃんが買ったマッハⅢがあったはずだけど、アレはどうなったことやら。電気に聞いた話じゃ、大分、金に困ってるみたいだから売ったかも。

 

「よぅ、やってんな」

「こんにちは。マイク先生」

「おう。ハンドルとタコメーターか?」

「はい。私の身長だと、少しハンドルが遠いので」

 

 足つきの良さが自慢のレブルだけど、フレーム自体は500ccと共通で割とロング。乗れなくはないけど、旋回とかちょっと気を使う。

 

「跨っていいか?」

「どうぞ。組みつけも終わったんで、よかったら試乗どうぞ」

 

 何ならまた乗りたいようなら、お返してもいいし。部品代?それはレンタル代と思えばいいでしょ。新車でまだ手に入るからね。

 流石に元オーナー。軽快に走らせると数分で戻って来た。

 

「だいぶ変わるもんだなー」

「街中や峠を軽く流すにはいいバイクですよね。ぶん回すには向きませんけど」

「それはこっちよね」

 

 一佳のR3が軽快な吹きあがりで快音を響かせる。

 

「そうだけど。その子、慣らし終わってないんじゃないっけ?」

「おっと、いけね」

「おいおい、マシンは愛情もって接してやれよ?んーで、どっかツーリングとか行くのか?」

 

 マイク先生も一緒に行きたいとかかな?アメリカンのビックバイク乗りってソロか同系の集団走行ってイメージが強いけど。

 

「そーしたいんですけねー。この子、女の友情より男とっちゃって」

「いやいや、流石に墓参りにつき合わせる訳に行かないし。ツーリングはまた次ね」

 

 別に電車とバスで行ってもよかったのだけど、焦凍はインターンの給料でバイク買って、それで初めて行きたい場所がそこらしい。

 

「……なるほどな。んーじゃ、そんときゃ、俺やパワーローダーとも走りに行こうぜ。旨い店、教えてやるよ」

「楽しみにしておきます」

「その時は私も!」

「おう、またなー、女子ライダーズ」

 

 話は終わりと戻っていくプレゼントマイク先生を見送ると、入れ違いで焦凍やみんなが来た。気を使ってくれたらしい。

 

茉芭(まつは)、ここに居たのか」

「お帰り、焦凍。免許取れた?」

「あぁ、みんな合格した」

 

 免許を取りに行ったのは、焦凍の他だと電気、切島君、尾白君、瀬呂君、爆豪君。

 爆豪君以外が二輪愛好会のガレージに顔を出している。

 他のみんなは興味なしと言うことで、乗り物系は取るとしても自動車の免許ぐらいになりそう。

 

 飯田君は自分の足の方が早いし、口田君や障子君、常闇君は興味がないらしい。青山君はエレガントじゃないとかなんとか。緑谷君もあまり興味がないというか、危険な乗り物と言うイメージの方が強いらしい。お母さんを心配させたくないから、と言うことでバイクの免許は取らないとのこと。

 

「それで、バイクはどうするの?電気は実家から取り寄せ?」

「親父がコレクション手放す訳ねーじゃん。コイツどうよ?イケてねぇ?」

 

 写真を見せてきたのはスカイウェイブ。いいんじゃないの?

 

「AT免許?」

「普通の取った。けどこっちの方が楽だし、何より2ケツしやすい!」

 

 つまりナンパ用か。免許取得してから1年は2人乗りできないの知ってるよね?

