雷速少女のヒーローアカデミア   作:K鶏

13 / 115
基本一人称で書いていますが、解説描写を削るのも惜しいので、放送席のセリフは『』で差し込んでいきます。
ついでに競技中の選手たちも聞いている、ということで。



第13話 体育祭(2)

 厳重な警備の中で開催されることとなった雄英体育祭当日。

 天候にも恵まれ、一般に開放されたスタジアム。例年なら練度の高い3年生のスタジアムから埋まるのだが、今年は話題性の高さから1年生のスタジアムから埋まる珍事が起きた。

 クラス別控室で開催式を待っていると、轟君が緑谷君に宣戦布告をしはじめた。

 

「お前、オールマイトに目をかけられているよな。別にそこを詮索するつもりはねーが……お前には勝つぞ」

 

 オールマイト先生が直々に食事に誘いに来たとか言う話だし、確かに別格の扱いだ。

 ナンバーワンヒーロー、活動年数も長いからいつ引退するんだ、とか引退後の社会不安をどうとか言う話は時折出ては、派手に事件を解決するその姿に意見はじきに鎮火するのが常だった。

 だが事務所を一時閉鎖してまで雄英の教師に就任した今、自らの後継者を求めているのでは?という意見を妄想と切って捨てることは難しいだろう。

 

「おぉー、クラス最強が宣戦布告ぅ?」

「おいおい、急に喧嘩腰になるなって」

 

 止めようと轟君の肩に手を置いた切島君を振り払って、轟君は扉に向かう。

 

「仲良しごっこじゃねぇんだ。何だっていいだろ」

 

 ここまでほとんど言われっぱなしだった緑谷君だけど、意を決したかのように口を開いた。

 

「轟君が何を考えて僕に勝つって言ってるのかわからないけど、そりゃ、君の方が上だよ。実力なんて大半の人にかなわないと思う」

 

 超パワーがあるが制御が追い付いていない緑谷君。

 あのパワーを前にした場合、逃げ切って自滅を待つか、よけそこなって負けるかの2択を強いられるだろう。

 

「でも、他の科の人も本気でトップを狙ってるんだ。後れを取るわけにいかないんだ。僕も本気で獲りに行く」

「……あぁ」

 

 それは言われるまでもないこと。さぁ、本番だ。

 

 

『Heey!!白熱しろオーディエンス!』

 

「「「「YEAAAAAAAH!!!!」」」」」

 

『群がれマスメディアァ!今年もお前らが大好きな雄英生たちの青春暴れ馬!雄英体育祭の始まり!Are you ready? 1年ステージ、生徒の入場だ!!

 どうせやるだろ、こいつらだろ!ヴィランの襲撃を受けても、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!ヒーロー科1年A組だぁぁ!』

 

 プレゼントマイク先生が会場を盛り上げ、大歓声の中を入場する。雄英体育祭と言う憧れの舞台に立てたんだなぁ、とちょっと浮かれ気味で文字通り地に足がついていない気がする。

 

『話題性では後れを取っちゃいるが、こっちも実力者揃いだ!ヒーロー科1年B組ぃ!』

 

 襲われたのは偶然で、カリキュラム次第ではB組が襲われていてもおかしくないからね。

 どういう基準のクラス分けかわからないが、推薦入学生が2名、B組にもいるから、実力順ではなく、全体のバランスか先生の好み……こっちの方がありそうかも。

 

『そして普通科C、D、E組、サポート科F,G,Hも来たぞぉ』

 

 やはりサポート科は多かれ少なかれアイテムを身に着けている。

 1人、大量のアイテムを身に着けている子がいるから、要注意かな。

 

『そして経営科I,J,K!雄英1年、そろい踏みだぁぁぁぁ!』

 

 各クラス揃ったところで、主審を務めるらしいミッドナイト先生が演台に上がる。

 

「選手宣誓!」

 

 その姿に会場内に主に男子のどよめきが伝わる。

 

「ミッドナイト先生、なんて格好だよ」

「さすが18禁ヒーロー」

 