 

「違反で捕まらないようにね」

「わーってる。なぁ、轟ぃ、お前もこれにしねー?」

 

 スマホで映像を見せるけど、あまり興味はなさそう。

 

「正直、よくわからねぇ、茉芭と話して決める」

「旧車に手を出さなければ、よっぽど変なの買わなければ何を買ってもいいと思う」

 

 スカイウェブもいいけど、好みで勧めるならATならPCXかな。タマ数多いし。

 

「お勧めするなら、ミッションならCB250Rかジクサー、ATならPCXあたりかなぁ?」

「マッハ、割とホンダ好きだよなー」

「別に特定メーカーに拘る気はないよ?ジクサーはスズキだし」

 

 焦凍がどれくらいお金持っているか知らないから、手に入りやすいモデルを挙げた。

 

「趣味の乗り物だから、レンタルとかで実際に乗って決めてね。正直、無理に乗るもんじゃないよ、バイクなんて。夏は暑いし、冬は寒いし」

「わかった」

 

「けど、いざ買おうと思うと250でも割と高いんだな。驚いた」

「自分で整備できる人ならジャンク買って整備する方法もあるけど、時間がねー」

 

 インターンの合間に整備しようとしたら放課後と休日全部潰すことになる。

 

「中古で買ったら、言ってくれれば電装系とかのチェックぐらいはするから」

「おぉ、それは助かる。そんときゃ頼むわ」

 

 個性「電子操作」のごく常識的な使い方として、回路のチェック程度はお手の物です。実家でも整備とかしてたしね。

 それでアレコレ手軽に借りられる業者で試乗しまくったわけだけど、焦凍は最終的に選んだのはCB400SF。なんでもVTECの加速と取り回しの良さが気に入ったらしい。

 渋いところを選んだなー。ただ、タマ数多いけどピンキリで……結局はフレームだけ生きてるのを買って、あとは組みなおしたよ。疲れた。

 

 軽快なエンジン音を響かせながら、2台のバイクが郊外の街道を走る。

 先頭を焦凍のCBが走り、安全な距離を取って私のレブルが追っている。法定速度で走る分にはパワー差は関係ない。

 今日は2人での初ツーリング。インカムでお互いおしゃべりしながら走れるのは楽しい。

 

「バイクはどうー?」

「いいな、加速が面白い。パトロールでもこれぐらい速度出せれば楽なんだけどな」

「最近はだいぶ並んできたじゃない」

 

 私の趣味に付き合わせてしまったけど、思ったより気に入ってくれてよかった。

 途中、眺めのいいところで休憩を挟んだりとツーリングを楽しんだ。さすがに身体能力もあって、パワーのある400ccをしっかり乗りこなしてる。

 こっちはゆっくり法定速度でついていきまーす。

 

 今日の目的地、轟家代々のお墓があるお寺についた。

 休みがうまいこと重なったので、月命日に訪れることができた。

 墓石を洗い、雑草や枯葉などを片付けてから、線香を手向ける。こういう時、すぐに火をつけられるのは便利。

 墓石に向かって手を合わせていた焦凍が、ゆっくりと話しかける。

 

「燈矢兄……謝る気はないけど、こうなるしかなかったのか……」

 

 そう思うよね。生きていたなら、その時点で帰ってきていればよかったのに。オール・フォー・ワンや殻木の関連施設で治療を受けたんだろうけど。行方不明になって死亡扱い。それを見て、切り捨てられた、は短絡的過ぎる。

 手を合わせて、私も挨拶はしておこう。そのために今日、ここに来たのだし。

 

「轟燈矢さんには初めまして。上鳴茉芭です。焦凍君とお付き合いをさせていただいております。生前にご挨拶が出来ず、残念です」

「……茉芭?」

 

 焦凍が怪訝そうに問いかけるけど、無視して個性を全開にする。

 蒼く染まった瞳を見て、焦凍は何を言いたいかわかったらしい。

 

「そして、荼毘。アンタが恨み心頭だったエンデヴァーと話をする機会を奪ったのが私、ブルーアンバーだ。

 上鳴茉芭とブルーアンバー、どちらも私。

 帰る場所はあった。機会だってゼロじゃなかったはず。でも勝手に絶望して、全部切り捨ててヴィランとして生きた……バカだよ、アンタ……私は……アンタには詫びない」

 

 概略は聞いた。理解はするが納得は正直できない。

 

「焦凍やエンデヴァー、冷さん、冬美さん、夏雄さんを苦しめたアンタを許せない。アンタのやろうとしたことは、みんなを不幸にする。ヒーローが言う事じゃ、ない、けど……いつか、許されれば、授かれば、名前、もらおう、なんて、浅ましい夢、みた、けど……けど、絶対、そんなことしない。悔しかったら、私が焦凍を幸せにするのを、指くわえて見てろ、この―――」

 

「茉芭……もう、いい。燈矢兄のことは、茉芭が背負う(つみ)じゃねぇ」

 

 感情任せに言葉を紡いでいたら、どうにも制御できなくなってしまったところを焦凍に止められた。

 焦凍のぬくもりが背中から私を包む。安堵の吐息を共に、焦凍が言葉を紡ぐ。

 

「悪いな、燈矢兄。俺はブルー、茉芭と一緒に生きたいと思った。共に歩んで、戦って、泣いて、笑って過ごしたい。燈矢兄の事は忘れねぇ、けど、茉芭を泣かせるなら、俺はあの世にだって燈矢兄を倒しに行く……不満なら、待ってろ。親父共々、ぶちのめしてやる」

 

 涙を流す私を墓前から立たせ、抱きしめて溢れる涙をキスで拭う……ほんと、どこでこんなキザな仕草を憶えたの?

 

「俺は、茉芭を泣かせない。そう誓った。だから、もしどうしても堪えられなかったら、俺の前で泣いてくれ。全部、俺が受け止める」

「……ありがとう」

 

 あぁぁ、もう、爆豪君みたいにキザヤロー!って叫んでいいかな?

 

「うん。そうやって、笑うか凛々しくいてくれ。俺はそれが一番うれしい」

「……ぅぅ、う、うん」

 

 あー、もー、本当、いい男になりすぎだよー

 負けないよう、焦凍に愛想つかされないくらいにいい女、いいヒーローにならないと。

 

 

「あと、将来の事、色々考えていてくれてたのもありがとう。卒業したら、結婚しような」

「……気が早すぎ。うん、その、ちょっと、妄想が漏れた。お願いだから忘れて」

「嫌だ。絶対現実にする」

「うぐぐ……せめて医者になるまでは待って」

「考えておく」

 

 あー、恥ずかしい。口が滑りすぎた。て言うか、焦凍、それ、考えるだけって奴なのでは?あんまり早く結婚してもダレるだろうから、その辺は追々説得しよう。無理っぽい気もするけど。

 

「さ、そろそろ帰ろう。麓に親父が好きな葛餅の店があるんだ」

「うん。数あるかな?」

「寮への土産にしようと思って、予約してあるから大丈夫」

 

 そう言って、供えた花や食べ物を片付けようとする焦凍だけど……止めておくか。

 

「焦凍、それ、そのままでいいみたい」

「冬姉からは片付けておくように言われてたけど……」

「大丈夫」

 

 実際、供え物は下げたほうが良いのだけど、今回は問題ない。

 預かっていたカードを見せると納得したようだ。

 

「なるほど。いいのか?」

「うん。そこの人ー、後始末お願いしますね。次はないんで、お互い気を付けましょう」

 

 相手が頷いたのは私の個性で把握した。

 折角、墓参りに来てくれたのだ。今日ぐらいは無粋な真似はお互い避けたい。

 

 

―――Side:スピナー

 うっそだろ!?ラーカーズの追跡だってかわして見せたんだぜ。

 ホント、俺ってどこか抜けてるんだろうなぁ

 田等院でミルコが暴れまわってるから、河岸を変えて鳴羽田でも行ってみるかと思っていた。

 その前に、ちょうど荼毘の月命日だからと、移動のついでに寄ってみた。

 仮免ヒーロー・ショートにブルーアンバー。荼毘こと轟燈矢の弟、轟焦凍とその彼女、と言うか、あの様子じゃ婚約者らしい上鳴茉芭。

 