 肌色に近いタイツに胸元を強調したパーツ類。見られることを前提としたコスチューム。狙い通りに視線が引き寄せられるのは男の(サガ)だねー

 

「選手代表!1-A爆豪勝己!」

 

 ヒーロー科入試一位ということで爆豪君が宣誓をする。

 やっかみの声も聞こえるが、関係なさそうだ。

 観客の声が消えるのを待って、ジャージのポケットに手を突っ込んだままという、実にガラの悪い選手宣誓が始まった。

 

「宣誓ー、俺が一位になる」

 

 流石にこれは予想をしていなかったらしいミッドナイト先生が頭を抱えてる。

 いや、彼が選ばれた瞬間、1-Aのみんなは嫌な予感ぐらいはしてたと思いますよ?

 大量のブーイングを受けながらも、戻り際に更に一言。

 

「気に入らねぇなら全力(ガチ)で来い。超えて見せろ。テメエらが積み上げたもん全部を踏み台にして、俺はもっと先へ行く」

 

 そこで親指で首かっ切って、さらに地面に向けるって挑発フルコンボがなければもうちょっと好意的にとって貰えるだろうけどね。

 学年全体に火をつけて、それでもその先へ行くと。

 B組のほうに目をやると一佳が苦笑いと共にサムズアップをしていた。

 サムズアップを返し、お互いの視線が見えるなら火花の一つも飛んでいただろう。

 

「さあ、気を取り直して、始めましょう。第1種目はいわゆる予選よ。毎年ここで多くの者が涙を飲む(Tear drink)。さて運命の第一種目!今年は……これ!」

 

 投影された大型スクリーンには障害物競走の文字。

 スタジアムの外周4kmに設置された障害を越えて戻ってくるタイムレース。

 

「我が校は自由さが売り文句!コースを守れば、何をしたって構わないわ!」

 

 シグナル点滅からの一斉スタート。

 

『さぁ、一斉スタートだ!解説、Are you ready?ミイラマン』

『ったく、無理やり呼んだんだろうが』

 

 まだ重傷の相澤先生に何させているのだろうか。

 多分、一般視聴者は『ミイラマンなんてヒーローいたか?』とか検索してそうだ。そう思うとちょっと笑える。

 

『早速だがミイラマン。序盤の見どころは?』

『今だよ』

 

 狭い出口に我先にと殺到した選手で、押し合いへし合いになっている。 

 明らかに人数に対して狭いというか、出口に向けて狭くなっている。コレが最初の関門。

 位置関係で集団に埋もれてしまったA組はただでさえ不利。

 飛び出せた数名も集団に埋もれている。

 そして個性利用自由、ということで開幕ぶっぱをやってきたのが轟君。

 

 ゲート周辺を一斉氷漬けにして後続の選手の足止めをしている間に悠々とゲートを抜けた。

 

「甘いわ!轟さん!」

「そう上手く行かせねぇ!半分野郎!!」

 

 手のひらから鉄パイプを生成し続けることでいち早く集団を抜けた八百万さん、爆破で飛んでかわした爆豪君。純粋な身体能力で飛び出したのが切島君。一度見てるからか、尾白君を含め、A組は結構、回避に成功している。

 意外にも、レーザーを推力に青山君も初撃を避けている。

 

 私はと言えば、冷気を感じた瞬間に前にいた人に飛びついて氷漬けを回避。そのまま凍り付いた人の上によじ登ってから、申し訳ないが肩越しに飛び越えさせてもらった。

 

「俺を踏み台にしたぁ!」

「ごめんね、ごめんね、もひとつごめんねー」

 

 それでもトップの轟君や八百万さんからは大きく遅れた。

 踏み台になる人がいなくなったら、後は自力だし仕方ない。

 ここで意外な活躍を見せたのは、自分の頭髪からできる粘着球を足場にして猛追する峰田。

 自分に対しては粘着力がないという、部分をうまく使っている。普段はどうしようもない変態だが、個性の使いこなしと言う点では侮れない。

 

 いつまでも路面を凍り付かせておくのは無理で、外周手前で普通の地面に戻った。

 そこに待ち受けていたのは、入試の仮想ヴィラン。

 入試でも思ったけど、殺意高いよね。先生方。

 