 蛇腔総合病院での戦闘で、荼毘を倒し、死柄木弔どころか、奴が宿したオール・フォー・ワンを倒してのけたヒーローの一人。

 林間合宿では死柄木弔の優先殺害対象だった。俺は、触れることもなかったけどな。

 彼氏と一緒にMr.(ミスター)コンプレスを逮捕。更にクソガキ(マスタード)をぶちのめし、死穢八斎會ではトガを逮捕。

 ヴィラン連合として見たら疫病神もいいところだ。

 そういやぁ、デトネラットが裏に流していたアイテムを押さえたのもあの子か。

 ああいうのがヒーローやってる限り、俺みたいな有象無象は陰でコソコソするしかないって事かね。たくさんの本物がああして油断なく育っているのはいいことだけど。

 

 ともあれ、今日に限っては見逃してくれるらしい。

 後片付けを押し付けられたけど、それぐらいで済むなら安いもんだ。あの2人だけでも、俺程度なら鼻歌交じりに逮捕できるだろうしな。

 

「なるほど。気を遣わせたか」

 

 火のついてない線香と供え物らしい缶コーヒーが2本と料理のパック。すべて未開封で残されてた。折角だ。線香の一つも供えていくか。コーヒーは早速1本、ありがたく頂く。

 

「1本貰うぜ、荼毘」

 

 やり取りがどうにも甘酸っぱくて。丁度コーヒーが欲しかった。

 良かった無糖だ。

 ホークスの野郎みたいに、砂糖と練乳に色付けしたのをコーヒーって出されたら胸焼けするわ。

 

 昔の俺なら、モテない僻みも込めて「ヒーローが人並みの幸せを求めるな」とか言ったろうけど。そーいや、あん時の三十路ヒーローはちゃんと女の幸せ掴めたのかな?

 なんにしても、しっかりヒーローやってくれるんなら、それでいいさ。

 

「さて、と。荼毘。久しぶりだな。

 世の中相変わらずだぜ。あぁオール・フォー・ワンの裁判がとうとう始まったんだ。だいぶ弱ってるみてぇだから、アイツが一番最初にソッチへ行くぜ。きっと。

 ……結局、世の中を全部ぶっ壊すなんて、出来はしなかったな。

 けど、ちょっとは変わってるんだ。なんつったかな……タコみてぇな異形型の奴が子供たちと手をつないで歩くCMとかさ、ゴチンコとか言う妙なヒーローがガキどもの都市伝説で有名になったり。

 マイノリティ贔屓のプロパガンダだろうけど、世の中、いろんな奴がいていい、って事らしい。

 そうそう、エンデヴァーは相変わらずネットのオモチャだ。お前、あれ見て、溜飲下げるぐらいでよかったんじゃねぇ?」

 

 そこまで言ってコーヒーを傾ける。

 久しぶりってわけじゃないが美味い。荼毘の野郎、いいもん供えてもらってんじゃん。密封容器の四川麻婆豆腐って、生前の好物か?

 魚嫌いとは言ってたけど、辛いの好きだったのか。これも後で下げたらご相伴に預からせてもらうわ。

 

「今も個性を好き勝手使うなんて夢物語だし、異形はやっぱ微妙な目で見られることも多い。けど、ほんのちょっと、ヴィラン連合や解放軍が何で世に出たか、ってことを考えようって動きもあるぜ。

 最後まで抵抗したのも、逃げたのも、異形が多いからな。

 トガとMr.コンプレスは懲役で済みそうだし、出てくるころにはちょっとはいい世の中になっててほしいよ。そうならないなら、俺が、偽物を1人でも多くぶっ殺す。

 個性持て余して暴れるだけじゃねぇ、死柄木やお前みたいな、最初は安い飾りでもいい。誇りと信念を持って、世界に喧嘩売るヴィランを育てて、世の中にぶつけてやるよ。

 それで何が変わるって訳じゃねーが……変わる、変えられるって信じてる。それが俺の……ステインだけじゃねぇ、連合だけじゃねぇ、解放軍も全部ひっくるめて、はみ出し者の夢を紡ぐ者(スピナー)の使命だ……って思ってる。

 格好つけすぎ?わかってるよ。所詮トカゲ野郎だ。

 けど、やっぱり格好つけてぇじゃん。格好いい自分になりたいんだよ。そうじゃなきゃ、死んでいった……これから死んでいく死柄木やお前らに笑われちまう。いつまでたっても追いつけねぇ

 ……んじゃな、次はいつになるかわからねーけどな」

 

 手桶に花、残してくれたもう1本の缶コーヒーと供え物の麻婆を回収する。

 

「……って、なんだコレ?」

 

 容器の下にメモが1枚。

 何が狙いかわからん。あの子はただのメッセンジャーだろう。この場に俺が来るなんて思っていなかったはず。あちこちに糸を垂らして、俺程度の小物ヴィランに何の用だってんだ?

 

「ホークスねぇ……碌な結果にならねぇ気がするぜ」

 

 けどまぁ、ただ逃げるにしても、そろそろ解放戦線残党もひと段落つく。

 そうなれば、こっちへの追求も厳しさを増す。

 鳴羽田は後回しかな。先にあっちとこっちを回収して、それ次第か。

 ……死中に活を求める、ともいうし。話ぐらいは聞いてみるか。どーせ、裏稼業の手伝いだろ。それなら今と大して変わらねぇし。

 

「さて、紡ぐ者(スピナー)の道、邪魔はしないでくれよな、ホークス」

 

 

 

 

 夜、場末のモーテルに保護色で泊まり、レンジで麻婆を温めて食った。

 

「辛ぇぇぇぇぇぇ!ってか、いてぇぇぇ!!」

 

 

 何だよこのラー油と唐辛子を百年間ぐらい煮込んだ『ワタシ外道マーボー今後トモヨロシクネ』みたいな料理!!

 食えるし、美味いが死ぬほど辛い!!

 荼毘ってこんな辛いもんが好物だったのかよ!知らんかったわ!!口から火が出たぞ!マジで!!……え?




バイクネタに搦めて、轟燈矢の墓参り。
そしてスピナーの顔見せ。彼については要望の方にも頂いていたので次から2話でメイン張ってもらいます。

スピナーが語ったCMは、本編第96話の捏造ヒーローですね。校長が拾って、CMに流用w
火を噴いたのはほぼ悪ふざけ。目指せドラゴニュート(嘘)


なお、今後登場するかは微妙ですが、免許を取った連中のバイクは以下をイメージ。フィクションをいいことに排ガス規制による製造終了とかはガン無視して決めました。

オリ主:ホンダ レブル250 S Edition
轟:ホンダ CB400SF
拳藤:ヤマハ YZF-R3
電気:スズキ スカイウェイ(・・・)ブ400
切島:ヤマハ XJR400
尾白:ホンダ モンキー125改(181cc)
瀬呂:カワサキ Z400
爆豪:スズキ イントルーダー400

オリ主のレブルは第61話で記載した通り、身長による足つき重視。

轟は実は当初PCX160の予定でしたが、微妙に似合わない気がしてきて没。二面性のあるバイク、で検索したらCB400SFが引っ掛かったので変更。どうもVTECのフィールでそう感じる人がいるようで。

拳藤はなんとなく、性格的にヤマハかなー、と。あまり深く考えずすんなり決まった覚えがあります。

電気は車名。あと女の子を乗せて話をするための乗り心地重視(乗る子がいるとは言っていない)
切島は、紅頼雄斗への憧れから、族車系ベース車。
尾白はまんま個性から、他に何を選べと?DOHCキットとか改造が異次元ですね。
瀬呂は1人ぐらいカワサキ乗せたいなー、と。こだわりのある人には良かろうとチョイス。

爆豪は隼とか速いバイクもよさそうですが、イメージがどうしてもヒャッハーなところがあり、とりあえずアメリカンあてがいました。


マッハⅢは設定としては実家にあります。オリ主に譲渡も考えていましたが、入手しても乗らない未来しか見えないので、設定止まりに(大型免許が要るので3年生か卒業後でないと無理)
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