『さぁ!轟が作った氷結トラップを抜けたら、本物の障害物だぁ!まずは手始め、第一関門!ロボインフェルノ!!』

 

 

「入試のゼロポイントヴィランじゃねぇか!」

「マジか!ヒーロー科、あんなのと戦ったの!?」

 

 倒す必要はなかったけどね。立ち向かっただけで合格しましたよ、ええ。

 

「どこからお金出てくるのかしら」

「いま気のするのそこ?」

 

 いや確かに、訓練施設と言い、お金の無駄遣いが多いとは思うけど。

 多分、先生方の趣味の産物も含まれてそう。

 

 ロボ1体を瞬く間に凍らせてその隙に轟君が通過。

 便乗しようとした数名が倒れてきたロボに巻き込まれたが、今は知らん。

 

『一位、轟!攻略と妨害をまとめてやった!コイツぁシヴィー!凄ぇなイチ抜けだ!』

『合理的かつ戦略的な行動だ』

『さすがは推薦入学者!初めて戦ったロボインフェルノを全く寄せ付けないエリートっぷり!』

 

 1点ロボ、2点ロボを前衛兼隙間埋めに使い、中衛に3点ロボが控えて後衛に0点ロボ、ロボインフェルノと言うそれが後に控えている。

 

「だぁぁ!轟!俺じゃなかったら死んでるぞ!」

「A組の奴らはホント、ムカつくな!俺じゃなかったら死んでるぞ!」

 

『1-A切島、B組鉄哲!個性だだ被りコンビが潰されていたぁ!ウケるぅーー!!』

 

 そのまま脱出した2人を追うように、爆発で上を抜けた爆豪君。

 

『入試1位爆豪!下がダメなら、上から行ったぁ!コイツぁ、クレバーー!』

 

 続くように瀬呂君、常闇君が上を抜ける。

 周りに電源はあるから、私も上を行こうと思えば行けるが、消耗は避けたい。

 

「電気、先行くねー」

「あ、おい、マッハ!」

 

 潰される前に確保しないと。

 移動性能は良い1点ロボの後ろに回り込み、即座に掌握。

 

「全速!行け!!」

 

 ロボ同士はお互いを味方と認識をしている。そこを弄らなければ、仮想ヴィラン的には「人質を確保。残りは逃走経路を確保する」と判断して残った生徒に襲い掛かる。

 

『A組、上鳴!なんとロボを操ったぁ!』

『うまい手だ。仮想ヴィラン同士なら攻撃も受けずに前を追える』

 

 このあたりから、他のクラスメイト達も第一関門を突破し始めたらしい。

 

『突破していくのはA組がはえ―な。どうなんだよ、ミイラマン』

 

『他の科やB組も技量で劣るわけじゃない。ただ立ち止まる時間が短い。各々が経験を糧として迷いを打ち消しているんだろ』

 

 第一関門で戦闘が続く間に、私は何とか第二関門に到達していた。

 妨害用に1点ロボを逆走させてもいいが、弱いし勿体ないから腕の装甲を1枚外させてジャンプ台に。

 タイミングよく最初の谷を越えてから2個目のところでロボを踏み台に次の平地部分へ。ありがとう1点ロボ。あと3分ぐらいは君の雄姿を忘れない。

 

「後は地味に行くしかないか。消防のレスキュー訓練、やる方が先でしょ、これ」

 

『おいおいおい、第1関門チョロいってよ!じゃあ第2関門はどうさぁ!』

 

 放送はコース上にも流れているから、後続の状況も一応わかる。集団が第2関門に追いついてきたようだ。アドバンテージはもうあまりないな。

 

『落ちればアウト!それが嫌なら這いずりな!ザ・フォーーーール!!』

 

 物理的に穴を掘る限界はあるから、コース脇を大回りで抜ける方法もあるとは思う。

 ただそれは大幅なタイムロス。安全ではあるが予選通過は無理だろう。

 

『おーっと!ここでサポート科!発目明!自作のサポートアイテムを駆使して一気に飛び越えていったー!いやー、実にいろいろな方がチャンスをつかもうと励んでますね。どうですか、イレイザーヘッドさん』

 

『何を足止めてるんだ、あの馬鹿ども』

 

 あ、謎のヒーロー、解説ミイラマンの消失。

 折角褒めたのに先に進まないから相澤先生がイラついてる。

 

『さぁ、先頭は難なく一抜けしてっぞぉ!』

 

 轟君がトップをキープか。多分、爆豪君が追いすがってるかな。トップ争いはこの2人か。

 ともあれ、少しでも遅れないように焦らずかつ早くこのエリアを抜けないと。こういう状況で使えない個性持ちには地味なステージだなぁ、これ。

 最初に飛ぶエリアを間違えたかな。遠回りを強いられたのは痛かった。

 

『さぁ、早くも最終関門!かくしてその実態はぁ……あたり一帯が地雷原!!地雷の位置はよく見りゃわかる親切仕様になってんぞぉ!』

 

 そう言って心を折る方の心折仕様なんですよね、きっと。

 

『目と足、酷使しろ!ちなみに地雷は競技用で威力は大したことないが、音と光は派手だから、失禁必至だぜぇぇぇぇ!!』

『人によるだろ』

 

 先頭がまだクリアしていないのはいいけど、第2関門とその後移動で追いつかれちゃったなぁ

 私にとって、地雷の位置をよけるのは楽だ。

 感圧式だが、点火は機械式ではなく電子タイプ。つまりそこにたくさんの電子の塊がある。

 ならばそれを避ければいい。

 

 轟君と爆豪君が足の引っ張り合いをやっているから、その間に少しでも距離を詰めよう。

 そう思ったら、後方で大爆発。爆風で危うく地雷を踏むところだった。

 

『後方で大爆発―!なんだぁ、この威力ぅぅぅ!!!』

 

 爆風から何か飛び出すのが見えた。見ると、ロボットの装甲の破片に誰かがしがみ付いている。

 

『A組緑谷ーーー!爆風で猛追!!つーか抜いたぁぁぁぁ!』

 

「アレはちょっと真似できないわー」

 

 何とも凄まじい。爆発の威力と装甲の強度、角度、すべてが揃わなかったら出来ないこと。とっさにリスクを負ってもあれが出来る。ちょっと緑谷君の勝利への執念を甘く見てた。

 

『元先頭の二人、足の引っ張り合いをやめて先頭を追う!共通の(ヴィラン)が現れたら人は争いをやめるぅ!争い自体はなくならないがなぁ!』

『なに言ってんだお前』

 

 ごもっともです、相澤先生。

 ともあれ、轟君が道を作ってくれたから、中央付近にいた人ほどペースは上がるだろう。

 そして追いかけたのがかえって仇になった形だが、轟君と爆豪君の肩に着地した緑谷君が装甲を地雷にたたきつけた。いやホント、頭のねじ、ダース単位で抜けてないかな?

 

『そして緑谷、間髪入れず後続妨害!なんと地雷原トップクリア!イレイザーヘッド!お前のクラスすげぇなぁ!どういう教育してるんだ!!』

『俺は何にもしてねぇよ。あいつらが勝手に火ぃつけあってんだろ』

 

『雄英体育祭1年ステージ!』

『無視か!!』

 

 解説って時に実況に無視されるのが様式美なんですよ。

 あきらめましょう、相澤先生。

 

『序盤の展開から誰がこの結果を予想できた!今、一番にスタジアムに帰ってきた!緑谷出久の存在を!!』

 

 そしてそのまま緑谷君がトップでクリア。

 後は1つでも順位を上げたかったが、途中で路面がB組の骨抜君の個性で踏み込めないほど柔らかくなり、脱出に手間取る間に順位を落とし、私は15位でのフィニッシュとなった。残念。

 





なお、原作において15位だった砂藤君はご都合主義が発動して、本作不在の吹出がいた40位に沈みました。
敗因は第1関門での出遅れ&頑張りすぎと、第2関門でルート選択に失敗ってことでw
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。